翌日、五車学園の学園長室。そこでアサギが書類仕事をしながら報告に来ていた紫からの話を聞いていた。すると、扉の向こうから騒がしく話す声が聞こえてくる。
すると、扉を強く開いて赤毛にツリ目の大柄な男、紅 藤十郎が入ってきたが、そんな彼を見てアサギは頭を抱えた。
「邪魔するぞ、アサギ!!」
「……“藤十郎”、何か用?今は忙しいから後にして欲しいんだけど。というか、あなたは今謹慎の身でしょう?」
「いや悪いな!けど、ある生徒の事を教えて欲しいんだ。
不知火の息子、そいつのデータをくれ!!」
「不知火の……その、悪いけど生徒の個人情報は教員であろうと渡せないわ。
それくらいは分かるでしょ?」
呆れた様子でそう言うアサギに藤十郎はガハハッと笑う。
どうやら彼は細かいことは気にしないらしい。
「知ってるさ!だが、うちの隊長である焔を倒しちまう……そんな奴を知ったら無視できねぇだろうが!それに俺も手合わせしてみたいしな!」
「おい、紅。お前はそれで何日謹慎と減給食らったか忘れたのか?大体相手はまだ中等部の子どもだ。お前のような戦闘狂と会わせられるわけ「何だこれ?」あ、おい返せ!!」
藤十郎は紫が持っていた書類を1枚抜き取るとその書類を見る。
その書類は生徒の個人情報が書かれており、さらにその書類には"水城 春輝"と書かれていた為にアサギは頭を抑えて、溜め息をつく。
「ほほ~、これが例の奴のか?よく分かった、ありがとうな!ちょっくら行ってくる!」
「あ!待ちなさい藤十郎!!」
その書類を見た藤十郎は書類をアサギに返すと、部屋を猛ダッシュで出ていきがアサギは止まるように行ったが、既に藤十郎の影はなく、アサギは再び頭を抑える。
「お姉ちゃん、大丈夫!?」
「アサギ様、申し訳ありません!私が書類を隠しておけば!?」
「こうなったら仕方ないわ。さくら、あなたは今すぐ燐、零子と一緒に藤十郎を追いなさい!
紫は不知火に連絡を、藤十郎は加減を知らないから下手をしたら彼が危ないわ!」
「分かりました!」
「分かったよ!」
2人がそれぞれ動き出すと、アサギは頭を抱えて溜め息を吐いた。
炎の対魔忍、紅 藤十郎。25歳。
不知火やアサギと同期である彼はかつて、訓練と称して生徒を数人程を半殺しにした経歴があり、仲間の対魔忍からも煙たがられていた。
しかし、その実力はアサギに近いという事と火遁衆の隊長という事から減給と謹慎で済まされたが、それでも仲間の対魔忍からは恐れられている存在でもある。
そんな彼が今、新たな獲物を求めて動き出した……。
◆◆◆
一方その頃、春輝は家でおやつを作っている途中であった。家にはゆきかぜ、凛子、達郎、そしてきららがおり、不知火もいる。
「お兄ちゃ〜ん!今日のおやつ何?」
「プリンだ。種類はチョコとカスタード、それにイチゴだけど、何にする?」
「あたしイチゴ!」
「僕チョコ!」
「私はカスタードでいい。」
「私もイチゴにするわ!」
「分かったよ。お母さんは?」
「う~ん、私は何でもいいわ。」
「分かった。」
それぞれにプリンを配り終えて、おやつを楽しんでいた。
すると今度は九喇嘛が話し掛けてきた。
【ったく、あんなのの何が美味いんだか?】
「(結構美味しいよ。九喇嘛も食べる?今度持ってくけど。)」
【いらん、そもそもわしは物を食わなくても平気なんだ。余計な気を回すな。】
そんな中で玄関のチャイムが鳴り、春輝が玄関に向かうと、そこには愛用の車(ジープ)から降りていた知らない男、紅 藤十郎がいた。
「お前が水城 春輝か。随分ちっこいな?」
「あの、どちら様ですか?」
「おぉ、すまねぇな?俺は紅 藤十郎、五車学園の教師だ。悪いんだが一緒に来てくれないか?」
「え?あ、はい。お母さんに許可取ってくるので待ってて下さい。」
春輝がそう言って一度扉を閉める。すると、九喇嘛が話し掛けてきた。
【春輝、あいつはヤバいぞ。この前の眞田って奴やハゲ頭、赤毛の男と同じくらいにな。】
「(ヤバい?さっきの藤十郎さんのこと?)」
【あぁ、奴は普通じゃねぇ……恐らく普通の人間じゃねぇな。実力でいえばあの女、アサギより上かもしれねぇ。用心しろよ。】
「(うん、分かった。)」
春輝はその後、不知火に学校から藤十郎という人が来たというと、不知火は血相を変えて玄関に向かうと藤十郎と言い合いになるが、春輝が大丈夫だと言って2人で出掛けてしまった。
その後、五車学園から連絡が来た時に不知火は応援に来たさくらと共に娘たちを連れて、藤十郎達を追うのであった。
◆◆◆
春輝Side
俺は藤十郎さんに連れられて、俺は五車町にあるどこかの山に連れてこられた。ジープから降りると俺達は山道をしばらく歩いていると、開けた場所に辿り着いた。
「ここなら良いだろう。あぁ、この山は俺の所有物でな?
ここでなら訓練をやろうが何をしようが文句は言わねぇよ。」
「……あの、なんの為に俺をここに?」
「そんなの……決まってるだろ!!!」
ドゴオオオオオッ!!
藤十郎さんは裏拳を放ってきたが、俺はそれをバク転して躱すとこちらを見ている藤十郎さんを警戒するが、その当人である藤十郎さんは……笑っていた。
「焔を倒したっていうお前と戦いてぇんだよ!俺は面白い奴が好きなんだ、妖魔だろうが対魔忍だろうが、俺はそういう奴と戦いてぇんだ!だが、どいつもこいつも俺を恐れて逃げちまうんだが、お前なら良い戦いが出来そうだ!」
「そいつは、どうも!(雷球!!)」
「っ!?」
すでに用意していた雷球を藤十郎さんに向かって放つ。
雷球が直撃した藤十郎さんは雷の中で、雷に焼かれながら立っていた。しかし、しばらくすると、その電撃は払われて服だけが“わずかに”焼け、そんなことを気にも留めていないかのように藤十郎さんが炎の中から姿を現わした
「無傷!?」
「いや〜、なかなかいい電撃だったぜ?それに威力も申し分ねぇ……だが!離れた所から攻撃するのは良くねぇ!戦いっての拳と拳、肌の擦れ合う感じがいいんじゃねえか。」
「っ!?」
藤十郎から放たれた殺気に辺りの動物は逃げ出し、植物は縮こまり始めた。
「"本気"で来いよ?でないと、本当に消し飛ぶぜ?間合いなんざ与えねぇからよぉぉぉ!!!」
「(これはちょっと不味いかもしれないな!)雷遁、雷装甲!」
「ほう?雷遁の鎧か。話には聞いてたが、良い物持ってんじゃねぇか!」
春輝の雷遁の装甲を纏った姿を見て、藤十郎はまるで欲しかった玩具を見つけたように笑いながらそう言うと、両手の拳に炎を纏わせて春輝に飛び掛かっていく。
そして、拳を振ると春輝も拳を振り2つの拳がぶつかり合い、そこから乱打を行っていくが、その乱打の最中にも藤十郎はずっと笑みを浮かべていた。
「(良いぜ、良いぜ!こいつは最高だ!こういう奴を俺は)待ってたんだよ!!」
「がはっ!?」
「ヤッハァァァァ!!!」
藤十郎が拳を振り抜き、春輝は木々をなぎ倒しながら吹き飛ばされてしまうが、何とか受け身を取って体勢を整える。
一撃の重さに頭や口から血を流すが、春輝は即座にその場から離れた。
すると、自分のいた場所に蹴りが跳んでくる。
「くそっ、なんてパワーだ。骨が何本かヒビが入ったか」
「ほう、まだ生きてたか?しかも骨にヒビだけとはなぁ?」
「っ!なら「させねぇよ!」ぐっ!?」
術を発動させる前に蹴り飛ばされてしまい、後ろに吹き飛ぶ春輝だったが、何とか踏ん張る事ができたが、すぐに藤十郎が追い打ちを放ってきた。
「言ったろ!間合いなんざ与えねぇってよ!!」
「っ!くっ!おらぁ!」
「っと「水遁、爆水球!!!」あ?」
ドゴオオオッ!!
ゼロ距離で受けた鉄並に硬い水は藤十郎を包み込んで吹き飛んでいき、そのスキに春輝は距離を取ろうとしたが、その後ろから腕が伸びてきて木に押し付けられてしまった。
「ぐっ!?こ、のぉぉ……」
「まさかゼロ距離とはなぁ?それに水遁まで使えるなんてなぁ、中々面白いぜ!」
「くっ!?な、めるなぁ!!」
春輝は足を藤十郎の腕に絡ませて力を込めて圧し折ろうとする。
しかし、それでも子供と大人では力が違っており、折ることが出来なかった。
「狙いはいいが……まだまだ甘いなぁ!!」
「おわっ!?ぐはっ!!?」
「どうした?まだ俺は術すら使ってないんだぜ?もっと見せろよ、アサギに勝ったっていうお前の力をよぉ!」
「多重、影分身の術!?」ボボボボボボボボッ!
「ほう?分身なんて使えるのか、すげぇなお前。」
「「「「「オラァァァァァ!!」」」」」
「にぃっ!!」
春輝が出した影分身、およそ100体が一斉に藤十郎に迫るが、彼はその分身たちを全て丁寧に相手していく。
素手で25体が消される中、分身達が手裏剣影分身を放つがそれを倒れていた倒木を使って防ぐと、藤十郎はそれを振り回して50体を倒してしまう。
「くそっ!だったら……!」
春輝本体が螺旋丸を用意し、分身達が足止めに掛かるが残りを軽く倒してしまう藤十郎、しかし、最後の一体が倒された瞬間に春輝は螺旋丸を藤十郎に放つ。
「螺旋丸!!」
「ぐぁっ!?あがぁぁぁぁ!!!?」
螺旋丸が腹部に直撃し、吹き飛ばされる藤十郎。そして木に激突し、ゆっくりと倒れ込んだのを春輝は目視で確認し、安堵の息を漏らす。
「はぁ、はぁ!ど、どうだ!何とか勝てt……っ!?」
春輝は安心したのか地面に座り込んで、肩で荒く息をする。しかし、その瞬間に凄まじい殺気を感じて前を見るとそこにはゆっくりと起き上がる藤十郎の姿があった。
「痛てて……こりゃあ、たまげたぜ。下手したら死んでたな俺は。」
「嘘だろ、螺旋丸を受けて平気だなんて……!!」
「螺旋丸、いい名前の術だ。威力も申し分ないし、名前負けしてないのが良いな。」
「くっ!あっ……」
ふらふらの春輝、最早立ち上がる事も出来ない彼だったが、藤十郎にはまだまだ及んでいなかった。
「水城 春輝、お前は既にアサギを軽く倒せる存在だ。そんなお前に敬意を評し、俺も見せるぜ、俺の術を。」
そう言うと藤十郎は右手を上げると、真紅に燃える炎を立ち上らせる。それを見た春輝の中の九喇嘛が吼えた。
【春輝逃げろ!!あれはやばい!!】
「っ!!」ダッ!
春輝は後ろに跳び退いて風遁、土遁の障壁を造って防護したが・・・籐十郎は構わずに無慈悲の一撃を放つ。
「火遁、炎ノ拳!!」
藤十郎の放った炎の手刀の一撃に春輝は咄嗟のところで防御できたが、山の大半が吹き飛ばされ、春輝も吹き飛ばされてしまった……。
しかし、籐十郎は春輝の行動に関心していた。
「(咄嗟に水遁、風遁、土遁を使い、さらに後ろに跳び退いたか。見事な反射神経と行動力だ。)が、それでも吹っ飛んだか。」
籐十郎は春輝が吹っ飛んだ方を見ながら、頭を掻きながらやり過ぎたか、と言わんばかりの表情になる……。