春輝Side
目に見える景色の全てが凍り付いた……そんな風に思えるほどに目の前の景色が氷に覆われて、キラキラと光っていた。
「いやいやいやいやいやいや!!!ちょ、やりすぎじゃないか!?ま、街が凍って!!?」
「ん?あ、確かにやり過ぎたかもねぇ。でも大丈夫!!ちゃんと加減してやってるから!」
いやこの人なんで自信満々に笑ってるの!?それにこの冷気、きららの氷の力よりも強いぞ!
百愧龍宮……獅子堂に並ぶ戦士の集まりってことなのか!!?
「さて、邪魔な奴等も倒せたし!春輝、色々話をしよう!!ボクはキミと話がしたかったんだ!」
「?な、なんで俺と?」
「キミは武頼に勝った。そして、何よりキミは里を救ってくれたし、キミの見せたあの金色の力!全てが気に入ったんだ!春輝、百愧龍宮に……ウチに来て!!」
「え……ええ!!?」
いきなりなんか誘われたんだけど!?なんで、どうし……えええっ!!?く、九喇嘛!どうしよう!?
【知るか!あたふたとしやがって。しゃんとしろ!それと、どうやらまだ終わってねぇみたいだ。】
「っ!!」
九喇嘛にそう言われて、気配のした方を見ると……そこには凍り付きながらも、体に着いた霜を払うように服を叩くバルトと体から熱を出して霜を溶かす怪物がおり、彼女……真琴さんも気付くと金棒を肩に背負い、俺も臨戦態勢を取る。
バルトは首をコキッと鳴らして怒気を放ちながらも、静かに話し出す。
「やってくれる……。全く、お気に入りのコートだったんだがな。こんなことは計画外だ。」
「グルルルッ……!!!」
「まさかボクの技を受けて立ってるなんて思わなかったよ。そっちの
「っ!あ、ああ!!(なんか良く分からないけど、今はバルト達から銅鏡を死守するんだ。それにしても、今の彼っていったい?)」
そんな事を考えていると、バルトが懐から4本の筒を出して連結させると、筒は一振りの仗はとなり俺へと向かってくる。そして怪物も俺へ飛び掛かってきたが、真琴さんが金棒を振るとバルトたちは後ろに飛び退く。
「ボクを無視しないでくれるかな。ボクもいるんだよ!!」
「そんな奴を庇うとはな?父親を殺された程度で怒る未熟者を。」
「っ!!(こいつまた!!)」
怒りそうになると真琴さんが金棒を振り、バルト達と距離を開ける。その中で俺の方を見て、俺の両頬を引っ張る。
「っ!?な、ふぁにを!?」
「春輝!顔が怖いよ。怒る気持ちは分かるけど、熱くなりすぎたらダメだ。春輝、キミならなんだって出来る筈だよ!ボクは信じてるから!!はああああああああっ!!!」
真琴さんが背後に迫っていた怪物に金棒を振ると、怪物は軽い身のこなしで金棒の一撃を避けていく。さらに真琴さんも無鉄砲に暴れるんじゃなくて、目であの獣に対処しているし、動き方に無駄がない。
いや、見とれるばかりじゃダメだ!!俺も敗けれない!!
「銅鏡を渡せ。貴様では俺には勝てない……父親と同じように殺されたいのか?」
バルトが父さんの事を出して、挑発してくる。そうだ、確かに父さんはこいつに殺された。それで憎んでもいるし、ノマドや魔族、魔物を恨んでもいる。けど……。
「黙れ、バーーーーカ。」
「なに……?」
「安い挑発してくるなよ!!欲しければ奪ってみやがれ!!」
「良いだろう。なら、父親と同じように殺してやる……出来るだけ無残にな。」
バルトのその言葉に俺は微笑むと、体の中から沸き上がる力に任せて叫んだ。
「掛かってこいよ!!!豪魔バルト!!」
◆◆◆
春輝は影分身に銅鏡を預けてバルトにそう言った瞬間、春輝の黒目の周りに赤い模様が現れ、それを見たバルトは違和感を覚える。
「貴様、その“眼”はなんだ?それに、その気配は……。」
「さぁな、それより……油断してていいのか?」
「っ!!?」
懐に入られたバルトは“廛”を使ってガードを固めると、春輝は右脇腹を拳で殴って内臓に衝撃を当てる……“廛”を纏った拳で。
「がはああっ!!!!?」
「へぇ……?これが廛か。俺の使う鋼遁に近い力だな?これなら色々応用出来そうだ。」
「貴様……!どうやって“廛”を!?」
「?なんか見たら出来たし、やり方とかも頭に入ってきた。けどどうやら鋼遁に近いみたいだし、鋼遁でやってみるか。」
春輝の言葉にバルトは苦虫を噛み潰したような表情になり、それを見た春輝は微笑む。
「やっとポーカーフェイス崩れたな?今度はその顔面凹ませてやるよ……!」
春輝はそう言うと、新たな力……邪眼“転写”を発現し、雷遁と鋼遁を纏わせた状態でバルトに接近して右腕の乱打を当てていき、バルトはそれを防いでいくが、衝撃が体に浸透していき苦悶の表情になっていく。
春輝はバルトの腹に深々と左フックを叩き込んだ。
「げはっ!!!?」
「バルト、父さんの痛みの分だ。おらああああああっ!!!」
春輝の手刀、逆水平チョップがバルトにヒットし、バルトを吹き飛ばしていく。
そんな様子を真琴と戦いながら視ていた鵺……否、獣遁で鵺へと変化していた慎夜は内心驚いていた。
「(何だあれは……?あいつ、バルトの力を視て覚えたのか?まさか、コピー?いや、コピーにしては異質な力だな。これは“血”を得るのは無理か?)」
「余所見するなぁ!!!」
「っ!!」
真琴の金棒が迫っているのを感じた慎夜は身を翻すと、真琴から距離を開けて春輝の影分身を見ると、その影分身の首を切り裂くと落ちそうになった銅鏡を咥えて、そのまま飛翔して駆け出し、バルトもそれを見て空に浮いた。
「潮時か。」
「おい待て!!」
「小僧……いや、春輝といったな。今回は俺の敗けだ……。だが、次に会った時は殺してやる……!!!!」
バルトはそう言うと夜の闇に消えていったのであった。
「銅鏡が!!くそ、逃げられた!」
「……。」
「おーーーい!春輝~~!」
その後ろからチンピラ達を倒してきた藤志郎、賢丞、唯糸、黒牙が合流してきた。皆掠り傷もなく、若干服が汚れているだけで無事であった。
「みんな!大丈夫だったか!?」
「まぁな、相手が雑魚ばかりで助かったよ。100人辺りからビビって逃げ出してたな。」
「確かにな。若干疲れたがな。」
互いに笑い合う春輝達、その中で唯糸らも話をしていた。
「お嬢、お願いだから勝手に居なくならないで!!?探すとなると大変なんだから!」
「全くだ。首領には報告させてもらうぞ。」
「うぅ……!?ご、ごめん。あ!!それよりも、さっきの追わなきゃ!!」
「?どうしたの?」
唯糸がそう尋ねると、真琴達はバルトと怪物に銅鏡を盗まれたことを報告した。
「おいおい、マジかよ!銅鏡盗まれたのか!?」
「首領が必ず持ち帰れと言っていた物を……!」
「はぁ……。骨折り損だわ。」
「ごめん!!!」
真琴が意気消沈する一同に頭を下げる中、春輝は気不味そう目をしぱしぱさせる。
「……。」
「春輝、何をしている。銅鏡がノマドの手に渡って「いや、その、ごめん!!!」は?」
「銅鏡……なら、ここに。」
春輝が懐から1つの巻物を取り出して、地面で広げて“物”と書かれた文字に手を翳すと……銅鏡が出てきたのであった。
「「「はああああああああっ!!!?」」」
「これって!?」
「春輝、巻物にしまっていたのか!?」
「う、うん。念のために鉄板を銅鏡に変化させて、本物の銅鏡をこの巻物にしまっていたんだ。ごめん、事後報告になって!!?」
「あんたねぇ!!?先に言いなさいよ!!」
「焦った~~!いやマジで焦った!!」
「心臓が止まるかと思ったぞ。」
「ご、ごめん!!!?」
「春輝……お前なぁ。」
「あははっ!!春輝、なかなかやるね!!」
唯糸、賢丞、黒牙に睨まれる中、やれやれといった様子で溜め息を吐く藤志郎と楽しげに笑う真琴。その中で藤志郎は背後から気配を感じて振り返ると、そこにはボロボロの慎夜がいた。
「真庭、お前何処に行ってた?」
「……豪魔バルトに奪われた銅鏡を取り返そうとしていたが、返り討ちにあってな。だがどうやらそれはいらない事だったらしい。」
疲れきった様子で溜め息を吐く慎夜。そんな慎夜に賢丞は近付くと睨むように彼を見る。
「……何だよ?」
「お前、任務を離れて何処に行ってた?勝手にいなくなるとか何考えてんだ?」
「……バルトが水城を追うのを見たから追ったんだよ。銅鏡を持っていったのは水城だしな。けどそうしたら待ち伏せに会って、戦闘をしてた。」
「……その霜焼けは?」
賢丞が慎夜の手の甲にある霜焼けを指差すと、慎夜は淡々と答えた。
「冷気が迫ってきたから回避したんだよ。もういいか?」
「お前なぁ「真庭。」春輝?」
春輝は慎夜に近付くと、霜焼けで傷付いた手の甲をチャクラで治した。
「……何のつもりだ?」
「仲間だからだよ。仲間が怪我してたら嫌だろ?」
「……くだらねえ。俺は先に戻るぞ。」
足早に戻る慎夜に唯糸達は怪訝そうに彼を見る。
「何あれ、感じ悪くない?」
「些か態度が悪いな。」
「疲れているんだろう……それより、俺達も戻ろう。明日また銅鏡について話したい。それでどうだ?」
藤志郎の提案に唯糸と黒牙は頷いていたが、その間、真琴は春輝を抱き締めていた。
「あ、あの、真琴さん?苦しいんですけど……?」
「春輝!ボクはまだまだ君と話したいんだ!だから一緒のホテルに「はいはい、お嬢帰るわよ。」ええ!?ゆ、唯糸!?ボクはまだ!」
ずるずると引き摺られていく真琴。その姿は小型犬のようであった。
何はともあれ、春輝達は銅鏡を護りきったのであった。
◆◆◆
その頃、偽物を掴まされたバルトは偽物の銅鏡を握り潰して、額に青筋を浮かび上がらせる程に怒りを露にしていた。
「ここまで虚仮にされたのは初めてだ……。水城 春輝……!対魔忍……!いつか全員この手で殺してやる!!!!!」
バルトの叫びが夜の中華の街に響くのであった……。
次回この話終わりです。
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