春輝と真が無事だった理由、それは春輝を藤孝が、真をかなめが庇って助けたのだ。飛び魚型の起爆粘土が4人に迫った時、藤孝達は春輝達を突き飛ばした。さらに春輝も晶遁、真も砂遁を使って防御をしていた。
そのお陰で春輝と真は無傷、藤孝と かなめも軽傷、気絶で済んだのだが春輝と真は2人が軽傷であっても許すことができなかった。
春輝達が藤孝達を安全な場所に避難させてから、春輝は外しを使って砕賀を殴り飛ばした。
「覚悟、出来てんだろうな?下手に動くなよ?」【グルルルルッ!!】
「それ相応の痛みは味わってもらうぞ。」【ぐおおおおっ!】
外しの状態になっている春輝と砂で守鶴の腕を造って砕賀を見下ろしていて、さらに九喇嘛と守鶴も臨戦体勢で砕賀を見据えており、砕賀は冷や汗を流す。
今まさに砕賀は追い込まれていた。
「(これが、尾獣を宿した奴の目か……!!とんでもねぇ殺気だ。尾獣とかいうのを差し引いても、これだけの殺気を放てるなんざ勝ち目がねえ……。ここは撤退するかな。)」
砕賀がそっと指を動かした瞬間、春輝に首を掴まれ、真に四肢を拘束される。
「がっ!?」
「動くなっていったろ?こちとらお前をいつでも殺せるんだよ。だが死ぬ前に聞いておくぞ……お前に情報を流したのは誰だ?」
「俺達の中にいる存在……その存在を知っている者。報告で聞いているが、まさか“冥”か。」
真に情報元を当てられドキッとした顔つきになる砕賀、それを見た春輝は冥が驚いていると、真が話し始める。
「どういうことだ、真。」
「嫌な予感がしたんだ。俺達の中にいる存在……それを知っているのは極限られている。尚且つ、その存在を狙っていて、噂になっているものと言えば冥しかいない。」
「なるほどね、真すごいな。けど、一体だれが……まさか!おい、お前に情報流したのって、荼毘って奴じゃないか?継ぎ接ぎだらけの!」
「……生憎とネタ元を簡単に吐くほど落ちぶれてねえんだよ。まぁ、仮にその情報主がなに考えてるかなんて知ったこっちゃねえしな。」
そう言う砕賀は力なく俯いていた。荼毘に何かしらの理由で利用されたと思った2人がどうすべきか悩んでいると、そんな中、黒い布を被った傀儡が2体現れる。春輝達は距離を開けて臨戦体勢を取るが殺気が感じられなかった。
「こいつらは……傀儡か。」
「黒い布を着た傀儡……見たことがあるし、前にぶっ壊した事があるからな……。そうだろ、糸型!」
春輝が背後に目を向けると、そこには木に寄りかかっている糸型 造治が立っており、真はそんな糸型を警戒して見る。
「赤毛にその服、貴様……戦場傀儡師か。」
「芳陰の次男坊に知られているとはな?それより砕賀、帰るぞ。」
糸型が近付こうとした時、真が守鶴の腕を彼の喉元に向ける。
「このまま帰すと思っているのか?」
「俺らを相手にするんなら時間の無駄だ。それに、お前ら対魔忍は早く帰った方がいいぜ?何せ、嫌な感じがするからな。」
「「嫌な感じ?」」
「砂の国にして、ノマドとは違うやり方で規模を拡大している、エジプトの妖魔陣営≪ヒクソス≫、あれが日本に向かってきているってよ。」
「っ!!ヒクソス、だと!?」
「真、ヒクソスってエジプトの陣営だよな。なんだってそんな奴が日本に?」
「簡単だろ……“侵略”さ。」
砂が解けた砕賀を抱えた糸型に2人は構えをとって警戒するが、本人は意に返した様子はなく、話を続ける。
「連中は日本を占領しどこかにある魔界に繋がるゲートを確保し、世界を手にする気でいるのさ。下手したら、死人が出るかもな。」
「……お前らはどうするんだ?戦うのか?」
春輝がそう尋ねると、糸型は鼻で笑って返した。
「は?アホか、俺らには関係ないんだ。人が死ねば俺としてはコレクションが増えるから構わねえがな。ま、せいぜい頑張れよ?」
糸型はそれだけ言うと、砕賀を連れて何処かへと消えていき、残された春輝と真は立ち尽くしていた。
「春輝、今はとりあえずここから離れよう。先程の爆音で警察も来るだろう。かなめ達も心配だ。」
「……分かった。」
春輝達は気絶していた藤孝達を連れてその場を離れ、拠点へと移動したのであった……。
◆◆◆
糸型side
「(ケインのオッサンの頼みでエジプト妖魔組織"ヒクソス"の情報を水城春輝に伝えたが色々と収穫があったな‥…尾獣か。最初、爆発野郎から話を聞いた時は眉唾物だったが本当だったな。なるほどなぁ、シュトロハイムの依頼で戦った時敗れるのも当然の帰結だな、あんな規格外な物を飼っているんだ、何の準備をしないで勝つ方が可笑しいぜ。だが決して勝てない存在ではないな。くく、ますます俺のコレクションに加えたくなったぜ、あのガキ。いや情報によると他にもいるらしいから他の連中も加えるのもありだな、早く拠点に帰って対尾獣用新型傀儡の制作をしたいぜ。)」
今後のことを考えながらも糸型は別のことを考える。
「(……しかし"ヒクソス"か、オッサンに情報を聞かされた時は信じられなかったがあのノマドが密かにだが慌ただしく動いているようだから事実のようだな。噂では”ヒクソス”の幹部を務める連中の実力はノマド大幹部たちと比べて勝るとも劣らないとされている。これはうまく立ち回れば新しい傀儡の素材が手に入るかもしれねぇ、今後の動向に注目だな。)」
岩城side
「(まさか俺の芸術があんな手で無力化されちまうとは。ますます芸術家としてあいつらを爆破したくなったぜ。しかし、想像以上だったな、だが決して勝てないほどではない……それは戦った芳陰家の次男坊で確信できた。特に水城 春輝、俺のカンだと尾獣を宿した連中の中で一番だな。あのガキ、尾獣の他に何かあるな、今度は油断しねえ最高の芸術で爆破してやる。でもその前に俺を咬ませ犬にしやがったあの継ぎ接ぎ野郎‥‥荼毘をぶっ殺すのが先だな。)」
自分を囮に使った荼毘への憎しみを募らせる中、岩城は別のことを考えていた。
「(よりにもよって糸型の旦那に助けられるなんて暫く頭が上がらなくなっちまった、ハァ~、気が重いぜ。しかし"ヒクソス"か、まさか"鬼影"や"英雄"そして"リアルぬらりひょん"が現役時代に協力し封印された連中じゃねぇか。これはこれで面白くなってきた。)」
◆◆◆
翌日、藤孝と かなめは目を覚まし、4人は学園に戻ってからのメディカルチェックも受けることになったが、翌日には真と藤孝、かなめは授業に戻れるということらしいが春輝は待って欲しいと言われた。
「どういうことなんだ?なんで春輝だけ……ん?どうした春輝?」
「いや、何か胸がビリビリするっていうか……まぁ疲れだろうな。」
「なら、俺と春輝は先生達に話をしてくる。2人は休んでいろ。」
春輝は何かの痛みに表情を歪めて胸を抑えつつも大丈夫と言い、真と共にアサギ達に北海道で起きた事を説明し、特にエジプトの魔族陣営ヒクソスの情報をついて話すと、アサギと時松、将忠、源一は渋い顔をした。
「ヒクソス。ブラックですら手を出そうとしない謎の組織。しかも目的が魔界に繋がるゲートとなると……。」
「獅子堂の中忍、芳陰の中忍を斥候として100人出して調べさせるか。それなら情報も得られる筈だ。」
「そうじゃな。源さん、わしらは外部に口添えをしてみよう。」
「そうじゃな。」
「ありがとうございます、皆様。」
「あの!俺もなにか出来ることありませんか!?影分身とか陽動とか出来ます!」
春輝がそう言うとアサギと時松がやれやれと言ったように頭を抑え、将忠も快活に笑う。しかし、源一だけは違った。
「春輝くんや。お前さんにして貰うことは何もない。いや逆じゃな、
源一の言葉に春輝は目をしぱしぱさせアサギも首を傾げた。
「源一さま、何故春輝になにもするなと?」
「この子の為じゃ。このまま任務や戦闘をすれば……この子は忍を続けれ無くなる。」
源一の言葉にアサギたちはその理由を尋ねる前に、部屋の扉が開き医療関係者が入室し源一にある紙を渡して退出した。その紙を見て源一の表情は更に厳しくなる。
源一のただならぬ様子に春輝は首を傾げると、源一はそれを春輝に渡し見せると彼は驚いて目を見開く。
真もその紙を春輝から受け取ってみると、それはカルテになっていて、そこには春輝の体の状態が記されていた。
「これは……どういうことですか?」
「宗一郎がのう、お前さんらの事を調べたんじゃ。そうしたら、春輝くん……キミの体は無茶な任務と戦闘が続いたせいでボロボロになっていたんじゃよ。無論わしらは医者ではないから見間違いと思い、今回の件で君たちがメディカルチェックを受けると聞いて担当医師に無理を言って春輝君、君だけ他の三人より精密に見て貰ったんじゃよ。じゃが、あやつの予想は正しかったようじゃ、カルテを見る限り特に心臓や周辺、全身の筋肉がズタズタじゃ……本来なら忍を続けられるわけない程の重傷じゃ。」
「心当たりはないか?なにか無茶をしたとか。」
「そ、それは……!!」
春輝は少し考えてある力が理由だと分かった。……“外し”であった。
“外し”とは、脳のリミッターを意図的に外すことで、潜在能力を解放し、パワーとスピードを向上させる技である。
本来、人間は脳にリミッターをかけることで力をセーブし、身体の崩壊を防いでいるが春輝に外しを教えた呉一族は1300年にわたる品種改良によって、それに耐えうる肉体を手にしており、リミッターを解除することで人知を超えた力を発揮する。
引き出せる潜在能力の解放率は個々の資質に依存し、50%解放できれば優秀な部類に入り、春輝は40%までしか開けていない。さらに言えば春輝の体は訓練したとはいえ、“外し”に長時間は対応できないのだ。
これを無理に上げれば、脳と体が壊れてしまうのだが、春輝の場合、脳は無事だったが肉体の方がギリギリのところなのであった。
「……俺、これからどうなりますか……?」
覇気を無くして俯く春輝が尋ねると、源一が返した。
「戦闘は極力控え、尚且つサポートしながらやることをススメるぞ。色々思うじゃろうが若い命を粗末にするなよ。」
源一の言葉に春輝はただ俯くのであった……。
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次回、どうなるんでしょう!!?