学園に戻った春輝は獅子堂 源一の言葉を受け止めきれなかった春輝は、自分の体の状態を知ってもらう為にアサギ達の前で“外し”をやることにした。
「春輝、止めなさい!源一殿が危険だと!」
「いやでも、本当に今までなんとも無かったし!それに見てもらえれば分かります!すぅ……はぁっ!!」ドクンッ!!
不知火が止める中、春輝が“外し”を使った瞬間、肌の血色が変わっていき、“外し”の状態になり、動きを確認してみると痛みを感じていなかった。
「ほら、俺なんとも無いですよ!任務d『ドグンッ!!!!!!』んぐっ!!?」
「「春輝!!?」」
春輝は突然胸に走った強い痛みと呼吸も出来ないほどの息苦しさ、さらに体も強く痙攣し出して、その場に倒れ込んでしまい、アサギと不知火が駆け寄ると春輝は意識を失い、春輝はすぐに病院に運ばれ、藤孝や かなめよりも精密なメディカルチェックを受けたのだが……春輝の身体は既にボロボロになっていた。
体の筋繊維はズタズタになっており、特に心臓の血管が破れかけていて、あと少し遅れていたら血管が切れて死んでいたらしい。脳は幸いにも無事であったが、春輝は絶対安静を言い渡された。
そんな中で春輝は天井を見上げていたが、中で九喇嘛と話していた。
「(九喇嘛、俺のこの状態……まさか知ってたのか?)」
【……ああ、知っていたさ。あの“外し”って奴の危険性もな。あんな技、使い続ければ死に急ぐようなもんだ。】
「(それは……!大体加減とか分かんないし!教えてくれたって良いだろ!?)」
【ふんっ!教えた所で無茶をするんだ。たまには痛みで覚えるんだな。……それと覚えとけ、お前は知らんだろうが、お前を想ってる奴は案外多いんだ。】
九喇嘛の言葉の意味が分からない春輝は首を傾げるが、九喇嘛も多くを語ろうとはせずに眠ってしまい、目を覚ますとそこは病院のベッドの上であり、近くには ゆきかぜときららがいた。
「お兄ちゃん!良かった、目が覚めたんだね!」
「全く、2日も意識戻らなかったのよ!凜子や藤堂、澄香達も来てくれたんだから。まぁ他にも来たがってた人もいたけど来れなくて。」
「そっか、ありがとう……。っぐ!」
「だ、駄目だよお兄ちゃん!まだ寝てないと!」
身体を起こそうとした瞬間、胸に鈍く重い痛みを感じる春輝。ゆきかぜが駆け寄って春輝を支えてベッドに座らせる。そんな中できららが春輝が寝てる間のノートを纏めた物を渡され、貸し一と言われて春輝は苦笑する。
その中でゆきかぜがある話題を口にした。
「お兄ちゃん、私ね?ヒクソスって言う組織の戦力調査に行く事になったの。達郎や他の人たちも一緒に。」
「私は凜子や他のみんなと一緒に敵の威力調査をすることになったの。」
「ゆきかぜ、きらら、大丈夫なのか?」
「大丈夫!お兄ちゃんは私たちを心配しすぎだよ!何かあれば撤退を優先するように言われてるもん!」
「後は私たちに任せておきなさい。上手くやってやるわ。」
生き生きとそういう2人に春輝は、胸の中にズキッと疼くものがあり、2人の顔を見ているのが辛かった。
「そう、か……。2人とも大変だと思うが頑張ってくれ。」
「うん!お兄ちゃんも身体治して早く来てね!」
「来なかったら承知しないわよ♪」
2人はそう言うと部屋を出ていき、人の気配が無くなると春輝はベッドを叩いて俯くと、そのまま涙を流した。
春輝は……何も出来ない現実、再び死ぬかもしれないと言う恐怖がある中で大好きな忍を続けられないという大きな絶望が春輝を包んでいたが、今の彼には何もなかった。
「(俺、もう何も出来ないのか……?大好きな忍を続けられないなんて……そんなの、そんなの、嫌だ……!!)」
「う……っ!うぅ……っ!」
涙を流す春輝、そんな中で1人の人影が春輝に歩み寄ってきた。その気配を感じて顔を上げるとそこには千手 扉間が立っていた。
「身体を壊してしまったか。医者を幻術にかけて知ったがかなりの重傷らしいな。」
「……扉間、さん、どうしたんですか?」
扉間は壁に寄りかかると、春輝を見ながら話し掛けた。その目には同情や見下すと言った物は一切なく、純粋なものだった。
「春輝、わしは貴様に言ったな、“貴様に忍の才能は全く無い”と。だが貴様は言ったな、“忍が好きで、それを極めたい”、と言っていたな……現に貴様はわしを認めさせた。」
「……。」
「ヒクソスとかいう奴らについては書で調べた。化け物揃いで恐らく普通に戦えば勝てぬかもしれん。お前の妹や想い人、家族、友も死ぬぞ。」
「……っ!」
「ただ俯いていれば誰かが助けてくれると思っているのか……。その程度の気概ならば貴様につけた修行は無駄であったな……そのまま俯いていろ。」
扉間はそれだけ言うと瞬神の術であっという間にいなくなり、残された春輝は力なく項垂れていた。
対魔忍を、忍を続けられない……そんな現実に春輝はただ何も出来ずに涙を流していた。すると、ガラガラッと扉が開いて人が入ってきた。誰が入ってきたかと顔を上げると、そこには翔馬が立っていた。
「翔馬……。」
「源一様から入院したって聞いてな。さっきの白髪のおっさんとの会話を聞いてた。」
「そうか……。何のようだ?」
「立て、春輝。」
翔馬が春輝に立つように言うと、春輝はゆっくりと立ち上がる。
すると、翔馬は……。
「この、ボケっ!!!!」バキィッ!!!
「ぐぶぅ!!?」
翔馬は春輝を殴り飛ばした。力を込めて全力で春輝を殴り飛ばし、倒れる春輝は訳が分からないと言った様子で翔馬を見上げると、翔馬は春輝の襟首を掴みあげる。
「なんだその情けない面は!!?なんだその様は!?らしくねえんだよ馬鹿野郎!!」
「俺は……。」
「お前の事は聞いてるし、どういう状態かも知ってる!!だけどな!!そのまま落ちぶれてどうするんだよ!!てめえの……忍になりたいって覚悟はその程度か!!?そんな程度のやつに俺は負けたのか!!!?」
「翔馬……。」
「前向きのバカならまだ可能性はある。けどなぁ!!後ろ向きのカはバカは可能性すらゼロなんだよ!ケガとかそういうのを言い訳にするんじゃねぇ!!」
翔馬の言葉に春輝は俯いていた顔をあげていく。
「辛ければ泣いたって良い。辛ければ泣いて忘れろ!“奇跡”を待つより、捨て身の努力をしてみろ。俺は……また全力のお前と戦いたいんだ。その約束を忘れるな。」
翔馬はそう言うと部屋を出ていき、残された春輝は涙を流していた……。
◆◆◆
翔馬Side
「(春輝、必ず帰ってこい!!)」
春輝を殴った拳が痛む。けど、あいつは必ず立ち上がって戻ってくる。俺はそう信じてる。
病室に戻っていると、賢丞が壁に寄りかかっていた。
「よぉ、中々熱いじゃねぇか。」
「見てたのか?」
「まぁな。けど、春輝なら……あいつなら立ち直れるさ。そして多分今以上に努力してお前らの、獅子堂を追い抜くことになるだろうぜ?」
「分かってる。けど、そうじゃないと意味がない。」
俺は病室に置いておいたスマホで宗一郎様に連絡した。
「宗一郎様。」
『なんだ翔馬、今「“乙女崎”の家に連絡をしてください。」なに?』
「春輝は無茶してでも治そうとします。だから、最高位の医術を持つあの家に頼んでほしいんです。」
『……分かったよ。今から連絡する、明日には到着すると思うから待っててくれ。』
「ありがとうございます!!」
春輝、待ってるからな……。