畜生……ガチャなんて信じない。
翌日、春輝は朱愧の指導の下で“水だけ”の形態変化と性質変化を教わっており、朱愧はその様子をじっくりと観察していた。
形態変化と性質変化を知っていた春輝は、溢れそうになる水の球を螺旋丸の要領で乱回転させ、崩れるのを押し留めており、朱愧感心したように頷く。
「(ほう?水を球体に押し留めるのは中々上手いじゃないか。
普通なら形造るのに神経を使うのだがな……一応これくらいは出来るか。)
よし、よく出来てるじゃないか。中々良い方だぞ。それを今度は1分保て。」
「分かりました、朱愧さん。」
そうして春輝は水の球を動かさないように精神を統一していたが、前の夜に暁冥に言われた事をふと思い出した。
『そのみんなってのは、どういう線引きなんだ?』
暁冥の言葉を思い出した春輝は、水の回転が弱まっていくのに気付かずに考えていた。
「(線引き……。何を護りたいかっていう線引き……よくよく考えてみればあんまり思い付かなかったなぁ。そもそも俺は、ナルトが好きで忍者になってそこからゆきかぜ達を護りたいって事になったんだよなぁ。)」
「おい?どうした?」
「(その中で線引きなんて考えたこともないし、俺としては誰か個人を護りたいからって訳じゃない。母さんやゆきかぜ、凜子や達郎くんとか関わった人を護れればそれで良いわけで。)」
「おい、春輝!」
「……え?朱愧さん?」
「何してんだ。ボケッとしやがって。」
「え……あ!す、すみません!!」
春輝の足元には水浸しになっており、それを見た朱愧がはぁ、とため息を吐く。
「急にどうした?さっきは上手くいってたんだぞ?」
「……あぁ、その。少し考え事しちゃって……。あの朱愧さんは“大切なモノ”と“そうでないモノ”の線引きってどうしてるんですか?」
「あ?“大切なモノ”と“そうでないモノ”の線引き?」
「はい。何かあるなら聞かせてほしいです。」
春輝の問い掛けに朱愧は腕を組むと、空を見上げる。空には白い雲が流れており、実に穏やかである。すると、朱愧は静かに語りだした。
「俺ぁ、暁冥様に古くから使える鬼の一族でな。
あの人が若い時から一緒に過ごしてるから、あの人の近くで色々なモノを見てきた。だから俺にとっての“大切なモノ”はあの人と百愧龍宮の仲間とこの里だ。
逆に“そうでないモノ”は俺らに仇なす連中だ。」
朱愧のまっすぐな眼に春輝は頷くと、朱愧は後ろに振り返る。
「お前にもそういう“大切なモノ”と“そうでないモノ”が早く解るようになって貰いたい。お前は暁冥さんや真琴お嬢、薫が目を掛けたんだからな。」
「は、はい!」
春輝は返事をすると、昼食を食べに行ったのであったが、その中で春輝は考えていた。
「(俺にとっての“大切なモノ”と“そうでないモノ”……か。)」
◆◆◆
その夜、日本の沿岸地帯……そこには米連の施設があり、そこを警備していた米連の関係者達が駐屯する施設があり、そこでは表向きは新薬の研究などをしているが、裏では武器などを造っては他国に売っていた。
現に研究者らしき者達がいる区画とそれ以外の者達がいる区画があるのだが、それを長身で隼を模した被り物をし、手足にハヤブサの鳥爪、背中には翼を生やし、金の帯に黒の腰巻、首と手首に金のアクセをしている男が空から眺めていた。
「彼処ですか。では、さっさと落としましょうか。」
ドゴォォォォンッ……!!
施設の壁を切り裂いて中へと押し入って来た男、その瞬間に警報が鳴り響き建物の内部では騒ぎになるが男は悠々と建物の中を歩いていくと、マシンガンを持った米連の兵士達が男の前に出て構える。
「止まれ!!止まらなければ射つぞ!!」
「ふん。そんな玩具、この私に当たるとお思いか?」
男が兵士達を鼻で嘲笑すると、兵士達はその態度に憤り男に向かってマシンガンの引き金を引く。その弾丸は特殊鉄鋼で出来ており、厚さ20mmの鉄板を貫通する事が出来る威力を持っている。
バババババババババババババ……ッ!!!!
そしてそんな弾丸を放てるマシンガン、約10丁が自分に向かって弾丸を放ったというのに男は笑みを浮かべたまま翼を広げると、それで身体を覆ったのである。
その翼の羽の一枚一枚がマシンガンの弾丸の雨を全て受けた。全ての弾丸を射ち尽くしたはずなのに男には手傷1つ与えられておらず、静かにその場に佇んでいたのを見た兵士達は言葉を失った。
「な、なんだあいつ!?」
「嘘だろ!?特殊鉄鋼弾だぞ!?」
訳がわからないとばかりに驚く兵士達を余所に、男は翼を広げるとその羽を兵士達に向かってお返しとばかりに飛ばしていく。すると、その柔らかそうな羽は兵士達の胸や頭を貫通してズタズタに破壊していく。
羽によって身体に穴を開けられた兵士達は、その場に倒れて物言わぬ肉塊となり、それを見た男……フェイザーは小首を傾げる。
「おかしいですねぇ?噂に聞いた対魔の力を持つ者達とは思えぬ弱さ……。まさか、私は場所を間違えてしまったのでは……ん?」
フェイザーが何かが擦れる音を聞きつけ、その場所を向くとそこには瀕死ながらも逃げようとする兵士の姿があり、それを見たフェイザーはニヤリと嗤って歩み寄ると、兵士の頭に足を乗せて力を込める。
「っぐ……!!?ぁあ……!!」
「生きているなら聞きたいことがあります。魔界への門についてと対魔の力を持つ者達について聞きたいので、答えてください。そうすれば……ペロリ。」
「ひぃ……!!!!?」
フェイザーから感じたおぞましい何かに兵士は震えながら彼を見て従い、ありとあらゆる事を喋ってしまった。
その後、フェイザーは研究所の職員や兵士達の首を切り裂き、もぎ取り、まるで象徴とばかりに研究所の前に飾ったのであった……。
◆◆◆
その頃、春輝は用意された客間で寝ているとスッ……と、襖が開き何者かが入ってきたのを感じ、その音で目を開けた春輝は背後の気配に狸寝入りをする。
すると、その人物は構わずに春輝へと近付いていき、春輝の布団に入ってきたのだ。
「だ、誰?!」
「やっほ、春輝♡」
「き、きらら!?」
入ってきたのはきららであった……。
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