センザキ市……首都圏有数の犯罪都市。
元々は東京のベッドタウンとして発展していたが、戦争難民の増加により治安が悪化し、魔族や犯罪組織が流入して一気に闇の大繁華街へと成長を遂げており、また、地区内に貿易港が存在しているため、戦略上重要拠点として各組織間の抗争は非常に激しい。
現在はギャングスターこと金崎 銃兵衛が町の一角を支配しているが、今そこにいる筈の銃兵衛は重傷を負い、医療施設にて生死の境を彷徨っており、今そこには姿を見せない“敵”に怯える人々の暮らすゴーストタウンとなっていた。
そんな中で銃兵衛とその一派、そしてセンザキ市に潜入調査をするために忍んでいた対魔忍の部隊は全員が
その調査に出るためにアサギに呼ばれたのは春輝を含む“探索部隊”。彼らにセンザキ市へ向かうように命じた……。
◆◆◆
「初めまして、
黒髪に紫色の瞳をした黒い対魔スーツを着た大人びた女子、上原 朱乃が丁寧にお辞儀をする。
彼女は五車学園を卒業したばかりのルーキー対魔忍で獅子堂 宗一郎の側室の一人であり、今回は宗一郎とアサギ、源一から直接指名された人物でもある。
「はい、宜しくお願いします。上原先輩。」
「宜しくお願いします!」
「……マジかよ……。」
「この人が噂の上原先輩……。あのヴァンパイアハンター養成機関、隼人学園の理事の親戚で、かなりの実力者って聞いたけど……。」
「お褒めに預かり光栄ですわ、藤堂くん。」
探索部隊に指名された春輝、ゆきかぜ、舞華、藤孝だが何故だか舞華は何処かげんなりした様子であり、春輝は首を傾げて尋ねる。
「神村さん、どうした?」
「いや、なんつうか「神村さん?」は、はいっ!!?スンマセン!!?」
春輝の背後に咄嗟に隠れる舞華に驚くが、朱乃はただ微笑むだけであり春輝達は首を傾げる。そんな中でアサギが今回の任務の詳細を話し始める。
「みんな、今回はセンザキ市へヘリで向かうわ。センザキ市の何処に対象が潜んでいるか解らないから、勝手な行動は最小限にするように!」
「あの、何で俺を見るんです?アサギさん?」
指を指される春輝は若干困った風に尋ねると、ゆきかぜ、藤孝はため息を吐く。まるで気付け、と言わんばかりな目を向ける。
そんな中で舞華が1枚の札を渡してきた。
「神村さん、これは?」
「その、念のために作った御守りだ。……持っとけ。」
「……ありがとう。」
「お、おう……。」
照れた様子で春輝を見る舞華に朱乃は優しげに微笑む。
彼女の姉である神村 東とは朱乃も知り合いであり、舞華の事はもちろん知っているが、過去に朱乃に散々弄られた舞華は彼女を苦手としているが、敬意は持っているのだ。
「さぁ、行きますよ。時間は19時00分にセンザキに着く予定です。」
「「「「はい/おう!!」」」」
5人はセンザキ市へとヘリで向かうのであった。
◆◆◆
ヘリでセンザキ市に向かう機内の中、呪物のこのことが気になるのか春輝が上原 朱乃に聞く。
「あの上原先輩。」
「なんでしょう、春輝君」
「呪物のことなんですけど、アサギ様から説明を受けたのですが呪物の呪いは一般人でも扱えるというのは本当なんでしょうか?‥‥先生たち言葉を疑う訳じゃないですが、やっぱり信じがたいというか、何というか。」
今まで魔族との戦闘を経験したことがないため、こういったオカルトみたいなことに関してはイマイチしっくりこないようである。その問いに朱乃は少し苦笑いしながら答える。
「ふふふ、皆さん魔族との戦闘が中心ですからそうなりますわね。……端的に言えば使えます。」
「でも、そういった物は基本的に霊力といった特別なものがなければ使えない、というイメージがあるのですが。」
「呪物を使う際、そういった特別な力は必要ありませんの。……必要なのは相手を“妬み”、“憎悪”する負の心。」
「“負の心”、ですか?」
「そう、他人の優れた面や成功を嫉妬、妬み、憎悪する人間が誰にでも抱く心の闇。それさえあれば呪物は反応し持ち主が殺したい相手に呪いを掛け殺しますわ。なぜなら呪物はそういった物だから、人を不幸に貶めたい念さえあれば特別な才能は必要ありません。」
それを聞いた一同は顔面蒼白になる。なぜなら対魔忍である自分達にもそういった面は無縁でないからだ。下手をしたら呪物を回収した時に自分たちの負の心に反応し呪いが発動して仲間たちを危機に晒すのではと不安に駆られてしまっていた。そのことを察したのか朱乃は皆を安心させるように言う。
「安心してください。呪物が反応するのは本当に他人を不幸にしたいという念に反応しますので軽い妬みや嫉妬心には反応しませんわ。」
その言葉を聞いた一同は安心したようで機内の張りつめた空気が軟らんだ。それを見計らい朱乃は腰にあるポーチから御守りの形をした護符を二つ取り出し、ゆきかぜと藤堂に差し出す。
「あの、これは……お札、ですか?」
至極真っ当な質問に朱乃が答える。
「これは身代わり護符と言いまして、一度だけ呪いから護ってくれる護符ですわ。」
「身代わりということは呪いを受けたら、これが代わりに呪いを受けてくれるということですか?」
その問いに朱乃は肯定するように頷き答える。
「呪殺対策で作りまして低級の呪い程度でしたら完全に無効化することができますわ。ですが、強力な呪いは一度しか効果がありませんの。……時間があればもっと強力な護符を制作できたのですが。」
無念そうに答える朱乃。しかし誰もそのことで不満不平は漏らさなかった。一回だけとはいえ呪殺から自分たちを護ってくれるのだ、漏らしたらそれこそ罰が当たるだろう。そんな中でゆきかぜが護符を見た後に舞華の方を見る。
「この護符、なんか神村セ・ン・パ・イがお兄ちゃんに渡したのと似ているけど気のせい?」
ジト目で春輝と舞華を見る。兄である春輝は何でそんな目で見られているのか分からず首を傾げ、舞華は顔を赤くしてソッポを向いていた。
その様子を見た朱乃はいたずらっ子の様な笑みを浮かべてなんで春輝の護符と似ている理由を明かした。
「この護符を作るのに舞華ちゃんも手伝っていただいたのですわ。こういった特殊な護符は四人分とはいえ作るのに時間が掛かりますわ。でも手伝ってくれたおかげで早く呪殺対策用護符が出来上がりましたの。でも、率先して一枚作ってましたけどね……ふふっ。」
自分の指導の下、護符を作る舞華の姿を思い出したのか意味ありげに微笑む朱乃。
「ち、ちょっと!姐さんそんなことを言わないでくれよぉ~。」
恥ずかしくなったのか、舞華は抗議するが当の本人はニコニコするだけであり、それを聞いたゆきかぜは舞華が身代わりの護符の制作を手伝いに行った本当の理由を見抜いたらしくさらにジト目で舞華を睨み、藤孝も察したのかニヤニヤしながら肘で春輝をつつくが等の本人はなんで舞華が顔を赤らめているのかイマイチ理解していないようであった。
そんな様子を微笑みながら見ていた朱乃が、ポーチから身代わりの護符とは違う札を四人に手渡す。
「この札は一体?」
「この札は回収した呪物を簡易的ですが封じる札です。これを呪物に貼れば効力が続く限り呪いの発動することを封印することができますわ。……あくまで一時的ですが。」
「一時的というとどれ位、効力は続くのでしょうか?」
「そうですね、私の見積もりでは約五日でしょうか?効力が続いている間に本格的な封印を施しますので安心してください。」
最後に朱乃は一同を見て告げる。
「アサギ様も皆さんに言っていましたが、単独行動は禁止でお願いいたしますわ。恐らく敵は暗殺に特化していて呪殺された方々に共通していることは仲間とはぐれてしまっていた、もしくは単独行動を取っていたという点です。……単独で行動してしまったら間違いなく狙ってきますわ。必ず、部隊で行動をしてください。」
「そうよ、お兄ちゃん。単独行動は絶対、ダメだよ。」
「ゆきかぜちゃんの言う通りだ、単独での追跡も駄目だぞ、春輝。」
「そうだぜ、春輝。」
皆が口々に春輝に言う。それを聞いた春輝は心外そうな顔をして反論する。
「お、お前ら俺を何だと思っているんだ。そりゃ、時々単独で追跡や行動をしてしまうことはあるけど、そこまで言われるほどやっていないぞ。」
春輝の言い分を聞いたゆきかぜたちは呆れ気味に春輝を見た後、一斉にため息を吐き、その様子を見た朱乃は苦笑いをするのであった。
◆◆◆
数時間後、センザキへと着陸した5人はあまりに静かすぎる市内を調査していた。
「気味悪いほどに静かだな。人どころか鳥もいないぞ。」
「どうなってるの?」
「薄気味悪ぃ……。」
「「……。」」
5人が市内の様子を見る中、春輝の中にいる九喇嘛はその異質な気配に気づいていた。
【臭ぇな。血の臭いと魔族どもの臭いがしやがる。……おい春輝。この場所、すでにいるみたいだぜ?】
「(既にいる……。!ありがとう九喇嘛!)上原さ───」
春輝が情報を伝えようとした、まさにその時であった。
「うわあぁぁあああぁぁぁあ!!!!!?」
「「「「「!!!?」」」」」
けたたましい悲鳴が響き渡り、春輝達は悲鳴の下へと走って向かっていく!
すると、そこでは灰色の肌をした猫背になっている見た目は180cmぐらいの男が先に来ていた仲間の心臓らしきものを握りつぶしかけていた!
「っ!!お前!」
「ほう?対魔忍ですか……フェイザーとダンクを倒した者達。数が多いですね。ここは退きましょう……。」
「逃がすか!!」
「って!?春輝待て!!」
春輝が男の後を追おうとしたのを見て藤孝が止めようとしたが、男はさらに煽ろうと投擲剣を数本投げる。春輝はそれを鋼遁と武装色で固めた腕で砕きながら後を追ってしまうのであった。
「あの馬鹿!後を追うのは止めろっていったのに……!」
「オレらも追うぞ!あと、あいつまだ生きてる!」
「分かってる!」
「あらあら……これはちょっと、お仕置きかしら?」
◆◆◆
市内を走って男を追う春輝を見て、男……ヒクソスの幹部ザヒは笑みを浮かべる。
「(あやつ、我を追い詰めているつもりですか?哀れな……ここが貴様の墓場です!)」
ザヒは僅かに春輝に向かって悪魔と自身の右腕と交換して得た“悪魔の腕”を向けると、そこに現れたのは春輝の心臓であり、それを掴むと笑みを浮かべて握り潰したのであった!
「(死ね……“夢幻心臓”!)」ぐしゃっ!!
「あぐっ!!?(これは……──)」
ビルの高所から落ちていく春輝を見たザヒは足を止め、振り返ったが……。
「螺旋連丸!!」どぎゅううううううっ!!!
「っ!!!?」
目の前に迫る蒼い2つの乱回転する球体を頭と心臓に受け、潰されて命を落とした。
自身の呪いの腕で呪殺した。が、実際は春輝が任務に赴く前に神村舞華が苦手な先輩である上原朱乃に習って作った呪いから身代わりできる護符(御守り)を貰っていて難を逃れており、即座にザヒを追うと、螺旋連丸という新技でザヒを倒した。
「神村さんの御守りで助かった。こいつの腕、いったい【その腕に触るな。それが呪物だ。】(呪物?………………この腕が!!!?)」
【あぁ。恐らく、こいつは悪魔と契約してこの腕を得たんだろう。かなり危険だ。腕だけわしのチャクラで纏って切り取れ。】
「(わ、分かった!ありがとう九喇嘛!)」
そして、春輝が九喇嘛のチャクラで腕をガードしてザヒの腕を切り取り、木遁で作ったケースにしまい、朱乃から貰った札を貼る。
「ふぅ……。時貞先生から聞いて、九喇嘛のお陰で助かった。それにしても皆とはぐれちゃったな、急いで……………………!!?」
春輝が足を止めた。
背後から凄まじい殺気を感じたからであった。
そして、その瞬間に背後から己の首に迫る刃から身を翻すと、背後にいるその殺気を放っていた相手を見る。
「フェイザー、ダンク、そしてザヒ……私の仲間達をよくも……!」
「誰だ、あんた…………?」
春輝が新たな敵に尋ねるとエジプトの神、アヌビス神の様な容姿をした大柄な筋肉質の男は剣の切っ先を春輝に向けて名乗る。
「我が名はマハン!!!フェイザー、ダンク、ザヒの仲間だ!!任務帰りの駄賃だ!貴様の首、切り取ってくれる!!!」
新たな敵が春輝に迫るのであった……。
遅くなって申し訳ない!
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