首都圏外郭放水路から徒歩で丸一日以上かかる地中300メートル先にある闇の地下都市、ヨミハラ。そこはかつて春輝とバルトが最初に出会い戦った場所であり、ノマド首領エドウィン・ブラックから統治を任されていた幹部リーアルが春輝とバルトの戦いに巻き込まれ(本当は違う)死亡した後、二人の戦いの余波で一部の地区が廃墟と化していたが後任の幹部が復興させ統治していたが管理者不在の一時の混乱を利用し台頭した天堂 数馬と彼の経営する歓楽施設「グリードハウス」とヨミハラの主導権と利権を巡り争っていた。
しかし、日本を占領しヨミハラにある魔界に繋がるゲートを確保するため拠点作りをしようと入国したマハンとザヒの部隊によって天堂とノマド幹部そして双方の部下達は討たれたのと、無数に存在していた犯罪組織を壊滅させヨミハラは今やヒクソスの拠点となってしまったのだ。
さらにヨミハラに異なる魔族……ヒクソスがいるという報告を聞いた凜子、門下生の穂村 奏、針使いの八雲 玲、毛遁使いの櫛延 澄香、そして獅子堂からの援軍が捜査をしていた時、その部隊と遭遇し戦闘になり、初めはマハンの剣術に圧されながらも善戦していた。
しかし、5人はマハンの持つ力によって忍術、体術、武器を看破され、捕らえられてしまい、今はヨミハラにある広場に力を封じられて磔にされており、さらに凜子達を助けようと出立した10人編成の救出部隊もマハン1人に倒され、武器を奪われ、磔にされた凜子達には何もできなかった。
「(奏、八雲、櫛延……すまない、私が油断したせいだ。あんな、あんな力を持つ者がいるだなんて……くそっ!!)」
そんな中、ヨミハラに続く地下通路を駆けて進んでいる一団がおり、その戦闘を行くのは暁 桜牙、ゆきかぜ、真、薫、そして春輝の5人であり、5人は凜子救出の部隊としてヨミハラへと向かっていたのである。
「(凜子、澄香、待っててくれ!)」
その時、春輝は天舟の言葉を思い返していた。
『アサギさん達も所詮は自分達が上から責められるのが怖いんだよ。けどよぉ、仲間が大切なら行くべきだろ?仲間を見捨てるのが賢いと思うか?無惨に殺されたり、犯されて心が壊れた後で後悔するよりは良いと思うがな。』
「(何なんだ?何であいつの言ったことが頭に引っ掛かるんだ?今は任務に集中するんだ!)」
「もうすぐヨミハラだ。みんな、気を抜くなよ!」
「「「「はい!!」」」」
5人はまっすぐにヨミハラへと向かって進んでいったが、なぜ春輝が参加しているか……それは少し時間を遡ること6時間前の事であった……。
◆◆◆
春輝はゆきかぜに呼ばれて理事長室へと向かった。するとそこには芳陰 真、芳廼 薫の2人と暁 桜牙とアサギ、そして獅子崎 万太郎と獅子堂 時貞がおり、困惑する春輝を余所にアサギが救出部隊への合流、および凜子の救出を命じたのだ。
『アサギさん!それ、俺行っても良いんですか?!』
『本来ならあなたを参加させる訳にはいかない所だけど……今回は特例中の特例よ。救出部隊は全滅、なおかつ敵の能力も不明ではあるけど、このまま何もしないわけには行かない。そこで暁先生を隊長に真、薫の2人と後2人を選抜しようとしたのだけど、そこへゆきかぜが駆け込んできたの。あなたと自分を救出部隊に加えてほしいってね。』
『それに芳陰、芳廼からも推薦があったんだ。これは本当に特例……。春輝、お前の任務は秋山達の救出だ。例え戦闘になっても無茶をするな。分かったな?』
『はい、はい!!ありがとうございます!!』
こうして春輝も救出部隊の一員として向かうことになり、用意を済ませてから向かうのであった。
「ゆきかぜ、ありがとう。情けないな。」
「情けなくないよ!私がお兄ちゃんと一緒に凜子先輩を助けようと思ったの!」
「春輝、お前は周りに頼れ。俺も力を貸す。」
「私も手伝うよ!」
「真、芳廼さん、ありがとう。」
「……もうすぐ着くぞ!」
ヨミハラへと着いた5人、ヨミハラの中は静かで人どころかネズミもいない様で、正しくゴーストタウンとなっており、その静けさに不気味に感じていたが、5人は静かに凜子達を探していた。
その中で真は砂の第三の目で、春輝は見聞色で探していると……入り口から離れた広場で凜子達の気配を感じ取り、そこへ向かうと、そこには凜子、奏、玲、澄香、部隊長の男が磔にされており、その前にはマハンが陣取っており、さらにその兵達、およそ100人が待機していた。
「っ!!」
「春輝、止まれ……!明らかに罠だ。あんな風に分かりやすくするか?」
「分かってますけど、先輩達がいるのに……!」
「これじゃまともに近付けないね。どうする……?」
「……みんな、俺に考えがある。」
薫の言葉に一同が困惑していると、春輝はある案を思い付いた……。
◆◆◆
マハンの兵士達が周囲を警戒する中、上から拳台の黒い玉が3つ落ちて来た。
その玉を見て兵士達は警戒していると、次の瞬間……バァァァンッ!!!っと玉が弾けて白い煙がもくもくと辺りを包み込み、騒ぎになる。
「なんだ、なんの騒ぎだ?」
マハンが凜子達の側を少し離れた瞬間、5人に春輝が駆け寄る。
「凜子、澄香!みんな!」
「んっ……?春、輝……!!?春輝、後ろ!!」
凜子の縄を春輝が外そうとした瞬間、背後からすでにマハンが迫ってきており、マハンはその剣で春輝の貫いたのだ。
「っ!!?は、は、春輝ぃぃぃ!!!!?」
「愚かな煙に紛れて単独で来るとはな、豪胆な事だがこの程度では……『ば、ばぁか』……なに?」
「……え?」
ボンッ!!と貫かれた春輝は煙となって消えたのである。
突然春輝が消えた事にマハン達が驚いていると、煙が晴れていき周囲が見えてきて、マハンが見たもの、それは…………。
「「「「「「さぁ!俺が相手だぜ!!」」」」」」
100人の春輝であった。
「これは……どんな技だ?」
「行くぞ!!」
「「「「「おおおおおおおっ!!」」」」」
春輝達は一斉にマハンと屈強な兵士達に向かっていき、100人の春輝に驚きながらもマハンも応戦していき倒していく。
「先輩!」
「ゆきかぜ!?芳迺も!助けに来たのか!?」
「もちろんです!よし外れた!」
「八雲さんと櫛延さんたちも大丈夫!」
「はい!お兄ちゃ〜〜〜〜〜ん!!今だよ!!」
「良し!風遁、大突破!」
どひゅううううううッ!!!
「くっ!?風か!!?」
猛烈な突風に吹き飛ばされていくマハンの部下と剣を地面に突き立てて何とか堪えるマハン。そんな彼らを尻目に春輝は分身達を消して、桜牙と春輝本体、そして真がゆきかぜ達に近づく。
「ゆきかぜ、みんな!行くぞ!」
「出入り口まで退くぞ!春輝!真!2人が殿をしてくれ!」
「はい!」
「はい!」
5人を砂の布団に乗せて運んでいくと出口まで向かうが、マハンの部下達が前方を塞ぐように立ち塞がる。
「しつこい奴等だ!」
「風遁螺旋手裏剣!!」
ギュオオオオオオオオッ!!ドガーーーーーンッ!!
『うわああああああっ!!?』
螺旋手裏剣によって吹き飛ばされる敵兵達、そして出口までもう少しといった瞬間、彼らの背後から斬撃が飛んできて、春輝と真が咄嗟に砂と土遁の壁で防ぐ。
その背後にはマハンがゆっくりと歩いてきており、鋭い殺気を漏らしながら向かってきていた。
「真。あいつ、かなり強いぜ。」
「そのようだな。実力は兄様や先生方と同等だな。気を引き締めていくぞ。」
「……この私を出し抜き、あまつさえ逃げ切れると思っているのか?だとしたら、ナメられたモノだなぁ!!」
「ゆきかぜは暁先生達と先に行け!」
マハンが全速力で春輝と真に向かっていく。
春輝は鉄扇“颪”を出すと風遁で、真も砂で襲い掛かるが、マハンは全てを容易く躱して行き、牙を向いて春輝達に斬り掛かっていく。
攻撃を避けていく春輝達だがマハンの砂であろうが、風であろうが、剣一振りで容易に切り裂いていくのを見て、春輝も真も渋い顔をする。
「どうした?この程度か?」
「はぁ、はぁ……!こいつ、かなり強いな。」
「確かに、これほどの剣技……見たこともない。これがヒクソスの幹部……たしかに強い。」
「貴様らは私が相手してきた中でも、それ相応の実力者だ。だからこそ手加減はせん。ここで貴様らに引導を渡してくれる。」
「っ!天狗!!」
春輝は咄嗟に颪を掴むと、大技を放つがマハンはそれを容易く切り裂くと春輝に接近して、蹴り飛ばすと倒れた春輝に足で踏みつける。
「ぐっ!?」
「春輝!」
真が助けに行こうとしたが、兵士達が壁となって邪魔をしており、ゆきかぜ達も応援に来れそうにはなかった。
マハンは春輝に剣を突き付ける。印を結ぼうとした瞬間、右腕を足で踏みつける。
「まずは貴様からだ。話に聞いたが貴様がダンクを葬ったそうだな?貴様を討ち、2人への手向けとする!」
「くっ!!」
「あの世で2人に詫びるが良い!!」
「「「「水城/春輝/くん/お兄ちゃん!!」」」
ダァンッ!!!
無情にも剣が振り下ろされたその時、マハンに黒い影が駆け寄り、マハンを蹴り飛ばしたのであった。
「ガハッ!!?……何者だ!?」
「え……!?」
「あいつは?」
「お前は……」
「嘘っ?!」
「「「「獅子堂 翔馬!!?」」」」
マハンを蹴り飛ばしたのは、怪我から完全回復した獅子堂 翔馬であった……。
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