ラムセスからの被害により、学園は甚大な被害を受けた。怪我人は軽傷が2名、重傷が10名、死者が1名。特にアサギは右腕と左足を骨折しており、しばらくは動けそうになかった。
その中で指揮を執ったのが、獅子堂、芳陰の両家であり、この間に長老衆が口出ししないように目を光らせており、政府もセクションスリーから支援が送られ、乙女崎家からも支援が来て、怪我人の治療が行われていた。
その中で春輝は1人俯いており、妹のゆきかぜも声が掛け辛そうな様子で頭を抱えている。
「……。」
「(お兄ちゃん……。)」
「(俺は奴に剣を向けられた時、確かに“死”を覚悟した……。忍なら当たり前なのに、俺は怖くなって動けなかった……。九喇嘛やみんなにどれだけ甘えてたかが、嫌って程分かった。)」
春輝はラムセスに剣を向けられた瞬間に、死を覚悟した。
そう、忍なら当たり前にある、その死を予見した時、春輝は自分がどれだけ温かったか……現実を見ていなかったかを理解したのだ。
自分は死なない。
自分は大丈夫。
心のどこかで勝手にそう思い込んでいた自分が恥ずかしさと虚しさが襲いかかり、どれだけ九喇嘛や自身の力を過信していたかが理解できて来たのだ。
「(九喇嘛……。ごめん、俺が、俺が油断してたばかりに……!)ひゃっ!?」
突然頬に冷たい感触を覚えて、甲高い声を挙げて上を向くと、そこには飲み物を持ってきた宗一郎がいた。
「よう。飲むか?」
「あ、ありがとうございます。あの……獅子堂、さん?」
「ん?何だ?」
「……助けてくれて、ありがとうございました。」
「気にすんな。俺は後輩を助けただけだよ。」
気さくに話す宗一郎に春輝は緊張してか、目を合わせられなかったが、そんな中で宗一郎が春輝に話し掛ける。
「怖かったか?」
「……!!?」
「あいつに剣を向けられて、死ぬかもしれないってのが分かって怖かったか?」
「……はい。凄く怖かったです。俺、沢山任務に出ていつの間にか“危機感”が欠落してたみたいです。自分が死ぬかもしれないって思いを忘れてました。」
「そうだな。“危機感”は大事だ……俺も昔、ある事件の時に死ぬって感覚を味わったが、その“危機感”を忘れたら意味がない。」
春輝は受け取ったコーヒーを握り締めて俯くと、宗一郎は頭を優しく撫でた。
「だが、お前は1歩成長できた。“危機感”を得ることが出来たお前は強くなれると思うぞ。その心さえ忘れなければ、お前ももっと上に来れると思うぜ。だから、俯かず、上を向け!」
「……はい、ありがとうございます!!ごちそうさま、すぐに指示を」
「あぁ、待て待て。春輝、俺からの提案があるんだが……。」
春輝は受け取ったコーヒーを飲み干すと、宗一郎はある提案をした。
「春輝、俺の技……覚えてみないか?」
◆◆◆
その頃、五車を数Km離れたとある街の路地裏。そこではラムセスが王との面会を行っていた。
『そうか、五車とやらを襲ったか。』
「は。しかし、壊滅には至っておりません。誠に申し訳無い。」
『よい、五車とやらを潰せば残りは西洋の魔のみ。貴様を信頼しているぞ、ラムセスよ。』
「は!我が王よ。」
ラムセスは空に浮き上がると、その場を離れて、何処かへと飛び去っていくのであった……。
◆◆◆
その頃、春輝は宗一郎に連れられて、獅子堂の屋敷へと連れて来られると、そこで短時間だけだが修行をする事になったのだ。
修行の内容は……。
・春輝の持っている力を“出来るだけ”、“全て”使うこと。
・忍術に頼らないこと。
・恐怖を捨てること。
この3つであり、春輝は木刀を渡されるとその違和感に気付いた。
「この木刀、なんか少し重いですね。」
「それは使用者が術エネルギー、対魔の力を使うと重くなる木刀でな。その木刀に上手く対魔の力を流してコントロールして行きながら、俺と稽古だ。最初に言っとくが……手抜きなんかするなよ?」
「っ!!はい!!」
そうして春輝と宗一郎の一対一の稽古が始まったのであった……。
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