春輝Side
「(エジプト魔族ヒクソスの王、アシュラフ……めちゃくちゃ強すぎる!)」
真達を退かせて、俺、晃、賢丞の3人でアシュラフに挑んで戦ったが、既に3人がかりで負けていて、全身がボロボロで満身創痍の状態だ。
それでも何とか戦っているが、かなりギリギリだ……俺達が戦える力の上限でいえば、これは勝てないんじゃないか?
「どうした?早く攻撃しないと不味いぞ?」
俺達を見て笑うアシュラフを忌々しそうに睨め付ける賢丞が得物である軍刀を構えるが、すでに彼も限界が来ているらしく、呼吸が粗くなっている。
「ナメるなよ!!春輝、やるぞ!」
「分かった!」
俺と賢丞はアシュラフに攻め掛かるが、アシュラフはそれをスプーンで防いであしらい、遂にスプーンで弾き飛ばされた。
「どうした?もう終わりか?」
「「はぁ、はぁ……!」」
吹き飛ばされ、床に叩き付けられた事で体に衝撃が走って、傷が開くのを感じる。……血が、止まらない。
【春輝、しゃんとしろ!!まだやれるだろうが!!】
「(九喇、嘛……。んぐぅ!!?)」
九喇嘛から叱咤されて何とか立ちあがろうとするも、ダメージを受けすぎて目眩がしてくる。賢丞も立ち上がれず、横たわっている。
「ふふふ、大したものだ……。ここまで力をつけた相手と戦ったのは初めてだ……。我が家臣達が敗けたのも頷ける。だが、これで終わりだ。」
「(くそっ!?くそっ!?体が、動か……ねぇ。)」
「終わりだ。
そしてアシュラフの手から放たれた強烈な雷光が俺達3人の体を撃ち抜いていた。
「「「グガァァアアアアアアア!!」」」
その雷の一撃は今まで受けたどんな攻撃よりも痛くて苦しいもので、俺の意識は暗闇の中へと沈んでいく。
「(奴には傷一つもを与えられてない……。)」
敵にはこちらを攻撃する余裕があって、こっちは隙が無いと攻撃もできないのに向こうはやりたい放題だ。……どうやったら奴に勝てる!?
『ボクが手を貸そうか?』
「(!?)」
精神世界に入ると、そこにはもう1人の俺がいて明らかに何やら愉しげにこっちを見ている。
『ボクが力が使えば、あんな王様簡単に倒せる。このまま君達が戦ったところで勝ち目なんてない。……だから、ボクに変わったらどうかな?』
そう言って手を伸ばしてくるもう1人の俺。
確かに、今の俺達じゃ勝てないっのが身に染みて分かる。けど……。
パァン!!!
『……何のつもりかな?』
「悪いけど、お前に変わったら“嫌な予感”がするんでね。悪いけど変わらないよ。」
『ふぅん、まぁいいや。ならせいぜい頑張りなよ……あ、そうだ。なら一つだけアドバイスな?』
「なんだ?」
『
「?見えているものが、全てじゃない?」
それだけ言うと俺は精神世界から戻ると、賢丞も晃も俺も目が霞んでいて指一本動かせずにおり、アシュラフはというと余裕な笑みを浮かべている。
「(ヤバい……。受けたダメージが大きすぎて指も動かせないくらいだ。こんなところで……。)」
こんなところで終わるのか……?
そう思うと悲しくて涙がボロボロと溢れる。悔しい、そして惨めだ……だけど、それももう終わるんだからいいんだ……そう思って意識を手放そうとしたその時だった
『春輝、春輝。』
「(?……この声は父さん)」
聞こえてきたのは死んだ筈の父の声であった。どうやら本格的にあの世に踏み込んできたらしい。すると、父は首を横に振って微笑む。
『まだこっちに来るな。お前には護りたい人達がいるんだろ。なら諦めるな、どんなに困難があっても乗り越えられない壁なんてないんだから。』
「(父さん……。)」
『頑張れ。お兄ちゃん。』
そう言うと声は聞こえなくなって、それと同時に俺は痛みを訴える体に鞭打って、何とか起き上がるとアシュラフは呆れたように言ってきた。
「なんだ、まだ動けるのか?中々にしぶといでないか。」
「まぁな、体力と回復力には……定評があるんだ、よ……!」
強気にそう返すが実際勝ち目なんてもうどこにも残ってないのは分かっている。それでもまだ生きているのなら諦めたくない。
精一杯やって負けたなら納得できる。でも、やられてないまま負けて死ぬのは許せないし許せないと俺自身が思う!
「んだ、よ。先に、起きてんのかよ春輝。」
「はぁ、はぁ……!バカ、野郎……この野郎……。いつの間にか、眠っちまったぜ。」
「2人とも起きたんだ。はぁ、はぁ……。まだやれる?」
「「もちろん!!」」
「上等!んじゃやりますか!!」
俺も賢丞も晃もボロボロだが、そのお陰か頭から少し血が抜けて冷静になれる気がする。
「ほぅ、まだやる気か?これ以上なにが出る?」
挑発するような笑みを浮かべながらアシュラフは尋ねてくる。それに対して、俺は笑顔で返す。
「やってやるさ……俺達には諦めない意地があるからな!火遁飛竜炎弾!!」
俺の放った竜の頭をした炎弾を打ち砕くようにアシュラフがスプーンを振りかぶる。そして今度はそのスプーンは炎を掬い取る。
「いい術だ、だがまだまだだな。」
「まだま、だぁ!!」
晃の拳撃と賢丞の軍刀をナイフとスプーンで防ぎながら攻めてくる。アシュラフに俺達は回避しつつも攻撃をし続けるが、全然手傷を負わせることができていない。
けれども、その中でアシュラフが苛立ち始めたのか、攻撃がどんどん雑になってきているのを感じる。
「ちっ!ちょこまかとっ!」
俺達を侮っているアシュラフは“見下している”から強い一撃を与えてくるが、それでも攻撃自体が粗くなっているのを感じる。
恐らく苛立ってるからだろうな。そんな雑な攻撃が当たるほど俺達は弱くはない。
「ほらほら、どうしたよ王様?手が止まったぞ?」
「ちっ!調子に乗るなよ童共が!!」
とうとう怒りを露わにして俺達に猛攻を仕掛けてくるアシュラフ。そんな中でも俺達は回避し続けながら攻めるのを止めない。
アシュラフは余裕そうにはしているが、その実はかなり焦っている気配が伝わってくる。
多分……ここまでやられているのは初めてなんだろうと何となく察する事ができるほどに。すると、アシュラフの体に身に付けている腕輪のエメラルドと座ってる玉座のエメラルドが光始め、それを見たアシュラフが晃と賢丞を吹き飛ばす。
「がはっ!!?」
「ぐっ!!?」
「2人とも!!?大丈夫か!?」
「平気だ!」
「問題なし!」
俺の言葉に頷いてくれる2人に、俺は自分の考えた案を伝える。
「よし同時に攻撃するぞ!」
「そいつは面白そうだ!」
「オウイエイ!」
俺達はそれぞれの必殺の忍術を発動し、3人同時でアシュラフへと放っていく。
「水遁、大瀑布!!」
「覇遁、空刃裂脚!!」
「霆遁、
水と電気と斬撃が1つとなってアシュラフへと向かっていき、完全に意表を突かれたアシュラフはなす術もなくその攻撃を受けるしかない。
ドカアアアアアアアアン!!!!!!!
盛大な爆発の後にモクモクと土煙が舞い、しばらく見守っていたが視界がクリアになっていくと、そこには倒れているアシュラフとバラバラに砕けた玉座があった……。
◆◆◆
「や、やったのか……?」
「そう……みたいだな、俺らの勝ちみたいだぜ。」
「はぁ!?つ、疲れたぁ……!」
春輝、賢丞はその場に座り込み、晃も大の字になって動けなくなってしまう。しかし、その時、何処からか愉快そうに笑う声が聞こえてきた。
「くくくっ、我を倒すとは見事だ童共!実に天晴れである!」
「っ!!?なんだ!?」
突然聞こえてきた声に春輝達は立ち上がって周囲を見渡すと、上空から白い光が降りてきた。
「確かに貴様らとの戦いは楽しかったぞ?何しろ先程放たれたあの一撃は強力だったからな。だが……貴様らが倒したのは、外側に過ぎん。」
「なんだと!?」
「まさか……っ!」
先程の攻撃でボロボロになったアシュラフが浮いており、その体は徐々に姿を変えていき、異形やがてそれは巨大な白いスフィンクスへと姿を変えた。
「ふふふ、どうだ?我のこの姿は?この姿を晒した以上、貴様らを生かしておくわけにはいかんなぁ?」
「はは……。流石に、勘弁して欲しいデカさだ。」
春輝達は身構えるも既に満身創痍で戦える状態ではない。そんな彼らを見てアシュラフは愉快そうに笑う。
「さぁ!死ねぇ!!」
そう言って襲いかかってくるアシュラフの攻撃を3人は寸での所で避けると、何とか距離をとっている。
「くそ!このままじゃ全滅だ!!」
「何か手はないのか!?」
「今考えてるが、流石に手詰まりだな」
賢丞と晃も焦りながら考えるが、何も思い付かずにいるとアシュラフが笑いながら話しかけてくる。
「くくくっ、無駄だ。貴様らでは我には勝てんよ?何故なら我が神だからな!」
余裕を見せるアシュラフに春輝達は悔しげに歯を食いしばるしかない。そうして、アシュラフが一気に攻撃を仕掛けてこようとしたが、3人は無事に避ける。
「春輝、どうする?この巨体で暴れられたら厄介だぜ!?」
「デカイからこの屋内を占拠してやがる。」
「もういっその事、この宮殿事ぶっ壊すか?」
「バカ!そんな事したら崩壊して生き埋めになるわ!」
晃は賢丞の提案を却下すると、春輝の方を向く。
「……春輝、お前がやれ。」
「え?賢丞、なに言って「お前の力なら倒せるだろ?それに散々努力してきたんだ。やってみろ。」賢丞……。」
賢丞の優しさに春輝は感動する。そして晃も頷き、九喇嘛も腹の中で笑みを溢す。
「やってやりますか!!水遁、怒濤水天!!」
そして春輝は九喇嘛の力とは違う以前に目覚めた力である怒濤水天を発動した、春輝の瞳の模様も変わったのであった……。
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