体から青いオーラを出しながら、白い巨大なスフィンクスへと姿を変えたアシュラフと睨み合う。
アシュラフはその巨大な右腕を振り上げると、春輝に向かって降り下ろしていくが、春輝はその右腕から避けると拳に水を纏わせて殴り付ける。
殴り付ける瞬間に水が凝縮させて、そのままパンチをアシュラフの右腕にぶち当たる。
しかし固い鱗に覆われていることもあってかダメージが入っていないように見える。それどころか殴った春輝の腕にも相当な衝撃があり、殴りつけた右手を押さえて顔をしかめるほどだ。
「(威力が足りない!)」
瞬時にそのことを理解するも為す術はない状況である以上成すがままになるしかない、そう覚悟した上で次の戦闘の動きを計算しながら歯を喰い縛りながら攻撃を放つ。
「水遁、大砲弾!」
春輝が拳から出した水が砲弾のように押し寄せ、アシュラフに直撃するが、アシュラフは若干怯んだだけで防御しようと身構えもしない。
その瞬間にアシュラフの両足が春輝に向かって降り降ろされてきていた。
「(ヤバイ!)」
咄嗟に身を翻すが、アシュラフは何度も何度も攻撃を仕掛けていくと、アシュラフはその鋭い牙で春輝を噛み砕こうと口を拡げて迫ってくる。
「「春輝!!?」」
「ちぃっ!!食らうかよ!!」
晃と賢丞が心配する中、春輝はその牙を避けると、跳躍した状態のまま掌に展開していた水の砲弾をアシュラフに向けて放ちダメージを与えようとするが、攻撃の為に避けない覚悟で放たれたその水を体にくらっても大したダメージにはならなかったらしく、平然としていたままの表情で長い尻尾の蛇の部分をしならせて春輝を吹き飛ばした。
「っ!!?がはっ!!?」
「春輝っ!?!?」
アシュラフの尻尾から吹き飛ばされ、地面に落下してきたところに砂による衝撃が背中から与えられると血反吐を吐き出して倒れる。
肺を損傷し背骨も軋みを上げたことからふらふらとおぼつかない足取りの中で内臓がやられたことが分かる。しかしアドレナリンが出ている今は戦闘に影響を与えるほどではないようだ。
そんな体勢のまま崩れ落ちると起き上がろうとした時に横から喰らった衝撃によって大きく吹き飛ばされていく。晃達が慌てて安否を確認するが、それをアシュラフの蛇か阻止する。
「邪魔をするな!この童を殺したのち貴様らも相手してやる!」
「はぁ、はぁ……!」
吹き飛ばされていった春輝に追い付こうとしていた晃達を牽制したアシュラフはそう言うと、春輝の方へと向かっていくが、春輝は空中に飛び上がると右手の指を鳴らして水の槍を大量に作ってた。
「水遁、激流槍雨!!」
水の槍が雨のごとく空中から降り注ぎ、素早くアシュラフの体全体に降り注がれて直撃していく。それによってアシュラフの体は鋭い水の槍に切り裂かれていく。
「ぐぅぅぅおぉぉぉっ!!」
苦悶の声を上げていくアシュラフに、春輝は影分身に水の性質を加えた、水遁影分身を使ってアシュラフへと近付いていき、一斉に攻撃を始める。
「水遁、多重大砲弾!!」
「水遁、激流槍雨!!」
「水遁、水竜弾の術!」
分身達と春輝本体が放った技によってアシュラフの体は再び傷付けられていくと、そのダメージで膝をついた。その瞬間を狙って春輝はアシュラフに向かって駆け出す。
「これで終わりだ!攻撃しててお前の弱点は分かった!はあああぁ!」
「よし行け!!春輝、止めだ!!」
春輝がそう言って拳を握り締めて殴り付けようとすると、アシュラフはニヤリと笑うと右腕でそれを受け止めてくる。
「なっ!?」
「フハハハッ!これで終わりだと?笑わせてくれるわ!」
そう叫んだ瞬間、再び口から青い光の塊を吐き出すと、春輝の体を吹き飛ばしていく。晃達の隣まで吹き飛んで倒れた彼に2人が慌てて駆け寄る。
「春輝!?春輝しっかりしろ!」
【おい九尾!?生きてるか!?】
【ふん……!この程度、なんともないわ!】
「はぁ、はぁ……!生き……てるよ。」
「まだやれるか?」
そこにはぐったりと倒れている痛々しい姿の春輝がいるが、どうにか生きていることは分かった。
賢丞が真剣な眼差しでそう尋ねると、春輝は小さく頷くとゆっくりと立ち上がってアシュラフを睨み付けながら、ゆっくりと近付いていく。
「はぁ、はぁ……!まだやれる。」
「面白いなぁ。だが貴様の力では俺は殺せん!!かつて我は殺められるのではなく、封じられるだけだ。人間では我を殺すなど出来ないのだ。」
「試してみるか?」
春輝の挑戦的な笑みにアシュラフはグルルッ!と唸り声を上げると、それに応えるように春輝も両手の拳をぶつけて、新たな力を使う。
「ふぅぅ!はあああああぁぁぁっ!(九喇嘛、少しだけ俺にリンクしてくれ!)」
【はっ!面白れぇ。この状態でのリンクは始めてだが、やってやるか。】
春輝と九喇嘛が精神の中で拳を合わせると、春輝は九尾モードになるが、その色は明るい日の光のような黄色ではなく、大空のような青いものであった。
「(なんだ、あれは?)」
【九尾と春輝、2人の力が上手く混ざってやがる!こりゃあスゲェぞ!】
その光景に晃と彼の相棒である牛鬼が驚愕の声を上げている中、春輝は両手を組んで大きく振りかぶると掌をアシュラフに向けて構える。すると両手の拳から青い槍を作っていく。
その大きさはどんどん増していく。
「水遁、水禍二槍。」
ドンッ!!ダアアアアンッ!!
「ぐおおおおおおおおおおっ!!?」
春輝の放った2本の水の槍はアシュラフの両前足を貫通し、アシュラフは悲鳴を挙げて前に倒れ込む。そこに春輝は地を蹴って跳躍すると、そのまま落下しながら両拳を振り下ろす。
「水遁、大瀑布!!」
ドオオオォォォン!!!
春輝の周囲から青い巨大な水が降り注ぎ、アシュラフに襲いかかる。それはまさに水禍という名の災害であることは間違いないだろう。
さらに春輝は自身のチャクラを水に変えている為、砂漠であっても水を放てるのだ。
降り注ぐ暴力的なその水が瞬く間にアシュラフの全身を呑み込んでいくと、さらに地面に爪を立てるようにしていた両手を地面から引き離していき、石壁に叩きつける。
さらにがら空きの腹に近づくと、そこから何度も何度もラッシュを放っていき、その衝撃は内臓に響くほどであった。
「ぐはぁっ!!?」
「トドメだ。水魔手裏剣!!」
叩きつけられた石壁に体をめり込ませたアシュラフに向かって春輝が掌を翳すと、そこから巨大な青い水の手裏剣が現れてその巨体を貫き通すように撃ち放つ。
「ぐっ!!?お、おのれええええええぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!?」
それは凄まじい勢いで飛び、一瞬で石壁を貫いていくとアシュラフの体をも貫き、そのまま貫通していき、アシュラフは絶命した。
そして空へと舞い上がっていった水魔手裏剣はしばらくして消えてなくなり、砂漠に静けさが戻る。
「終わったか……。」
「はぁ、はぁ……。ぐっ!!?」
賢丞がそう呟くと、春輝は疲労感で膝をつくとモードと邪眼が解除されそのまま倒れるように寝転がると、晃達が駆け付けてくるのが分かる。
「やったぜ、春輝!大丈夫か!?」
「お疲れ様だな。」
「は、ははっ。や、やったぜ……。あと、ごめん。もう指一本動かせないから背負ってくれないか?」
「ったく、こっちも怪我人だっつうの。礼導、手伝え。」
「オーケー♪」
春輝が賢丞と晃の2人に担がれて先程の出口に向かおうとした時、ピラミッド全体が激しく揺れ始める。
「な、なんだ!?地震か!?」
『逃がしはせん……!!貴様らを逃がしはせんぞ……!!』
「「「アシュラフ!!?」」」
春輝達が振り向くと、そこには倒れた状態のアシュラフが血塗れになりながらも睨みつけてきていた。その威圧に3人は気圧されるように一歩下がる。
「アイツ!?まだ生きてるのか!?」
【いや、あの傷ではもう動くことも出来ない筈だ。ダメージを受けすぎて奴も動けないはず。】
「ちっ!しつこい奴だな……。」
『貴様ら、を……がはっ!!逃がしはせんぞ……!!?ここで、生き埋めにしてくれるわ!!!!!』
「「「!!!?」」」
『我と、共に……死ねぇぇぇぇっ!!!?』
アシュラフがそう叫ぶと、ピラミッド全体がガラガラと音を立てて崩れていく。この空間はアシュラフが作り出したものであり、彼が死んだことで維持出来なくなったようだ。
春輝達のいた場所は流砂が起き始めていた。どんどん飲み込まれていき、どんどん沈んでいくのが分かる。3人が慌てて上を見ると天井だった部分に亀裂が入っていき崩壊していくのが分かる。
そして流れ込んでくる大量の砂に呑まれていきながらも春輝達4人は必死に泳いで外に出ることを試みる。
「くそっ!!?砂に足を取られて動きが……!!?」
「このままじゃ、本当に生き埋めにされるぞ!!」
「2人とも……俺を置いてって。」
「「はぁ!!?」」
「動けない怪我人が、いるより……2人の方がまだ、マシだろ?早く逃げ……。」
「ふざけんなよ!!お前を残して行けるかよ!!!?」
「生憎、仲間を……お前をここで見捨てるほど俺はクズじゃねぇって。」
「晃、賢丞……。」
そんな2人の気持ちや言葉に春輝は、少し驚きながらも微笑えむ。しかし徐々に流砂が強まり始め、必死に進んでいるが、このままでは3人とも飲まれる可能性が高くなってきた。
「くそっ!!賢丞、どうにかならねぇのかよ!?」
「今考えてる!?くそ、こんな時に怪我さえしてなければ……!」
そんな中、無情にも3人の上から瓦礫が降り、意識を失ったのであった……。
◆◆◆
春輝Side
「……!!……!!?」
誰かが呼んでいる。けど、体が全く動かない。
声を出そうにも喉は焼けるように熱く、呼吸すらままならない。
それに体の感覚がおかしい。まるで全身が心臓になったかのようにドクンドクンと脈打ち、頭が割れそうなほどに痛い。
(何がどうなってる……?俺は確か晃や賢丞達とピラミッドで戦ってて……?)
そうだ、俺はアシュラフと戦ってたんだ!それでとどめを刺したと思ったら倒れて動けなくなって……。そこからの記憶がない。
一体どうしてしまったんだろうと思っていると、ようやく目が開くと、そこは以前に入院していた五車にある病院の天井であった。
「ここ……は、五車の……?」
足に重みを感じて見てみると、ゆきかぜと母さんがベッドに体を預けて静かに寝息を立てて眠っており、無事な様子を見て安堵してしまう。
「ゆきかぜ……っ?痛っ!!?」
安堵した時、全身に激しい痛みが走り、思わず声をあげてしまう。痛みのある部分を見ると全身に包帯が巻かれているのが分かる。
「そうだ……俺、アシュラフと戦ってて……そのあと流砂や瓦礫が降ってきて。」
眠る前の状況を思い出していくと、俺はアシュラフを倒そうとして必殺技を放ったところまでは覚えているんだが……?それからどうなったんだ?
「ん……あっ、春輝!目が覚めたのね!ゆきかぜ、ゆきかぜ!春輝が目を覚ましたわ!」
「ん……っ?お兄……ちゃん?っ!!?お兄ちゃん!!?」
「ぐはっ!?ゆ、ゆきかぜ!?ストップストップ!死ぬ、マジで死ぬ!?」
ベッドから起き上がろうと体を動かすとベッドの横にあった椅子に座りながら眠りこけていた母さんが起きて駆け寄ってきて、ゆきかぜも飛び付いてきたので話を何があったのか聞いてみようと思い、口を開いた。
「母さん、俺どうなったんだ?晃や賢丞は?他のみんなは?」
「落ち着いて、順番に話すから。」
母さんは俺を落ち着かせるようにそう言い、ゆっくりと何があったのかを話し始める。それによるとこうである。
まず俺が放った最後の一撃、それがアシュラフの心臓を貫き倒すことには成功したのだが、それと同時に空間が崩壊し始めてしまい、流砂や瓦礫が降ってくる中で俺を含めた3人は瓦礫に激突したことで完全に気を失ってしまったらしい。
けど、そのあとにアサギ様や真達が助けに来てくれて、さらに俺達の体の状態を見て一刻を争うと判断したアサギ様が、俺達を運び込んだ。
そして、以前にお世話になった乙女崎さんの懸命な治療もあってか俺達は峠を越えて、命の危機は脱したらしいが、2週間も眠っていた間、ゆきかぜは側を離れないと言っていたらしい。
「ゆきかぜ……ありがとう。それと、ごめんな。心配かけて。」
「本当だよっ!!!どんだけ、どんだけ心配たと思って……うわぁぁぁぁぁんっ!お兄ちゃんのばか~~~!!」
「本当に無事でよかったわ。宗河くんと礼導くんは別室で休んでるわ。3人ともしばらくは絶対安静らしいわよ。何かあったら車イスで移動だからね。」
「分かったよ、ありがとう。母さん。」
そう言うと母さんは泣きじゃくるゆきかぜを連れて、飲み物を買いに出ていったが、俺は窓から外を見ていた。
まさかみんなと協力して、砂漠の王を倒せるとは思ってなかった。アシュラフはかなり強かった……恐らくブラックもかなり強いんだろうな。
そんな事を考えていると、九喇嘛が話し掛けてきた。
【よぉ、無事みたいだな。春輝。】
「(九喇嘛、あの時はありがとう。力を貸してくれて……。牛鬼達は?)」
【くそ狸も八尾も無事だ。まぁ、八尾の人柱力は回復中だがな。】
「(そうか。みんな無事でよかった。)」
今回は本当に死ぬかと思ったが、とりあえずは無事でよかったのと、今回の戦いではみんながいたから勝てたと思えた。
あれだけの相手は、今の俺ではまだまだ力不足だとも痛感した。
「(もっと強くならなきゃな……。)」
そんなことを思いながら窓の外を見ながら少し眠ることにしたのであった……。
次回から細々書いていきます。
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