国防総省傘下の研究機関“防衛科学研究室”……通称“DSO”。多くの研究員を擁し、アンドロイド関係から対魔粒子、超能力や生物兵器といった最先端の軍事科学技術の研究、開発、実験を行っている。
“仮面の対魔忍”という謎のくの一が所長を務めているが、拠点は米連に本社を置く軍需企業“オレンジインダストリー”の東京支社の地下深くに日本支部が置かれており、その存在を知る者はとても少ない。
彼らは米連内で影響力を増すノマドを敵視し、魔界の門を封印する方針を取っており、国務省系の機関である特務機関“G”とは何かと対立している。
そこに所属しているアスカこと甲河 アスカは、かなり不機嫌な様子で、仮面の対魔忍に詰め寄っていた。
「なんでよ!!何であの時止めたの!?あのままやってれば私の方が勝っていたわ!!」
「あ、アスカちゃん。落ち着い「あんたは黙ってて!」は、はい。」
アスカは日本支部主任兼上級研究員である小谷 健司を睨み付けて黙らせると、仮面の対魔忍を睨み付ける。しかし、睨み付けられている本人は静かにアスカを見据えていた。
「落ち着きなさいアスカ。貴女に頼んだのは財務省に入り込んでいたオーク……大蔵 大甚の抹殺だけ。五車の対魔忍、特にアサギとその教え子との戦闘なんてさせられないわ。何より、貴女の対魔ブレードが簡単に防がれたんですもの。」
「あんなのまぐれよ。アサギさんはともかく、あんな奴になんて負けないわよ。」
「アサギと一緒にいた“ハルキ”という名の対魔忍、恐らくアサギに勝利し目を掛けている者の1人であの水城 不知火の息子ね……見事に名前がヒットしたわ。」
「?不知火って、あの“幻影の対魔忍”って呼ばれてるくノ一よね。母親が凄いだけじゃないの?」
アスカの言葉に仮面の対魔忍はパソコンを開くと、今まで独自に収集したデータを開く。
「……“京都炎上事件”、“中華連合でのノマドと百愧龍宮と対魔忍の三つ巴の戦い”、“エジプトの魔族ヒクソスの侵攻”の際に活躍しているわ。最近の対魔忍に関する事件では、その全てにおいて渦中の人物よ。それに“五車”で起きた“冥”という組織、そいつらとも一戦交えてるわ。」
「……で?だから何?」
「つまり。少なくとも、アスカ……。貴女よりは強い。」
自分よりも強い……その言葉がアスカの心に火を着けたのであった。
「ふふっ……!ふふふっ……!アサギさんに勝った?水城 不知火の子供?だから何?そんな事、私には関係無いわ!!!だったら寧ろ勝ってやるわ!!!」
「アスカ……。」
「第一、私はアサギさんを許してないの!!あの子を……
アスカはそう言うと部屋を出てズカズカと出ていき、何処かへと向かうのであったが、その様子を見た仮面の対魔忍……甲河 朧はマスクの下で悲しげに俯くのであったが、その話を“影”で聞いている者がいるのであった……。
◆◆◆
その頃、五車学園の所有する森の中、そこでは四尾、孫悟空の人柱力である甲河 藤志郎と春輝が組手を行っており、それを藤志郎の恋人である四條 如月とゆきかぜが見ながら応援していた。
「はぁ!」
「っ!ふんっ!!」
藤志郎と春輝の打撃の応戦。その様子を見ていた如月とゆきかぜは楽しそうな2人を見て微笑んでいた。
「ふふっ。藤志郎さん、とっても楽しそう。」
「四條先輩は藤志郎先輩と付き合ってるんですよね。どんな馴れ初めだったんですか?」
「え!?そ、それは……。えへへ……♡は、恥ずかしいなぁ……♡えっとね、私がある政治家を捕らえる任務に出ていたんですけど、その時に追い込まれて武器も奪われて、あ、犯されるって思ったんですけど、それを助けてくれたのが藤志郎さんでね。その政治家と護衛についてた魔族達を1人で倒したの!!それにねそれにね!?藤志郎さんてばその時にこう言ったんですよ!!『この娘に手を出すな。』って言ったんです♡♡!!そこからつきあうようになったんですけど、もう全部が格好よくて格好よくて……♡♡えへ……♡えへへ……♡♡」
「あ、あはは……。そ、そうですか……。」
体をくねくねさせる如月を見たゆきかぜは、心なしか僅かに引いていたのであったが、組手中にそんな話を聞いていた藤志郎はというと、頬を紅くして俯いていた。
「……。」
「藤志郎さん?大丈夫ですか?滅茶苦茶顔が赤いですけど。」
「い、いや、その……。な、何でもない……。」
「?」
頬を赤く染めて頭を抑える藤志郎に春輝は首を傾げていた。すると、精神世界での九喇嘛と孫悟空が話しているのが聞こえた。
【おいおい、四尾。お前の人柱力、顔が紅くなってるぞ?照れてんのか?】
【そうなんだよ!藤志郎の奴よぉ、あの如月ってやつとデートしたまでは良いんだが、その後には照れてよぉ!キスしたら茹で蛸みたくなってな!?マジで笑っちまったぜ!!ハハハハハハハッ!!!しかもな!こいつ、酒の臭いだけで酔っちまってな?】
「(悟空、頼むからもう黙ってくれ。……九喇嘛もにやにやしながら見るな!春輝も呆然とするな!!)」
【くくくっ!】
「(あ、す、すみません。)」
そんなやり取りを終えて4人で食事をすることになり、町の中にある食堂へと行き、そこで食事をしていると藤志郎が質問をしてきた。
「そう言えば春輝、一昨日アサギ様と任務に行ってゴタゴタしたらしいな?何があったんだ?」
「あぁ、それがなんか変なくの一に襲われたんです。アサギさんは確か“アスカ”って呼んで「アスカだと!?」っ!?と、藤志郎さん!?」
春輝がその名前を呼んだ瞬間、藤志郎は春輝にズイッと顔を近づける。
その顔は何処か驚いたようであり、春輝は訳が解らず、如月とゆきかぜも驚いていた。それを見た藤志郎は、ハッ!としてゆっくりと席に座る。
「すまん、取り乱した。お前、アスカと会ったのか?」
「?はい。任務の中でですけど……。何かアサギさんに物凄い敵意向けてて。藤志郎さんは知ってるんですか?」
「あぁ……。アスカ、本名を“甲河” アスカ。甲河家宗家の若き当主であり唯一の生き乗りだったんだが、両親を含め一門を魔の王、エドウィン・ブラックに殺されてな。アサギさんに引き取られて育ったんだ。俺も知ったのはしばらくしてからだ。」
「そうだったんですか。すごい人なんですか?」
「まぁな。何せ若くして頭角を現し、対魔忍として認められてからは、さくら先生、紫先生とともに危険な任務に投入され多くの戦果をあげてな。けど、ある事でアサギさんと対立した上に、さらには命令無視までしてエドウィン・ブラックに単身挑んだんだが……敗北して両腕両脚を失う重傷を負ったんだ。」
「え!?けど、会った時は普通に両腕両脚ともあったけど。」
「恐らく義手と義足だろうな……。それより春輝、アスカは何か言ってなかったか?」
「そう言えばアサギさんの事を“最低最悪の偽善者”とか言ってましたよ。」
「「“最低最悪の偽善者”……?」」
“最低最悪の偽善者”……その言葉を聞いた時、如月とゆきかぜは首を傾げて怪訝そうにするが、その言葉を聞いた藤志郎は悲しげに目を伏せる。
「そうか……。アスカの奴、まだ引き摺ってるのか“あの事件”を。」
「「「“あの事件”?」」」
「そうか、如月や2人は知らなかったな……。実はアスカには義理の弟がいたんだ。名前は“浩介”って言ってな、俺とも仲が良かったんだが……。」
「藤志郎さん、“あの事件”って?それにその浩介って人はどうなったんですか?」
「……殺されたんだ。アサギさんが任務に出ていたちょうどその時に。」
藤志郎の言葉に3人は驚くのであった……。
◆◆◆
その日、アサギは理事長室で仕事をしていた。
その中でアサギは任務の中で鉢合わせたアスカの事を思い返していた。
「……。」
『私は貴女が大嫌い。いつか貴女を殺す。』
「アスカ……。」
アスカの言葉によってアサギは思い出してしまう……。
『浩介……!!浩介!!!!?起きてよ浩介!!?』
『アスカ……。』
『何で!!!?アサギさん、なんで浩介助けなかったの!!!!?家族じゃなかったの!!!?家族より……!!家族より赤の他人が、任務が大切なの!!?』
『ごめんなさい……。』
『…………許さない。私は貴女を、絶対に許さない!!!!?この偽善者!!!』
涙を目に浮かべて自分を睨み付けるアスカ……。
その表情を思い出したアサギは俯くしか無かったのであった……。
◆◆◆
その日の夕方、食事を終えた春輝とゆきかぜは家に帰っていた。しかし、その足取りは重く、何処か表情も暗かった。
「ゆきかぜ、大丈夫か?」
「うん、平気。だけどまさか、あんな“ひどい事件”があったなんて知らなかったね。」
「確かにな。それに昔の政府や警察がどんだけ腐ってたのかもよく分かった……。」
昼食時に藤志郎から聞いた話……。それは春輝とゆきかぜにとってかなりひどい話であり、聞くだけで辛い内容であった。
まだ春輝とゆきかぜが幼い頃に起きた事件……。
対魔忍……いやアサギにとってかなり大きな傷となっている事を知り、何処か複雑な感じであった。
そんな時であった。
「見つけたわよ。水城 春輝。」
「!?」
春輝とゆきかぜ、2人の前にピンクの対魔スーツを着た“鋼鉄の死神”こと甲河 アスカが立っていたのであった……。
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