「木遁・樹縛栄葬。……何、命までは取らぬ。しかし、些か悪戯が過ぎておるゆえ少しばかり痛い目を見てもらうぞ。」
木遁・樹縛栄葬。
本来はいくつもの樹木を敵の足元から成長させて身動きを封じ、そのまま樹木の成長で圧死させる術だが柱間の精密なチャクラコントロールにより、言葉通り殺さぬと同時に痛めつける様に緩やかにしかし滞ることなく円滑に成長させ女性の身体を締め上げる。
ただ樹木が太く成長する事で圧し潰す力だけでなく、複数の樹木が束となり最終的には一本の大樹となる為に樹木がそれぞれ女性の身体を締め付ける様に捻り上げる力も加わる。
「くっ……ぐうぅぅっ…うあ゛あぁぁあ゛あぁぁぁぁぁっ!!」
メキメキと音を立てながら成長していく樹木に合わせて、身体からも悲鳴の音を上げている事が容易に想像できる激痛は正しく拷問そのもの。この2重苦には、この女性であっても耐え難いものであるはず。
「………なーんて、サービスであえて悲鳴を上げてはみましたが考えてみれば聞こえていなければ意味ありませんね。……にしても何故男というものはこうも緊縛プレイなる物を好むのでしょうか?男であれば、この様な事をせずとも自ら女をリードするが甲斐性、というものでしょうに。」
あるはずが無かった。そうだ、柱間やソウマの殺気や闘気を受けて平気で受けていられる様な者がこの程度でやられるわけなどない。
そもそも樹縛栄葬を喰らう前の彼女の首には根が巻き付いてあったが、アレも平凡な上忍であればすぐ様首を捻り切り死に至らしめる程の力を持っている。それを喰らって悲鳴が上げられるだろうか?
つまり、女性は樹縛栄葬を喰らいながら首に巻き付いた根の対処もした。結果として、この様なふざけたマネができるという事は彼女を追い詰めるにはまるで足りない、あまりに程遠かった。
「さて、この鬱陶しい木からもとっとおさらばしましょうか。」
◆◆◆
「ぬぅ……これは………!」
柱間が樹縛栄葬の術で、未だに緩やかに成長を続けている樹木のある場所に着いて見たが、そこに本来なら縛られていたであろう女性の姿はなかった。柱間もこの程度勝てるとは思っていなかったが、こうも痕跡を何も残す事無く綺麗に破られるとも思っていなかった。
「(そうなるとヤツはどこに隠れ、何をしているのだ?こうもなると最初から今まで手を見せてなかった故に分からぬぞ。)」
既に見せた樹界降誕は女性に見切られているだろうと判断し、現在は木遁分身でそれぞれ一定の距離を保ちながら樹木を中心として人海戦術で索敵を行なっているが、気配すらまるで掴めていない。
「(なんともやりずらい相手ぞ……!)」
「おや?どうかなされましたか?何かお探しの様ですが、よろしければご一緒にお探しいたしますが?」
その言葉を聞いた瞬間、柱間はその場を飛び退いた。さっきと、初めて姿を見た時と同じ、だが今回は一切の油断をしていないにも関わらず接近されている事に気がつく事ができなかった。
着地した時に相手の姿を、女性の姿を見た瞬間、柱間はドッと冷や汗が噴き出る。いつでも攻撃が、有利が取れた。にも関わらず、それを捨てて尚も崩さぬ余裕を感じさせる笑みを浮かべる。
そして、たった数秒のやり取りで柱間も女性との実力を改めて感じとり、現状では女性の余裕を崩す方策がまるで見つけられなかった。
「先程の術、思わず声を上げてしまうほどにとても良いマッサージでしたわ♡その様な素晴らしいモノを頂いたのですから、こちらも「お返し。」をしなければなりませんわね………!」
女性がパチンッと指を鳴らすと柱間の首に紐の様な物が巻きつき、絞め殺そうとする。
「ぐっ…!?これは、まさか……!」
「えぇ、文字通りのお返し………貴方様が先程やられた術をそっくりそのまま再現して差し上げます。遠慮せずに受け取って下さいませ♡」
女性が言い終わると柱間の足元で黒く太いツタの様な物がいくつも生え出て、柱間をがんじがらめに縛り上げる
「うぐぅぅぅ……!!こんな、こんな事がっ………!!」
「………これは………うん?いや、まさか、そんなハズは……!」
苦悶の表情を浮かべる柱間を悪どく笑いながら弄んでいた女性だったが手応えと言うべきか、どうにも肩透かしを喰らっている様な感覚があり怪訝な表情となる。
「ぐううぅぁぁぁぁっ!!があああぁぁぁぁ!!!」
バギイィィィッ!!
女性はすぐに何かを確かめるべく、柱間の首を黒いツタで挟み込んで身体を捻り切ると柱間の首は断末魔と共に音を立て千切れ落ちた。しかし、女性はそれを見て動揺した。
「まさか………まさかとは思いましたが、この私がこの様なミスを……?!」
女性の動揺の正体。それは転がっている柱間の首が生首ではなく、柱間にそっくりな木のマネキンの様な物が転がっていた。これは柱間の十八番の木遁分身、女性の様子を伺いに来たのは木遁の分身であり本人は身を潜めていたのだが、女性はコレを本物だと確信を持っていた。
すぐ様切り替えた女性が周辺を感知してみると女性を囲む様にあった幾つかの生体反応が女性へ迫っている事を知ると、女性は思わず嘆息が溢れた。
この場に向かって来ていて且つ生体反応があった事が本物であると思い込んだ根拠であったが、柱間の木遁分身は柱間の細胞から生み出される為、他の分身とは違い全ての分身に生命が付与されるので生体反応での感知に引っかかってしまう。
もう1つ付け加えると、女性は柱間以外の木遁使いの分身を知っており、それらには生体反応とは別の感知方法で認識する区別があったのが仇となった。
「はぁ………全く、またしても私を驚かせてくれますね……私も完璧ではありません。ミスも大小合わせていくらかやらかしましたが…………!」
再び笑みを浮かべる女性、だが……その目は笑っていなかった。
「この様な簡単な見落としをしたのは生まれて初めてですよ、えぇ……!!この私が、この様な子供騙しで、無様にも、恥を掻かされようとは夢にも思っていませんでした…!!」
先程の時と違い目は細く、鋭く、口角は上がり、声は下がり、何よりも言葉には怒気が込められていた。それと同じくして女性へと迫っていた柱間の分身達が、黒い何かが抵抗する間も、或いは抵抗する素振りすらさせずに
「ぐっ……?!」
切り裂き……。
「ぶっ……?!」
圧し潰し……。
「ぐぎっ……?!」
千切り、叩き潰し。
瞬時に鏖殺された。
「さて……これで貴方のお人形さんは全て使い物にならなくなりました。そろそろいい加減に出てきたら如何ですか?聞こえているのでしょう?」
女性が言い切る前に足元の周りから再びいくつもの樹木が女性を包囲する様に飛び出て襲いかかるが黒い刃が難なく切り落としていく。
「木遁!大樹林の術!!」
追撃する様に女性の足元の地面から巨木が高速で突出し上空へ突き飛ばそうとするが、女性は軽々と後方へ身体を回転させながら跳び退くと、黒い刃が巨木を切り裂くとそのまま女性がいた場所の地面に突き刺さりズブズブと沈んでいく様な音を立てると、なんと地面に潜んでいた柱間を引き上げて空中へ投げ飛ばしてしまった。
「さぁ、これでお終いにしましょう。」
「くっ!も、もくと」
ズ バ ッ!!!!!
抵抗を試みた柱間を黒い刃は無情に股から頭にかけて真っ二つに切り裂く。切り裂かれた柱間の死体は地に落ちると虚しくカランッと音を立てて、柱間に似せた木の像が転がっていた。
「私、お人形遊びは初等部へ入る前に既にやめましたので。いい加減貴方様本人が私を楽しませてくださいまし。」
そういう女性が上を見上げると、上空で柱間本人が既に印を結び術を発動させる。
「木遁・皆布袋の術!!」
柱間が両掌を前方に突き出すと、辺り一帯から超巨大な木の手が無数に出現するや否や凄まじい速度で一気に女性を潰さんばかりに畳みかけていくと同時に、女性の足に根を絡ませる。
「……チッ!分かってはいても、抜けにくい……!」
女性は一瞬で根を切り刻むが、その一瞬が凄まじい速度で迫る木の手を回避する事を困難にさせる。更に、その威力は女性のいるであろう地点を押し潰す事に地響きが怒る程。如何に強けれどもまともに喰らえば、ひとたまりもない……。
◆◆◆
「………うーむ、やり過ぎたか?……コレ、大丈夫か?」
柱間は地に降り立つと、無数の巨木が地面に突き刺さっているかの様な光景にひとりごちる。
正直なところ、柱間は女性を殺す気など毛頭もない。あくまで降参させるか、判定勝ちを狙っている。にも関わらず致命傷を与えかねない皆布袋の術を使ったのは、あくまでも女性の実力、というよりは能力を見極める為だった。
分かっているのは、形状を変えられる黒く得体の知れない何かを操る事だけであり、その得体の知れない物の正体を見極めたかったのだ。だからこそ、威力が絶大な広範囲攻撃の大技である皆布袋の術を使えば、それに対応する為に得体の知れない物も使ってくるハズであり、それで正体を見極めようとしたのだが。
「ま、まさか何もせんとは……と、とりあえず生きておれば良いのだが「死んでもいないどころか、全くの無傷ですので御安心を。それよりもご自身の心配をなされた方がよろしい様かと……。」なっ?!!」
声が聞こえた方へすぐ様振り返って見ると、そこには晴れやかな笑顔を見せる女性を見た途端、突然倒れていく自身に驚くと同時に激痛が走った。
狩る様に黒い刃が柱間の両足首を切り落とし、更に両手首も立て続けに切り落とされた。足を無くし、倒れる柱間を見下す様に女性が幾度と見せた悪どい笑みを浮かべ立っていた。
「もうお分かり頂けたかと思われますが、貴方は確かに強く私も何度も驚かされました。しかし、それだけです。私には及ばない、その結果がコレです。降参なさる事をおすすめしますわ。今でしたら、その手足の治療の手配を私が治療費を全額負担した上でさせていただき「間に合っておる。いらぬ世話ぞ。」
そう言うと柱間は突然女性に飛び掛かる様に急に迫ると『蹴り』が女性の頭を掠める。咄嗟に一歩退いて柱間を見て見ると、無くなったはずの手足があり、同時に切り落とした手足も転がっているのを見て女性は全てを理解したのか溜息を溢した。
「……もう、何があっても驚きませんわ。ですが、こうもポンポンと術を色々変に改良するのをやめて下さるとありがたいのですが。木遁は本来こういう物ではないのですよ?」
「なんと言われようが、これがわしの木遁だ。それともなんだ?こうあってはお主にとって都合が悪いのか?」
「いいえ、その様な事は……。むしろ、この後のビジネスまでのつまらない“時間潰し”と思っていましたが……。」
黄金と思わせる様な琥珀色の眼を見開き、八重歯を覗かせる程に口が吊り上がった笑みを見せる女性に、柱間は本性という名の狂気を感じ取った。
「少し、面白くなってきました……❤!」ズズズズズズッ!!!!!
それはかつての最大の相手である、“うちは マダラ”に近いモノであった……。
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