赤い“霧”に染まる国。
日本から約9,724㎞離れた所にあるヨーロッパの国が一つ、ローマ。
イタリアの首都、イタリア南部のラツィオ州にあり、世界中から観光客が訪れる世界でも有数の観光都市。古代からローマ帝国として栄えていたため、歴史的・文化的にも奥が深く、趣きのあり、さらに、現ローマ教皇が住んでいるバチカン市国もあり、「聖なる都」とも呼ばれている。
そのローマの観光名所の一つには今……本来いるはずのない“主”が座しており、その主たる者はニタァ……と嗤う。
「さぁ、今日も楽しい、楽しい“夜”が来るわ……。」パチンッ!
その者は指を鳴らすと、月が照らすローマの街には“赤い血のような霧”が現れ、余興が執り行われるのであった……。
◆◆◆
その頃、日本の忍、“対魔忍”の隠里である五車町……その五車町にある育成機関“五車学園”の施設の一つでは、対魔忍であり“九尾の人柱力”である青年、水城 春輝が1人四方八方に並べられたショットガンの中心に立っていた。
「すぅ……はぁ……。(モード怒涛水天、発動!)」
カチッ!
ダンッ!!!
「(水流変!!)」
バンッ!!
春輝が死にかけた修行の中で獲得した“怒涛水天”を発動し、同時にショットガンのトリガーを起動すると、散弾の雨が春輝に向かって注がれるが春輝はその弾丸を全て“流し返した”。
水流変……手のひらで物の軌道を流し、変えて、相手に返す技であり、春輝が新たに産み出した体術である。
「(すぅ……!)っ!」
ダンッ!!!
「……良い攻撃だな?思わず防いだぜ。」
「翔馬?何時からいたんだ?」
春輝の後ろには友人の1人である青年、獅子堂 翔馬が立っており、彼は春輝が放ったであろう裏拳を片手で防いでいた。
「お前が散弾の雨を返した辺りからだ。……しかし、ショットガンの散弾。全弾返すとかよくやるよ?しかも、今の“裏拳”。無意識だろうが、かなり鋭かったぜ。」
「ありがとうな。それで、どうかしたのか?」
「あぁ、実はなアサギさんが呼んでたぜ。なんでもお前と甲河、それに鬼崎と俺と凪に“遠征”だってよ。」
「遠征?どこまで?」
「イタリアのローマだってよ。」
春輝は流石の翔馬の言葉に驚くのであった……。
◆◆◆
アサギに呼ばれた春輝と翔馬、そして、甲河藤志郎と鬼崎きらら、翔馬の嫁である桃知 凪の5人は理事長室へと来ており、そこにはアサギと時貞がおり、5人に資料を配る。
「みんな、集まってくれてありがとう。今回の任務は遠征でイタリアのローマに“調査”に行ってもらうわ。」
「今回の任務はローマに発生した奇っ怪な赤い霧の調査だ。……その資料にある赤い霧は4日前に突然として起こり、その霧の起こったのはいつも夜だ。」
「時貞様、質問よろしいですか?」
「なんだ凪。」
「夜、ということは……何か魔物か異形の仕業、でしょうか?もしくは魔術師の?」
凪の言葉に時貞は腕を組んで考え込む。
「それは分からない。何せローマには連中が……“ヴァチカン”がいて、情報を明かそうとしない。だが、何か異質であることは確かだ。」
「あなた達の任務はその調査、最悪“戦闘”も起こりうるから気を付けるように。今回は紫が同行するわ。出立は明日の昼、みんな用意を怠らないように!」
「「「「「はっ!!!」」」」」
春輝達5人は翌日の出立に向けて用意を行うのであった……。
◆◆◆
5人が理事長室から退出した後、室内はアサギと時貞の二人が残っていた。任務を言い渡し二人の顔はどことなく不安が混じっていた。
「時貞先生、今回の任務。あなたから見てどう見る?」
どうやら彼女はこの任務に関して釈然としないようだ。問われた時貞は
「‥…怪しいの一言です、アサギ様。」
と正直な意見を言う。
「そう、よね。」
「いつ通り、山本部長経由の任務だったらなんの不安を抱かずいられるのですが。」
「今回は部長経由じゃなく、政府からだものね。」
そう今回の任務はセクション・スリーの山本部長経由からの任務ではなく、政府直々からであった。正直言って現在の政府は魔族とツーカーな連中が大半を占めているので信用できないのだ。
何せ政府の依頼で任務に赴いていた対魔忍の情報を敵組織に売り渡し大金をせしめ、挙句にその組織に囚われた対魔忍の凌辱に参加していたりするので信用しろというのが無理である。
そういった経緯もあり基本的にアサギ達は信繁以外の政府の人間は信用していないのである。
「任務の内容自体は特別に可笑しいものではありませんが、派遣する人員をたった二人とは。」
「ええ、春輝と藤志郎を直々に指名してくるとは、ね。いくら中国での経験があると言ってもあの件と今回とじゃ状況が違うわ。とてもじゃないけど今の二人じゃ経験が足りないわよ。」
実は最初この任務に就くのは春輝と藤志郎だけだったのだ。流石に学生二人だけでは荷が重すぎると感じたアサギが追加要員で、きらら、凪、翔馬、そして班長として紫を加えたのだ。
この追加要員を聞いた役人は何故かごねたがアサギが「任務失敗で外交問題になっても五車は一切責任を取らない。」と役人連中を脅して了承させたのだ。
「連中の狙いは分からないけど、無事に任務完遂を願うしかないわね。」
「同感です。」
会話はそれで終わり、お互いの職務に専念する。だが、二人の不安は違う形で現実のものとなる。
そう、この任務の謎の指名は後に起きる、ある事件の始まりに過ぎなかったのだ……。
始まりですので、短めです。