3人を見た紫と凜子は眉間にシワを寄せながら呟くように言う。
「傭兵か。」
「こいつらはこの日のために雇った者達でな。言っておくがそこらの魔族よりも腕が立つぞ……お前ら、あいつらを痛めつけてやれ!そして半殺しにしてヨミハラに売り飛ばして、雌豚に変えてやれ!!」
「「「了解/承知/あいよ!」」」
男が部屋から飛び出すと、3人は武器を構えてこちらを見据える。
「んで?誰がどいつやる?」
「私はどっちでもいいわ。」
「俺もだ。だが、ガキは半殺しにするぞ。対魔忍、紫は虫の息程度で良いだろ。大人の女は色々と弄れるしな。」
「下種どもが、ナメるなよ!」
紫は3人に向かって戦斧を振るう。
しかしそれは抜け忍の女と魔族の男が紫に、オークが凜子に向かってきた。
「おらおら!どうしたんだお嬢ちゃん、しっかりしないと怪我するぜ!!」
「くっ!このっ?!」
ナイフで斬り掛かってくるオークに私は躱すので精いっぱいだったが、一瞬のスキを突かれてオークに足を引っ掛けられて後ろに転んでしまった。その瞬間にオークは私の武器を蹴って遠くに飛ばし、両足を凜子の腕の上に乗せてきた。
「あぐっ……!」
「ほらほら、お嬢ちゃん?もうおしまいか?早く逃げるなりしないと、犯されるぞ〜?」
「ひっ……!」
犯される……。
敵に捕まった対魔忍のくノ一の末路、それは悲惨な物になると授業で教わった。
くノ一は魔族に捕まれば、最悪身体を改造され性奴隷とされて死ぬまで犯された上に、まるでボロ雑巾やゴミのように捨てられて死を待つだけの存在になると、授業でそう習った。
怖い……嫌だ……逃げたい……そんな負の感情が胸の奥から湧き上がってきて、助けを求めようと教官や鬼崎の方を見るが2人とも押されており、何も出来ない。
そんな時に凜子に出来たのは、ただ目を閉じる事だけだった。
「へぇ?そんなに怖いのかい。それじゃあ、軽くいじめようかな?」
「〜〜〜っ!!!」
「秋山……!!くうっ!!!?」
オークの巨大な手が迫る中、凜子は恐怖のあまりに体を強張らせた。
その瞬間に扉が蹴破られ、それと同時に巨大な水の玉がオークに直撃してオークは水に包まれて、ぺしゃんこになって吹き飛ばされる。
「遅くなりました!」
扉の方を見ると、そこには先程逃げ出したターゲットの"男の首"を持って立っている春輝ときららが立っていた。
どうやら役目を終えてこちらに合流してきたらしいが、春輝の顔を見て私は、心底安心したように身体が脱力したのを感じ、それと同時に先程されそうになった事を思い返して失禁してしまった。
そんな私に春輝は近づくと優しく微笑んで頭を撫でてきた。
「大丈夫か、凜子?」
「は、春…輝。」
「怪我はないみたいで良かった。あとは……俺がやる。」
春輝はそう言うと分身を2体出すと、その手に青く乱回転する球体を作って相手に向かって放った。
「「螺旋連丸!!」」
ドギュウゥゥゥッ!!
「「がはっ!!?」」
その術を胸に受けた魔族の男は吹き飛ばされ絶命した。
「紫教官、目標は仕留めました。あとコイツの部下が持ってた書類も押収してあります。」
「うむ、よくやった、皆引くぞ!我々の役目は終わった。五車学園に戻る!」
こうして私達は五車学園に戻る事になったのだが……それよりも私は春輝の方をじっと見ていた。
「(あれ程の術を持っているなんて、春輝……お前はいったい。)」
私はいつの間にか強くなっていた春輝から目が離せず、それに何故か春輝の笑った顔が頭から離れなかったが、その時は何故なのかは分からなかった……。
◆◆◆
きららside
春輝が凜子を助けて、無事に任務は終わった。
けど、何だかすごく胸がモヤモヤする……春輝が他の女と仲良くしてるのを見てると、何だかこう、胸の奥がモヤモヤするのよねぇ。
「(春輝……。)」
そんなことを考えながら、私たちは学園へと戻ったのであった……。
◆◆◆
凜子達との初任務を終えた春輝は、その翌日に巴に加えて凜子やきららからも一緒に鍛錬と誘われて、彼女の家にある道場にて多くの門下生に見られながら手合わせを行い、その中で数人の逸刀流の使い手とも稽古を行っていった。
酒を飲み、酔うたびに強くなるくノ一。
超常の力を持つ仮面を付けたくノ一。
何本もの刀を自在に操るくノ一。
そういった者達との手合わせは春輝に新たな刺激を与え、春輝は剣術に興味を持ち、春輝は独学で様々な剣士の技を学んでいたが、いまいちしっくり来ずに悩んでいた。そんな中で春輝は久々に白嶺に呼ばれ、彼女が待つと言っていた五車町の最北端にある小さな小屋へと来ていた。
「ここ、だよな。白嶺さ〜ん、いますか〜?」
「あぁ、こっちこっち。勝手に入ってきていいよ〜。」
春輝は言われるままに中に入る。
その中は特に何ということは無い、何処にでもあるような木製小屋であったが、白嶺の声はしたがその声の主は何処にも見当たらない。
春輝が小屋の中を見て回っていると、その小屋には似合わない派手な花の絵が描かれている掛け軸があり、春輝はその掛け軸に近付くとゆっくりと捲る。
「何だこの穴……って、ひ、引っ張られる!!うわぁぁぁ―――!!?」
するとその掛け軸の裏には入り口のような渦があり、春輝はその渦に引き込まれていき、しばらくすると扉のような物から放り出された春輝は転がりながら現れる。
「痛てて、ここはどこだ?」
春輝が辺りを見渡すと、そこは真っ白な何もないだだっ広い空間であったが、その空間の一画では白嶺が優雅に紅茶を飲みながら菓子を食べている。
白嶺に駆け寄った。
「白嶺さん、ここはいったい何処なんですか?」
「ん~?ここは"鍛錬の間"。あたしが創った空間でね、ここで1分過ごしても外では1秒にしかならない。けれど効果は確実に身に付くようになっている。」
「それって……もしかして、新しい修行ですか?」
「そ。春輝くん、あなたは特定の武器とかそういうを持ってないでしょ?
だから、そこであなた個人にあった武器を選んで、死ぬ気で修行してもらうよ。」
春輝が首を傾げる中、白嶺は指を鳴らすと刀、剣、槍、鉄扇、トンファー、グローブ、装具、鎖鎌、鉄笛、斧など武器が拡がっており、目の前には目が赤く染まった鎧の兵士や骨の怪物スケルトン、様々な怪物がいた。
「さぁ、ここで死ねば現実でも死ぬよ。死なないように頑張ってね。あとついでに、覇気と呼吸、六式も学んでもらうから。死なないようにね。」
そう言うと白嶺は修行を開始した。
春輝は白嶺が用意した武器の数々を使いながら、スケルトンなどの怪物達と戦い、己が得意な武器を探していた。その中で“呼吸“や“六式”と呼ばれる技法や“覇気”という特殊な力についても
学園が休みの日に至っては修行は夕方まで続いて、ヘロヘロになりながら家に帰ると、風呂に入って死ぬように眠りにつく程である。
そんな中、空間による助けもあるが修行を始めて約半年(空間内では10年)の修行期間で、とある武器“9種”を気に入り、その武器達で出来る技を身に付けるために修行を続けるのであった。
◆◆◆
春輝が白嶺の下で修行を行い、そして呼吸などを得てから1年が経ち、春輝と凜子、きららは16歳になり戦闘任務などにも多く出るようになった。
ゆきかぜや達郎も少しずつ任務に出て頭角を現していき、それぞれが新世代のエースとまで言われるようになってきた。
そんなある日、春輝、ゆきかぜ、凜子の3人はアサギから呼ばれて彼女の待つ学園長室へと来ていた。
「春輝、凜子、ゆきかぜ、達郎。今日はあなた達4人には、新しい教官と新しい仲間を付けて任務に当たってもらうわ。入ってきて。」
アサギがそう言うと部屋に入ってきたのは、年若い青年と2人の女生徒だ。
男の方は黒髪のツーブロックに赤い瞳という特徴をした顔立ちの整った男で、腰には拳銃が1丁入っていた。
入ってきた女生徒2人は対象的であった。
1人は春輝や凜子と同い年くらいで栗毛のポニーテールと碧い瞳の凛子並みの巨乳が特徴の美少女であり、もう1人はゆきかぜや達郎と同い年くらいだが銀髪のショートヘアと琥珀の瞳をしたゆきかぜよりも少し大きめの貧乳が特徴の美少女であった。
「アサギ様、この人達は?」
「紹介するわね。彼は
“鷹の目”と呼ばれている対魔忍で、さくらと紫の同期の男性教員よ。」
「初めまして。俺の事は桜牙で構わない。普段は外に仕事に出てるから授業はたまにしかやらない。ま、宜しくな。」
「はい。あの、後ろのお2人は?」
春輝がそう尋ねるとポニーテールの少女が前に出てきて礼儀正しくお辞儀をしてきた。
「初めまして、私は
「宜しくね!!ボクの事は雪兎(ユキト)って読んでね?」
「あぁ、宜しくな。」
「雪兎、今ははしゃがないの。みなさん困ってるじゃないですか。すみません、この子ったら本当に。」
「命、話はあとにするんだ。アサギ様が待ってる。」
桜牙の言葉にハッとすると顔を赤くして、申し訳無さそうにお辞儀をする。それを見て優しく微笑んだアサギは7人に任務を言い渡す。
◆◆◆
そんな中での魔都東京キングダム。
その廃墟となった建物の廃墟の中には2人の男女がいた。
その1人が持っていた刀に切られたであろうオークは、刀の持ち主に踏みつけられていた。
「全く。この程度か?話にならん。」
「リュウ、あまり騒ぎを起こしてはだめよ?最近だと対魔忍も動いてるらしいから。」
そう言ってキセルから出る煙を吹く女性、その姿は蠱惑的で傾国の美女以上の容姿をしており、胸の空いていて足が見えている服を着ている胸に思わず視線がいきそうになる。
しかし、黒髪の男……リュウは首を鳴らす。
「それよりテンマ、例の建物に対魔忍が来るというのは本当なのか?」
「えぇ。それも大物が連れたみたいだから、その施設に向かっているらしいわ。鷹の目が来るらしいわよ?あとは数人の生徒が一緒に来るみたい。」
「そうか。」
それを聞いた刀を持っていたリュウは笑みを浮かべると踵を返す。その顔に笑みは浮かんでいたが、目は笑っておらず肉食動物のようであった。
それを見たテンマと呼ばれた女性はやれやれといった様子で、その後をついて行った……。