春輝達に政府が捕縛命令を出した頃、五車町の東側に建つ立派な屋敷、“篠宮家”。
篠宮は代々、医療の分野で伸びてきた家であり、当主である“
さらに彼には病で亡くなった妻との間に出来た愛娘2人、玲華と咲弥、そしてその2人に引けを取らない養女の胡榛と暮らしている。
そんな篠宮家の次女、咲弥は春輝、晃、真、藤志郎、源太が五車から失踪日から毎日“ある声”を
「……。」
【咲弥、どうした。何だか気がゾワゾワしてるぞ?】
「(またあなたですか。私は今悩んでいるんです。
話し掛けると、毒の調合が間違います。
だから話しかけないでください、“
新しい毒の調合をしていた咲弥に話しかけた存在、それは彼女の精神に住む存在であり、九喇嘛達と同じ尾獣、七の尾を持つ甲虫“重明”。
それが咲弥の中にいる尾獣である。
重明は尾獣としては“
最初は他の尾獣達のような形は無く、“卵”になっていて、その姿のまま人柱力の中で対魔粒子を餌に成長していき、幼体にまで育つとそこから成体になるが普段は幼体で過ごし、戦闘時には成体に変われるのだ。
重明は自身が感じた気配の変化を咲弥に伝えた。
【九喇嘛達の気配がこの町から離れた。
それに何だか
「(そのクラマという方は知りませんが、今五車は混乱しています。容易く外には出られません。)」
【それは分かってる。だが、九喇嘛達やその人柱力である水城 春輝達にも危険が迫ってるんだ。】
「(……今なんて言いました?春輝さんが人柱力?
他には誰が追われているんですか?)」
【他には礼堂 晃、芳陰 真、甲河 藤志郎、犬塚 源太が追われてる。かなり面倒な事になってるんだ。
現状としてはかなり厄介だ。】
重明の言葉に咲弥は調合をしていた腕を止めて、若干混乱仕掛けている頭を整理し始め、今五車で起きている騒ぎの元となった通知を思い出した。
「(五車学園の対魔忍達へ送られてきた、あの指令。
政府から“特殊任務”とありましたが、内容が“捕獲”とあり、ターゲットが春輝さん達なのは変だと思いましたし、それに加えて成功した者には、政府直轄の忍への進級及び多大な報酬あり、なんて明らかな罠なのが丸わかりでした。)……少し出かけてきますか。」
咲弥は対魔忍装束に着替えると、1人で屋敷を出て行ったのであった……。
◆◆◆
その頃、沖縄にいる六尾“犀犬”とその人柱力である羅 蒼影は、とある樹の下に建てられた墓に手を合わせていた。
「……師匠。」
【蒼影、行こうぜ?もう日が暮れるからよぉ。】
「(分かってる。)」
蒼影は元々中華最強と称される羅家の出であり、その腕はどの家の者達でも敵わず、家族からも愛されて育った。
しかし、その日常は蒼影が5歳の頃に、彼の住んでいた村を襲撃した“4人の妖魔”によって台無しにされ、蒼影も殺されかけたが、その時に犀犬とリンクし尾獣化した危機を脱した。
けれども、その姿を見ていた者達から“化け物”と言われ、追われる身となった蒼影は1人、死にかけのまま川に落とされた。
そんな彼を救ったのが、彼の師であり水遁を教えた女性である。
『……!?』
『大丈夫?ほら、怖くないよ。』
その女性は沖縄に住むフリーの対魔忍であり、主に護衛で生計を立ていた。
彼女は幼い蒼影を拾い、弟のように世話したが、蒼影は周りの人間からの暴力や暴言により、人間不信となっていたのでその女性に対して警戒していた。
そんなある日、蒼影を虐めていた悪ガキに彼が犀犬の力で重傷を負わせていたのを見た者達から暴力を受けていたのを知った女性は、単身蒼影を助けに行った。
『あなた達!恥ずかしくないの!?多人数で彼をイジメて!?あなた達も!!余所者という理由で彼を傷つけて、大人として恥を知りなさい!!』
蒼影はそんな彼女を見て驚き、その事以来彼女に対しての警戒心は少しずつ薄れていき、徐々に話すようになった2人は師弟の関係となっていき、蒼影は女性から水遁と水遁の上位種になる“
その中で蒼影は自身の過去と自身の中にいる“犀犬”の事も話すと、女性は蒼影を抱き締めたのだ。
『辛かったよね。大丈夫、蒼影は1人じゃないわ。
必ずあなたの仲間が出来る。
だから、大丈夫よ。』
『〜〜……っ!!うあああああああ〜〜っ!!』
蒼影は我慢していたモノが、堰を切ったように泣き出し、そんな彼を女性はずっと抱き締めた。
それから彼は師匠の下で過ごしながら、沖縄の人達も仲良くなっていき、さらに自身の中にいる“犀犬”とも仲良くなった……。
しかし、蒼影が12歳の時、依頼を終えて帰ると師匠である女性が血を吐いて倒れていたのを見てしまう。
『し、師匠……!!師匠!!!?』
彼女は病に掛かっていて、その病気は治療するのにはすでに手遅れであり、医者も黙って首を横に振るしかなかった。
『師匠……。』
『ごめん、ね……蒼影……。こんな姿、見せてしまって……。』
『んなこと良いから、ゆっくり寝てて!!
俺が、俺が何とか『蒼影……。』?』
『きっと……きっと、あなたにも仲間が出来るわ……。あなたは、言葉が足りない、けど……そんなあなたを見てくれる人達が出来るはずよ……。
あと、これを……。』
彼女が蒼影に渡したのは、彼女が彼の為に造り、プレゼントしようとしていたシャボン玉を造る道具、“
『あなたは、シャボン玉が好きだから……それを……大切に……―――。』
『師匠……?師匠……!師匠!!!〜〜っ!!姉さん!!!!!?』
息を引き取った師匠を前に蒼影は泣き崩れ、深い悲しみに沈み、それ以来、彼は師匠と過ごした家で1人暮らしている。
そして、その家の近くにある樹の下に墓を建てて、命日には手を合わせている。
「……。」
【蒼影……今日も帰るのか?】
「(あそこが俺の家だからな……。俺は……俺にはあそこしか無いから。)」
蒼影はそれだけ言うと立ち上がって、家に入る。
【でも蒼影……。五車はともかく、あの春輝ってのは信じられると思うよ?何か、嘘は吐いてなさそうだし。
それに今、世の中がきな臭くなってきてるし。
ここは、五車に行くのが良いんじゃないかなぁ。】
犀犬の言葉を聞きつつも、蒼影は天井を見上げながら、泡沫でシャボン玉を作って吹いている。
その中で彼は師匠からの言葉を思い出した。
『きっと……きっと、あなたにも仲間が出来るわ……。あなたは、言葉が足りない、けど……そんなあなたを見てくれる人達が出来るはずよ……。』
「……仲間、か。」
蒼影は宙を舞うシャボン玉を見上げながら、何かを考えるのであった……。
こんな感じです!
ちなみに蒼影の師匠は、ナルト疾風伝に出てきたくノ一、スイレンさんです。