今回は優しいあの人が出ます。
その日、美しい満月の日の夜、ソウマは彼に会っていた。
「会いたい?彼に?」
「難しいか?」
「いや、別に会うのは難しくはないぞ。ただ会ってどうするんだ。会うにしたって何かあるんだろ。」
「少し……話をしたいだけだ。」
◆◆◆
肌寒い風が吹くとある日曜日、春輝は翌日の授業再開に向けてリハビリも兼ねながら、山の中を飛び駆け回っていた。
「ッシッ!!」
体調は万全であり、明日から任務に復帰できるほどに身体も回復しており、すぐにでも動き出したい思いでいっぱいである。
しかし、そんな春輝を見て妹のゆきかぜと母の不知火は何処か不安げであり、春輝もそんな2人に気付いている故に大丈夫な所を見せようと思っていた。
「(今回の件では母さんとゆきかぜに不安な思いさせたからな……俺がしっかりしないと。)頑張るぞ〜!」
「元気がいいな。」
背後から聞こえた声に驚き、後ろを振り返る。
すると、そこには優しげに微笑む1人の大人びた雰囲気の青年が木に寄りかかっていた。
その青年に春輝はどこかで見たような気がしたが、何故だか思い出せず、首を傾げるばかりになる中、青年は春輝に尋ねる。
「ここは君の修行場かい?」
「え?……はい、そうですけど。」
「そうか。いつも1人で修行を?」
「いえ、今日はたまたま1人でやってて。いつもは師匠が一緒にしてくれるんです。」
「なるほど……すまないが、ここにしばらくいさせてくれ。邪魔はしない。」
「は、はぁ……。」
春輝は青年に返事をすると、1人で黙々と修行を行っていたが、青年からの無言の圧力と自然に戸惑い、中々上手く動けずにいた。
すると、青年は春輝に再び尋ねる。
「君は、何故修行を?」
「……ウチは母さんと俺、妹と暮らしてて父が亡くなったので、2人を守れるくらいになりたいと思って修行をしてるんです。それに最近かなり心配させちゃって、だから少しでも頑張らないとって思ったんです。」
「……。」
「お兄さん、ご家族は?」
「両親と弟がいた。だが、今は1人だ。俺は弟には兄らしい事はしてやれなかった……。」
「そう、ですか。でも、あなたみたいに優しそうなお兄さんなら、弟さんは幸せだと思いますよ。」
「ありがとう。だが、俺は最低の人間だ。
大切な家族を天秤にかけてしまった事があってな。
そして、弟に許されないことをしてしまった。」
「許されない、事?」
「……すまない。こっちの話だ、だがこれだけは覚えておいてくれ。
“力を持てば孤立もするし、傲慢にもなってくる。だが、どんなに強くなろうと全てを一人で背負おうとするな。そして、大切なものを……家族や仲間を忘れるな“。」
「え……それって。」
それだけいうと青年は春輝の前から去っていき、残された春輝は青年の残した言葉が胸に刺さり、修行を中断して家に帰った。
「ただいま。」
「あ、お兄ちゃんおかえり!」
「あら春輝、早かったのね。」
「うん。あのさ、母さん、ゆきかぜ。今日、外でみんなで夕飯食べない?」
「いいの!やった!!お母さん行こうよ!!」
「そうね、ならシアリーさん達も連れて行かないと。今日はみんなでご飯に行きましょうか。」
春輝達はその夜、皆で町の料理屋に出かけて外食したのだが、その様子を春輝と話していた青年……うちは イタチと見ていた。
そんな彼にソウマが後ろから歩み寄る。
「話せたか?」
「あぁ、彼も顔付きが変わったよ。」
「会いたい。だが、他人として会わせてくれと言われた時には驚いたが、まぁ良いか。んで、お前から見た春輝は?」
「サスケと同じくらい危なっかしいが、彼が周りの者達と手を取り合えば大丈夫だろう。……彼は1人では純粋すぎる。」
そう言うとイタチは立ち上がり、ソウマと逆方向に歩き出す。
「もう行くのか?」
「あぁ、戻らないと行けない時間だろ。待たせるのは良くない。」
「真面目だねぇ。」
イタチはソウマと共に自分の行くべき場所へと戻るのであった……。