※この作品はR-18です。

対魔忍HARUKI   作:ボルボロックス

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エロ行く前に頂いた案を!


閑話 齎された訃報

「ぁ……っ」

 

 

「暁先生!?先生!!」

 

 

「そんな……!ああああ……!!!!?」

 

 

 風間鬼蔵が引き起こした"獣憑き捕獲作戦"は春輝を始めとした五人の人柱力と、彼らを護ろうとする五車の仲間達の奮闘によって阻止され主犯の鬼蔵は、春輝によって倒され五車に再び平穏な日々が戻りつつあった。

 

 

 そんなある日のこと、とある廃屋で葉取天舟は主であり実祖母でもある葉取星舟に連絡を取っていた。

 

 

「暁 桜牙の死亡が確認できました。」

 

 

『それは本当なんでしょうね?』

 

 

「はい、鬼蔵の件が終わった後、葬儀が行われ、そこに参列し直接確認しました。」

 

 

『…偽物という可能性は?』

 

 

「ありません、あなた様の邪遁の残滓を死体から確認することができました。間違いありません。暁の直弟子二人が泣き崩れていましたのと、奴に想いを寄せていた井河 さくら、八津 紫も疲弊した顔をしていたので本物であると確信しました。」

 

 

『暁 桜牙……ふふふ、ああいったタイプの忍びは厄介だからね、早めに始末できて良かったわ。そういった意味じゃ彼に記録媒体を預けた芳陰に感謝しなくっちゃねぇ。しかし、あの娘(さくら)も馬鹿よねぇ。あんな馬鹿姉に付かずに私に付けばこんなことにならずに済んだのに‥…実の祖母を蔑ろにした罰よ。』

 

 

「おっしゃる通り。あんな愚か者に付かなければ恋慕している男を失わずにすんだものを。」

 

 

『全くよ、あの娘(さくら)は姉とは違い賢いと思ってたのに、本当に姉妹揃って祖母不幸者よ。』

 

 

 さくらに対して逆恨みを言う星舟。

 

 

『他に何かないかしら?』

 

 

「‥‥風間鬼蔵が起こした茶番の影響は五車に少なからずの影響を与えた様です。」

 

 

『そう、具体的には?』

 

 

 どうやら暁桜牙の生死の有無と鬼蔵が引き起こした獣憑き捕獲作戦が五車へどの様な影響を与えたのかの報告のようである。

 

 

「鬼蔵の扇動に乗り、あの五人を追跡した連中の処遇が難航しているようです。」

 

 

 今、五車で一番の問題となっているのは鬼蔵が発した春輝達五人を捕縛命令に従ってしまった生徒達への処遇であった。

 

 

 これがアサギも認め正式に発したものだったら情状酌量の余地はあっただろうが、捕縛に行った生徒は自身のクラスの担任に確認もせず、命令書に明記されていたことに目が眩んだ行動であるので同情の余地はない。

 

 

 しかし、彼らの親や一族が処罰の減軽を求めてきたことで頭を痛めているのであった。

 

 

 仲間だから、若さゆえの過ち、という理由で処罰をなあなあで済ませば確実に未来の禍根になるので適切な処罰をしなければいけないのだが、今回の件は水に流すべしという意見を少数ながら主張する連中が出てきたりして、アサギの頭を悩ませているのと処分を恐れそのまま逃亡した生徒もいるのでその対処に苦慮しているのだ。

 

 

 運悪く鬼蔵の部下と鉢合わせをして戦い、戦死してしまった生徒の扱いは、名目上任務中(鬼蔵の命令とは別)による魔族との戦闘による結果として処理された。

 

 

 この件に関しては一部の遺族から不満が出たが偽指令による戦死と処理されるよりはマシと思ったのか、それ以上の不満は出ずに終わったのであった。

 

 

『ふーん、あの娘はこんな下らないことに頭を悩ませているなんてね、本当に甘ちゃんね。』

 

 

 星舟は天舟から聞いたことに関する感想を述べると共

に自身の考えを口にしアサギをコケ降ろす。

 

 

『私だったらこんな奴ら一族郎党とも粛清一択だけどね。やはり組織のトップに立つ器じゃないわね、あの子は。』

 

 

「おっしゃる通りです。」

 

 

 天舟は星舟の言い分を肯定していき……

 

 

「対魔忍の頂点に立つのは“井河 アサギ”や“風間 鬼蔵”、ましてや、死にぞこないの“ふうま”ではなく星舟様だけです。」

 

 

 星舟こそ相応しいと褒め称える。

 

 

『ふふふ、当然よ。それで?五車で他にはないかしら。』

 

 

「特に目立ったことはありません。ああ、そういえば鬼蔵の部下に殺された雑魚が大量に出た影響なのか、俺にも上級任務を言い渡されました。」

 

 

『‥‥今まであなたに低級任務だけしかやらせていなかったのに意外ね‥‥罠かしら?』

 

 

 葉取天舟は投降すると見せかけ五車に潜入(は)いることはできたが、ぶっちゃけて言えばアサギを始めとした上層部(特に獅子堂)は天舟のことを信用していなく、半ば飼い殺し状態となっており任務も低級任務しか受けたことしかない有様だったのだ。

 

 

 この警戒ぷりは流石の星舟も想定外で天舟からこの事を報告された時は思わず、そこまで!!?っと叫んでしまうほどだった。

 

 

 天舟がここまで警戒されてしまうのは、他でもなく星舟が独立時代に井河勢力拡大のため、色々とド外道なことをやり過ぎてしまったのが原因なのだが。

 

 

 まぁ、それ以外にも星舟が支配しているとはいえ葉取一族で投降してきたのが天舟だけだったなのが怪しさを助長させていた。

 

 

「‥‥俺も最初は疑いましたが、今回の件が影響しているのは間違いなさそうです。」

 

 

『‥‥釈然としないけど、まぁいいわ。上級任務を成功させればそれだけ機密情報に触れる機会が増え決起する際こちらに有利なるから今は大人しく任務をこなしなさい。』

 

 

「了解しました‥…やっと餓鬼のお使いレベルから抜け出せます。」

 

 

『‥‥ホントにねぇ、長かったわ。』

 

 

 思わず愚痴が口に出してしまう天舟だが、星舟も思わず同意してしまう。それだけ天舟の冷遇っぷりは星舟の予想を上回っており、スパイとして潜入させたことを少なからず後悔していたりするのであった。

 

 

「ツキが向いてきたと言えば、実は五車での俺の待遇が改善されそうです。」

 

 

『どういうことかしら?』

 

 

 実は天舟の待遇を差別だと憤っている星舟の所業を知らない上級生や同級、下級生達の一部が天舟の待遇改善を教師達に申し出ているのだ。

 

 

 普通だったら喜ばしいことなのだが、教師達からしてみればスパイの可能性がある人間の待遇改善は危険すぎるので、この申し出について頭を痛めているのである。

 

 

 『あら、いい子達じゃない。そういった子達の縁は大切にした方が良いわよぉ‥‥その時が来るまで。』

 

 

「え、ええ……解っております。」

 

 

 

『‥‥浮かない返事ね、‥‥まさか絆された?』

 

 

 

 それを聞いた星舟の声音には、嘲笑が含まれていたが、天舟の何やらはっきりしない返答に疑念を抱き尋ねる。

 

 

「いいえ、実はその時が来るのを心待ちにしているのです。」

 

 

 天舟はきっぱり否定し続ける。

 

 

「実は妄想にふけっていまして。」

 

 

『妄想?』

 

 

「ああいった自分達がやっていることは“正しい”と思い込んでいる連中が、実は盛大に間違っていたという事実に気づいた時の顔を想像してしまいまして。あああ、俺の本性を知った時、一体どんな顔して俺を的外れなことを言い分糾弾するのか、俺に殺される際に最後はどんな屈辱と恥辱に塗れた死に顔を晒すのか、楽しみでしょうがないんです!!!」

 

 

 天舟の脳裏には自分の待遇改善を申し出ている先輩、同輩、後輩達が自分の本性を知った時の絶望に満ちた顔で恨み節を吐き自分に殺される場面を想像し、悦に浸っていた。

 

 

 彼からしてみれば本来だったら支配されていたはずの連中に、同情されるのは屈辱の極みので精神にもの凄くストレスが掛かっていたのだ。

 

 

 酔ったように天舟は言う。

 

 

「あいつらは俺に対してこう言うですよ、恩知らず、人でなし、外道と。それに対して俺はこう返答するんですよ、お前らに人を見る目がないだけだと、ね。……ああ、堪らねぇ……。」

 

 

 妄想で顔が醜く歪み笑いながら語り終える天舟、それに対して

 

 

 

『(相当溜まってるわね……)ふふ、そうね。その時はしっかり教育してあげなさい。』

 

 

 天舟の妄想を聞いて内心少し引きながら彼の言葉を肯定する。

 

 

 星舟が天舟に言う。

 

 

『この前言った水城春輝の監視とふうまの小娘の抹殺なんだけど、小娘抹殺より水城春輝の監視を優先しなさい‥…できればあの坊やをこちら側に堕としなさい。』

 

 

「?それはなぜでしょう。」

 

 

『鬼蔵の一件で気になることがあってね‥‥あの坊やの力の本質は尾獣じゃないわ、あの子自身よ。』

 

 

「!?」

 

 

 星舟の言葉に思わず絶句する天舟、あの巨大な力の塊である尾獣がおまけというのは信じがたいからである。

 

 

『今までの戦闘記録を目を通してきたけど、ピンチになったら新しい力が覚醒するなんてマンガじゃあるまいし‥‥恐らくあの坊やには“何か”あるわ、それも世界のあり方を変える何かを。』

 

 

 流石、長きにわたって様々な対魔忍を見て来たことだけあって、観察眼は一級品で春輝の異常性を見抜いたようであった。

 

 

 対魔忍世界では忍び一人に対して一つの忍法もしくは一つの異能のどちらかが目覚めるのが常識で、親のどちらかが人外だった場合は忍法と親の力の両方を持つことがある。

 

 

 この場合、春輝の彼女である鬼崎きららが具体的な例と挙げられるだろう。

 

 

 だが、春輝はそういった物に当てはまらない正しく異常な存在だと星舟は思った。ただでさえ複数の忍法を使い、異なる属性を混ぜ合わせ新たな忍法を作り見たことも聞いたこともない異能に目覚めている。

 

 

 無論先代糸型の杜遁や篠宮玲華の華遁のことは知っているが、それよりも春輝のは異質なのである。資料を読み熟考し悟ったのである水城春輝はこの世界の法則から外れた存在であると。さらに星舟は考えた、もしこの坊やの力の秘密を解き明かしそれを自分のモノにでき自身の力の強化に使えたらと。

 

 

「信じがたいですが、こちらの利となるのであればやりましょう。」

 

 

『今回の件で水城春輝は心の奥底で五車に対する不信感を持った筈よ、上手くやればこちらに堕ちるわ。まぁ、堕とせなくても坊やの体細胞を手に入れてくれればいいわ。でもどちらも不可能だったら‥…殺しなさい。』

 

 

「了解しました。」

 

 

『期待してるわよ。』

 

 

 それを最後に通信は切れる。

 

 

「ふぅ……また難しい任務を頂いたが、これも偉大な御婆様のためやるしかないな、だがなぁ。」

 

 

 天舟はどこか乗り気ではないようだ。

 

 

「確かにあのガキの力は強力だが、こちら側に堕とす価値があるのか?」

 

 

「それに世界の在り方を変える何かを本当に持っているのか?‥…持っているようには到底思えないのだが。」

 

 

 どうやら星舟の見解に疑問を抱いているようだ。天舟からしてみれば確かに春輝は優秀で強力な忍法を複数扱えるが自分達に脅威になりえるとは思っていないのであった。

 

 

 遠くから観察してみたが確かに忍法などは脅威だが、肝心の精神面は一般人レベルに毛が生えた程度の物しかなく、そこら辺を上手く嵌めれば総崩れすると踏んでいるのだ。寧ろよくもまぁ、そんなメンタルで忍をやっていると呆れを通り越して感心しているのであった。

 

 

「まぁ、間近で観察してみれば真偽が明らかになるか。さてさて、あのガキをどうやって堕とそうか?やはり獅子堂と芳陰の対立の火種にしてしまおうか?くくく、やり方はより取り見取りだ。愉しみだなぁ……どんな顔で堕ちるのか。」

 

 

 そう言いつつ廃屋を後にするのだった……。

 




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