おかしい点が有ったら、ご指摘をお願いします。
襲われた逸刀流
怪しく満月の光る夜、カンッ……カンッ……と硬い金属を叩く音が人里離れた小屋から響いてくる。
中からは蝋燭に照らされた灯火と、橙色にまで熱された鉄を打つ大柄な男がおり、彼は熱心に目の前の鉄を打っている。
すると、扉が開き1人の人影が現れた。
「何用だ?」
鉄を打っている男は振り向くこと無く後ろにいる人物へと話しかけた。すると、小屋を訪ねてきた人物、闇のヤイバが袋に包まれた“ソレ”を男の側に置く。
「素材だ。役立てるといい。」
「ほう?そうか、そこに置いておけ。後で見る。」
「うむ。……刀は完成したのか?」
「あぁ、何せ“奴”を使った至高の一振りだ。最高の出来になるだろうな。」
「そうか。ならばその至高の一振りで念願を叶えると良い。」
ヤイバはそれだけ言うと小屋を去っていき、残された男はヤイバに構うこと無く鉄を打ち続けるのであった……。
◆◆◆
その翌日、秋山家の道場では春輝と凜子が竹刀を使い、剣の稽古を行っており緊張感のある空気が流れていた。
「はぁ!」
「はっ!」
竹刀がぶつかり合い、乾いた音が道場に響く中、2人の稽古は昼まで続き、稽古後は不知火の作った昼ご飯を食べていた。
「春輝、ずいぶん腕を上げたな。前にも増して強くなっている。」
「?そうなのか?よくは分からないけど。」
「なんというか……硬さが無くなったな。柔軟な動きになっているし、動き辛そうだったのが消えている。」
「そうなのか。凜子、教えてくれてありがとうな。」
「お兄ちゃん、どんどん強くなって……私も負けてられない!」
その後、昼食を食べ終わった凜子、春輝、ゆきかぜは午後からの授業に出るために学園に向かい、授業に出たが愛する人である暁を失い、心に傷を負ったさくらと紫は授業に出られず、そして師を失った生徒数名も学園を休んでいるらしい。
さらに春輝達の事件で多くの生徒達が
その中で急務となっているのは、現在五車学園に在籍している生徒たちの育成と新しい生徒の入学であり、特に学生達の育成には獅子堂家、芳陰家主導の下、自主的に鍛錬を行う者達の指導を行っている。
「はぁ……疲れた。午後からだから楽だと考えてたけど、午後一発目の体育(獅子堂家監修)はかなり体にクるな。」
「私としては身体を動かせて気持ちいいけどね。まぁでも獅子堂は新進気鋭な新興の名家っていうだけある分、実力者も多いわよねぇ。」
「翔馬達がどんだけ凄い訓練をしているかが、よく分かった。」
「ははっ、芳陰の家もそうだけど、獅子堂もぶっ飛んでるよな。」
きらら、藤孝と話しながら、体育の順番を待つ春輝。
視線の先では獅子堂 時貞と源一による指導が行われており、春輝達は負けてられないと思いながら訓練を行い、任務の時間までしごかれたのであった。
そして、その放課後に春輝、凜子、篁 斗斬、達郎、死々村 孤路の5人にアサギから任務の通達が報じられ、5人はアサギの待つ理事長室へと装備を整え、対魔スーツに着替えて向かった。
「最近ヨミハラで対魔忍、特に“逸刀流”を習得している者が何者かによって斬殺される事件が多発しているわ。その中には中忍クラスの者もいるから今回はあなた達5人に調査に向かってもらうわ。指揮は凜子がとりなさい。」
「はっ!」
「戦闘になる事も視野に入れて動くようにすること!無茶な戦闘は避けるように。」
「「「「「はっ!」」」」」
5人はヨミハラまで一般車に偽装した兵員輸送車に乗って向かったが、その車内で凜子は緊張した面持ちで精神統一をしていた。
緊張からか凜子の手は震えており、春輝は凜子にそっと話しかける。
「……大丈夫か、凜子?」
「すまない、春輝……隊長なのに情けないな。だが、どうにも不安なのだ。」
「逸刀流の門下生達が襲われてるってことだからな。一体誰が。」
「恨みを持った者が居たからか、それともノマドの手の者なのか……どちらにしろ、私はその相手を討つつもりでいる。」
「……凜子、一人で抱えるな。俺や達郎くん、それに仲間を頼ってくれ。」
「春輝さんの言う通りだよ。姉さん、僕も戦う。」
「ありがとう、2人とも。篁達も力を貸してくれ。」
「任務をこなすだけであり、敵は切るだけである。」
凜子の言葉に孤路は強く頷き、凜子は安堵したのか微笑む。
そして兵員輸送車がヨミハラの隠しポイントに到着し下車すると、5人は辺りを警戒しながら目的の地点まで駆け足で向かう。
すると、遠くから剣戟の音が響いており、物陰から覗くと周囲には刀で斬り捨てられた死体と、全身を斬られ瀕死の女対魔忍に止めを刺そうと刀を振り下ろそうとする男がいたのだった。
「春輝!」
「分かってる!風遁、大突破!」ゴオオオオオオオオオオオッ!!
「っ!!」
春輝の放った風遁、大突破に男は後ろに飛び退いて下がり、春輝達は女対魔忍の前に立って凜子が彼女を横抱きにする。
「大丈夫か!?しっかりしろ!」
「…あ、貴女、は……逸刀流の……。」
「っ!(何故私のことを?)」
凜子を見てそう言った女対魔忍は気絶し、凜子は彼女を背負う。
「対魔忍か。邪魔を………………っ!!!?青髪の小娘、その刀は!?石切兼光か!!」
「貴様、何故石切兼光の事を知っている。貴様は何者だ!」
凜子が持つ石切兼光を見た男は歓喜し、空を見上げて叫んだ。
「ようやく、幼い頃から夢見た悲願を叶えられる!!」
そう叫ぶと、春輝や達郎たちを無視し、凜子に襲い掛かる。
春輝たちは突然のことで唖然としたが、凜子を助けようと男を攻撃しようとした春輝達は突如、地面に転がっていた死体が起き上がり、彼らに襲い掛かってきて凜子を助けるどころではなくなってしまった。
「何だこれは!?死体が勝手に!?」
「これじゃあ姉さんを助けに行けない!!?」
「ちっ!鬱陶しい!」
「〜〜っ!?」
4人が死体の軍勢に圧される中、凜子は負傷した女性を背負い庇いながら戦っているために苦戦を強いられていた。
「くっ!?」
「そらっ!そらっ!どうした!石切兼光の使い手、逸刀流の者よ!この程度ではあるまい!!」
「ちぃっ!!このままでは!」
「さぁ、トドメだ!」
男が凜子にトドメを刺そうと刀を構えた時、男は突然どこからか飛んできた弾丸を躱して、その場から飛び退く。
何事かと春輝達は弾丸が飛んできた方を見ると、そこにはノマド治安部隊と魔界騎士イングリッドがいた。
「ちぃぃっ!魔界騎士!!?」
「対魔忍共もあの男も捕らえろ。決して逃がすな!」
イングリッドの指示で治安部隊が弾丸を放ってくるが、春輝は好機と捉えた。
「皆集まってくれ!退散する!消え身の術!!」
春輝は凜子達と女性と共に消え身の術で退避すると、凜子に肉薄していた男はそれを見て舌打ちをする。
「おのれいらぬ邪魔を!!」
「貴様もここで捕らえる。逃がすと思……!!?」
背後から殺気を感じたイングリッドが腰から剣を抜いて弾くと、闇のヤイバが男を護るように立つ。
「退くぞ。」
「ちぃっ!」
ドロンと消えた男とヤイバに、イングリッドは強く舌打ちをした……。
一方、危機を脱した春輝達は隠していた兵員輸送車で五車へ帰還し、重傷を負っていた女対魔忍は五車の病院に運ばれ緊急治療が行われた。
春輝達はアサギに事の顛末を報告すると、一度五車学園に戻るように指示を受けて、学園へと帰還するのであった……。
◆◆◆
それから3日後、春輝と凜子が学園に登校した時、春輝と凜子は理事長室に呼び出された。
「アサギ様?」
「アサギ様、どうかしましたか?」
「春輝、凜子。3日前にあなた達が病院に運んだ女性が目を覚まして、自分の事を話してくれたわ。」
「あの女性は誰だったのですか?私を知っているようでしたが……?」
「……彼女の名は“陽炎”、嘗て禁術に手を出し、逸刀流を破門された凜子の兄弟子だった村雲 源之助の部下だった女性よ。」
「なっ!!?馬鹿な、あの、兄者の……?!」
「アサギ様、誰ですか村雲 源之助って?」
凜子は酷く驚いた様子で目を見開き、その様子を見ていた春輝はアサギに尋ねた。すると、その質問には凜子が答えた。
「兄者は……剣士として卓越した力を持つことに加え、他者を意のままに操る異能系忍法「傀儡の術」の使い手だ。高い実力を持っていたが、術を仲間の身を顧みないような使い方をし続けたことで忌み嫌われ孤立した上、力を求めるあまり死者を操る禁忌の術である“死霊傀儡”に手を出したことで破門となり、五車を出奔したんだ。」
「そんな人がいたのか。」
「アサギ様、その陽炎という女性に会わせてください。私が話を聞いてきます。」
「凜子、これ以上は「これは逸刀流の問題でもあります!」あ!凜子!」
「凜子、おい!失礼します!?」
凜子は部屋を飛び出すと、学園を出て陽炎のいる病院へと向かうのであった……。
次回、敵の敵は味方?