きららと関係を持ち、更に深い関係になった後、春輝ときららは五車町へと2人で戻り、春輝はアサギに報告をした。
「と、言うわけできららは無事に帰ってきて、今は治療を受けています。」
「そ、そう?それならいいけど……大丈夫?やつれてない?」
「あ、いえ、大丈夫です……。では、俺は授業に戻ります。」
そう言って、クラスへと戻っていくと凜子達と挨拶を交わして席に着くと、一つ隣の席できららがいた。
彼女はクラスメートと楽しく話しており、いつも変わらない様子である。まぁ、数回しただけで思い上がるのは……。
そんな事を考えながら、授業をこなして放課後になるときららが話しかけてきた。
「春輝、今日もその、鍛練するの?」
「あぁ、今回は蓮魔教官や黒田さんと一緒にな。」
「そうなんだ?ねぇ、私も一緒に良い?」
「俺は構わないけど、蓮魔教官に聞いてみるか。」
その後、蓮魔教官に聞いたら「構わないぞ。バッチリ扱いてやる。」と言われ、俺ときららは蓮魔教官に文字通り扱かれ、その分強くなった。
しかし、その2日後の事。
俺とゆきかぜはアサギさんに呼ばれ、その中で母さんが任務中に行方が分からなくなり、父さんも“とある魔族”との戦闘の中で殉職したとの報告を知らされた。
「母さんが消えて、父さんが、死んだ……?」
◆◆◆
ゆきかぜside
お父さんが死んで、お母さんまで任務中に行方が分からなくなった。一気に起きた2つの出来事にわたしは頭が着いてこなかった。
対魔忍という事をやっていれば、必ずこういう日が来るというのは分かっていた。でも、それがまさか2つ同時になんて思いもしなかったし、考えたくなかった……。
「ゆきかぜ、起きてるか?」
お兄ちゃんが部屋に訪ねてきた。
ベッドの上で膝を抱えているわたしは、顔は上げずに耳だけでお兄ちゃんの声を聞いている。ショックの方が大きすぎて、顔を上げることが出来ず動けずにいる。
「夕飯、ここに置いとくから後でゆっくり食べるんだぞ?」
「……。」
「……父さんが死んで、母さんもいなくなって、一気に色んな事が起こったな?
まさか、こんな事になるなんて」
「何で……!」
「ん?」
「何でお兄ちゃんは平気なワケ!!!?お父さんが死んで!?お母さんもいなくなって!!?それなのに何で平気な感じでいられるわけ!!?任務に慣れすぎて、家族の事なんて心配じゃなくなったの!!?」
わたしがそう叫んでベッドを思いっきり叩いて、お兄ちゃんに言葉をぶつけていく。
こんな事しても意味ない事くらい分かってる……こんなのはただの癇癪であり、自分の不安を誰かにぶつけたいという思いから出た行動。
こんな事しても意味がない事くらい分かってる……分かってる筈なのに……。
「……お兄ちゃん、わたしどうしたらいいの?教えてよ……。」
「……辛い時は泣いたっていい。」
「……お兄ちゃん。」
駄目だよ……そんな優しい言葉言わないでよ。
そんなこと言われたら、わたし……わたし……!
「んじゃ、夕飯はここに置いとくから。冷めないうちに食べてくれ。」
そう言うとお兄ちゃんは離れていき、わたしはゆっくりとお兄ちゃんが用意してくれた夕飯を見る。
お兄ちゃんが作ってくれたのは、オムライス……子供の頃にお兄ちゃんにが作ってくれた大好きなメニュー。
「お兄、ちゃん……あむっ……。」
わたしはオムライスを食べていく。けれど、目が潤んで上手く食べれないし、ポタポタと涙が止まらない。でも、オムライスはとても美味しかった。
涙を拭いて、食器を持ってリビングに行くとお兄ちゃんが誰かと電話をしているのが見え、わたしは隠れて聞くことにした。
「はい……。それじゃあ、母さんは"ヨミハラ"にいるんですか?分かりました。では、その救出には俺が行きます。はい、はい。日付は?はい、はい。分かりました。ではその日に。」
「(お母さんが生きてる!?)」
お兄ちゃんの電話の相手、多分アサギさんだと思う。
お母さんのいるのが、ヨミハラって場所に私も行きたい。行ってお母さんを助けたい!
「……っ!お兄ちゃん!」
「ゆきかぜ。どうかしたのか?」
「その、お母さんの居所がわかったの?」
「……あぁ、アンダーエデン。地下都市ヨミハラにいる確立が高いらしいんだ。そして、その情報を持っている政治家がいるらしい。」
「なら私も行く!!お母さんを連れ戻すのに連れて行って!!」
わたしがお兄ちゃんにそう言うと、お兄ちゃんは腕を組んで考え込んでしまう。
少ないけどお兄ちゃんと同じように任務にだって出てるし、魔族や魔物、敵として出てきた傭兵だって倒している!
わたしには誰かを守るだけの、助け出せるだけの力があるんだ!!
「お兄ちゃん、お願い!わたしも連れて行って!!わたしもお母さんを助けたい!足だって引っ張らないようにするし、邪魔もしない!だから、お願い!」
「……分かった。アサギさんには俺から伝えておくよ。日にちは3日後の夜だ。やれるか?」
「やるよ!!わたしだって対魔忍だもん!!」
「そうか……頼んだぞ、ゆきかぜ。」
お兄ちゃんに頭を撫でられた後に頷くと、わたしはお兄ちゃんと久しぶりにお風呂に入った。
お互いに成長しているから恥ずかしかったけど、お兄ちゃんにならどんな所も見せたいと思えたし、何よりお兄ちゃんの事が好きだから……。
その後はお兄ちゃんに髪を乾かしてもらって、一緒に寝ることにして、任務の日を待つのであった……。