彼らは間に合うのだろうか?
【油断しやがって。なに古馴染みの古典的な手に引っかかってるんだ。】
「面目ない……。」
春輝の精神世界、その中で春輝は九喇嘛から説教を受けており正座させられていた。
凜子に気絶させられ、助けられるはずだったのに1人で行かせてしまい、その事を九喇嘛から“甘い”や“温すぎる”と言われ、春輝は深く落ち込んでいた。
【お前はマシになったと思ったら、すぐに抜けやがる。もう少し強引になりやがれ。】
「はい……けど、まさか凜子に気絶させられるなんて思わなかったから。」
【少しくらい強引にならねぇと、いつかとんでもねぇ事になるぞ!嫌われる覚悟を持ちやがれ!!】
九喇嘛に叱責され、しゅんと落ち込む春輝であったが、春輝は実際強引になることは難しく、それが春輝の美点であるのだが、九喇嘛はそんな一面を危惧していた。
春輝は基本的に優しい。仲間や家族には優しすぎる点があり、それは美点であると同時に大きすぎる弱点でもあるのだ。
だからこそ九喇嘛は春輝に嫌われる覚悟を持ち、若干強引になれと叱ったのである。
【大切なもんなら無くさねぇ様にしろ。んでさっさと起きて助けに行け。】
「うん!ありがとう、九喇嘛!」
◆◆◆
「ぅ……うぅ……ん?」
「良かった。春輝、目が覚めた?」
「大丈夫か?春輝。」
「良かった。お兄ちゃん、目が覚めて……。」
「無事でよかったです。」
春輝が目を覚ますと、目の前には翔馬、きらら、ゆきかぜ、達郎がおり、春輝はきららに膝枕されている。
「きらら……翔馬、ゆきかぜ、達郎くん?なんでここに?」
「秋山からお前がここに倒れてるって知らされて、ここに来たんだよ。大丈夫か?」
「あぁ、それより凜子を助けに行かないと。多分凜子のやつ、今回の件が終わったら何かする気だから。」
「そんな。お兄ちゃん、凜子先輩何する気なの?まさか、対魔忍を辞めたりしない、よね?」
ゆきかぜが不安そうに春輝に尋ねる。
春輝はそんな妹の頭を撫でると、優しく語りかける。
「辞めさせたりしない。俺も凜子には一緒にいてほしいからな。……翔馬。」
「俺は今回何も言わねぇぞ。明らかに悪いのは秋山だからな。」
「分かってる。けど、力を貸して欲しい。このとおりだ。」
頭を下げて頼んでくる春輝に、翔馬は呆れたようにため息を漏らすと、頭を掻く。
「……分かったよ、取り敢えず“貸し”にしとくからな。秋山を助けに行くぞ。」
「あぁ。ゆきかぜ、きらら、達郎くん。行こう。」
「うん!」
「こうなったらやってやろうじゃないの!」
「はい!」
春輝達は凜子の元へと向かって走ると、地下道から開けた場所に出ると、そこでは凜子と梶谷が激しい剣戟を繰り広げていた。
互いに相手の攻撃を避けながらも、相手を殺すために刀を振り、急所を狙って斬撃を放っているが、凜子は傷が多く目立っている。
「凜子先輩!」
「っ!?何故来た!お前たち!?」
「秋山、お前が馬鹿なことすんのを止めるために来たんだ!心配してる奴らがいるのに、そいつら泣かせる気か!?」
「姉さん!撤退してください!!」
「……今回の一件は私の独断だ。お前達は関係無「関係無い訳あるか!!仲間だし友達だろうが!!」っ!春輝……。」
「よそ見してて良いのか……!」
「っ!!」
梶谷の村雲丸からの斬撃が頬を掠めるが、凜子は地面を転がって躱し、体勢を整える。
一方で梶谷は怪しく笑みを浮かべながら、春輝達に刃を向けて牽制すると、翔馬が叫ぶ。
「梶谷!もう観念しろ!お前の根城兼鍛冶場は抑えた!もう武器は造れない!!」
「造るつもりもないから安心しろ。俺にとっては、石切兼光さえ手に入れられればどうでもいい。石切兼光さえ、この名工である俺が手に出来るのならな!」
「おい梶谷、あんた、なんで自分が名工だなんて思えるんだ?」
春輝の問い掛けに梶谷は、だらんと手を下ろし、天を仰ぎ見ながら話し始めた。
「俺は、今まで数々の作品を生み出してきた。その中には傑作と言われるものを造った事もあった……。だが俺は極められなかった!!!!刀の中でも至高の一振りとされる石切兼光を超える作品を生み出せなかった俺は、素材を鉱石から魔族や特殊な忍術を使う者を使うことにしたんだ。この村雲丸に村雲源之助を使ったようにな。」
「「「っ!!?」」」
「人道を踏み外した外道に落ちたってことか。」
「魔科医が可愛く思えてくるわ。あんた狂ってるよ。」
きらら、ゆきかぜ、達郎が絶句し、翔馬と春輝が梶谷を非難するが、梶谷は構わずに言葉を綴る。
「至高の作品を生むためならば関係なんてない!!!!それこそ、俺の作品になれたのだから、喜ぶべきだ!!!」
「あんたの御託なんてどうでもいい。あんたが人の道を外れた外道だって事が、よく分かったからな。」
「審美眼の無い便所虫どもには俺の作品の素晴らしさが分からないか。ならば見せてやろう。傑作である村雲丸の素晴らしさを!!!」
そう言うと梶谷は空を一閃すると、地面から大量に人骨や死体などが蠢き出してきたのである。
「これは……。」
「これぞ!村雲丸の力!!村雲丸には村雲源之助と奴が愛刀としていた妖刀「落椿村正」をふんだんに使い、源之助の力である死霊傀儡の力が自在に使えるのだ!!さあ、邪魔者を殺せ!!」
「みんな!!「お前の相手はこの俺だ!!!」くっ!!?」ガキィィィンッ!!!
「いかに優れている者共でも、100を超える死体には勝てまい。奴らはお前を助けに来たことで無駄死にするんだ。だが安心しろ。奴らも使ってやるさ、俺の作品としてなぁ!!!」
「っ!?貴様ぁ!!!」
ドオォォオンッ!!
凜子が怒りに任せて叫んだ瞬間、死体の山から金色のエネルギー体の腕が伸び上がり、死体を吹き飛ばしていく。
視線を移すと、そこには九喇嘛モードになった春輝が仲間達をオーラで護っていた。
「凜子ぉ!こっちはどうとでもなるから、そのイカれ野郎をたたっ斬れぇ!!負けんじゃねぇぞ!!」
「春輝……あぁ、負けないさ!!」
凜子は梶谷を弾き飛ばすと、憑き物が取れたような清々しい気持ちで、梶谷に向かっていくのであった……。
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