「はぁっ!!!」シュッ!!
「っ!!?」ズバババババッ!!
凜子が気合を込めて、石切兼光を振るい、刃から振るわれた斬撃に梶谷の身体は切り裂かれる。
速すぎる凜子の斬撃に石切兼光の斬れ味が乗り、梶谷は追い詰められていき、身体に多くの切り傷が出来ていく。
「くっ!?先程まで太刀筋がぶれていたのに、何故急にこんな!?」
「負けるわけには、いかないんだ!帰る場所があるから!」
「っ!?あの端材どもか!!死体ども!その端材達を即刻始末しろ!!」
「「「「「誰が端材だ!!」」」」」
春輝達5人は死体の軍勢を忍術、体術で応戦し、死体の軍勢を蹴散らしており、その様子を横目で見ていた梶谷は舌打ちをする。
梶谷が舌打ちをした瞬間、凜子の居合斬りが炸裂し、梶谷の片腕を肩から切り落とした。
「ぐああああああああああああっ!!?腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕!!?腕ぇぇぇぇぇぇ!!?」
痛みに悶える梶谷を見下ろす凜子、そんな彼女に梶谷は叫ぶ。
「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!?俺の、俺の腕にどれだけの価値があると思っているんだ!!!?この名工である俺の!!!」
「だから切り落としたんだ。これ以上犠牲を出さない為にな。……終わらせるぞ。」
「っ!!?ぐぅ!!来るな!来るなぁぁぁぁぁっ!!?」
村雲丸を乱雑に振りまわし、凜子を近づかせまいとする梶谷。
そんな梶谷に凜子が自身の一撃にてトドメを刺す。
「逸刀流、胡蝶乱舞!」
凜子の放つ斬撃、その一撃一撃が梶谷を切り刻み、斬撃を受けた梶谷はダメージの限界が来たのか、前向きに倒れていく……。
◆◆◆
外道の鍛冶師となった梶谷 康太、彼の打つ妖刀はどれも闇のブラックマーケットでは容易く億を超える値が付く程の代物である。
しかし、彼も以前はこうではなかった。
今でこそ外道に堕ちてしまったが本来は根は真面目な人間で刀に対しても真摯に向き合う男であった。その甲斐あって、20代頃には目標としていた石切兼光を制作した刀匠を超える技術を習得するに至り、誰もが梶谷家は安泰だっと喜んだ……。
しかし康太自身のこだわりが常人より異常な程に強すぎたこと、石切兼光の実物を見たことがなかったことが梶谷家に、なにより本人にとっても不幸だった事に、回りが石切兼光を超えたっと褒め称えても彼本人がそう感じていなかったのである。
なぜなら誰も、実物の石切兼光の斬れ味をみたことがなかった。
それゆえ師匠である父親や兄弟弟子が康太の打った刀を称賛しても、それが全て御世辞にしか聞こえなかったのである。
いくら石切兼光を超える刀を制作しても、康太が想像上の石切兼光の斬れ味を基準にしているため彼は納得していないし満足もしない。
次第に精神が病み、ついには外法に手を出し、それを咎め止めようとしてくれた両親や親族衆、兄弟弟子を殺害してしまうのであった。
皮肉なことに妖刀を作るようになってから刀工の腕は落ち妖刀鍛冶屋になる前の彼の刀を知っている者から特殊素材で打った刀より普通の玉鋼で打たれた刀の方が良いっと言われている。
もし石切兼光の実物と斬れ味を自身の目で見聞することができていたら道を踏み外すことは無く現代の名刀匠となっていただろう……。
◆◆◆
「はぁ、はぁ……!はぁ……っはぁ!」
「凜子!」
「凜子先輩!」
「姉さん!」
「春輝、ゆきかぜ、達郎……みんな。」
倒れそうになった所を春輝に抱き留められ、肩を借りて立ち上がるも、膝が笑ってしまって上手く立てずにいた。
「大丈夫か、凜子?」
「すまない。身体がガタガタだ……情けない事にな。」
「そんな!先輩、頑張ったじゃないですか!情けなく無いです!」
「そうだよ、姉さんは情けなくない!」
「ゆきかぜ、達郎。ありがとう……。」
可愛い後輩と弟にそう言われ、照れくさそうに微笑む凜子。
「取り敢えず秋山は春輝が背負ってけ。多分まともに動けないだろうしな。取り敢えず、奴の刀、村雲丸とやらを押収して戻「あ、ああぁぁ……!!」ん?!」
「何あれ!?」
「「「「!?」」」」
きららの言葉に春輝達が叫び声が聞こえた方向を見ると、そこでは身体に呪印が浮かび上がり、喉を掻きながら悶え苦しむ梶谷がいた。
黒い鎖のような呪印に蝕まれ、喉だけでなく、全身を掻きむしる梶谷、傑作と呼んでいた村雲丸を投げ捨てて全身の肌を掻き壊している。
「あがああぁぁぁっ!!?あ、あぎいいいっ!!?んぎいぃぃいいいぃぃぃっ!!?」
「なんだ、あれは!?」
「梶谷の身体に呪印が刻まれてたのか!?けど、一体誰が?」
「それよりも、凜子。はいこれ。」
「春輝……すまない。」
春輝はチャクラの腕を伸ばして、村雲丸を拾って凜子に渡す。村雲丸を受け取ると、そっと“誰か”に肩を叩かれたのを感じた凜子は目を瞑った。
その様子を見ていた春輝達に、苦しみ藻掻いていた梶谷が喉を掻きむしりながら叫ぶ。
「おの、れ"ぇぇぇぇぇっ!!!?おのれおのれおのれおのれぇぇぇぇぇぇっ!!?俺の、傑作である村雲丸が負けるなんて!!あり得ない……!!ありえないぃぃぃっ!!俺が、俺が造った刀があぁぁぁぁぁぁ…………――――」
「終わった……良かっ……」
「凜子!?」
梶谷は灰となって消え去り、灰は風に乗って消えいき、その光景を見た凜子は、安堵したのか脱力し気絶して眠りについた……。
◆◆◆
5日後、秋山凜子は五車の山道を手桶に花と柄杓を入れ手に持って歩いていた。
村雲丸は五車に回収され、念には念を入れ春輝達と同学年の魂遁使い死々村孤路とOGの上原朱乃に残留思念が残っていないか霊視させた。
『この刀から、かの御仁の怨念や未練などの思念は残ってはおりませんわ。』
『(‥…私も上原先輩と同意見。この刀は妖刀ではなくただの刀。)』
安全が確認され村雲源之助として葬られた。五車で葬られるというのは死亡したとはいえ抜け忍としては破格の待遇で様々な異論が出たがアサギの鶴の一声があったからだ。
『源之助の意思で五車に被害を齎していないわ。』
というある意味屁理屈とも取れる鶴の一声で決まったのだった。
まぁ、流石に任務で殉職した者達と同じ墓地に埋葬されるのではなく山中に墓碑銘がない所謂無縁仏という形で埋葬されることとなった。
この処遇に凜子は最初戸惑ったが、考えの違いから袂を別ったが尊敬していた男がただの物として五車にある“忌庫”(別名機密金庫。敵との戦闘で鹵獲した武器やアイテムを保管する所、ヒクソスのザヒの呪いの腕もそこに封印されている。)に保管されるのは忍びないと思ったいたのでこの決定には感謝していた。
そして破門されたとは言え、嘗ての兄弟子の墓参りに行くと部下だった陽炎が墓前に手を合わせているのだった。
梶谷との戦闘で負傷し保護された陽炎は対魔忍から完全に引退しそのまま五車に残り、一住民として源之助の菩提を弔いながら残りの人生を過ごすと決め、アサギに申し入れをした。
即決すぎると思うが、主である村雲源之助が死んだ今、対魔忍でいる意味は彼女にはなく、その意を酌んだアサギは彼女を五車の住民として受け入れたのだ。無論、元抜け忍だったこともあり暫くは色々制約と五車から外出する際に監視が付くことになるが彼女からしてみれば些細なことだった。
まるで長年夫に付き添った妻のように静かに祈る姿を見た凜子は源之助と陽炎の関係を悟り、彼女が墓参りを終えるまで待った。
そして凜子にもアサギから重い罰が下されると思っていたが、それを春輝、ゆきかぜ、達郎、そして翔馬からの嘆願によって、罰として学園の掃除と反省文、および1週間の謹慎で済んだのである……。
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