それは……ほんの数時間前のことであった。
その日、“豪魔”バルトは主である"エドウィン・ブラック"の指示で自分達に歯向かう反乱分子となった組織を潰す為に、1人組織の潜伏している廃墟に向かった。
初めはバルトが1人で来た事を嘲笑う者達がいたが、それをバルトは鼻で笑い返す。
「力の差も分からん“馬鹿”は、これだから困る。」
バルトのその言葉に武装した者達は、彼を殺そうと銃を乱発するが、それをバルトは軽く躱していくと自身の能力である"廛"を使い、ものの10分で敵対組織のメンバー100人を始末したのである。
彼からすればこの程度は簡単な掃除であり、特に何の感情も抱いていなかった。
そして仕事を終えたバルトは東京キングダムへと戻ろうとした時、"顔に付けていたスマホ"から鳴った着信があり、顔から取り、通話に切り替える。
『バルトか。仕事は終わったのか?』
「イングリットか、仕事自体は単純だった。それで、なんの用だ?」
『ブラック様からお前に新たな指令だ……ヨミハラに潜った対魔忍の始末。その対魔忍はリーアルに近づく為にワザと捕まったらしい。』
「それは何とも……まぁいい、その仕事は了解した。しかし、その仕事ならお前でもいいのでは?」
『分かっているだろ、私はリーアルや朧の奴が好かん。とにかく頼んだぞ。』
電話の相手、魔界騎士イングリットはそれだけ言うとスマホを切り、バルトはため息を吐きながらもヨミハラへと向かった。
そして春輝達が潜入する前にヨミハラに到着したバルトは騒がしい街中を悠然と歩いていき、そんな彼を見ていた魔族の男達は身体を恐怖で震わせながら、彼に頭を下げる。
彼らはバルトが恐ろしいのである。
バルトは同じ魔族といえど、エドウィン・ブラックが命じれば容赦無く殺す。現に彼に勝てるのは対魔忍や人間でも数える程しか居ない。
さらに人間のようであるバルトの放つ威圧感が恐ろしく、以前にこの街でバルトの事を知らずに彼に喧嘩を売った者達は、彼によって殴り殺され、磔にされたのだ。
まるで虫でも殺す様に、平然と相手を素手で殺すバルトがエドウィン・ブラック以上に恐ろしいと。
そしてリーアルの居城に着いたバルトは、自身が性奴隷に改造した筈の不知火の持つ薙刀によって切り裂かれていたリーアルを、ただ見ていた。
「あら?新しい魔族の方かしら?」
「……。」
「ば、バルト!?何故ここに……まぁいい、そこの女を、不知火を半殺しにしろ!立場というものを「はぁ……。」は?」
「哀れだなリーアル。そんな女1人に騙されるとは……大方改造して気が緩んだのだろう?貴様の慢心だな。」
「ぐっ!?だ、黙れ!早く不知火を」ズバッ!
「……気安く名前を呼ばないでくれるかしら?あなたの声、耳障りなのよ。」
不知火はリーアルの首を落とすと、自身の背後でポケットに手を入れているバルトに警戒心を向けつつ、薙刀を構える。
「あなた、リーアルとは違うみたいね?どんな方なのかしら?」
「それをお前が知る必要があるのか?それより、お前は不知火というのか?」
「だったら何かしら?」
「そうか。お前、あの男の妻か……確か水城 優作とかいうゴミの。」
バルトがそう言うと不知火は薙刀を振り下ろして、その首を落とそうとするが、バルトはそれを軽く受け止める。
「お前が……お前があの人を!!!!」
不知火は怒りのままバルトに叫ぶが、そんな彼女の言葉の意味が分からずバルトは首を傾げる。
「何故怒る?お前たちだって俺たちを散々に殺してるだろ?」
「お前らには分からないでしょうね!!快楽で殺すお前達と違って、私達には心があるのよ!!!」
「下らん……軽く甚振るか。」
そう言うとバルトは不知火を引き寄せると、頭突きを顔に当て、腹に廛を纏った拳を振り抜き、不知火を倒れさせる。しかし、不知火はバルトを睨み上げる。
そんな彼女の右足を掴むと、淡々と残酷なことを言った。
「立場を分からせる……奴はそう言っていたな?なら、この足をへし折っても問題はないか。」
「なっ!?この、離」
メキッ!!!
「〜〜っ!ぁぁぁああああ!!?」
バルトは不知火の足をへし折り、不知火は痛みのあまり足を抑えながら蹲った後にゆきかぜが突入してきた。
◆◆◆
ヨミハラの街で爆発音が鳴り響き、ヨミハラの住人達は恐怖のあまり建物の中に隠れる。その爆発音は風遁を纏った春輝とバルトの拳や足がぶつかり合うたびに起きており、衝撃波で建物が崩壊していっている。
2人はかれこれ1時間は拳を交えているが、決着がつかずにいるが春輝の方は正拳や掌底で攻撃しているが、バルトはそれを全て防ぎ、廛を纏った拳や足で攻撃していく。
「はぁ!!」
「ふんっ。この程度か?」パシッ!
「っ!せいっ!!」ドカッ!!
拳を止められた春輝はバルトの顔目掛けて、蹴りを放つ。
流石に蹴りを受けたバルトは手を離す。その瞬間に春輝は乱打を放ち、廻し蹴りを放ってバルトを蹴り飛ばす。
「立てよ!!まだ本気じゃないだろ!舐めてる余裕があるのかよ!!」
「……これは失礼。ナメているわけでも余裕でもない。ただ見くびっているだけだ。」
「何だと……!?」
「対魔忍など話にならん……女は性奴隷に落とされ、男は良くて生物兵器にされる。そのくせ誇りだ、舐めるな、などとデカい事ばかり言う。そんな弱い奴ら、見くびって何が悪い?」
シュッ!!ドガァァァァッ!!
春輝はバルトに近付くと、その腹に拳を振り下ろす。
「っ!?」
「それ以上、何か言ったら……タダじゃすまないぞ!」
「がはっ……そういえば、水城 優作という男の対魔忍、ヤツの最後は哀れだったな。息子や娘、妻の名前を呼びながら謝っていたぞ?」
「っ!!!このっ!!」
ドゴッ!!
「ぐはっ!」
春輝が拳を振るおうとした瞬間、バルトは春輝を蹴り飛ばし服に付いた埃を払うと、懐から鉄の筒らしき物をいくつか出し、それを繋げていく。
すると、あっという間に自分と同じ長さの鉄杖が出来上がり、その鉄杖に廛を纏わせると、それを持って春輝に近付き、腹に鉄杖を押し当てる。
「がはっ!!?」
「どうした?俺を許さないんだろ?本気を見せてみろ。」
「ぐっ!?こ、この……!」
「はっきり言うがな?俺からすればブラック様やイングリット以外は皆ゴミなんだよ。目に映るだけで不愉快だ。」
「ご、ゴミ、だと……!!?ふざける、なぁ!!」
「ふざけてなどいないさ。何ならお前の大切な母親や妹と仲間のくノ一でも殺してみせようか?
嬲り殺しにするなんぞ、簡単な事だ。」
「っ!!!巫山戯んなぁ!!!!」
春輝は身体からチャクラを溢れさせると、その圧でバルトを弾き、ゆっくりと起き上がると彼を睨みつける。
すると、九喇嘛が話しかけてきた。
【春輝、やるか?】
「(あぁ……悪いけど九喇嘛、力を貸してくれ。コイツは、あのサングラス野郎は……!!)ここで、倒す!!!!」
【良いだろう、俺も奴の上から目線の言葉にはムカッと来てた所だ……存分に暴れてやれ!!!!】
春輝と九喇嘛の拳を合わせると、九喇嘛モードを発動して九尾チャクラを纏った姿。それを見たバルトは、首をゴキッと鳴らすと彼に訪ねた。
「お前、その力はなんだ?」
「それ、答える必要あるか?今から倒すんだからよぉっ!!!!」ドゴォォォっ!!
「ぐっ!?」
春輝はモードの特性である速さを活かして、バルトに接近するとその拳をバルトの腹に向かって振り抜く。その瞬間にバルトにマーキングをすると、吹き飛んでいくバルトに会得した“瞬身の術”を使い、追い打ちの連撃をお見舞いしていく。
「オラオラオラオラオラオラ!!!オラァ!!!」
ドドドドドドッ!!ズガァン!!
ドガァンッと地面に叩きつけられるバルト、しかし、バルトは廛を腹に集中していた事で、被害を少なくしていた……が、それでもふらつく程であった。しかし、それでもバルトはゆっくりと立ち上がる。
「……少し「まだだぁ!!!」っ!?」
真下に現れた春輝のアッパーを受けてバルトは真上に上げると、廻し蹴りで吹き飛ばしていく。
通常の魔族であれば、この連撃で倒されるがバルトはゆっくりと起き上がると、首をゴキッと鳴らして立ち上がる。
「……こんだけ殴ってダメージ一つないとか、少しショックだな。」
【いや、ヤツも相当来てるはずだ。恐らく奴の能力だろう。あの纏ってる力で衝撃を和らげてるんだ。】
「(だとしたら、かなり厄介だな。)」
「あ~……これだけやられたのは初めてだ。それに速さ、威力……どれも中々のものだ。これは、俺も“本気”を出すしかないな。」
そう言うとバルトは着ていた上着を脱ぐと、筋骨隆々な身体を晒し、その身体全てに廛を纏わせていく。すると、その身体はまるで黒鉄の様であり、さらに威圧する力が増していき、周りの建物がミシミシッと音を立て、ヒビが入る。
「(何て圧だ……!こっちの方が飲まれそうだ。)」
【呑まれんじゃねぇ!この位、お前も押し返せ!!】
九喇嘛にそう言われ、春輝も修行で習得した覇王色の覇気で威圧する。するとバルトは"笑み"を浮かべたのである。
「面白い、これ程の気迫は感じたことが無い。春輝とか言ったな?全力で来い。俺も軽く相手してやろう。」
「面白い……やってやるよ!」
春輝はそう言うと、右手にチャクラを集中させて赤色に風の走る螺旋丸を発動する。
「螺旋丸!!」
「それがお前のとっておきか?なら……死ね!!!」
バルトは確信した。
目の前のこのガキは、確実に殺すべき相手だという事を。
「はぁぁあぁぁぁぁ!!!」
「鬼武!!!」
黒鉄の鉄杖と螺旋丸がぶつかり合い、桁違いの衝撃波が走り辺りの建物を吹き飛ばしていく。しかし、徐々にバルトが押していき、春輝は後ろに押され始める。
すると、春輝はさらに螺旋丸にチャクラを送ると、螺旋丸を肥大化させる。
「なにっ!?」
「喰らえ!!大玉、螺旋丸!!!」
肥大化した螺旋丸に押されるバルトに、春輝は大玉螺旋丸を叩きつける。するとバルトは建物を崩壊させながら吹き飛んでいき、それを見た春輝は、大玉螺旋丸と九喇嘛モードの反動でチャクラを大量に消耗し、その場に膝を付く。
そしてどっと疲労感が襲ってきたのである。
「ぐっ……!(やばいな、かなりチャクラを使って、身体に力が入らない。けど、ここは敵地のど真ん中だ。倒れる事は出来ない!)」
春輝は疲労感が襲って来ている身体にムチを打って、ゆきかぜ達のいる場所まで向かうと、そこには治療を終えた3人がいた。
「「は、春輝!?」」
「お兄ちゃん!?」
「3人とも、大丈、夫か……?」
「私達はあなたの忍術で大丈夫だけど、あなたは大丈夫なの!?ボロボロじゃない!」
「ごめ、ん……かなり無茶したから、身体に反動が……けど、3人が無事なら、良かっ……た。」
「お兄ちゃん!?ダメだよ!!4人でここを出よ!!?まだ間に合う「何が間に合うんだ?」っ!!?」
「「!?」」
ゆきかぜ、凜子、不知火が声のした方向を見ると、そこにはボロボロになりながらも鉄杖を持ち、入り口に立ってこちらを見ているバルトがおり、その背後には魔族の男たちがいた。
「お前、生きて……!」
「中々危なかったぞ?だが、惜しかったな……あの3人はお前らの好きにして構わん。だが、あの男は連れて帰る。」
『うぉぉおぉぉ!!!』
喜びの雄叫びを挙げる魔族の男達。
ここで奴らに捕まれば、3人は慰み者にされ、一生性奴隷にされる事を理解していた春輝は、身体を起こそうとしたが、すでに限界が来ており、影分身を10体出すのがやっとであった。
「やれ。」
バルトの言葉に男達がなだれ込んで行く。
3人は何とか武器を構え、分身達も身構えた……その時であった。
「
「デススリンガー!!」
空から春輝達と魔族達の間に2つの衝撃が走る。
「これ、は……?」
「な、なに?今の?」
「誰かいるのか!?」
「この技……まさか……!」
全員が上を見ると、そこには2人の男がいた。
1人は身の丈以上の大鉾を肩に背負いながら笑っており、もう1人は異形の男で黒い革の服に赤い面をしていた。
その2人を見て魔族達は震え上がっていた。
「あ、あれって!?」
「"
「ふんっ。」
「あっちは"羅刹"、
「へへっ!」
「何で、何で