招待と大騒ぎ
不知火救出の数日後、五車学園へと登校した春輝達はクラスへと向かっていた。春輝が席に付くと、藤孝が話し掛けてきた。
「よ、春輝、秋山。」
「あぁ藤孝、おはよう。」
「藤堂か。おはよう。」
「聞いたぜ、ま〜た無茶やったんだってな?生傷が絶えないお前は。」
「ははっ。まぁこういう性分だからな……。」
「はぁ……まぁ、死なねぇようにしろよ?カバーできる範囲はしてやるからよ。」
そう言いながら互いに笑い合い、拳を合わせる春輝と藤孝。すると、そこに春輝に御守りを渡した芳廼 薫が現れた。
「水城くん、おはよう。」
「あ、芳廼さん!御守りありがとう。」
「いいよ、あれくらいしか出来ないし。そうだ!
今週の日曜日って時間ある?」
「休みだけど、何かあるのか?」
「うん。私がお世話になってる人達の集まる集会があるの。
良かったら来てほしいんだけど、どうかな?」
「良いのか?なら一緒に行かせてもらうよ!」
「うん、ありがとう!そうだ、藤堂くんと凜子さんもどうかしら?」
薫の言葉に凜子と藤孝は首を傾げる。
「私達もいいのか?」
「大勢で行ったら迷惑だろうに。」
「逆に大勢の方がみんな喜ぶと思うよ。みんなすごく気の良い人達だし。」
「それなら良いかな。」
「なら、ゆきかぜや達郎、鬼崎にも声を掛けてみるか。」
こうして春輝達の休みの予定に、薫の集会に参加するという予定が入った。しかし、その集会の場所はとんでもない場所であった……。
◆◆◆
後日、春輝、ゆきかぜ、凜子、達郎、きらら、藤孝の6人は薫の指定した待ちあわせ場所に来ていた。
そこは、五車町の外れにある駐車場だった。
「ここでいいんだよな?」
「あぁ、薫からはここだと言われたしな。」
春輝と凜子が辺りを見渡すが、薫の姿はどこにも無かった。
「ねぇお兄ちゃん、本当にここなの?」
「誰も来ないわよ?」
「おっかしいな、芳廼さんはここだって言ってたんだけど。」
「姉さん、芳廼さん本当に来るの?」
「来ると言っていたんだが。」
「誰も来ねぇぞ?」
6人が疑問に持ち掛けていたその時、一台のマイクロバスが自分達の前で停車した。
「みんな、お待たせ!」
「芳廼さん?この車は?」
「これなら集会場まで直進なの!みんな、乗って乗って!」
首を傾げながらも、6人はバスに乗り込む。車は意外と広く、6人が乗ってもまだ余裕がある程であった。
「みんな乗ったね?それじゃあ、出してください。」
「はい。」
「芳廼さん、俺らはどこに向かうんだ?」
「私がお世話になってる人が所有する土地、大体一時間くらいだから。あ、おやつあるけどどうする?」
「「食べる!」」
ゆきかぜときららが笑顔で賛成し、一同はしばらく車を走らせていると、のどかな風景が拡がっていき、辺りには小さな民家が見え始め、その中で一同の前に大きなお屋敷が見えてきた。
「あれが、集会場?」
「そう、集会場兼頭のお家なの。ここは政府も魔も、誰も手が出せないから、伸び伸びしてる人が多いんだぁ。運転手さん、ここで良いですよ。」
「分かりました、薫様。」
そうして車を降りて屋敷に向かっていると、大きな門の前に1人の褐色肌をした女性が立っているのが見え、薫はその女性に向かって手を振って小走りで駆け寄る。
「お~い!
「薫か。戻ったようだな、それで後ろの者達が?」
「はい。みんな、紹介するね。この人はこのお屋敷の門番をしてくれている人で"
「水城 春輝です。こっちは妹のゆきかぜです。それで、鬼崎 きららと秋山 凜子、その弟の達郎くん。そして彼が藤堂 藤孝です。」
「「「「「こんにちは!」」」」」
「うむ、元気がいいな。今門を開けるから待て。……少し騒がしいが、まぁ悪い人達では」
ドゴオオォォォォォォォッ!!
阿修華がそう言いかけた時、屋敷の中からとてつもない爆音が鳴り響いた。
「「「「「「!?」」」」」」
「……阿修華さん、もしかしてこれってもしかして“あのお2人”ですか?」
「あぁ……。どうやら何かあったようだな。取り敢えず立ち話もなんだ、中に入ってくれ。」
「「「「「「(何かってなに!!?)」」」」」」
一抹の不安を覚えながらも門を潜り中に入る。
すると、その中では……。
「待てコラぁぁぁっ!!ぶっ殺させろぉぉぉ!!!!」
「アハハハッ!イイねぇ……楽しくなりそうだ!」
春輝達が入った屋敷の庭。そこでは"大鉾を持った男"とそれを相手に"徒手で応戦している男"がおり、その様子を数人の男女が見ていた。
「……なにこれ?」
「あの人達はまた……!!!もう!!?
みんなも止めてよ!!何があったの!?」
すると、鎧を着た獣人が黒い虎の獣人が呆れたように話し始める。
「乎阿の奴が武頼の饅頭を食ったのだ。」
「そんな事でここまで喧嘩しますか!?
薫が叫ぶが、それすら聞こえておらずそれどころか2人の喧嘩は激しさを増していき、ついには2人がそれぞれの技を出そうとしていた。
「喰らえや……!!牙王――」
「ハハハッ!!八衝拳奥義!錐竜――」
「(やばい!!)」
【春輝!やばいぞ!!】
「(分かってる!!)」
2人が技を出そうとした瞬間、春輝は2人の間に術を用意する。
「──閃!!!」
「──錐釘!!!」
「晶遁、結晶壁!!」
斬撃と拳、その2つのちょうど間に分厚い結晶の壁が来て、その3つが重なった時、凄まじい衝撃波が走る。
ドゴオォォォォォォッ!!
「うわっ!?」
「くっ!?」
「「きゃあぁぁぁっ!?」」
「おいおい、なんて威力だ!?」
『っ!?』
喧嘩の顛末を見ようとしていた一同は突然の事に、目を見開いて驚く。そんな中、春輝が一息吐いて肩を撫で下ろしていた。
「ふぅ……。(結晶壁、厚くしといて良かったぁ……。まぁぶち壊れたけど……被害は)「おい。」!!?」
声をかけられて上を向くと、目の前に先程まで喧嘩をしていた2人、乎阿と武頼が立っており見下ろされている。
「テメェ、何の真似だ?」
「良いところだったのに、邪魔してくれて……殺しちゃおうかな?」
「(この2人、ヤバい……!)」
【春輝、こいつらだけじゃねぇ。この薫って女といい、あの5人といい、明らかに次元が違う。】
「(だな、身でヒシヒシ感じる。この人たち、強い!!)俺は、喧嘩を止めたかっただけです。叱られる言われないですよね?」
「ほう?俺らの喧嘩を?お前が?ダハハハッ!!こいつは面白ぇ!!なぁ乎阿――?」
「そうだね、武頼。面白いことを言うね――?」
笑い合う2人、一見楽しげに笑っていたが、その次には凄まじい殺気と気迫を春輝にぶつけながら睨みつける。
「「ガキが調子に乗るな。」」
「!?」
春輝に殺気を向けた2人に、身構えながらも応戦しようとした時。
「オイコラァァァァッ!!!!!」
1人の赤い着物を着た鬼の青年が屋敷の中から叫んできた。
「
「武頼!乎阿!何客人に手ぇ出そうとしてるんだ!!」
「「客人?」」
突然の事に混乱する2人を他所に、鬼の青年は春輝に近付いてきて、頭を下げてきた。
「水城 春輝くんとその友達だな?これ見苦しい物を見せた。俺は百愧龍宮が幹部、“
「わーったよ。」
「ふふ。ごめんごめん。」
朱愧の号令に全員が反応すると、その場から屋敷の奥へと姿を消す。
突然の事に戸惑う春輝達だったが、薫に諭され屋敷の中へと入った。そして、屋敷の奥に進むと、先程の薫は先に行くと言って屋敷の中へと進んでいき、屋敷の中を進んでいくと、大広間に通される。
そこには薫を含めた8人がおり、物々しい雰囲気が漂っていた。
「……春輝、これは?」
「分からない。兎に角黙ってよ。」
「「「「うん、うん。」」」」
そんな中、奥の襖が開きそこから男が現れる。
「よぉ!お前ら、元気か?八愧将は全員いるみたいだな!んじゃ、会合を始めるか!」
そう言って、入ってきた男―――鬼徹 暁冥は楽しげに笑っていた。