春輝たちは今、薫に連れられて、自身の主と呼ばれている男、鬼徹暁冥が開いた集会に来ていた。
今彼らの前には、豪華な食事が並べられており、八愧将の面々はそれぞれが食事を摂っており、春輝達も困惑しながらも座り込んでいた。
しかし目の前にいる規格外の者達を他所に、藤孝が春輝に小声で呼びかける。
「春輝、春輝……。」
「何だ、藤孝?」
「お前、こいつらが誰か分かっててきたのか?こいつ等は、あの"百愧龍宮"だぞ……?!」
「?知ってるのか?」
藤孝の質問に春輝は小さく首を傾げる。
すると、藤孝は驚きながらも声を小さくしながら続け、凜子達も話を聞いていた。
「あのなぁ……!百愧龍宮っていったら、あのエドウィン・ブラック達ノマドと戦ったっていう、他種族混合の無敗の戦闘集団だぞ!?それにあの芳廼を入れた8人、あれは"八愧将"だ!」
「「「「「八愧将……?」」」」」
一同が首を傾げていると、先程大鉾を振っていた男、武頼がこちらを見てきた。
「なんだよ?コソコソ話してねぇでデカイ声で話せや。」
「す、すんません!」
武頼の鋭い眼光に藤孝は姿勢を正すと、春輝は藤孝に八愧将に着いて聞いてきた。
「藤孝、八愧将ってのは何なんだ?あの武頼って人とあの赤い面の人は知ってるけど、彼らはいったい……。」
「八愧将……簡単に言えば、8人の精鋭からなるメンバーで、その誰もが鬼神みたいに強い奴らだ……。他にもまだ居るらしいが、詳細は分かってない。
あと、この8人以外に3人の部下がいるらしいんだが……。」
「よく知ってんな坊主。だが、こいつらは部下じゃねぇ!俺の大切な家族さ!みんな、自己紹介してやれ!」
快活に笑う暁冥、すると目を閉じていた春輝と同じ金髪と額に2本の角を生やした褐色肌の美女が名乗り出した。
「では私からですねボス。私は"エルジット・セレジア"。種族は"
「鬼神乙女だと!?高位の鬼族だぞ!」
「博識だな。私はボスに大恩があり、仕えている。」
凜子の言葉にセレジアは静かに返した。
「んじゃ次は俺ね♪俺は“
「九龍会って、確かアミダハラにいる中華系マフィアよね?何でそんな人が?」
「そりゃあ勿論、旦那とやり合う為さ!いつかは手合わせしたいと思ってる♪」
「その気がありゃいつでもいいぜ?」
そう言いながら笑い合う乎阿と暁冥を見て、春輝達は固まった。
「次は俺だな。そこの青髪とチビと金髪は知ってるだろうが、俺は
「ちょっと!誰がチビよ!!」
「ゆ、ゆきかぜ!?」
ゆきかぜの言葉に武頼は鼻で笑った。
「次は我だな……我は"
中華の陰陽の印が入った鎧を着た、黒い虎の男の獣人がそう名乗ると、春輝は目をしばしばさせる。
「獣王会、確かワーウルフという男が頭を務めてると聞いた事があるんだが。」
「僕もです。」
「ワーウルフのガキと一緒にするな。我はあんな野良犬、恐ろしくもない。」
「「(野良犬かよ。)」」
内心そんな事を呟く春輝と達郎だったが、黒牙は気にした様子ではない。
すると、そんな中で独特な髪をしたマントを羽織った少女が立ち上がった。
「ではでは、次は私ね!ふっふっふ!私こそは【
「じょ、絡新婦?」
「あぁ、ただの蜘蛛だよ。気にするな。」
「ちょっと!!蜘蛛とは何よ!蜘蛛とは!そんなこと言ってると縛り付けてサイコロにするわよ!?」
明らかに幼い言動が目立つ唯糸という少女に一同は首を傾げた。
「私の事はみんな知ってるよね?けど、改めて名乗っておくわ。私は百愧龍宮、八愧将が1人……清流の対魔忍、芳廼 薫。改めて宜しくね。」
「芳廼さんはいつから百愧龍宮に?」
「随分前からお世話になってるわ。ある人もここで幹部をしているの。今はいないみたいだから、今度紹介するわね。」
薫の言葉に春輝は静かに頷いた。
そんな中、縁に座っている魔族の男はつまらなさそうに外を見ていた。そんな彼に暁冥が話し掛けた。
「おいアゼル。お前も自己紹介したらどうだ?」
「……アゼル・ブラックスターだ。名前だけは知っておけ。」
「(あの人って、確か。)」
「(あぁ、私達を助けた者の一人だ。)」
「彼はアゼル・ブラックスター、暁冥様に見初められて入った射撃の名手なのよ。
……コミュ障だけど。ぷぷっ……!」
「黙れ蜘蛛女。」
鋭い眼光で春輝達を睨むアゼルに、一同は息を呑んだ。
「最後は僕だね。僕はアギュラ。アギュラ・クリーガー。
世間では"
「生物兵器?別に普通に見えるけど……。」
「見た目なんて何にもならないよ。」
そんな事を呆気からんと言うアギュラに藤孝は苦笑する。
「さぁ!自己紹介も終わったことだし、今回の集会を始めようか。まぁといっても特に話すことはないんだが。」
「つうか旦那、何で
「まぁな。薫が顔を見せたいといっていたから、連れてきてもらったんだよ。
そうだ、対魔忍の人達から何かあれば自由に話してくれていいぜ。」
「あ、それなら。……あの、この前は母を助けてくれるのに力を貸してくれて、ありがとうございます。」
「ん?あぁ、武頼とアゼルを送った件か。あれなら良いんだよ。ウチの子を助けてくれた恩義があったからな。まぁお袋さんが無事で良かったよ……あ、そういえば、春輝だったな?お前さん不思議な力を持ってるそうだな?」
“不思議な力”、そう言いながら春輝の腹部を指差すと春輝はドキッとしたが、九喇嘛は何か気付いたのか話し始めた。
【あの男、わしの存在に気付いてやがるな。だがこれと言って何かする気はなさそうだ。】
「(そうなのか?なんか凄い見られてるんだが。)」
【下手な事しなきゃバレんだろう。堂々としとけ。】
「ふ、不思議な力っていうのは?」
「アゼル達から聞いたのは、お前が風を纏ってバルトって奴と戦ってたのを見たって事なんだが。どうなんだ?」
「はい。確かに使いました。」
「対魔忍ってのは不思議なんだな。その力、少し見てみたいな……誰か、やってみないか?」
暁冥の言葉に八愧将は手を挙げなかった。大半は興味なしといった顔であるが、薫は申し訳無さそうに俯いている。
一人を除いては……。
「旦那、俺が試してもいいか?」
「え?!」
「ほう、武頼。お前がやりたいのか?」
「あぁ。この金髪がどんだけ強いのか興味がある。……いいよな?」
「は、はい。」
そう言うと、暁冥はそれを見ると近くに控えていたクローディアに目配せする。
すると、春輝と得物である大鉾"骨切牙王"を持った武頼は百愧龍宮の所有する山らしき場所に転移した。
「ここは!?」
「クローディアの奴が転移させたんだ。ここでだったら暴れられるだろ?」
そう言うと武頼は大鉾の鋒を春輝に向ける。
「あの時、初めて見たときから気になってたんだ。テメェの力を見せて見ろよ。」
「分かりました……。」
「へっ!良い目するじゃねぇか!!行くぜぇぇぇぇぇっ!!」
ズガアァァァァッ!!!
大鉾、骨切牙王を片手で回すと、春輝に向かって駆けていき力に任せて振り下ろす。
それを春輝は躱す事が出来たが、その刃が直撃した所は大きく抉れていた。
「っ!(何て怪力だ!?)」
「……避けるのは上手いみたいだな?脚の速さが自慢か?」
「……どんな能力なんだ?」
「言っとくが俺は魔力なんざ持ってねぇぞ?俺は、てめぇ等とは鍛え方が違うんだよ!!!」
ガッ!ドガアアァァアァァ!!
向かってくる武頼に、春輝は両手足に武装色の覇気を纏わせて防ぐが防御の上から力任せに振り抜かれ、吹き飛ばされる……。
◆◆◆
一方、その様子を遠くにある屋敷からリアルタイムで見ていた一同は言葉を失っていた。
「嘘っ……何あいつの力!紫先生と同じ力なの?」
「確かに凄まじい剛力だ。肉体強化をしているのか?」
ゆきかぜと凜子がそう言う中、唯糸はそれを否定した。
「何言ってんのよ。武頼は魔力とかは持ってないわ……あいつは力だけであの骨切牙王って鉾を振ってるのよ。本当、筋肉バカよねぇ。」
「何だと!?あんな馬鹿でかい鉾を触れるのか!?どんな身体してんだ?」
そんな中、映像に写った武頼は静かに春輝の方を見ていた。
「(見せて見ろよ。お前さんの隠してる"力"ってやつを。)」