春輝Side
「あれ?ここは……どこだ?」
目覚めると、そこは家ではなくどこか通路のような場所であり、しかも足元には水があって、触ってみると冷たかった。
そんな事を呟きながらも、灯りを頼りにして道に沿って歩いていくと、今度は広間と大きな檻のある部屋に辿り着いた。
「ここ、どこかで見覚えがあるな?……?」
【くそが……!!】
「え?誰だ?誰かいるのか!?」
春輝は檻の中から聞こえてきた声に反応して、そこに近づくとそこから巨大な爪が現れて春輝に襲いかかった。
ガギイイイィィッ!!
「うわっ!?」
【くそっ!今度はこんな場所に閉じ込められるとはなぁ!?ふざけやがって!!ここから出せ!!】
「だ、誰だ……って!?」
【小僧、わしをここから出せ!!こんな場所に閉じ込められるなんざ、わしはゴメンだ!!わしを開放しろ!!】
「え……う、嘘……まさか……!」
徐々に目が慣れてきた春輝が檻の中の相手の姿が見えてくると、春輝は目を見開いた巨大檻の中にいたのは巨大な九本の尾を持つ狐で、その名を叫ぶ。
「まさか……
【小僧……何故わしの名を知っている?わしはお前に名乗っていないぞ。】
春輝の檻の中にいたのは、尾獣"九尾"の九喇嘛であった。九喇嘛の身体を見ると、その身体には鎖が巻かれており、明らかに衰弱している。
「な、なんで九喇嘛がここにいるんだ!?そ、それより、その鎖は!?」
【わしも目が覚めたらこの鎖が巻き付いていたんだ。……小僧、お前はこれを外せるか?】
「その、た、多分無理だと思う。何かの封印術だと思うけど……ごめん、俺には解けない。」
【そうか。なら、お前と話すことはない。失せろ。】
九喇嘛はそう言うと目を瞑って眠ってしまう。
「ええ!?そんな……。まだ聞きたい事が!!」
春輝が檻に近付こうとした時、背後に光が現れその光りに包まれると春輝は目を覚ました。外はすでに朝となっていた。
「ここは俺の部屋?(さっきのは夢……いや、かなりリアルだったなぁ。また会えるかな。)」
春輝はそんな事を呟きながら布団から起き上がると、朝の支度をしに行った……。
「それにしても、昨日は大変だったなぁ。まさかあんなことになるなん……………っ!!!!」
顔を洗いながら昨日の事を思い返した瞬間、その時に見えた怪物の血やら死体のことを思い返した為に、ものすごく気持ち悪くなり、口を抑えてトイレに駆け込み、便器に向かって全部吐き出した。
「は、春輝!?春輝大丈夫!?」
「う、うえ"ぇぇぇぇっ!!!!うっ、おぇぇぇ!!」
昨日の晩に起きた出来事……あれは夢ではなかった。
現実に春輝は術を使い、人を化け物を殺したのであった。そのことを思い出した春輝はトイレに大量に嘔吐し、力なく倒れた。
【情けねぇ餓鬼だ。ゲーゲー、吐きやがって……。】
そんな時に頭の中に九喇嘛の声が聞こえてきたが、彼は気にすることが出来ず、気絶し、それを見つけた両親によって病院に運び込まれたのであった。
その後、春輝が目を覚ましたのは病院のベッドの上であり、腕には点滴が打たれていた。
「ここ、は?」
【病院とやらのベッドの上だ。気絶して運び込まれんだよ。】
「(!?く、九喇嘛?なんで頭の中に、夢じゃなかったのか?)」
【夢なわけあるか。こうして話してるんだ現実だよ。それと、どうやらこの世界にはわし以外の尾獣がいるようだ。そいつらと会ったら用心はしとけよ?】
「(……そう、なんだ。分かったよ。九喇嘛。)」
その後、不知火ともに入ってきたゆきかぜや凜子ら真やきららから心配され、その後に医者から精密検査を受けた春輝は1日入院して、無事に家へと帰ったのであった……。
◆◆◆
九喇嘛と出会った次の日から春輝は、九喇嘛と話をする事にしたが、初めは威嚇されたり吠えられたりもしたが、根気強く話してみると彼は返事をするようになり、少しずつ話すようになった。
そして春輝が修行を始めてから一年が経った頃、影分身を使用した修行を繰り返していたによって、彼は基礎である火遁、水遁、風遁、雷遁、土遁の他にも血継限界である氷、晶、爆、木、などが使えるようになり、メキメキと力をつけ始めていき、その他にも白嶺によって異世界の能力を会得し、感知する力も身に付け、さらには手で相手の頭に触れることで情報を抜き取る事が出来るようになった。
そして体術の訓練に対人や対魔物での戦闘訓練を行っていたが、訓練というよりは実戦に近い物であり、少しでもスキを見せれば、命を落としかねない程に苛烈なものであり、他にもあらゆる異世界の技術や能力等を忍術に活かせるか等を考えている中で、特訓は激しさを増して春輝の身体には生傷が絶えなかったが、白嶺の力で傷はすぐに完治してくれる。
しかし、ある日、春輝が真と遊んでいると九喇嘛がある気配を感じた。
【春輝、このガキの中に尾獣がいるぞ。】
「え?尾獣が?」
「?春輝、尾獣って?」
「え?あぁ、えっと……真ってさ、体の中に何かいるの?」
「っ!?」
真が驚くと彼は、自身の中にいる何かの事を話し始めた。それはまだ真が幼い頃、眠っていると目の前に巨大な狸のような怪物が現れるという物で、それが恐ろしくて夜もまともに寝ることが出来なくなる程らしい。
春輝はその話を聞き、友人である真を助けたいと思い、九喇嘛に語り掛けた。
「(九喇嘛、真の中にいる尾獣と話すにはどうすればいい?)」
【あ?なんでそんなことを「(良いから教えてくれ。)」……拳と拳を合わせればいい。そうすればリンクされる。】
「分かった……真、手を出して。俺が真を助ける!」
「春輝……分かった。」
真が右の拳を出すと、春輝はその手に同じように左手を開いて合わせると、真の精神に潜り込んだが……そこは一面砂に覆われていて、殺風景であった。
「ここが、真の中なのか?何だこの砂は?」
「あいつがこうしたんだ。あいつが……。」
【あぁ?珍しいやつが来るとはなぁ?】
声のした方向を見ると、そこには巨大な身体に異質な模様を見に着けた一本尾の狸がおり、春輝はその存在を知っていた。
「こいつは、“一尾の守鶴”か!?」
「春輝、知ってるの!?」
【あ?なんでテメェ俺様のことを知ってるんだ?つうか、テメェも人柱力か?どいつの人柱力かは知らねぇが、面白いやつが来たなぁ?】
「春輝、人柱力ってなに?春輝にもいるの?!」
【おい、春輝。わしを出せ。】
「え?うわぁ!!」
春輝の身体から飛び出した九喇嘛が現れると、守鶴は彼を睨みつけるように見るが、九喇嘛は興味無さげに笑みを浮かべていた。
【テメェ!バカ狐か!?まさかテメェの人柱力なのか!?】
「これが、春輝の中の獣?」
【はっ!まさか臭うと思ったら、テメェがいるとはなぁクソ狸。その腹は変わんねぇな?茶を沸かせるようになったのか?】
【んだと!?テメェは相変わらずムカつくなぁ!?】
「は、春輝。これって……?」
「うん。かなり仲は悪いみたい。ふ、2人とも、落ち着いて?」
【こんな奴、殺してやりたいくらいだ!!!】
【殺れるもんならやってみやがれ、クソ狸!!】
「「((うわぁ、仲悪い!?))」」
その後しばらく、九喇嘛と守鶴の口論は続き、半ば殺し合いに発展しそうになったが、春輝と真がそれを諌めて守鶴に真を傷つけないように頼んだが、守鶴はこれを無視。
しかし春輝の一生懸命な説得に、半ば守鶴が折れることで話をすることにした。その後、場所が戻り、公園に戻ると守鶴が話しかけてきた。
【おい春輝、テメェも大変だなぁ?こんなバカ狐が相棒だと同情するぜ!なんかあれば力になってやるよ!】
【はっ!テメェなんぞに力を借りるかよ!砂操る位しか能がねぇ癖に!】
【んだと!?本当にムカつく野郎だな!!】
「九喇嘛!?」
「しゅ、守鶴も止めて!……春輝、色々ありがとう。守鶴と話してみるよ。」
「そっか。真!俺、出来ることは少ないだろうけど、俺は真の事を友達だって思いたい!!それに何かあれば、俺も手を貸すし力になる……どうかな?」
「春輝……。うん、ありがとう!」
「(それにしても、白嶺さんは“尾獣”はいないって言ってたのに、なぜこの世界に尾獣が?)」
こうして、春輝と真は共通の繋がりを持つ友人となったが、春輝はその尾獣の事で考えていたが、襲いかかってきた睡魔に負けた春輝は眠ることにした……。
◆◆◆
春輝Side
「(退屈だなぁ……。)」
翌日、俺は母さんに連れられて一緒に母さんが仕事をしている"
検査機器からピィーっという、終了の音が聴こえたと同時に、入口の方から白衣を着た女性が入ってきた。
「無事に終わったよ。疲れちゃったよね?お疲れさま。」
「
そういうと微笑んできた女性、この
「それにしてもビックリしたわ。不知火さんてば、息子を診て欲しいなんて言って、突然来たからみんな驚いたよ。」
「は、はぁ……。あの、母さんは?」
「不知火さんなら隣の部屋で待ってるわよ。今は理事長……アサギ様と話してるんじゃないかな?」
「そうですか……ん?」
姫萩さんの話を聞いていると、扉の方から人の気配を感じてその方を向くと、そこには黒髪の女性が凜子と同じ青い髪をした女の人と共に部屋に入ってきた。
「あら、目が覚めていたみたいね。」
「……。」
何だろう、黒髪の綺麗な人は優しげに微笑んでいるが、青い髪の人はこちらを物凄い睨んで来ているのは?物凄くいたたまれない気持ちになるんですが……。
「春輝くん、この2人は黒髪の人が“井河 アサギ”様で、隣の方が“八津 紫”さん。アサギ様が理事長で、紫さんは教官をしているの。」
「そうなんですか。初めまして、水城 春輝です!」
「ふふっ。礼儀正しい子ね。」
この人が井河 アサギさん……どんな人かは知ってるけど、こうして見ると美人だよなぁっと、そんな事を考えていると、アサギさんが俺の隣に座ると優しげに話しかけてきた。
「調子はどう?身体に違和感とかはあるかしら?」
「いえ、まったくありません。この度はありがとうございました。」
「そんな事はいいわ。それより、その後に大切な話もあるから。不知火の所に行きなさい。」
「はい。ありがとうございます。」
俺はアサギさんにそう言われて、俺は隣に置いてあった着替えを着ると、母さんとゆきかぜの待つ隣の部屋に向かった。
◆◆◆
アサギSide
「紫、さっきの彼どう見る?」
私は部下であり、長年の仲間である紫に先程の春輝という少年について訪ねた。すると、紫は腕を組み、目を閉じながら答えてくれた。
「まだまだ子供です。そんなに強いとも思えませんでしたよ。」
紫は、少し冷たく感じるようにそう答えてきた。
彼女は自分にも部下にも厳しいから、このような評価になるのも分かるし、けれどそれは彼女なりの優しさの裏返しなのだと思う。
けれど、あんな小さな子が不知火を超える術を持っているなんて……確かめてみる必要があるわね。
「紫、さくらに声を掛けて。彼の力を見るわ。」
「はっ!承知いたしました!」
水城 春輝……あなたの実力見させてもらうわ。
◆◆◆
春輝Side
母さんと2人で食道で食事を摂っていると、紫さんから呼ばれて五車学園の裏山に来るように言われ、五車学園の所有する裏山に向かっていた。そこには紫のライダースーツのような服に身を包んだアサギさんがいた。
いや、母さんの服装もそうだけど対魔忍の服って、目の毒なんだよなぁ。身体のラインがしっかり浮き出るし。
というか、なぜ俺は呼ばれたんだろうか?
「あの、これは?」
「春輝くん、これからあなたの力を見るわ。不知火、構わないわね?」
「それは……けど、こんな事しなくても」
「これは決まった事よ、不知火。下がってなさい。」
母さんは俺とアサギさんを見回して、母さんは少し考えた後に渋々といった様子で頷く。どうやら俺が見せた力の事で色々と話したようで、アサギさんも不思議に思っているようだ。
これは……やるしかなさそうだ。
「母さん、やってみるよ。」
「春輝。大丈夫なの?」
「多分大丈夫。」
母さんにそう言うとアサギさんの真正面に立ち、深呼吸をして神経を集中させる。目の前の人(アサギ)がどれだけ強いかは、知らないけどやるだけやってやる!
【春輝、やる気出すのは分かるが、無様晒すんじゃねぇぞ?】
「(うん、多少無理はしないとやってけないって、思ったし……なにより、目の前の人は気を抜いたらいけない人だし!)」
【お前がいいなら良いがな。】
九喇嘛がそんなことを言いながら笑っている顔が浮かぶ。九喇嘛とはたくさん話をしながら一緒に鍛練したりもしながら過ごしたが、話せるようになったのにはだいぶ時間がかかった。
けれども少しずつではあるが協力するようになっていき、俺も少しずつではあるけど強くなっていた。それを今回の組手で知るには良い機会かもしれない!
その後、俺はアサギさんに連れられて、学園の所有する森へと向かったのであった……。
◆◆◆
春輝が五車にいる頃、とある廃墟では数人の人間が“つぎはぎだらけ”の肌をした青年によって倒されており、周囲には青白い炎が燻っていた。
「だらしねぇ。“獅子”の名を持っててこの程度かよ。話にならねぇ。」
その時、彼のポケットに入れていたケータイが鳴り、画面を見てため息を吐くと通話を始める。
「何の用だ、こっちは一仕事終わったばかりなんだが?……これから集まれ?面倒くせぇ……まぁいい、今から向かう。手土産は……いらねぇか。分かった、んじゃ……。」
ため息を吐くと通話を切った青年は、その場を離れて電話の相手がしてきた場所へと向かって歩き始めたのであった……。