百愧龍宮の集会に参加した翌日、五車学園の一部の面々は課外授業で隣町にある小さな博物館へと来ており、そこで見たものをレポートに纏めるという課題である。
その中で春輝は博物館の中を見て回っており、とある展示物を見つけた。
「何だこれ……
春輝が見ていたのは、蒼い体に目に填められた赤い宝石が妖しく光る鳥の像である
そこには奈良時代の出土品でありなど、様々な事が書かれているが、春輝は目の前の石像に、何か力のようなモノを感じていた。
「なんだろう、これ?(なんか、変な感じがするなぁ。)」
「水城くん。」
春輝が声を掛けられて、後ろを振り返るとそこには薫がいた。
「あぁ、芳廼さん。レポートにするの、決まったの?」
「うん、水城くんはこれにするの?」
「まだ迷ってる。あ、昨日はありがとう!楽しかった!」
ニカッと笑う春輝に薫は申し訳なさそうに、苦笑し、時間まで春輝と話すことにした。何故自分が百愧龍宮にいるのかを……。
2人は学校終わりに、甘味処“稲毛屋”で話すことにして、春輝は薫と2人で森へと来ていた。
すると、薫が話始める。
「私、ある任務で失敗しちゃって……その時に魔物に犯されそうになったの。すごく怖かったし、何より……何も出来なかった。けど、その時に助けてくれたのが、今幹部をやってる人だったの。」
「そうだったのか。」
「初めは百愧龍宮の里で保護された時は驚いたよ。見た事無い人達ばかりだし、何より頭……暁冥様に“お前、ウチに来い!”って言われた時は戸惑ったよ……色々迷ったし。でも、私は“ある人”に追い付きたくて……それで百愧龍宮に入って、八愧将になったの。」
「そうなんだ……芳廼さんは百愧龍宮は家族みたいなものなんだね?」
「うん!でも、すごく驚いたの……貴方が、武頼さんと互角に戦ってるのを見た時は……。」
薫の雰囲気が変わったことに気付いた春輝だったが、意見することなく話を聞くことにした。
「武頼さんは半人半魔の元傭兵……八愧将の中でも実力者の1人なんだけど、そんな武頼さんと互角以上に戦った水城くんに驚いてるの。」
「そう、なんだ……。まぁ、俺も鍛えてるからな。けど、確かあの人は強かった。それに、芳廼さんや他の人達も強いんだと思う。」
「うん……ねぇ、水城くん。
「え……?」
薫からの誘いに一瞬戸惑った春輝、風が強く吹き木の葉が舞う中。春輝は困ったと言う感じで頭を掻く。
「え、えぇっと……芳廼さん、なに言ってるんだ?冗談キツいって、俺みたいなのが、入れるわけ」
「水城くん、私は本気だよ。私、あなたと一緒に戦いたい……それに、頭やみんなだって納得してくれると思う。それに、水城くんは相当な実力を持ってる。あの金色の力、私はまだ先があるとも思うの……水城くん、私と一緒に来て。」
薫は春輝の力、九尾モードを見たときに春輝の隣に並び、共に戦いたいと強く思った。もともと彼女は春輝の笑顔に惹かれていた薫は、その隣に彼に来て欲しかった。
そう思い、彼に歩み寄ろうとした時、スマホが振るえる。
「あ……ごめんなさい。はい、あ、クローディアさん?……え?は、はい!今から向かいます!!」
「?どうかしたのか?」
「……里が、頭の治めてる里に怪物が!!?」
「え!?」
薫の言葉に春輝も驚くのであった……。
◆◆◆
百愧龍宮の護っている里、そこには今“青を基調とした体をした”様々な怪物達が現れ、その里の者達を襲っていたが、百愧龍宮はそれを許さずその怪物を倒すために暁冥と八愧将が出払っていた。
「ふんっ!」ズガアァァァンッ!!
『ああああぁぁぁぁっ……。』
「ちっ!何なんだこいつらは?ウジャウジャ、ウジャウジャと……うっとおしいぜ!!」
「確か、数が多いな!!おい蜘蛛女!!生きてるか!?」
「勝手に殺すな!!なんなのよこいつら!!」
武頼が骨切牙王を振り、唯糸が手先から出した鋭く細い糸で怪物を切り裂いていくが……数は一向に減らず、乎阿や黒牙も応戦しているが……怪物はウジャウジャと溢れてきた。
その動きはまるでゾンビのようであり、攻撃すれば倒れるがすぐに起き上がる。
「くそっ!!お前ら下がってろ!!」
暁冥は手に持つ得物、
「
『ああああぁぁぁぁっ……。』
全力の横払いと同時に空間に罅が入る程のフルスイングに、怪物達はズタズタに破壊されて無惨な姿になって蹴散らされていく。しかし、打ち倒した筈の怪物は起き上がってくる。
「ちぃっ!キリがねぇ!!」
「何なんだ、こいつら!?」
その時、怪物達が一斉に暁冥達に襲いかかろうとし、全員が武器を構えた、その時である。
「水遁・逸刀流!
「天狗!!」
青い水の竜を模した斬撃の舞いと2頭の風の狗が怪物達を蹴散らしていく。
暁冥達は空から飛んできた技に驚き、空を見ると空から鉄扇“颪”を持った春輝と愛刀である黒い刀“天狼”を持った薫が現れたのである。
「薫!それに!」
「貴様、何故来た?」
「芳廼さんから、ここが襲われてるって聞いて援軍ですよ。んで、アレ何なんだ?」
春輝が怪物の一体を指差すと全員が「知るか。」と返し、薫が暁冥に歩み寄る。
「頭、里の人達は?」
「避難させた。特に女子供やじい様やばあ様は優先的にな……春輝って言ったな?すまないが力を貸してくれるか?」
「やるだけやりますよ。」
怪物達は問答無用で襲い掛かり、一同は全力で応戦し、その戦闘は夜が明けるまで続き、怪物達は朝日が登った瞬間、苦しみながら、まるで溶けるように消えていく。
「あ?何だ?」
「消えていくだと……?」
「朝日だ……あいつら日の光が弱点なのか?」
困惑する一同、その様子を遠くから見ていた“青い機械的な見た目をした者”が見ていたが、その姿はすぐに消えた。
その後、春輝は家に一度戻ることにした。
この時春輝はバレないように影分身を家に戻し、本体が薫と向かったのである。その後、春輝は何とか家に帰り、ゆきかぜや母と朝御飯を食べていると、それは博物館の展示品が盗まれたというものであり、盗まれたのは春輝が気になった蒼鳥の像らしい。
多少気になったが、ゆきかぜらと共に学園に向かい、レポートを提供してクラスに向かうと薫が春輝に近付いた。
「水城くん、ちょっといいかな?」
「ん?あぁ、分かった。」
「「「「?」」」」
春輝と薫が一緒に出ていくのを見た凜子達は首を傾げる。
「どうしたんだ?」
「なんかあったのか?」
「なんか怪しいわね……行ってみましょう。」
きららが後を追うと、凜子と藤孝も首を傾げながらも後を追う。すると、2人は空き教室に入っていき、そこで何かを話すのが聞こえた。
「それじゃあ、今日の夜に……」
「分かった。必ず行く。」
2人が何か話しているようだが、聞こえたのは“今日の夜、必ず行く”であり、それを聞いた藤孝と凜子は首を傾げ、3人は急いでその場を離れたが、何を話しているかが分からなかった。
「なんだ?今日の夜って……どこに?」
「春輝の奴、何を?」
「藤堂……凜子……。私達も行くわよ……。」
「「!?」」
「は~る~き~!薫と2人っきりでどこ行く気か知らないけど……絶対に許さないんだから!」
極低温の冷気を漏らしながらそう言うきららに2人は多少引いてしまうが、凜子は内心春輝が何故薫とそんな話をしていたのかが気になり、凜子はゆきかぜと不知火にもこの事を話すと2人も行くとの事で、凜子、ゆきかぜ、達郎、不知火、藤孝、きららが後に追う事となった。
その夜、春輝は以前にマイクロバスに乗った場所で待っていたすると、足音が聞こえて振り返るとそこには凜子やゆきかぜ、不知火ときらら、さらに藤孝も居たのだ。
「みんな!?なんで、ここに!?」
「春輝、貴方こそこんな時間にどこ行くの?何を思にここにいるのかしら?」
「お兄ちゃん、答えてくれない?」
「春輝、ネタは上がってるの!薫と何しに行くわけ?」
不知火とゆきかぜ、きららに詰め寄られ、春輝は戸惑いながらも何故皆がここにいるのか、それが分からなかった。
すると、その様子を見ていた藤孝が頭を掻きながら補足した。
「お前が芳廼と2人で密会してたのを見て、それで聞いたんだよ。それでなにしてんのか気になったんだ。」
「春輝、芳廼と何を話していたんだ?」
「あぁ、あれか。実は芳廼さんと百愧龍宮の里に来てほしいって言われたんだよ。それでこれから行くんだ。大切な話があるって言われてな。」
「「「「大切な話?」」」」
「というか、春輝!?あなた、何で百愧龍宮と仲良くなってるの!?あんな危ない人達と何で!?」
「いやそれは……あ!来た。」
不知火に詰め寄られていたが、その時丁度マイクロバスが来て中から薫が降りてきた。
「お待たせ水城く……あれ?凜子さん、藤堂くん、ゆきかぜちゃんに達郎くん、鬼崎さん、それに不知火様まで?皆さん、どうしてここに?」
「芳廼さん、だったわね?こんな遅い時間に何処へ何をしに行くの?」
「あ、あの……水城くんに頼みたい事があって。バスの中で話しますので、皆さん乗ってください。」
薫にそう言われ、一同はマイクロバスに乗り込む。目指す先は百愧龍宮の里であるが、バスの中はある意味重い空気に包まれていたが、薫が用件を話した。それは朝、ニュースでやっていた“蒼鳥の像”を盗んだ犯人が里を襲うと文を送ってきたのだ。
それを知った薫は悩んだが春輝に手を貸してもらおうと思い、学園で話したのだ。その話を聞いていた不知火は出された珈琲を飲んで、重い口を開いた。
「……芳廼さん、あなたが仲間を思って頼んできたのは分かるわ。でも私たちは対魔忍、確証もない、危険なことに私は……息子を行かせられないわ。」
「不知火さん……分かってます。そう言われるのは……でも、本当なんです!それに、嫌な予感もするんです。信じてください!」
「はぁ……芳廼さん、あなたね。」
その時、マイクロバスが急停車したのだ。
「な、なんだ!?」
「どうしたんですか!?」
「いや、前に何かいるんだ!」
運転手が指差す先、そこには青い機械的な見た目をした何かが立って、一同を見ていた。するとその何かは“攻撃”を仕掛けてきた。
「影忍法、千羽鶴・闇吹雪。」
「みんな伏せろ!!」
春輝は叫ぶと同時に無数の千羽鶴が一同に襲い掛かってきた。紙のような見た目の鶴だったが、鋼鉄化させられておりガラスを突き破ると運転手の体を貫き、マイクロバスを無惨に破壊していく。
折り鶴がマイクロバスの上を破壊し終えると、中から春輝達が飛び出してきており、運転手も僅かではあるが呼吸していた。
「ほう?逃れたか。だが、幻影の対魔忍がいるのだ……あの程度でくたばるとは思っていない。」
「お前、何者だ!?」
「これは失礼した。我が名は……“闇のヤイバ”。」
“闇のヤイバ”……その名を聞いた瞬間、不知火は驚いて目を開いた。
「闇のヤイバ!!?何故あなたがここに!?」
「お母さん、知ってるの!?」
「闇のヤイバ……裏の世界では知らない者はいない。殺しや暗殺を主な仕事にしていて、彼と対峙した者は必ず命を落とすと言われているわ。現に闇のヤイバは私たちよりも殺しに長けている。」
「「「「「!?」」」」」
「ほう、幻影の対魔忍にそこまで言われるとは、恐悦至極。だがそんな事はどうでもいい。貴様らをここから先に通すわけにはいかん。今宵をもって、百愧の里は……滅ぶ。」
「それはどういう意味!?里を滅ぼすって……何をする気なの!?」
ヤイバの言葉に薫は目を開き、飛び出すがヤイバは構わずに忍者刀を抜き構える。
「貴様が知ることではない。お前たちは全員ここで葬る。」
「やれるもんなら……やってみな!!」
春輝と薫は互いに得物を持ってヤイバと戦う。しかし、ヤイバは2人の攻撃を軽々と捌き翻弄していく。ヤイバの強さに春輝と薫は押され始めつつあった。何とか肉薄する2人にヤイバは己の技を放つ。
「影忍法、闇一閃!」
「っと!?」
「はっ!」
ヤイバは陣を指で描き、動けなくなった2人に斬りかかるが2人はそれをギリギリで避けるとヤイバと距離を取り、薫は即座に斬りかかり春輝も蹴りを放つが、それも軽々と避けられてしまう。
すると、ヤイバは空を見上げて、ふっと笑った。
「なに笑ってんだ?」
「……まもなくだ。まもなくこの地に“魔鳥”が現れる。世界を滅ぼすほどの魔鳥が、この地に……これを使ってな。」
ヤイバが取り出したのは、盗まれた蒼鳥の像であった。
「それは、蒼鳥の像!?」
「蒼鳥の像?これは“
「そんなことさせない!!」
「無駄だ。影忍法、闇の舞!」
ヤイバは一瞬にして姿を消してしまい、静かな笑い声だけが聞こえる。すると、里の方では爆発音が聞こえており、薫は拳を強く握りしめる。
「芳廼さん!」
「水城くん……こんなことに巻き込んでごめんなさい。あんな奴がいたなんて思いもしなかった。でも、後は私に任せて。」
「どういう意味だ?」
「闇のヤイバは私が……百愧龍宮が倒す。みんなを巻き込めない。」
薫はそう言うと、里へと駆け出した。
◆◆◆
百愧龍宮の里がヤイバの放った怪物、闇ツクモガミに襲われていた。暁冥達はそのツクモガミ達を倒していると、空にヤイバがおり、蒼鳥の像……魔宝玉を月に掲げる。
「時は来た。魔鳥よ、その姿見せたまえ。」
魔宝玉に月の光が掛かった時、1人でに空に浮かび像の体が震えだし、石の体が徐々に艶を増して羽のようになり、その小さい石像だったそれはまるで、二足歩行の両腕が翼の蒼い鳥となり、ヤイバはその鳥に指差して襲う方向を示す。
「行け、奴等を滅ぼせ。」
「クオォォォオォォォォォンッ!!!」
高らかに叫んだ魔鳥が百愧龍宮へと向かい、羽ばたいた……。