五車学園の所有する原生林の一画。
生徒達が鍛練や休む場所と使う学園敷地の森、そこに対魔スーツに身を包んだアサギと彼女と向かい合う春輝。この2人の戦いを見ようと、学園の森には、アサギの妹であり五車学園の教師でもある“井河 さくら”。アサギに心酔している同じく教師の“八津 紫”、春輝の母であり、対魔忍の先輩でもある“水城 不知火”。
この3人が春輝とアサギの戦闘の様子を見る為に、裏山に来ており、その動向を見届けようとしていた。さくらは紫から話を聞いた駆けつけた。対魔忍のスーツに身を包んだアサギと私服の春輝が対峙する中、アサギは優しげに春輝に話し掛ける。
「準備は良いかしら?好きに攻めてきて良いからね。」
「はい……じゃあ、行きますよ。風遁、
“好きに攻めてきて良い”……その言葉に春輝はアサギに向かっていき、攻撃を仕掛けるが全て避けられてしまい、それを見た春輝は“風遁”の忍術を発現する。
春輝が右手を前に突き出すと、かまいたちがアサギに向かって飛来する。
その速さは銃弾並みに速く、アサギはそれを咄嗟に木を楯にしながら避け続けていたが、風が木に当たった瞬間にその木を切り裂いて行き、アサギは危なげなく上へと避けると春輝はさらに風の刃を放つ。
「へえ?凄い切れ味。中々の風遁だね!」
「だが、下の中だ。アサギ様には当たらん。」
「(春輝、無理だけはしないようにね。)」
さくら達が戦闘訓練を見ていくと、春輝はアサギの動きに対応しながら次の術を使用するか思考していた。
「(なかなか早いな。だったら!)風遁、烈風弾!」
春輝は巨大な水の塊を放ち、アサギを翻弄していく。木々を打ち砕いていく水の塊にアサギは木々を盾に避けていく
「(なるほど。忍術の練度高いし、精度も良い……。相当“術”の鍛練はしてるみたいね。)凄いわね。まさかこれほどとは思わなかったわ。」
「ありがとうございます。でも、まだまだ驚かせますよ……土遁"土流槍!"!」
「「「土遁!?」」」
春輝はそう言うと、足下から高密度の岩の槍を放つ。アサギはそれを再び飛んで躱すが、春輝は追撃を止めない。
「雷遁、雷球連弾!」
自身の周囲に10を超える電撃の作り出すと、それをアサギに向かって放つ。アサギはそれをすべてギリギリの所で躱していくが、彼女は驚いていた。
「(この子、一体いくつの術を使えるの!?土遁、それに雷遁まで……この子はいったい。)」
「
アサギが木の陰に隠れながら春輝を警戒していると、春輝は雷遁を纏わせた手裏剣で分身を作り出して、それをアサギに向かって投げる。アサギは木を使って避けると、春輝はアサギが隠れている木を凝視している。
そんな中でさくら達は春輝とアサギの試合を固唾を呑んで見守っていた。
「凄い!風に水、土に雷まで使えるなんて!」
「何なんだ……多種の術を使うなんて!?」
「春輝、あの子いつの間にあんな・・・。」
3人がそれぞれの反応を示す中、アサギが今度は動き始めて春輝に素早い速度で斬りかかるが、春輝はそれを察知して避けていく。今の彼女の中には春輝への警戒心で満ちていた。
「(この子、恐ろしい子ね……恐らく術もまだ持っているでしょうし、多分体術も修めている筈。油断せずに行かないと。)春輝くん、来なさい!」
「分かりました。宜しくお願いします!風遁、風鎧!!」
春輝は全身に風遁のチャクラを鎧のように纏うと、アサギに一気に間合いを詰めて肉弾戦に入る。回し蹴りや徒手空拳と技としては大味であったが、それでも確かに威力があるためにアサギは言葉を驚く。
しかし、内心彼女は笑みを浮かべていた。これほど成長途中にある忍を味方として会えたのが嬉しかったからである。アサギの笑みを見た春輝は距離を開けると彼女の方を見ると、アサギは対魔刀を構える。
「水城 春輝くん。結構やるわね?なら、こちらも全力で行くわ!」
「え!?」
「ぜ、全力って!?」
「アサギ、そんな待って!?」
アサギの言葉に、さくら、紫、不知火は驚き、言葉を失ったがそんな彼女達を他所に、春輝は嬉しそうに笑みを浮かべると風圧を上げ、拳に力を込めてを纏わせる。
「それではこちらも答えます!」
「えぇ、来なさい。」
アサギはそう言うと、得物である忍者刀を刀身を下に向けて構え、春輝は構えながらアサギに向かって駆け出すと、雷遁を纏った手刀とアサギの刃がぶつかり合う。火花が散り、どのようになっているか3人には分からなかったが、アサギは着地すると忍者刀を逆手に構えて必殺の一撃を放つ。
「忍法"殺陣華"!」
アサギの得意忍術、隼の術を用いた高速移動する分身の術の併用した乱舞が春輝に迫る。周囲の木々を刈り取り、さくら達は言葉を完全に失うが、そんな中、春輝は焦らずに先読みしつつ影分身で分身の動きを予測して、攻撃を避けていきながらアサギ本体に近付くと、掌に必殺の術を作り出す。
「
「っ!?」
アサギは咄嗟に分身を向けて後ろに飛び退く。
すると、分身は木にぶつかり乱回転する風によって粉砕され、それを見たアサギ達は言葉を失ったが、その術……旋風刃を放った春輝は未だに余裕なのか笑みを浮かべてアサギを見ている。
「(まさかこれほどなんて・・・これは手加減しない方がいいわね。)」
アサギは忍者刀を再び逆手に持つと、自身の最速の術を放つ用意を整えていく。
「忍法・・・光陣・・・!?」
アサギが術を発動させようとした時、春輝を見てアサギは動きを止める。
目の前の春輝は楽しげな笑みを浮かべながら身体中の風を右手に集め、その手から風切り音のようなモノ音を立てながら術を発動させていく。その手には野球ボールくらいの玉が乱回転している。
「(あれは、何の術?……けど、何か違う。)」
それを見て不知火、紫、さくらは何かを感じ取って動こうとするが、アサギはそれ以上に春輝の手に光っている風遁の術らしきモノを見て、言葉を飲み込んだ。
「(あの風、何かは分からないけれどさっきの術と同じくらいに強い術ね・・・。
もしも まともに受ければ私も・・・。)やめましょう。」
「「「「え?」」」」
「その術、受ければ私もタダでは済まないでしょう。それにアナタの力も見れた・・・アナタの勝ちよ。」
「……ありがとうございました。」
最強のくノ一と呼ばれているアサギにそう言わせ、善戦以上の活躍を見せた事に、さくら達は驚き、不知火はどこか驚きながらも誇らしげである。
一方でアサギは身体に襲い来る疲労感に滝のような汗をかいており、片膝を付きながら肩で息をしていた。が、それ以上に彼女は春輝の方を見ていた。
「ふぅ……っ。」
「アサギ様!」
「お姉ちゃん!」
紫とさくらがアサギに近付き、さくらが肩を貸しながら立ち上がらせると、紫が持っていたタオルを使ってアサギの汗を拭う。すると、アサギは不知火を呼ぶ。
「アサギ、本気なんて何を考えているの?それに、これ以上はわたしも黙ってないわ。」
「それについてなのだけど、不知火……春輝くんを対魔忍として正式に育ててみない?娘のゆきかぜと一緒に。」
「え?それは、どういう意味?まさか……!」
「春輝くんには対魔忍としての、いいえ、忍としての才能があるわ。
わたしは彼を生徒として、彼をこの五車学園に編入させたいわ。」
アサギの言葉に紫とさくらが、彼女の方を思い切り振り返って見る。
「「え?えぇぇぇ!!!?」」
アサギの言葉にさくらと紫は驚きの言葉を挙げたのだった……。