その頃、春輝は九尾モードの状態でシュトロハイムと格闘戦を行っていたが、シュトロハイムは春輝にタコ殴りされており、整っていた顔は見る影もない程に腫れ上がっていた。
「がはっ!!?」
「(なぁ九喇嘛、こいつ。)」
【気付いたか春輝、あぁそうだ。こいつは明らかに弱ぇ。しかも別の気配がしやがる。つまり――】
「(つまり、どこかに"本体"がいる。)」
春輝は気配を探っていると、天井裏に気配を感じた。
「そこに隠れてる奴、出てこい!」
春輝が声を掛けると、天井裏から現れたのは蜘蛛の体をした魔族の男であった。
「キシシシッ!どこで気付いた?バレないと思っていたんだがなぁ。」
「嫌な気配がしたんでな……それより、お前が銀虹の本体だな?」
「ほう?なぜそう思う?」
「明らかに何か見られてる気はしてたんだ……。それにこの妖魔は何か違和感があって探ったんだが、そうしたらお前の気配を感じた。お前が銀虹のシュトロハイム、そうだろ?」
「くくくっ!その通りだ!俺は分身である子蜘蛛を体内に侵入させて、それで相手を操る!あの女もこうして操ってやったのさ!」
「クソ野郎……!ここで確実に潰す。」
「へへへっ!やってみろよ。この人形を倒して、俺を倒せるのならな!」
そう言うとシュトロハイムの本体は人形を操ると、春輝はその人形を相手に体術をしながら様子を見ている。まるで人形と本体の距離を開けるように。
「ひひひっ!おいおい、俺を潰すんじゃないのか?さっきから人形相手に苦戦してるみたいじゃねぇか?さっさと潰してみろよ!対魔忍のクソガキ!!」
「なら、お望み通りにしてやるよ。」
春輝は人形の男の首を掴むと、180℃回転させ倒しシュトロハイムへと向かっていく。
すると、シュトロハイムは糸を出して春輝から距離を取る。
「キャハハハッ!!馬鹿め、貴様みたいな化け物とまともにやり合うわけねぇだろう!!あの3人を犯せなかったのは残念だが、今回は「逃がすわけ無いだろ?」はぁ?」
「お前はこの場で殺す。かなり痛い目を見せてからな。」
「くひっ!ギャハハハッ!やれるものならやってみろよ!お前に俺を「"闇遁"」へ?」
春輝がそう呟いた瞬間、シュトロハイムの周りが闇に包まれていき、その闇が彼を包み込んでいくように狭まっていく。
これは春輝が修行の中で得た新しい忍術であり、これを見た春輝は自身の知らない忍術に戸惑ったが、その威力は確かなものであった。
さらにこの属性は本来使わない術なので、どちらかというと魔族の力に近い物がある。
「な、なんだその力。お前、いった――」
「黒棺。」
その瞬間、闇はシュトロハイムを包み込み、まるで箱のように彼を覆い、中から骨が砕けるような音と肉の潰れるような音が聞こえており、その闇が晴れると……そこには身体のあちこち、腕や足が潰れ、物言わぬ肉塊となったシュトロハイムが出てきたのである。
闇遁、黒棺――暗闇で相手を包み込み、その暗闇の中はあらゆる物を押し潰すほどに重く苦しい重力が拡がっている。
「が、がはっ……!!?」
「終わりみたいだな。」
「ぎ……!きざ、ま……!」
「っ!春輝さん、そいつは?」
シュトロハイムを見下ろしていると、そこには姉を連れた咲弥と凜子、澄香が来ており、シュトロハイムは逃げ場を失っていた。
「こいつがシュトロハイムの正体だ。トドメは篠宮さんが刺せ。」
春輝がそう言うと、咲弥は頷き対魔刀を構える。
しかし、彼女の刀は鋒のみに刃があるだけで切ることは出来ない。そのため咲弥は姉の対魔刀を持って近付く。
「ぐぎ……こ、この……!」
「こんな形で会うとは思いもしませんでしたよ。姉さんを犯し、仲間を汚し、今まで好き勝手してくれましたね……。」
「こ、の……ガ、キ……!俺は、銀虹の」
「もう耳障りですので、死んでくれていいですよ。」
そう言うとシュトロハイムの首を落とした咲弥は、脱力したのかその場に座り込んでしまう。そんな彼女を見て、春輝は優しく微笑んで頷いた。
その後、玲華を連れた4人は五車学園へと戻っていき、凜子達は検査と治療を受け、しばらく安静する事になったが、咲弥の姉である玲華は対魔忍として復帰するのは難しいと言われた。
しかし、篠宮家はそんな玲華を支えていくと言って彼女のサポートをする事を伝えた。
さらに銀虹のシュトロハイムを倒した事によって、魔族の一部は力を失ったと言われていたが、それでもまだエドウィン・ブラックは健在であり、イングリッドやバルトといった強者が多くいる。
まだ油断できない状態であった。
「(もっと強くならないと。その為には、忍術だけじゃなく、体術も鍛えないと。)」
そう考えた春輝は、改めて体術の修行に入ろうとしていた。
「あらあら、こんな所で修行してたんですね?わたしも誘って欲しかったなぁ。」
「っ!?し、篠宮さん!」
「ふふっ、こんにちわ春輝さん。学園の敷地で隠れて修行しているなんて、熱心なんですね。びっくりです。」
「いや頼むから後ろに立つなっての。というか、身体はもういいのか?」
「はい、バッチリです!私、こう見えて何でも出来ちゃうんですよ?あんな事されても、なんとか我慢できましたし!」
笑顔でそう言う咲弥に、春輝はあははっと乾いた笑いをしながらも内心安堵していた。そんな中で、咲弥が提案してきた。
「春輝さん、お一人で鍛錬するのもつまらないでしょうし、私もご一緒しますよ。」
「え!?いやけど、いいのか?俺なんかと鍛錬しても。」
「俺なんかって言わないでください。私は、あなたと一緒に鍛錬がしたいんです。あなたと鍛錬すればもっと上に行けると思うんですよ。」
「は、はぁ?それより、お姉さんのこと……玲華さんは大丈夫なのか?」
「姉さん、リハビリを頑張ってて少しずつだけど立ち直ってるんです。だから、私も頑張りたいと思うんです。ですので春輝さん、一緒に頑張りましょう!」
「あぁ、宜しく頼む。」
2人はこうして一緒に鍛錬をすることにしたのだが、それを目撃したゆきかぜ、きらら、藤孝も混ざって一緒に鍛錬することになったのである。