銀虹のシュトロハイムを倒し、篠宮 咲弥の姉、玲華を救い出した春輝達はアサギから休暇を3日程与えられ、体を休ませる事になり、その中で春輝は家族や友人達と一緒に山にハイキングに行ったり、父親の墓参りに行くなどして休暇を過ごした。
そんなある日、春輝は白嶺の下を訪れると、そこには大柄な筋肉質な体をした男が数人いたのだ。その全員が白目と黒目が逆転している。
「白嶺さん、彼らは?」
「彼れ等は"
言っておくけど、そこらの人よりも強いから。」
「殺し屋!?え、まさか、この人たちから技を覚えるんですか?!
覚えて大丈夫なんですか!?」
「今のキミなら大丈夫だよ。何せ能力に覚醒しているからね・・・。」
そう言われて戸惑う春輝だったが、そんな彼の前に1人の老人が歩み寄っていく。
「お初にお目にかかる。わしは
「っ!は、はい!」
本気の殺気を間近で受けた春輝、彼は息を飲むがそれだけ相手も本気だということを知り、春輝は気合いを入れて返す。
そして、いよいよ呉一族との稽古が始まる。
彼らは殺しの専門であり、格闘から暗殺術まで習得しており、それは達人の領域で春輝は何度となく半殺しにされ、時には指を、腕を折られ、足を折られ、砕かれ、転がされ、それはもう言葉では言い表せない程に酷く、拷問のようでもあった。
「がはっ!!げほげほっ……!」
その中で春輝は血ヘドを吐いても、泣き言は言わずに稽古を続けていき、漸く呉の男3人から1本取ることが出来たのである。
「ぜぇ、ぜぇ、はぁはぁ!」
「ほっほっほっ!ホルス達3人に漸く勝ったか、見事見事。」
「は、はい。ありがとうございます。」
「なら、いよいよ"本番"じゃのう。」
「ほ、本番?」
恵利央の言葉に春輝は、間抜け面になるが恵利央は構わずに続ける。
「今からお前さんを死ぬ寸前まで戦ってもらう。その相手に勝てれば終わりじゃ・・・途中では止めんぞ。嫌なら止めてもいいが、どうする?」
「っ!やります!やらせてください!」
老人は笑みを浮かべると、手をパンパンッと叩く。すると、空から1人の男が現れた。
「ギャハハハハッ!おい、じいさんよぉ、こいつがその物好きな奴か?」
「そうじゃとも、たっぷり相手してやれ・・・紹介しよう、其奴はわしら呉一族の1人、名は雷庵じゃ。」
「宜しくな小僧。た~~~っぷりと可愛がってやるぜ?
泣こうが喚こうが止めねぇがな。ギャハハハハッ!」
「よ、宜しくお願・・・がはっ!!?」
頭を下げようとした春輝は突然吹き飛び、転がる。雷庵が蹴りを放ったのである。
「挨拶は無しだぜ?なんせ始まってるんだからなぁぁぁぁ!」
「ごぼっ!げほっげほっ!!」
「ダウンしてる暇は、ねぇぞ!!!」
雷庵は倒れている春輝に駆け寄ると、ボールを蹴るかの如く蹴りを放ち、春輝は上ってきた胃液を口から吐き、転げ回る。
「ゲホッゲホッ!!?う、うぇぇぇ!!!?」
「ぎゃははははははっ!オイオイ、もうダウンか?だらしねぇなぁ?」
「はぁ、はぁ・・・!」
春輝は目の前に立っている雷庵を見上げる。
“恐怖”・・・。それが今、春輝の中にある思いであった。
今までの相手に本気の殺気を向けてくる相手は居なかった。が、目の前にいる男、呉 雷庵は本気で自分を殺しに来ている。
雷庵は笑っているが、その攻めには一切の妥協がなく、確実に自分を殺しに来ているのだ。
春輝はその殺気が恐ろしかった。
「(無理だ。勝てる気がしない。こんな人に・・・どうやったって勝てるわけが・・・。)」
【逃げるな!!!蹴りが来るぞ!!】
「っ!?」
「あ?」
体が後ろに下がりそうになった春輝だったが、それを止めたのは九喇嘛の声であり、そのお陰か春輝は迫ってきていた蹴りを避ける事が出来た。
「(く、九喇嘛・・・ありが【情けねぇぞ!!】え?)」
【あんな程度の殺気に呑まれる!!
お前が進む道には こんな奴がゴロゴロといるんだ!!
立ち向かう気概を見せろ!?】
「(分かってる!!?けど、怖いんだ!足がすくんで動かなくなるんだ。)」
春輝は精神の中で九喇嘛に向かって叫ぶように泣きながら、気持ちを伝える。しかし九喇嘛はそれを聞きながらも、ひじを付いて春輝に言い放つ。
【春輝、お前家族やダチを守るんじゃないのか?
それなのに強敵が出てきたら、ビビって逃げ腰になるのか?】
「(っ!?)」
【しっかりしろ!恐怖なんざ誰にだってある。だが逃げるのやめろ!
それはお前自身を殺すことになるんだ。そうなれば、一生負け犬だぞ!!】
九喇嘛の言葉に春輝は拳を強く握り、立ち上がると、自身の額をガッと強く殴りつける。
「「あ/ん?」」
「(九喇嘛、ごめん・・・。
それと、ありがとう。お陰で振り切れた。)」
【へっ!!分かったなら立ち向かえ。
こいつに勝てれば大概のことは乗り越えられる!
やってやれ!!春輝!!】
「あぁ!」
気合いを入れ直して立ち上がると、雷庵に向かって駆けていき、ハイキックを放ち、雷庵はそれを防ぐと、春輝の顔に向かって正拳突きを放つ。春輝はその拳を防ぐと、背負い投げをして雷庵を地面に叩きつける。
「ガハッ!?このガキ、ようやくやる気になったか!!!
これなら、本気で楽しめそうだなぁぁぁぁ!!!!!」
雷庵の体から凄まじい殺気を放ち、全身が赤みを帯び、マガマガしい殺気を放つ。
これこそが呉一族の秘伝、"外し"である。
「っ!?凄い殺意、下手したら呑まれる!?」
「行くぜ、しっかり目ん玉開いてろよ!!!」
「負けるかぁぁぁ!!!」
春輝は気勢を挙げると雷庵に向かっていき、2人の拳が交差して互いの顔面にぶつかる。血を流しながらも、2人は互いに殴り合う。初めは少しずつ春輝が押し返し始めていく。
恵利央と白嶺は春輝の様子を見て驚き、目を見開く。春輝が"外し"を使っているのだ。
「(なんだこれ、体のあちこちが痛むのに、逆に調子が良い!!!
もっとギア上げるか!!!!!)」
春輝は剣術の修行の中で学んだ呼吸方である、全集中・常中を行い、さらに速度を上げていき、そして・・・。
「アアァァァァァッ!!!!」
叫び声を挙げ、呉一族の家に伝わる体術を使い、雷庵を倒したのである。
「はぁ、はぁ・・・。」
春輝は力を使い果たしたのか、その場に倒れて眠ってしまう。すると、恵利央は春輝に近付くと彼を見下ろす。
「・・・これほどとはなぁ。まさか雷庵を倒してしまうとは。それに"外し"まで会得するとは。」
「呉の方、こちらを。今回の依頼料、雷庵殿の治療費、そして"外し"の料金だ。占めて20億入っています。お納め下さい。」
「ふむ、確かに。しかし驚きじゃわい。一族では無い者が"外し"を使うとは・・・目が覚めたら伝えておけ。外しは寿命を縮める、あまり使うな、とな。」
白嶺がアタッシュケースに入れたお金を受け取ると、呉一族は元の世界へと帰って行った。その後、春輝は白嶺によって家に戻されたのであった・・・。