対魔忍の住む隠れ里の町である五車町、そこには数多くの対魔忍の家があり、そのほとんどが古くから存在する名家である。
その名家の対魔忍達は少なからず、プライドが高い者が多く、家柄を鼻に掛ける者も多いがそんな中、対魔忍の新興勢力であり、五車の民達からも好かれている家がある。その名は"獅子堂"。
今、その獅子堂の宗家の屋敷には大勢の獅子堂一派の忍が集まって、宴会をしている。
その中で獅子堂宗家の若き主である、獅子堂 宗一郎は祖父であり、今は隠居の身である獅子堂 源一と酒の組交わしている。
「こうしてお前と酒を飲めるのを楽しみにしていたぞ、宗一郎。」
「あぁ、俺もだよ。」
お猪口をカチン、と合わせて酒を飲む宗一郎と源一。宗一郎は幼い頃に母を病で亡くし、父を任務の中で殉職しており、両親に代わって祖父母に育てられ、その中で祖父である源一から獅子堂流体術と穏行の術を学び、様々な任務をこなして行く中で対魔忍の中でも実力が認められ、五車学園を卒業した後は多くの嫁を持ち、獅子堂家の当主となった。
そんな彼は手元にある1人の生徒のデータが記された書類を見ている。
「水城春輝、水城不知火の息子であり、今勢いに乗っている若い対魔忍・・・。
特異な忍術、体術、武器術を用いてあらゆる任務をこなす、かぁ。
へぇ、成績は覇遁の"宗河 賢丞"に次ぐモノか、結構良いな。」
「あぁ、アサギも絶賛していてのう・・・将来の後継者にする気かもしれん。
じゃが、知り合いに聞いたんだがこの子に対して不満を持っとる者がウチの若いのに多いのじゃ。
特に翔馬や聖一郎、豪一。あとは分家の洋祐、善之助かのう。」
「マジで?なんかやらかしたのか?」
宗一郎が訪ねると源一は、はぁっとため息を吐く。
「それがのう、洋祐や善之助は春輝くんを不信に思っとるそうなんじゃ。万太郎達も気を揉んでいるのじゃ。」
「う~ん、話を聞く限り、別に問題は無さそうに見えるけどな。
それに俊一が彼と組むのを楽しみにしてんだ。」
「気持ちは分かるんだが・・・こればっかりは真実が掴めず、やきもきしているんだよ。」
う~んっと唸って腕を組みながら、悩みに悩む宗一郎。
仲間達の疑問も分からなくはない、しかしなんの根拠もなしに知りもしない相手を疑う事に難色を示している宗一郎は、何か良い案が無いかを考えていた。
すると、襖が開きそこに彼の正妻であり、同期だった対魔忍のくの一、仲森 奈々華が現れた。
「失礼致します。宗一郎様、源一様、お茶をお持ちしました。」
「奈々華、ありがとうな。あ!そうだ、奈々華。
水城春輝って、どんな忍なんだ?」
「水城・・・あぁ、春輝くんの事ですか?私も後輩の口からしか聞きませんでしたが、努力家な子らしいですよ。
いつも1人で修行してるらしいんです。あと人柄も良いらしく友達も多いらしくて、妹のゆきかぜちゃんとも仲が良いらしいんです。」
奈々華の話を聞いて尚のこと春輝に対しての謎が深まった宗一郎は、さらに深く考え込んでしまう。
今度は源一が質問をしてきた。
「奈々華さん、この子の事で他には何かあるか?」
「他にですか?う~ん、他にはこれといって浮かんできませんね。
あぁ、でも凄く家族思いらしいんですよ。お父さんを亡くしてから特に最近は。」
「そうか、ありがとう。下がりなさい。」
奈々華は一礼すると、部屋の襖を閉めて下がっていき、話を聞いていた源一も腕を組んで唸り始める。
「困ったのう、どんな子なのか・・・益々分からなくなった。」
「う~ん、確かになぁ。
まぁ、考えても仕方ない!もしかしたら会えるかも知れないし、その時に聞くとするか。」
「ふふっ、お前は変わらんのう。」
孫の言葉に源一は笑みを浮かべるのであった・・・。