対魔忍“中忍”試験の当日の朝、柱間たちとの修行を終えた春輝は早起きして軽くランニングをした後のシャワーを浴びていた。
その体には修行で着いた傷痕が残っていたがどれも塞がっている。春輝がシャワーを浴び終えると、制服に着替えて、朝御飯の支度を進めていく。すると、部屋から不知火が起きてきた。
「ふぁ………ぁ。あら、春輝?早いのね。」
「まぁね、今日は試験だから。あ、朝御飯出来てるから。
ゆきかぜ、起こしてくる。」
「分かったわ……!春輝、待って!」
春輝がゆきかぜを起こしに部屋に向かう際に、彼女は服の下に見えた傷痕を見て、彼を止めた。
彼女位の実力になれば、少し見ただけであるが傷についても分かるようになるが、不知火は春輝の傷を見て、強い違和感を感じたのだ。
「ん?なに、母さん?」
「春輝、その体の傷……どうしたの?」
「え?あぁ、これ?ちょっと過激な修行で着いた傷だよ。
担当してくれてる人がかなり強くてね。いつか母さん達にも会わせるようにする。」
「それは構わないけど、試験なのに大丈夫なの?」
不知火が春輝にそう訪ねると、春輝は笑って答えた。
「大丈夫大丈夫。これくらいならすぐに塞がるし。あ!そろそろ時間だ!
ゆきかぜ!朝だぞぉぉ!」
ゆきかぜを起こしにいった春輝を見た不知火はため息を吐いて、多少安堵したようにも見えたが、それでも息子の“過激な修行”という言葉に一抹の不安が過るのだが、慌てて起きてきたゆきかぜを見て、それも少しばかり覚めたのであった。
その後、慌てながらも支度を終えたゆきかぜは春輝と共に五車学園へと向かうのであった……。
朝、8時30分。五車学園へと辿り着いた春輝、ゆきかぜは凜子やきらら、真、藤高、晃達と合流し、それぞれのクラスへと向かうとその途中で各自の教室が割り振られているのが見え、教室に入ると大勢の生徒達が喋りながら席についているのが見えた。
その数、ざっと50人以上!!
「うわぁ。改めてみると壮観だな、中忍試験の受験者の人数。」
「だな。これだけの人数から分隊長に上がれるのは、ひと握りか。
必死にもなるわけだ。」
「あぁ……ん?」
遠くから女子生徒達のキャー!という黄色い悲鳴が響き、そっちを見てみるとそこには黒い髪を後ろで纏めた目付きの鋭い青年がこちらに歩いてきていた。
「あいつは……
「
「真陰って、あのエリート部隊の?スッゴい人気ね?目付き悪いけど。
てか、あの黒鉄ってどんな奴なの?」
「何だよ鬼崎。知らないのか?
黒鉄 恭弥、エリート部隊“真陰”の副隊長を努める忍で別名“魔滅の黒鉄”。
獅子堂よりも歴史の古い“黒鉄家”の出身で、かなりの実力者。
今回の優勝候補とも言われてるんだぜ?」
「「へぇ。」」
「いや春輝も知らなかったのかよ……。」
春輝ときららが頷いていると、春輝は遠くの席でこちらを睨んでいた獅子堂翔馬に気付いた。
「春輝?」
「ごめん、ちょっと野暮用。」
春輝が翔馬に近付くと、翔馬は鋭く彼を睨み付ける。
「よ、この前はどうも。」
「よくもまぁ俺に話し掛けられたな?そんなに殺されたいわけ?」
「いやただ話し掛けたのに殺すなよ。こっちもやれることはやってるつもりだ。」
「下らねぇ。お前なんか忍に向いてねぇよ。テメェなんざ分隊「おい。」っ!?」
翔馬が話を続けようとした時、春輝からの感じた事の無い圧のようなものを感じて押し黙ると彼を横目で見た。
「こっちはただ話し掛けただけだ。別にあんたとやり合おうとして来たんじゃないんだよ。
あと、何が気に入らないか知らないけど、こっちとしては訳がわかんないんだ。
俺、昔お前と会ったのか?」
春輝からの圧らしき物を感じた翔馬は多少驚いたが、即座に持ち直すと席から立って春輝を睨み付ける。
「……昔?あぁ、会ったよ。けど俺は、テメェに“失望”したんだよ。
俺だって会うのを……!」
春輝と翔馬のにらみ合い、その空気に周囲がピリピリしてた時である。
「お前達何を騒いでいる!席につけ!!」
「試験の説明に入るぞ!おしゃべりは止めて、席につけ!」
教室に入ってきた蓮魔零子と獅子堂時松、紅藤十郎、井河さくら、八津紫、が入ってきて、それを見た春輝が翔馬から離れると、指定された席に着いた。
それを見た零子が説明を始める。
「では、これより第一次試験を行っていく。
第一次試験は筆記、問題の書いてある回答用紙を受け取ったら裏返して待て。
言っておくが、“下手なカンニング”や“御粗末な不正”を行えば即座に落とす。
時松殿、お願いします。」
その瞬間、春輝と晃、そして一部の者達はある一点を感じた。
下手な御粗末……即ち、ミスをすれば命取り……これが情報収集能力を見ているという事を。
「あぁ、では回答用紙を配る。くれぐれも“下手”をうつなよ?」
時松から問題用紙が配られ、まもなく試験が始まる。
蓮魔が時計を腕時計を見て……そして。
「始め!!」
生徒達が一斉に問題を回答していく……。
春輝side
これはナルトのアカデミーの時にあった“情報収集”試験と同じだ。
晃もどうやらそれを感じたのか問題を独自の方法で解いている。
「(九喇嘛、調子はどう?)」
【ふんっ、柱間とかいう奴の所では休ませてもらったからな。
わしは本試験とやらまでは眠ってるつもりだ。】
「(そいつはどうも。)」
【そういやぁ春輝、あの獅子堂とかいう奴とは会ったことは?】
「(やっぱし思い出せないんだよなぁ?あの口振りだと会ったこと在るんだろうけど。
って、ヤバイヤバイ問題に集中しないと。)」
その時だった。
俺の後ろから悲鳴が聞こえ、誰かと時松先生が言い争っているのがそのまま連れ出されていくのが分かった。
その後も何人か、外に連れ出されていった様だが……俺や凜子達は無事最後まで残り、俺は難なく筆記試験を終えた。
キーンコーンカーンコーン!キーンコーンカーンコーン!
「そこまで!答案用紙を置いて手を下ろせ。」
「では回収するぞ。」
時松先生やさくら先生達が答案用紙を取っていき、静かに息を吐き周りを見てみると数十人の生徒が居なくなっていた。
「(これは……落ちたって事か。ヤバイな。数十人は一気に落ちたなんて。)」
すると、蓮魔先生が話始める。
「みんなお疲れさま。先ほど大勢の生徒が失格したが、君たちは合格だ。
筆記試験を終えたようで安堵しているようだが、君たちに伝えておく。
この試験での“獲得点数が高かった生徒”から後日行われる“戦闘試験”の“試合順”が決定する。」
『!!!?』
戦闘試験……それって予選とかもなく、いきなり本選って事か!?
しかもテストの点数が高かった順ってことは……かなり最初ってことか?!
「この戦闘試験では、妖魔との戦闘になった際の“戦闘力”を見る為の物だ。
即ち、君たちの鍛練の度合いが分かり、実力を試される場所でもある。
みんなの実力を、遺憾無く発揮してほしい………解散!」
『はい!』
こうして、俺たちは無事に一次試験である筆記試験を終えたのだが、次に残っている“第二の試験”の事で頭がいっぱいであった……。