春輝が五車へ向かう前日の夜、春輝の家である水城家と同じ対魔忍の家であり、室町時代から代々続く古来の忍一族である“
彼らは銃火器等の近代兵器は一切使わず、忍術や体術といった己の力のみで今まで生き延びてきたが、彼らには“ある一族の者達”以外は他は頭が上がらず、芳陰の当主に物言いが出来るのは数名のみ。
その当主の孫であり、“砂遁”という忍術と九喇嘛と同じ尾獣“一尾”の守鶴を宿した少年、芳陰真は今、友である春輝と同じ忍になるために祖父と父、兄に頼み、修行を始め、今では砂を操る上に触れた鉱石を砂にする事が出来る。
さらに砂の形や密度、硬度などをコントロールし、自在に操作出来るようになり、さらには“第三の目”と呼ばれる遠視の術や風遁の忍術と合わせた大技、さらには祖父直伝の体術も身に付けていた。
「はぁ、はぁ………よし。」
真は新たに気合いを入れて立ち上がると、自身の中にいる
【かっかっかっ!!真、いよいよ話すんだな?】
「(あぁ、その時は頼んだぞ。)……お祖父様、失礼します。」
真が広間の襖を開けると、そこには真の祖父である“
他にも芳陰家の一門衆の一人である、“
「真、どうかしたのか?もうすぐ入学式だろ?早く寝た方が……」
「お祖父様、父様、兄上、それにみんな……俺の話を聞いて欲しいんです。お願いします。」
「……何かは知らないが、真よ。話してみなさい。皆も手を止めて聞こう。」
真剣な面持ちで自分たちを見る孫の目に、将忠は頷くと手を止めて真の話を聞くことにし、真も今までの事を話した。
友として水城 春輝と仲良くなった事……。
自身の中に“尾獣”という存在が居るという事……。
そして、友である春輝の中にも尾獣がいるという事……。
その3つを真が話したが、将忠達は2つ目の“尾獣”という存在で混乱し、さらにその友人にも尾獣が憑いている事に驚いた。
「真、その尾獣というのは本当にいるのか……?我々に証拠を見せてくれないか?」
「分かりました……(守鶴、頼めるか?)」
【任せとけっての。】
そう言うと守鶴は真と入れ換わって将忠達の前に現れた。
「【よぉ、初めましてになるのかなぁ。俺様は守鶴!真のダチの1人だ!
きーひひひひっ!!俺らは尾獣って呼ばれてて、それは尾の数で呼び名が決まるが、本当の名前がある。だから、一尾とか何尾とか呼んだら許さねえけどな!!】」
「お前さんが尾獣という存在だというのは分かった。しかし、お前さんいつから真の中にいる?お前さん、真とはどういった関係はなんだ?」
「【んなこと決まってんだろ?こいつが生まれたときから一緒だし、ダチだよ。ダ~~チ。まぁそれよりも、俺は真を護るためにこいつと一緒にいるんだ。】」
「ほう?真を、護るためにか。」
「【あぁ、こいつのダチも、その憑いてる奴も悪い奴じゃねぇ……腹は立つけどなぁ!】」
カラカラと笑う守鶴に一同は呆気に取られていたが、将忠は笑いながらアゴ髭を撫でる。
「ほっほっほっ!守鶴かぁ、中々に面白い友を持った者じゃ。では守鶴よ、お主とお主以外に友は真にはおるのか?」
「【あぁ、俺が出会う前でダチになった奴と言えば、春輝だな!同じように尾獣を宿してるぜ!まぁ、ちょいと変わった奴だがな!】」
「春輝、確か……アサギに仕合で勝利した者の名が春輝だったかと。確か彼は水城家の子です。」
「ほう、なるほどのう……守鶴よ、話を聞かせてくれてありがとうな。
そして……今後とも真を護ってくだされ。」
将忠が頭を下げると、他の面々も驚きながらも頭を下げる。
「【はっ!任せとけってんだ。ダチを死なせるかよ!じゃあな!】……お騒がせしました、みなさん。」
守鶴はそう言うと真と入れ代わり、頭を下げると将忠が手で止める。
「良いんじゃよ、真。守鶴の事、友の事を話してくれてありがとうな。
そうじゃ、今度友達を連れてきなさい。おもてなししよう。」
「ありがとうございます、お爺様……皆様も今日はありがとうございます。
では、失礼します。」
真はそう言って部屋を出ると、将忠は椅子に深く座ると一同に命じた。
「水城 春輝、か。どんな子どもなのか知る必要があるな。嘉和、お前はその者の調査を任せる。頼まれてくれるか?」
「はっ、承知いたしました。」
「秀彬、玲志、秀瑠。お前たちには尾獣について調べてほしい。……内密に頼んだぞ。」
「「「はっ!」」」
将忠の命に一同が頷くと、それぞれが動き出す中、将忠は煙管から吸った煙を吐くと部屋を出て空を見上げた。
「水城家、かぁ。まぁ、真の友達ならば少々気にかけておくかのう。」
将忠はそう言うと優しく微笑むのであった……。