真side
春輝と獅子堂の戦いが本格化し、その様子は試験ではなく本当の闘いのようになってきた。この戦いを見て観客や一部の生徒達は興奮している。春輝は獅子堂に迫っていくと、回し蹴りや肘打ちを放ち、獅子堂も若干苦しそうに顔を歪めている。
しかし俺は、先程獅子堂の言った言葉が気になっていた。
“君、強いな~、流石アサギ様の弟子だ”。という言葉が引っ掛かっていた。
俺の知っている春輝は、少なくとも相手を小バカにしたような言い方はしないし、あからさまに媚を売るような話し方もしない。それに春輝はその頃……だとしたら、獅子堂は“誰”の事をいってるんだ?
「(春輝、知らず知らずの内に過ちを犯していたのか。だが、春輝ならそれにも気付けるだろう。それにしてもこの試験、何かがおかしい……。)」
【おい、真。この会場に他に人柱力がいやがる。かなり嫌な感じだがな。】
「(どこだ守鶴?)」
【観客の下の通路を通ってやがる。それにバカ狐も気付いてるみたいだ。俺らも動くぞ。】
守鶴の言葉に頷くと、俺は即座にその場から立ち上がり、嫌な気配のする方向に走る。俺のあとを恭弥が付けてきた。
「何の用だ?恭弥。」
「手が空いたからな、力を貸しに来た。」
「……何か、この学園に紛れ込んでる。一緒に来てくれるか?」
「まぁ、手伝える事はやるさ。」
「そうか、すまない。(春輝、お前は試合に集中していろ。こっちは俺達がやる。)」
俺は彼と共に嫌な気配の大本へと向かうのであった……。
◆◆◆
その頃、春輝は翔馬との格闘戦を行っていた。しかし、春輝は翔馬に攻撃を当てられずに全て躱されてしまう。これは翔馬が宗一郎から学んだ”全細胞意識統一法”、”究極の思い込み”、”透き通る目”によるもので、春輝の拳打や蹴撃などを完璧に読んでいるため、全て躱されてしまう。
「らっ!はっ!やぁっ!」
「(無駄だ、お前がいくら攻撃したって俺にはこの“眼”がある。お前に勝ち目は──)無い!!!」
「ぐっ!!げほっ!!!?げほげほっ!がはっ!!」
春輝の攻撃を全て見切った翔馬、そして春輝の鳩尾に必殺の一撃である“二撃の必殺”を打ち込み、春輝はその場から大きく吹き飛び、口から血を吐く。
「テメェがどんな鍛練しようが、俺には“この眼”と努力で得た“才能”がある。お前みたいな“どんがら”とは大きく違うんだよ。」
「はぁ、はぁ……!どんがら……ねぇ。」
空を見ながらそう言う春輝に、翔馬は命令をしてきた。
「この場で土下座すれば、命だけは奪わないで置いてやる。さっさとやれ。」
翔馬の言葉に宗一郎は言葉を失うが、それでも試合を見届けようと黙っていた。すると、春輝は体を起こして翔馬に言う。
「あ~~、それは無理。悪いけど、したくもない降参はしない主義なんだ。よっこいせ!」
春輝は胸を抑えながら翔馬に不敵な笑みを浮かべて彼を見る。その姿に何人かの人間は驚きで言葉を失うが、その中でゆきかぜが立ち上がった。
「ううぅぅ………っ!!お兄ちゃ~~ん!そんな奴、ぶっとばしちゃえ~~!!!!!」
「ははっ!了解……!!」
ゆきかぜの言葉に春輝は大きく深呼吸をすると、体を伸ばして構えを取る。
「……良いだろう。なら、ここで殺してやる!!」
翔馬が春輝にトドメを刺そうと駆け出して、再び“二撃の必殺”を放とうと拳を放った。しかし、その瞬間に春輝は無意識に“外し”と“全集中の呼吸”を発動して、翔馬の鳩尾に縦拳を打ち込んだ。
「っ!?がはっ……!な、何だ……!?急に……!?」
「さぁ、ここからが……本気だ!!」
春輝は剃で翔馬の懐に入り込むと、翔馬はガードしよう両手を交差したが、がら空きの左側から回し蹴りを打ち込まれ、米神に振動が襲い、その隙に顎に向かって掌底打ちを極めて、翔馬の頭が揺らいだ瞬間、体を回転させて裏拳打ちを脇腹に放つ。
「っ!がっ……!げはっ!!この、野郎!!!」
「っらぁぁぁぁあ!!」
「んぐっ!!?」
背中を打ち付ける鉄山靠のような技、剛当で体全体に衝撃が走った翔馬の隙を突いて、爪先で鋭く相手を突く後ろ蹴り、蹴突で吹き飛ばした。翔馬は考えられないダメージを受け、揺れる頭で必死に状況を整理しようとする。
「(何だ!?何が、どうなってる!?こいつは、俺に何回も負けてる相手のはずなのに、何でこんな!?)」
「ウオオォォォォォォォッ!!!」
「っ!!ナメるな!!!!」
翔馬がカウンター狙いで、春輝の頭に“二撃の必殺”を打ち込もうとした瞬間……春輝の姿が朧のように消えた。
「…………え?」
「甘いな。こちとら、
ズドオオオォオオオオッ!!!
「がはっ!!」
いつの間にか翔馬の上に翔んでいた春輝の踵落としが翔馬に突き刺さり、翔馬は頭から血を流して倒れそうになるが、翔馬は踏ん張り春輝もボロボロになりながらも攻撃を叩き込む。
“外し”を使って、翔馬に技を叩き込んでいく。正拳、手刀、裏拳、廻し蹴りなど全身全霊の連撃を叩き込んでいき、最後には拳の皮が剥けながらも翔馬を殴り飛ばす。
それを見て倒れた翔馬を見て桜牙と紫が頷く。
「そこまで!!勝者、水城春「ま、てぇぇぇ!!!」!!?」
「っ!?」
翔馬はボロボロのふらふらになりながらも、何とか立ち上がり春輝の方を見ながら構える。
「まだ、だ……!まだ、俺は終わって、ねぇ……!!構えやがれ!」
「獅子堂……!」
「中等部、の頃に……何回も……負けてた、癖に……!生意気なんだ、よ……!中等部の、1年から3年までお前に、俺は勝ってたんだ……!そんな俺が……!?」
「今1年から3年までって言ったよな?俺がお前に何か気に入らないことしたんなら、それは俺の落ち度だ。その事について謝るよ……ごめん!」
春輝の言葉に翔馬は呆然となり、構えを解いて立ち尽くした。
「な、なに言ってんだ?そんな、そんな簡単に……謝るなよ!!?そんな、そんな……!!!」
「それより……“そこのお前”!!さっきから隠れてないで出てきやがれ!!」
春輝が翔馬の足下の影に指差して叫ぶと影が蠢き出して、ぐにぃぃぃっと人の形になっていく。その姿は、ピエロ……道化師のようであり、突然現れたその道化師に周囲がざわつき、騒然となる。
「イーヒッヒッヒッ!!!バレてしまいやしたか!!これはお初にお目に掛かります!!わたくし、闇・道化師サギーと申します!!哀れな対魔忍の皆々様、ご機嫌麗しゅう!!」
「魔族か!!?【春輝、避けろ!!】っ!!?」
九喇嘛の叫びに春輝は即座に雷遁を纏って翔馬を抱えると、桜牙の所まで下がる。すると、後ろのゲートから蒼い炎が燃え上がり、そこから真、恭弥の3人が飛び出してきた。
「真!?みんな、何があったんだ!?」
「侵入者、しかも俺達と同じだ!」
「っ!?」
蒼い炎の中から現れたのは、黒い服に身を包んだ継ぎ接ぎの肌をした黒髪の男で、その手に掴まれている2人の火傷を負った女性を見て翔馬は顔を青くさせる。
「す、スウ……!?凪……!?」
「おいおいピエロ野郎、もっと上手くやれよ。まだ生きてんじゃねぇか。」
「これはこれは“荼毘”さん!そちらは上手く行ったようで。」
「あぁ、計画通り上手く行きすぎて怖いくらいだよ。」
荼毘と呼ばれた黒髪の男はスウ・ジンレイと桃知 凪を放り投げると、春輝の方を見ながらニヤリと笑い、蒼い炎でドームを作った。
「(九喇嘛、こいつら!?)」
【あぁ、学園で感じた嫌な気配はあのピエロ、人柱力はあの継ぎ接ぎだ。油断するな。強ぇぞ。】
「(だろうな。)……お前ら、何者だ!?」
「あ?俺は荼毘、こいつはサギーだ。名乗ってなかったか?」
「そうじゃねぇよ!何が目的でここに来たって聴いてんだ!?」
「燃やす相手に理由言わなきゃダメか?まぁ強いて言うなら、この学園も、お前らも灰にしに来た。」
何のことなく言う荼毘に九郎達が襲いかかろうとしたが、九郎、真、恭弥、海斗は蒼炎のドームから弾かれてしまい、外に弾き出され、砂と水で消そうとするが勢いが強すぎて炎が消せず、春輝と翔馬だけが残った。
「しかし、まさかこんな形で作戦が的中するとはな。なぁ、そろそろ抜いて良いんじゃねぇか?」
「それも、そうですな!!」
「ぐっ!?」
サギーが指を引くと、翔馬の体から小さな黒い杭らしき物が抜かれた。
「獅子堂……!?なんだ、それは!?」
「こいつですかい?こいつは“怨嗟の杭”って言ってねぇ?ある男の術、“不協和音の囁き”を強化して憎しみや殺意に変えて人格も変えるんでさぁ。ついでに記憶やらもねぇ。
この杭のお陰で、獅子堂さんには良い怨みを集めて貰いやしたよ。イーヒッヒッヒッ!!!
あ、ちなみに不協和音の囁きの使い手は今頃死んでやすがね!!!」
「んなふざけた物を……お前ら、何が目的だ!?」
「あ?別に完全にこっちが悪い訳じゃねぇよ。つうか、ほとんどお前のおかげなんだよ、水城 春輝。」
「俺の、お蔭……?どういう意味だ?」
春輝が問うと荼毘に意味を問いただすと、荼毘は悪意に満ちた笑みを浮かべて両手を拡げて言い放った。
「水城 春輝。お前が中等部の頃に、そこに転がってる奴に“手加減と馬鹿な発言”をした事でそいつを利用することが出来たんだよ。」
荼毘の言葉に春輝は眉間にシワを寄せるが、彼は中等部の頃に有った“合同訓練”の事を思い出していた……。
それでも読んでくださると嬉しいですので、読んで下さい!!
そして、出来れば感じた事を書いてください!