ゆきかぜside
「ゆきかぜ待って!!」
達郎が後ろから叫んできてるけど、あたしはお兄ちゃんのいるフィールドに向かって走っていた。お兄ちゃん、たくさん怪我して、それだけでも大変なのに変な2人まで現れて……訳がわかんないけど、お兄ちゃんを助けにいかないと!!
「ゆきかぜ!ダメだって!!生徒は避難するようにアサギ様が!!」
「あたしはお兄ちゃんを助けにいくの!!達郎はみんなと行ってて!!」
「あっ!ゆきかぜ!?」
あたしは達郎の手を振り払って、お兄ちゃんの下へと向かった……。
◆◆◆
「合同訓練の時に俺が翔馬にしたこと……。」
「そうだ、お前はそこに転がっている間抜けに対して手を抜いてワザと負けたんだよ。」
「俺たちも隠れてその様子を覗いていたがよ。実力は圧倒的にお前の方が上だったのに何を考えたのか、間抜けの実力でも勝てるほどに力を制限して勝ちを譲り、アホ面して“君、強いな~、流石あの人の弟子だ”って抜かしたんだよ。」
「いやー、その時の獅子堂さんの顔は傑作でしたぜ。ぷぷぷ、今でも忘れることができませんぜ、珍獣を見るような表情は。何より一番の傑作なのは自分で自身を騙して獅子堂さんをアホ面で称賛するアンタですぜ……あれこそ、本当の道化師と言うでしょな~。」
荼毘が相方のサギーの言葉に同意するかのように頷き春輝と翔馬を見ながら嘲笑する。
「おかげでここまで上手くことを運ぶことができた。礼を言うぞ・・・・ありがとう、水城春輝クン。」
悪意と嘲笑に満ちた顔で言う荼毘、その言葉を聞いたサギーは狂ったように笑う。
春輝は自身が忘れていた事を全て思い出し、なぜ翔馬が自分をあそこまで憎んでいた理由を知った。それは中等部の初め、その時にすでに力を身に付けていた春輝は優しさと甘さ、友情と馴れ合いを履き違え、それが理由で翔馬に手加減をしてしまったのだ。
それは柱間との修行の中でも言われていた。
『貴様は肝心なところで驕り、詰めが甘いのだ!!』
自分に”外し”のコントロールを骨の髄まで叩き込んだ暴力と殺意の化身のような男……呉 雷庵も指摘した。
『いいか、餓鬼!!てめぇはいつの間にか相手に合わせちまうんだよ!相手が勝ちやすいようにな!それが理由で、てめぇはその程度までしか進めねぇんだ!』
その事を思い返した春輝は、拳を強く握って俯いてしまった。
「(やっぱり、俺はそんな事をしてたのかよ。強くなる前に心構えがなってなかったってことかよ……。)」
呆然とした春輝に隙を見つけた荼毘とサギーが春輝を捕らえようと迫る。しかし、それは友人である真や共に修行した賢丞、そして九郎や零子たち教師陣が阻む。
「真、賢丞……!!先生達も!!?」
「後悔するのは後にしろ!春輝!」
「まずはこいつら倒してからだ。その後で獅子堂に謝れよ。」
「覇遁使いに芳陰の坊っちゃん、それに五車の教師か。」
「うちの生徒にナメた真似してくれたな、おい。」
「覚悟は出来てるんだろうな?」
周囲には荼毘とサギーを囲むようにアサギや獅子堂、芳陰の実力者達が2人を睨み付ける。その中で、アサギが荼毘とサギーの前に怒りの表情で睨みながら出る。
「よくも春輝と翔馬を利用してくれたわね。それ相応の覚悟は出来てるのでしょうね?」
「覚悟?おいおい、俺らばかり責めるなよ。元々あんたのせいなんだぜ、井河 アサギ。」
「私の?どういう意味かしら?」
「お前が弟子の言うことに何も耳を傾けなかったのが悪いんだぜ?生徒や弟子のケア位しないとな……。」
「イーヒッヒッヒッ!!!」
そんな中、アサギ達が武器を構えた瞬間……。
「お兄ちゃん!?みんな!?」
「あらら、ラッキー。」
荼毘が走ってきて、状況をよく把握していないゆきかぜたちが援軍としてきた時、突如荼毘が蒼炎を槍のような形にして出し、彼女たちに向けて投擲した。
「っ!?ゆきかぜ、逃げろ!!!!」
「しまっ……!」
「じゃあな、馬鹿忍者共。」
突然のことに反応が遅れる一同そして隙をついて逃げる荼毘とサギー。誰もがゆきかぜが串刺しになる未来が見えたがそうはならなかった。
「え…………?」
「なっ…………!?」
「ぐっ……がはっ………!?」
「「「獅子堂/翔馬!!?」」」
翔馬が残りの体力を振り絞り隼の術でゆきかぜの所まで移動し楯となり彼女を守ったのだ。瀕死の重傷を負い倒れこんだ翔馬に一同が駆け寄る中で、ゆきかぜは戸惑いながら尋ねた。
「な、何で……助けたの!?あんたは……!?」
「あの、時……首を絞めた、事を……謝って……なかった、から……。“春、輝”。」
「しょ、翔馬……!?」
「思い出して、くれて……良かっ……た……。」
傷口から夥しい血を流して倒れる翔馬に、春輝は人目も憚らずに九喇嘛のチャクラで傷口を抑えて止血しようとする。手が血に染まる中で春輝は必死に翔馬を助けようとし、さらに駆けつけた藤孝や新条の助けもあってスウ、凪、翔馬は急いで病院に担ぎ込まれ、緊急手術が行われ、幸いにも一命を取り留めた……。
◆◆◆
翌日、五車の病院の廊下を歩く春輝とゆきかぜ、凜子と達郎そして賢丞達。その手には見舞の品と花束が握られていた。
春輝は隣を歩くゆきかぜを見て、話しかけた。
「よく一緒にお見舞いに行くって言ったな?」
「まぁ、助けられたしね……それに、まだ謝って貰ってないし。」
「ははっ、そうだな。俺も翔馬に謝らなきゃな……。」
軽く笑って春輝達は翔馬のいる病室の前に来ると、扉をノックして返事があると扉を開けた。
そこには獅子堂 宗一郎と獅子堂 源一が翔馬と話しており、一同は3人に頭を下げた。
「先日はその、失礼しました。あの……」
「お見舞いに来てくれたのか、ありがとうな。」
「ほっほっほ。礼儀正しいのう、来てくれて良かったわい。それじゃあ、あとは当人同士に任せるかのう。」
春輝達は病室に入ると、見舞いの品や花を置いて帰ろうとしたが、翔馬が春輝と話したいと言って、残りは外で待つことにした。
「「……。」」
気まずい空気が流れる中で、初めに話始めたのは春輝だった。
「その、翔馬……何言っても許されないだろうけど、中等部の時は侮辱して……本当にごめん。」
「もういいよ、俺もお前の妹を傷付けたんだ……。それにしても、お前強かったんだな。」
「先生が良かっただけだよ。俺なんて皆より「春輝。」……?」
「世間がなんていうかは知らないけど、お前の力はお前のだろ?どんな力でも、その力を身に付けて、必死に鍛練したんだ。俺なんか何て言うな。」
「っ……ありがとう。」
翔馬は春輝に拳を伸ばしてきた。
「今度は本気でやりあおうぜ?互いに全力でな。」
「あぁ!!」
互いに拳を合わせて約束し、春輝と翔馬は友となったのであった……。
修正完了です!!
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