後日澄香は無事に退院となり、後遺症もなく学生として活躍することは出来るようになる。その中で自身の大切な髪を奪い取ろうとした富豪の男を討つために、春輝、澄香、蓮華この3人で任務に当たる事にした。
「あそこが例の屋敷、ですか?」
「あぁ、調べてみたらターゲットは一人暮らしで、この屋敷に籠りきりらしい。さらにこの建物の地下には魔薬の精製が行われていて、富豪の男は魔族にもデカいパイプがある。それを潰す。」
「……。」
春輝の話を聞いていた蓮華が頷く中、澄香は若干から体を震わせていた。闇のヤイバから感じた気配に澄香は思い出して震えていると、春輝が澄香の頭を優しく撫でた。
澄香は驚いて顔を挙げる。
「水城、くん?」
「怖いのなら下がってて構わないぞ。無理をして前に立つ必要はない……。けど、自分から立ち向かっていくのも大切だ。そこは自分で決めるんだ。常森さんも同じだけど……どうする?」
「……。」
春輝の言葉に澄香は一旦深く深呼吸をすると、拳を強く握り春輝の方を見る。
「分かった……!私、戦います!」
「わたしもです!この常森に出来ない事はありません。」
「よし、分かった。危なくなったら呼んでくれよ?あと、2人は少し待ってて……“空間色覚”!!」
春輝が見聞色の覇気と併用して使う忍法“空間色覚”、手で輪を造り、その輪を通して見ると有機物、無機物を識別して見ることが出来る。その際に生き物は赤、無機物は青、建物は黒と判別される。
「……建物の中には奥に1人、広間に2人居るな。2人とも、後に付いてきて。」
「「はい!」」
春輝が走り出すと澄香と蓮華も後を追って走り出す。そして、屋敷の上に到着すると、屋根に着いている天窓から中に入ると、奥には扉があるが屋敷の中には趣味の悪い絵画で飾られていて、さらには今にも叫び出しそうな銅像まであった。
「悪趣味……何で銅像に髪が這えてる?」
「嫌な感じ……。」
「2人とも、辺りの物に触らない『……け……て』え?」
春輝は近くにあった銅像から聞こえたであろう“声”らしき物に反応し、銅像に耳を当てるとそこから聞こえてきたのは、ドクン……ドクン……という人間の心音であり、春輝は咄嗟に離れた。
「春輝さん、どうしましたか?」
「みんな……この銅像に耳を当ててみろ。」
「え?……っ!?これって!?」
「生きてる!?まさか、この銅像……全部生きてるの!?」
澄香達が飾ってあった銅像――約20体を確かめると、その全てから心音が聞こえ、さらには掠れているが、『タスケテ……』という声を出している。さらに、絵画に使われている女性の絵、その髪の部分には艶が整った本物の髪が使われていた。
そして、この銅像達は富豪によって拐われ、行方不明として扱われた人物であったのだ。
「なんなの、この屋敷の主人は……!?頭おかしいんじゃないの!?」
「こんな。こんなことを何のために……!?」
「はぁ~~い、こんばんわ。忍者のみなさ~~ん!」
「……!?」
「「!?」」
声のした方を見ると、奥にある扉の方には黒い機械的な見た目をした魔族、クエスターのガイとレイが居り、ガイは手を軽く振っており、レイは鼻を軽く鳴らしていた。その2人から感じられるのは、明らかな“敵意と殺気”であった。
春輝達は得物を構えて2人と対峙するが、ガイはそれを見て楽しそうに嗤う。
「ひゃはははっ!おいおい、レイ!こいつら俺らとやる気みたいだぜ?勝ち目ゼロの癖になっ!」
「愚かな下等種は力の差も分からんらしい。」
「あんたら、何者!?この屋敷の主人のボディーガード?」
「よくぞ聞いてくれました!俺たちは、“クエスター”!!」
「お前達は忍崩れでは勝てない相手だ。抵抗せずに首を差し出せば楽に殺してやる。」
明らかに自分達を見下しているガイとレイの2人に飛び掛かりそうになる蓮華を抑える春輝。ガイとレイの2人を見ていると、九喇嘛が話しかけてきた。
【春輝、こいつら普通の妖魔じゃねぇ。嫌な臭いがしやがある。】
「(嫌な気配ならこっちも感じてるよ。ここで乱戦は避けた方がいいな、恐らくこの銅像は……。)櫛延さん、常森さん。2人にはあの虎みたいな奴を任せたい。俺はライオンみたいな奴をやる……出来るか?」
「……やります!」
「任せてください!」
蓮華が忍者刀を逆手に、澄香がハサミを構え、春輝も拳を構える。そして、即座に春輝が雷遁チャクラを纏ってガイを連れて外に飛び出す。
「あ?なんのつもりだ?」
「お前の相手は俺だよ!」
「いいね……だが選択を間違えたな?レイは強いぜ?あの2人、死ぬぜ?」
ガイはそう言って春輝を蹴り飛ばして距離を開けると、自身の得物である2丁拳銃状の武器“グレイブラスター”を放つが、その弾丸を即座に避けると人気のない庭に出て、互いに睨み合う。
その頃、レイは自身が自作した特殊武器“グレイボンバー”を長剣として使い、澄香と蓮華の2人を相手に立ち回っていた。
「毛遁・髪勁!!」
「ふっ!バカな攻撃だ。この程度ならば見切るなど容易い。」
「舐めないでよね!!土遁・龍撃爪!!」
蓮華はレイに向かって岩で出来た龍を襲い掛からせるが、レイは慌てる様子もなくグレイボンバーを長剣からショットガンに変型させて、岩の龍を一撃で破壊した。
「なっ!?」
「どうした?この程度か?話にならんな。ふっ!」
ショットガンを放ってきたが、澄香と蓮華はその弾丸を避けながらレイへの対抗策を考えていた。レイはそんな2人を意にも返さず悠々と武器の微調整を行って、2人はそんなレイを隠れながら対抗策を練っていた。
「どうするの?あいつ、あんなに強いなんて……春輝さん呼んで助けてもらった方が!」
「そんなの駄目だよ!春輝くんだって戦ってるんだよ!?それに私たちだってまだやれる筈!」
「けど、それでも……。」
「私が先攻するから、常森さんはサポートをして。お願い!」
「あ!ちょっと!!」
物陰から現れた澄香がハサミを持って構えながらレイに向かっていく。
「馬鹿が。自棄になった……半殺しにして連れていく。」
「(負けない!負けない!私は、負けない!!!)」
『無理をして前に立つ必要はない……。けど、自分から立ち向かっていくのも大切だ。』
「私は、負けないんだから!!」
澄香はハサミの片方をレイに向かって投げ付けると、それは躱されてしまう。けれどもそのハサミには髪が結んであり、指で引くことでレイへと方向転換して向かっていく。咄嗟にレイはショットガンで破壊しようとしたが、それが最大の失敗であった。
「食らえ!!毛遁、怒髪天!!」
鬼神の形になった大量の固められた毛髪の拳がレイへと迫っていき、その一撃にレイは結界を張ろうとしたが、柔らかい首の頸動脈にハサミが刺さり、さらに追い討ちで拳が自身を押し潰したのであった。
「はぁ、はぁ……!や、やった!勝ったぁ!!」
その頃、春輝はガイと近距離戦を行っており、ガイの方はグレイブラスターを拳銃から短刀へと形状を換え体術を織り混ぜながら攻めていた。クエスターの体はオリハルコンをふんだんに使われており、その強度は並みではなく通常では歯が立たなかったが土遁の土矛と武装色を合わせたボクシングスタイルでガイを押し始めていた。
「くっ!?この、ガキがぁ!!!」
「ふっ!!」
「ごほっ!がはっ!!」
二連蹴りが決まり後ろに仰け反るガイだったが、レイがやられたのを感じ取ったガイは思わず固まってしまった。
「まさか、レイぃぃ!!」
「あとはお前だ……クエスター、ガイ!!!」
「ほざけ人間が!!」
ガイはグレイブラスターを連射して春輝に襲い掛かるが、それを避けずき真っ直ぐガイへと向かって走っていく。体に弾丸が掠り傷を作るが、ただ真っ直ぐガイへと向かっていた。
「なにっ!?」
「喰らえ!!雷咆哮」
春輝が電撃が纏われた咆哮をガイに放つ。
「ぐあぁぁぁぁっ!!!た、たかが、忍、風情が……!!!ナメるなよ!!!!」
春輝はガイを倒すと、その場に倒れてガイは膝を着きそうになる。しかし、ガイは懐から注射器を出し、その中に入っている紫色の液体を春輝に注射した。
「ぐっ!!?お、お前!?何を!?」
「へへっ!ざまぁみろ……!」
ガイは動かなくなってしまい、春輝もその場に膝を付いてしまった……。
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