八津 九郎の襲撃を受けた2日、春輝はゆきかぜ、きらら、凜子と共に真の家である芳陰家へと誘われたのである。
芳陰家の名前を聞いた時には、流石の不知火と優作も驚き言葉を失った。そして、いざ真の家に行くとなると……2人は真剣な顔で4人に言い聞かせていた。
「良い?決して、余計なことや変なことは言わないこと。けど、聞かれたことにはなるべく素直に答えるのよ?」
「相手の家の迷惑にならないようにするんだぞ。」
「「「はい!」」」
「「はーい!」」
しっかり答える春輝と凜子、きらら。そして純粋に答えるゆきかぜと達郎。本当なら他の友人も誘うのだが、生憎と用事が重なって来られないという事であった。しばらくすると、チャイムが鳴り、春輝が玄関に出るとそこには真と彼と同じ赤毛の男、秀彬が立っていて、優作が驚いた顔になる。
「ひ、秀彬さん!?なんでここに!?」
「いやなに、真の友達を迎えに来たんだ。初めましてだな、芳陰 秀彬だ。宜しく頼む。」
秀彬が挨拶すると、春輝達も挨拶を返した。
「はい!水城 春輝です!」
「ゆきかぜ、です!」
「秋山 凜子です!」
「鬼崎 きららです!」
「うんうん!元気の良い子達だ。さぁ、乗りなさい。これから向かうぞ!」
「「「「はーーーい!」」」」
こうして一同は芳陰家の所有する山に向かうのであった……。
◆◆◆
芳陰家。
その歴史は古く、室町時代から代々続く古来の忍一族であり、銃火器等の近代兵器は一切使わず、己の力のみで今まで生き延びてきた一族であり、五車の里に於いても、その発言力は高くアサギでも意見を求めるほどである。
そして、芳陰家の現当主である将忠は、かつて“鬼影”と呼ばれる程の才能を持っており、実力は今でこそ老いているがアサギ達五車の教師陣を倒せるほどの腕前であり、時折、隠行の術の教官をしている。
さらにもう1つの実力ある家の前当主とは茶飲み友達であり、五車にある稲毛屋でお茶を楽しんでいるが、そんな芳陰家にはある“掟”がある。
芳陰の掟、それは……
・“仲間を大切にし、一切裏切らず、連携すること”。
・“人の本質を見抜き、理解し、偏見だけで不信感を抱かず”。
この掟は対魔忍の基礎の1つとして教え、継がれてきているが今では護っている者は多くなく、自身が活躍する事ばかりを考える者達の多さに頭を悩ませている。
そんな中、芳陰家の保有する山にある自然のプールではゆきかぜ達が楽しんでおり、その光景を見て春輝達もゆったりと過ごしていた。
「やっほーー!お兄ちゃ~~ん!」
「危ないことするなよ~!」
春輝の言葉に元気に返事をするゆきかぜとそれを追う達郎、凜子と きららは何やら乙女の話をしていて、春輝は涼みながらその様子を見守っていた。すると、真が歩み寄ってきた。
「楽しんでるか?」
「真……。うん、楽しんでるよ。誘ってくれてありがとう。そういえば最近は調子とかどうだ?」
「俺は俺で修行をしているさ。“守鶴”も協力してくれている……それに、婚約者も出来たしな。」
「そっか……。ん?婚約者?真、結婚するのか!?おめでとう!!」
「ありがとう。佐久という家の子とお見合いをしてな、それで結婚するんだ。」
まさかの驚きの告白に驚く春輝。だが、この世界は若くして命を落とす危険も有るために早く結婚するということは珍しくない。
「春輝も良い相手が見つかると良いな。」
「どうだろうな。俺はみんなに追い付くのでやっとだよ。
いつか、憧れの人に追い付けるくらいまで修行して、まぁ出来れば誰かを護れるくらいまで強くなってみせる!」
「そうか。春輝ならなれるだろうさ。」
そんな事を話す春輝と真、その2人の様子を見守っていた秀彬は部下にその場を任せて1度、将忠の下へと向かい、春輝を見た感想を報告しに向かった。
◆◆◆
「将忠様、こちらが水城 春輝に関しての纏めたものです。」
将忠は秀彬から巻物を受け取り、その中身を見ると顎の髭を撫でてかっかっか、と笑う。
「愉快愉快、なかなか面白いじゃないか。まぁよくも悪くも純粋な子だな。」
「私も見ていてそう感じました。しかし、それ故に思います……あの純粋さは“大きな毒”にもなりますね。」
「うむ、まぁ近々水城家とは相応の関係を結んでいこう。真の結婚を喜んでくれたんじゃ。友の幸せを喜べるのは今の時代中々居らんからのう。(しかし九尾か……。伝説の妖魔であり、吸血鬼に並ぶ大妖、それを宿すとなると大きな爆弾となるだろうな。)」
将忠がそんな事を考えながらも顎の髭を撫でるのであった。
そして、芳陰家の者達と遊び疲れた面々は疲れて眠ってしまい、春輝達はそのまま眠ったのであった……。