舞華が無事に退院し、学園と任務に復帰した。火遁衆は無事に舞華が戻ったことを祝ったが、アサギの判断で舞華はすぐには任務には復帰せず、しばらく休暇を与えられ、彼女は日課であるブティック廻りをしていた。
「~♪お、これ可愛いな。これも……ん?」
舞華が立ち寄った先の店にある服を見ていると、そのガラスに写り込んだ人影……春輝を見ると振り返った。そこには買い物をし終えたのか、食材が入った袋を持った春輝がおり、舞華は荷物を持って彼の後を追う。
そして、信号で止まっていた春輝を見つけて、その肩を後ろから叩くと春輝は後ろを振り返った。
「よっ、久しぶりだな水城!何してんだ?」
「神村さん、退院したんだ。あと、これは夕飯の買い出しだよ。神村さんも買い物?」
「おうよ。そうだ、おい水城。お前ちょっと俺に付き合え!」
そう言って、有無を言わさず舞華は春輝の腕を取ると歩き出す。そんな彼女に戸惑いながらも春輝はついて行った。
(何か、やけに積極的というか……)
退院してからというもの、何故か前以上に自分に絡んでくるようになった舞華に疑問を抱きながら歩いていると、不意に立ち止まった彼女がこちらを振り返る。
「どうしたの?神村さ……」
彼女の目を見て、思わず言葉を止めてしまう。何故なら、その目はいつもの明るいものではなく、真剣そのもので……それはまるで、獲物を狙う肉食獣のように鋭い眼光を放っていたからだ。
だがそれも一瞬だけで、すぐにいつも通りの笑顔になると、彼女は言った。
「何でもねえよ。それよりほら、早く行こうぜ。」
再び腕を組んで歩く彼女に困惑しながらも、春輝はその歩みに従った。
「あー食った食った。ごちそーさまっと!」
夜、自宅に帰った舞華は食事を終えて、テーブルに置かれた食器を前に手を合わせる舞華。隣に座っている姉、神村 東が呆れた様子で言う。
「相変わらずよく食べるね……。まぁいいけど。ところで、最近ずっと上機嫌だけど……何かあったわけ?」
「ああ、実はな……」
そう言うと、舞華は自分の携帯を取り出して操作すると、そこには春輝と一緒に写った写真があった。
「誰?」
「水城 春輝だよ。ほら、今噂の!」
「あぁ。こいつが……ねぇ。」
春輝の写真を見ながら呟く東。彼女にとって、春輝の存在は正直あまり興味がなかった。ただ、妹が興味を持った者としては及第点と思っていた。
それにしても、と東は思う。こいつは何者なのか、と。
自分が教鞭を取る“五行学園”でもある程度噂になっており、井河アサギに勝利したと言われた相手ということと、京都でエドウィン・ブラックの幹部と戦ったとも噂されている。
実際、ブラックとの交戦したという記録はない為に、噂の域を出ないのだが……それでも、たった一人でその幹部と戦うなど不可能に近いのだ。
ましてや、まだ幹部にすらなっていない……そんな子供が本当にいるのかと思っていた。
だが、こうして妹の口から名前が出る以上、実在する人物だと分かる。しかし、やはりどうしても信じられなかった。
「でも、何でまたそいつの話を聞いてた時にそんなに楽しそうな顔をしてる訳?興味ないんじゃなかったっけ?」
すると、舞華は少し恥ずかしげに頬を染めると頭を掻いて言った。
「いや~……その、なんていうか……気になるっていうか……。そんな感じだよ!!」
「ふぅん……ま、あんたがそうしたいんだったらいいんじゃない?今日はもう寝るよ。風呂入って、歯磨いて、明日の準備してってやってたら疲れちゃうから。んじゃ。」
東はそう言うとリビングを出たのであった。
その翌日、舞華は春輝を呼び出したのであった……。