五車学園の生徒達は今、京都の街から離れた所にある森へと来ており、そこには小さな家があり、それぞれの対魔スーツに着替えた一同はその森で訓練を行う事となった。そこで行われたのは、学年毎に分かれての訓練だった。
訓練内容は昔の遊びであり、始めは遊びと思っていたが、どれも生半可な物ではなく、しかも相手は現役の対魔忍教師陣である為に生徒達は苦戦していた。
因みに難易度はAである。
内容はケイドロ……これは如何に対象を捕縛または逃げ切るかを図る速度の訓練であり、さくらが初等部を、時松が中等部を、アサギが高等部を担当した。
「それじゃあ今からケイドロをするわ。私が泥棒役をやるから……あなた達は私に触れて捕まえなさい。忍術の使用は認めます。」
『ケイ……ドロ?』
「簡単に言えば鬼ごっこみたいなものよ。私に一定時間以内にタッチすれば合格とするわ。因みに分身も使うから、しっかり見分けるように。制限時間は30分……全力で捕まえに来なさい。」
そう言うとアサギは即座にその場から移動し、高等部全員で追い掛けることにした。しかし、アサギは隼の術と陰行の術によって姿を姿を眩ましており、さらに分身によってアサギを捉える事は難しかった。
「(闇雲に探しても駄目だな……。気配を探らないと!)」
「春輝。」
「っ!?アサギ様!?(本体だ!しっかり気配を感じる!)」
「どうしたの?捕まえに来ないの?」
「嘗めないでください……!雷遁+迅遁!」
「そんなことも出来るのね……ますます貴方に興味が湧くわ。因みに真陰と獅子堂の関係者、そして、晃と真は先にクリアしたわ。貴方も頑張りなさい。」
「分かりました……!」
春輝が全速力でアサギに詰め寄るが、アサギは木の枝を付かんで飛び上がると春輝も負けじと後を追う。アサギは隼の術を用いて簡単に逃げ切ってしまった。すると、途中で篠宮 咲弥と合流した。
「あらあら、春輝さん。こんにちは。」
「篠宮さん!なんで……?もしかして……。」
「はい、まだアサギ様を捕まえてません。中々素早いので……どうでしょう?一緒にクリアしませんか?春輝さんの力を貸してもらいたいです。」
「分かった!出来る範囲でなら協力するよ。行くぞ!」
咲弥と春輝は共にアサギを追っていた。すると、突然目の前に凜子が現れたのであった。
「凜子!?」
「春輝!?それに篠宮も!お前達もアサギ様を?」
「はい、そうなんですよ。秋山さんも一緒にクリアしませんか?」
「それは良いな!凜子、お前の力、貸してくれ!」
「分かった、一緒にやるか。」
春輝、凜子、咲弥の3人は連携してアサギを捕らえることにし、それを遠巻きに見ていたアサギは嬉しそうに笑みを浮かべる。アサギは春輝の課題として、なんでも1人でやろうとする所を直すように、どう指導するか悩んでいた。
春輝には高ランクの任務を連続でやらせている為に、仲間での連携するというのが中々無かった。けれども、この特殊訓練の中で何か切っ掛けを作らせようと思っていたのだ。
「(そうよ、春輝。それで良いの……貴方は1人でやろうとしなくて良いの。皆を……仲間を頼りなさい。)」
「雷遁、電網!」
「(雷の網!?広範囲ね。でも……これなら。)っ!?」
「毒遁、蟲毒乱牙。」
「逸刀流・楓!」
春輝がアサギにバックステップを取らせた瞬間、左右から咲弥と凜子が迫っており、アサギはそれを空を蹴って逃げる。そして地面に降りたが、その瞬間に体が重くなり前を見るとそこには何故か春輝がいたのだ。
「こ、これは……!まさか、分身!?」
「影分身を使って目眩ましに使ってから、アサギ様がここに降りるように誘導しました。今使ってるのは土遁、地重波といって重力を増す術です。」
「……見事だわ。春輝、凜子、咲弥。合格よ。」
地面に降りて凜子、咲弥と共にアサギに触れた春輝は無事に合格となって術を解除して、真達の下に向かった。
「よ、皆。」
「春輝、無事合格か。」
「中々良かったぜ。オーイエー!」
「そうか?時間掛かったからなぁ……今後見直すさ。」
真らとそんな話をしていると、時間を計っていた紫達が集まり無事に特別訓練は終わりを迎えた。空は夕焼けに染まり、春輝達はバスに乗ってホテルへと戻ることになり、そこで座学をしてから各自で入浴する事になった。
ホテルで夕飯を食べたあとに春輝が部屋で休んでいると、瞑想していた黒鉄が話しかけてきた。
「おい、金髪。」
「ん?お、俺?」
「金髪って言ったら、今はお前しかいねぇだろ?まぁそれは良い、お前……少し付き合え。」
「?あぁ、分かった。」
黒鉄に連れられて、春輝はジャージのまま2人でホテルの外へと出た。
「何の用だ、黒鉄?」
「……俺は、初めはお前が刀華や真が言うような“マトモな奴”には見えなかった。だからハッキリ言ってお前を警戒している。」
「・・・。」
「だが、お前を見てて分かった。お前がとんでもない甘い馬鹿だってのがな。」
「甘い、馬鹿?え?俺、結構ディスられてる?」
「あぁ、だが賢丞の奴が認めたんなら俺も多少は認めてやるよ……仲間としてな。」
黒鉄はそう言うと、春輝を置いて戻ってしまったが春輝もその後を追う。その中で春輝は首を傾げていた。それからも特別訓練は続いたが、その翌日には京都を観光する“特別自由時間”が設けられ、生徒達は喜んだ。
その頃、京都の街の中を“束ねた長髪に顎髭を生やし、右片方だけ袖が無い深緑の和服に袴『刀狩』という文字が入った目隠し長身の男”が歩いていた。
男は盲目な様だが、まるで回りが見えている様に苦もなく歩いており、そんな男を数人の男女が後を追っていた。
「止まれ。」
「……やれやれ、折角観光に来ても追われるとはな?それで、何の用だ?」
「貴様、人間ではないな?この京都に何をしに来た?」
まるで男を警戒するように腰に差した刀に手を掛ける男女、しかし、男は口元に笑みを浮かべていた。
「何をしに来たって?なぁに、観光に来ただけさ……。お前らみたいなのは気に食わんな。上から人を見下すお前らは。」
『!?』
男のその言葉と同時に男女へと斬りかかり、刀を抜こうとした者達は全員切り捨てられ、ものの数分で全員を亡き者とした。
「ふぅ……全く。目が見えない相手に殺されては、剣士失格だな。」
男……
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