神社を手入れしたら4匹の狐が現れたので招き入れた件 作:八雲ネム
結論から言えば、クズハの紹介は普通に終わって親からは単なる恋人関係だと認識されたので、境内の清掃はそこそこにして現住所へ帰宅した。
「ここが今の俺ん家って訳だ。一人暮らしなんでそこまで広くはねぇが、そこは勘弁な」
「構いません。寧ろ、マスターの家となれば気兼ねなく、ヤれますから!」
「結局、そこに至るのなー」
そんな会話をしながら、鍵を開けて1LDKの安アパートにある自宅へ入ったのだが行きにはなかった荷物がかなりあって、ここまで持ってくるのに苦労した。
何しろ、3日間の帰省において初日でクズハと出会ったモノのそれまで女っ気がなかった俺の手荷物には、女性物の衣類が全くなかった。
その結果、実家にあった軽トラに乗って買い出しに行くついでに彼女を同行させて近場のショッピングモールにあった服屋で、女性店員に頼んでいくつか試着させてから購入した物を持ってきたからだ。
正直、スリーサイズやら着たい下着や服装などを買い揃えただけで軽く10万を超えた時には乾いた笑みしか出なかったが、恋人を作った事による必要経費という事で支払いはこっちで済ませた。彼女に支払い能力はないしね。
後は、歯ブラシやコップなどの日用品の他に化粧や生理用品も買い揃えたのだが、今回の出費は家計にそこそこ影響したので暫くは余計な出費は抑える必要があるな。
そう思いながら、荷解きをしているとクズハが改まって話しかけてきた。
「さて、マスター。少しよろしいでしょうか?」
「勿論、大丈夫だが………重要な事かい?」
「私の真名、聞きたくはないでしょうか?」
「聞きたいねぇ」
彼女の言葉に、素直に答えると彼女が正座をしたので俺も座ると改めて自己紹介をしてくれた。
「私は松原 クズハ改め玉藻の前と申します。正確には、本体のコピーみたいなモノですが今となっては些細な事です」
「玉藻の前っつーと、平安時代に時の天皇を誘惑したとかって言う妖怪だったかの?」
「この世界における伝承ではその様になっていますが、正確には分かりません。ただ、気が付いたらあの境内に縛られる形になっていました」
「なるほどね。それで、これからはどうするの?」
彼女の真名が玉藻の前、という日本の三大妖怪だったかの有名な妖怪だとわかったのだが生憎、伝承とかには疎い人間な上にあの境内に縛られていた理由がわからないんじゃあ、こちらとしてはどうしようもない。
その為、そんな事を聞くと理由がわからないと言わんばかりに首を傾げるので話を続けた。
「このまま、俺の恋人として同棲してくれるのが1番ありがたいけど、あそこに縛られる事がないっつーなら好きなだけ、好みの男を選べるはずだ。君の容姿なら特にね」
「それは………」
「それこそ、金持ちだったら裕福な暮らしが送れるだろうし、イケメンだったら周りからチヤホヤされるだろうよ。君はどうしたい?」
「もしも、マスターの元から去ったらどうするつもりですか?」
すると、震えた声で聞いてきたので本音を語るとしよう。
「どうもしない。たまたま、美少女な君と出会えた上に童貞の妄想に付き合ってくれただけでもありがたいからねぇ。それこそ、一夜限りの関係で逃げられても文句はねぇさ」
「でしたら、私もマスターの元から去ろうとは思いません。あの場所からの解放に加え、恋人にしてくださったのですから今更、どこへも行くつもりはありません」
「良いのかい? 一緒に暮らす、となればいっぱい喧嘩をするだろうし、不快な事をするかもしれんぞ?」
「私を誰だと思っているんです? こう見えて数百年は生きているんですよ? たかだか数十年、人間換算で数年程度の時間を共に過ごせると考えるだけでもワクワクしますよ」
「そうか。ありがとう」
どうやら、俺の元から消えるつもりはないらしい。
彼女の言葉に、安堵の息を吐くと玉藻の前が俺に近づいて寄りかかってきたのでどう呼ぶかで迷っていると彼女からこう言われた。
「玉藻とお呼びくださいまし。これから、長い付き合いになる事ですし」
「そう呼ばせてもらうよ、玉藻」
「んっ」
その為、玉藻と呼ぶと嬉しそうに頭をすりすりして来たのでムラムラしてきたのだが、それに気が付いた彼女が見上げてきて互いに何も言わずに顔を近づけるとどちらともなく、腹の虫が鳴ったのでそれまでの空気が霧散した。
「………腹が減ったな」
「そうですね。どこかへ食べに行きます?」
「近場にサイゼリヤっつー安い料亭がある。そこにするかね」
その為、互いに何とも言えない感じになりながらも外に出る支度をするのだが、彼女の耳と尻尾は中々に目立つので外に出る際は認識阻害の魔法をかけて俺達以外からは認識されない様にしている。
そうした準備をして、目的地へと玉藻は目を輝かせながら聞いてきた。
「もしかして、色んな食べ物が食べれる料亭なんですね? 沢山食べても大丈夫ですか?」
「勿論。折角のお祝い事なんだ。盛大にやらないとね」
「ありがとうございます!」
その返答をすると、ルンルン気分で使ったので2人組として入店してから彼女の好きな様に注文させた。
このサイゼリヤという店は、うまい割には格安な価格設定なので実家での彼女の食事量を見て高くても1万もいかないだろう、と推測したのでそこまで心配していない。
どちらかと言うと、互いにとってちゃんとした恋人になった日を祝してすぐに来た感じなのでロクな準備も豪華な料理もないが、今はこれで充分だと思っている。
何しろ、今の収入は手取り月30万と20代前半の若造ながら貧しくはないが裕福とは言えない金額なので、いざという時に備えて普段から節約していた為に玉藻が来ても大丈夫だった。
とは言え、今までは一人暮らしだったから何とかなっていたが2人暮らしになるとその分の出費が増えるから、ゆくゆくは玉藻にも仕事の1つでもして貰った方がいいなと彼女が注文した物を美味しそうに食べる姿を見ながらそう思った。
「お風呂も上がりましたし、そろそろしちゃいます?」
「そうだな。俺も我慢できないよ」
「ふふっ。それじゃあ、やりましょうか」
明かりを消した寝室にて、頬を赤らめた玉藻の誘いに乗って互いの肉欲の限りを尽くしたエッチをすることにした。