※この作品はR-18です。

神社を手入れしたら4匹の狐が現れたので招き入れた件   作:八雲ネム

5 / 6
今回はかなりの難産でした。
何しろ、ラブコメ重視で進むか、オカルトチックな展開を重視するかでかなり悩んだのでお待たせして申し訳ないです。
投稿した今でも悩んでますが、決めた以上は行ける所まで行く予定です。


第5話 唐突な移籍で戸惑う

 コヤンスカヤが訪問してから、暫くが経ったがこれと言って社会的に大きな変化はなく、精々、玉藻が作ってくれる弁当を会社の同僚に見られて揶揄われたぐらいだ。

 一方、個人的に変わった点は黒いモヤと表現するしかない物を視認できる様になった事で、玉藻と出会う前はそういう物は全くと言っていい程に見えなかった為、帰宅後に玉藻に聞いてみるとどうやら下級の浮遊霊なんかだろうとの事だった。

 つまり、後天的とは言っても霊感体質に目覚めたと言っても過言ではないんだろうが個人的には傍迷惑な体質になった物だと思ってしまった。

 

(視え始めたのが小さい頃や学生の時じゃなくて良かった!)

 

 何しろ、世の中には知らなくていい事が沢山あるのにその内の1つである霊的な何かが見える様になり、玉藻の推測を聞いて初めに思ったのは上記の内容だった。

 何しろ、小さい頃だったら存命中の人とそうじゃない存在の境界が曖昧だろうから周りの人からすれば誰もいない場所に話しかけていただろうし、学生の頃だったら心霊スポットに強制連行やら霊的相談やらの対処に追われていただろうからな。

 そういった意味では幸運だったが、逆に言えばそれらに関する対策なんて1ミリもやった事がないので気が抜ける状況じゃないのは冷静に考えれば誰でもわかる事だ。

 

 RPGで例えるなら、レベル1の勇者が魔王が率いる魔王軍の幹部といきなり戦う羽目になってもおかしくない状況が今の俺の置かれた状況と言っても過言ではない。

 幸いなのは、霊的な事柄に対する対処法を知っている玉藻がそばに居るのでレベル1の勇者ではあるが、先輩冒険者がサポートしてくれる状況にまでランクアップしている。

 その結果、霊的存在に対してどんなに接触してきてもこちらから余計なアクションを起こさないという結論で落ち着いた。

 

「しっかし、マスターの体質が変化した原因は私にある事ですし? 私生活に支障が出ない程度に教えましょう」

「助かるよ、玉藻。今はまだ、区別が付いて自衛できるから大丈夫だけどモノホンの怪異やら何やらと接触した時が1番怖いからな」

「今の時代、人間ができる範囲なんてかなり限定的ですが何がきっかけで人間の範疇を超えた存在が来るかなんて誰にも分かりませんからね。そんな輩と遭遇してもしっかりと自衛できる様にしましょう」

「だな」

 

 科学が発達し、魔法や妖術がオカルトとして認知されている2020年代において一般人が目に見えない霊的な存在に対して、身を守るにはこちらからは関わらない事が第一なのだが本格的な霊能力者であればある程度の抵抗はできるかもしれない。関わらないのが1番だが。

 その為、帰宅後や休日に玉藻から目を付けられた際の対処法や簡単な魔除けと言った知識とやり方さえ、知っていれば誰でも使えるやり方を教えてもらう日々を送る事になった。

 

 

 

 数日後

 

「   君にはこの会社に移籍してもらう」

「………自分、移籍するレベルのヘマした事に心当たりがないんですが」

「そうではない!」

 

 そんな日々を送っていると、会社の上司に呼び出されて面談室に行くと唐突にそんな事を切り出されたので、少しの空白の後で自分に心当たりがない事を言うので精一杯だった。

 その為、上司に理由を聞くと彼も詳しい事は聞かされておらず、辞令が出された雰囲気から察するにヘッドハンティングに近いモノを感じたらしい。

 手取り30万の若造とは言え、どこにでも居るようなボンクラ社会人をヘッドハンティングしても大した価値を生み出せないのになぁと思いつつ、辞令を受け取って期限までに仕事の引き継ぎなどを済ませる為に忙しくなった。

 

 

 

 

「   何事かと思って移籍したらアンタだったか。コヤンスカヤさん」

「えぇ。その方が私達にとってもやりやすい、と言うモノです」

「まぁ、来ちまったモンは仕方ねぇ。できる事なら何だってやる。但し、その対価もセットで欲しいがな」

 

 移籍の辞令を受け取ってから1週間後、玉藻を引き連れて移籍先の会社に行ってみるとそこには玉藻に似て非なる存在であるコヤンスカヤ女史が在籍していた。

 まぁ、有り体に言ってしまえば今回のヘッドハンティングはコヤンスカヤ女史が在籍する会社、アビス探偵事務所に引き抜かれたと言う事だ。

 従業員数は20名前後と、決して多くはないのだがその全員が何かしらの影、それも表沙汰になったらどうしようもない程の転落人生が待ち受けているであろう雰囲気を醸し出している。

 

 言わば、俺ら以外は訳ありなので明らかに場違いな感じを受けるのだが、そんなのはお構いなしに個室へと招かれてコヤンスカヤが話を続ける。

 

「まぁ、単純に言ってしまえばある種の調査をして欲しいんですよねぇ」

「断れない状態にして言う事ですか?」

「それだけ、貴方の価値が上がったんですよ。岩浪 ミツルさん」

「どう価値が上がったのか、ぜひ聞いてみたいね」

 

 営業スマイルで、話を進めるコヤンスカヤに皮肉で反応を示す俺に玉藻はオロオロしていたので移籍の理由を聞いてみるとオカルトチックな話になった。

 

「つまり、なんだ? 異界っつー人間社会とは別の摩訶不思議な世界が時折、人間社会に噴出するから影響が出ないように塞げばいいんだな?」

「その通りです。1週間以上に渡って貴方達を観測した結果を知る我々からすれば願ってもいない逸材ですから」

「………答えを出す前に玉藻の考えを聞きたい」

 

 話をまとめると通常、人間が築き上げてきた社会を表の世界だとすれば妖怪や心霊現象といったオカルトと言われるモノが裏の世界として広がっているらしい。

 文明が発展する前は、裏の世界に対抗するための知識やら何やらが当たり前にあったのだが発展した代償として裏の世界に対する知識がロストテクノロジーとなり、もしも一般人が裏の世界に入ったら生きて帰る事はまず不可能との事。

 と言っても完全に廃れてはいない様らしく、企業間交流の一環で来たコヤンスカヤが所属する探偵事務所を始めとして表の社会に溶け込む形で日夜、人知れずに対処しているとの事だった。

 

(オカルトチックな話を真面目にするモンだから頭の処理が追いつかない………いやまぁ、玉藻がいるからそう言うのもあるんだろうなと頭の片隅で思っていたがまさか身近にあるとはね)

 

 そんな事を考えながら、玉藻の考えを聞く為に話しかけた。

 

「マスターに危ない橋を渡らせたくありません。しかし、マスターが決断するのでしたら私はこの身を持って守らせて頂きます」

「………わかった。この事務所で働こう。その代わり、その異界がどんな場所でどう言った対処が必要なのかと言う情報と玉藻の戸籍取得を求めたい」

 

 すると、そんな答えが返ってきたので正式に移籍する事に対する条件と共にコヤンスカヤに言うとクスクスと笑いながら言ってきた。

 

「そんなので良いんですかぁ? 玉藻さんは神霊の一種で戸籍がなくても生きていけるんですよぉ?」

「勿論、知ってる。だが、戸籍の有無がハッキリしないと安心して仕事に行けやしねぇ」

 

 確かに、人間よりも遥かに長生きする玉藻に戸籍なんて必要ないのだろうがこういう場面で取得させないと俺が落ち着かないし、コヤンスカヤの話では裏で袖の下を渡すような事をすれば取得は簡単らしい。

 とは言え、戸籍の取得は色々と準備が必要なので最初に引き受けた仕事の成功報酬として正式に渡すとの事だった。

 

「これで当面は大丈夫かなぁ」

「寧ろ、不安で仕方ないですよ」

 

 探偵事務所からの帰り道で、一安心と言わんばかりにそう呟くと玉藻は膨れっ面で返してきた。

 何しろ、一般的な会社から胡散臭さ満点の探偵事務所に移籍となれば変な宗教やら893みたいな反社組織に弱みを握られたんじゃないかと疑うのが普通だ。

 

「まー、なっちまったモンは仕方あるめぇ。できる事をするまでさ」

「マスターが納得してるなら良いんです。しかし、自己防衛できる様にしっかりと教えて差し上げます」

「お手柔らかにな」

 

 そんな事を言い合いながら笑みを浮かべて恋人繋ぎをしながら帰るのだった。




この物語がこうなったのは私の責任だ。だが私は謝らない。
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