響鬼外伝の外伝!? かめんらいだぁふぶき ―僕っ娘師匠の裏の顔― 作:裕ーKI
フブキが意識を取り戻したのは、それから僅か数十秒後のことだった。
腹の奥を、常にズンズンと容赦なく連打され続ける衝撃と、そのたびに下腹部から脳天へと突き抜ける快感に強引に引き戻されるように、白目を剥いていた焦点が、辛うじて現実の許へと帰還した。
ところが――。
「あ……う……ぁ……ぼく……は――……アッ!? ひぎィ!!?」
そうしたのも束の間、フブキは止まることを知らぬ突きの嵐に打ちのめされるように、すぐにまた、意識を真白き世界に剥奪された。
有無を言わさず突きつけられる快楽の猛攻に、意識の沈黙と覚醒を交互に強制させられる様は、文字通り、雄の暴力的生殖本能に為す術なく弄ばれる、雌の哀れな姿に他ならなかった。
絶頂に絶頂を重ねる破滅的快楽で気を失うたびに、直後に同じだけの快楽によって呼び覚まされる。
短時間の間にそれを何度も何度も繰り返され、その都度フブキは、自分の中から大切なものが削ぎ落とされていくのを実感していた。
それは正常な判断力や抗拒の意思だけではない。“音撃戦士”としての使命感や正義の心。そして、1人の女性としての凛然たる気高さや品格さえも、ドロドロに融けた汁となり、体外へと次々に排出されているようだった。
肉体の隅々まで熟知し、フブキを堕とすためだけに最適化された“記録”に基づく猛攻。その一突きごとに、彼女を戦士として繋ぎ止めていた楔が外れ、怪物専用の雌としての形が強制的に上書きされていく。
しかしそれでも、彼女の心の手は、残された僅か数本の糸の束を、死に物狂いでギュッと握り締めていた。今にも千切れそうなほど頼りない、血の滲むような思いで握り締めた――“理性”という名の糸の束を。
「あぐッ♡ オッ♡ お゛ォ♡ ンがァ♡ ア゛ア゛イクぅ♡ イグイグイグぅ!!」
戦いの最中で、弟子の狐夏が傍にいてフォローしてくれた前回の時や、その後の酩酊の勢いで晒してしまった自宅での痴態の時とでは、今回のケースは危機感の重みがまるで違う。
もし今この場で、このまま1度でも理性のタガが外れてしまえば、きっとその瞬間、鬼としても――1人の人間としても、その人生が確実に終わりを迎えてしまう。間違いなく、取り返しがつかなくなる。
薄れゆく意識の片隅で、そんな予感と確信に恐怖を痛感していたフブキは、絶対にそうなる訳にはいかないと、その一心だけを頼りに、泥沼に沈みゆく正気の端を必死に掴んでいた。
「ぎ、ぎも゛ぢ、いい……♡ もぉ……いやだッ……もう……イぎだぐないィィ……。きもちいの……ぐるじい……。がまんするの……ぐるじいよぉ……。たのむからァ……おねがいだからァ……これいじょ……ぼくのしきゅう……つかないでッ……」
数知れぬ覚醒の直後、定まらぬ焦点で明後日の方向を見ながら、フブキは息も絶え絶えに、最早半分譫言のように、壊れた人形の如き虚ろな声で慈悲を乞う。
するとピストンのテンポを一定に保ちつつも、敢えて腰の動きの速度を弱めた酒呑童子は、露骨に醜悪な口角を吊り上げた。
「ヒヒィ~大したもんだなオマエ~。ただの人間なら、とっくに死んじまうほどの法悦を与え続けているのにナァ~。未だに持ち堪えるなんてェ、さすがは鬼――……んにゃ、今はおでの愛妻だから、
そう言いながら、下卑た愉悦を張り付けた
「……強い女はおでも大好きダ。初めは“ヌシ”の命令のためだけだったが、どうやらおで自身、本気でオマエのことが気に入ったみたいダッ! こうしてお前と1つになっていると、おでもすんごく幸せ感じル! だからオマエも、余計なことなんて全部忘れて、ただひたすら幸せを感じロ? おでがオマエを幸せにしてやル! おでにその身を預けて、ずっとずっと幸せ感じていロ?」
その言葉は、弱りきったフブキの心に、甘受という名の冷たい澱を確実に蔓延させていた。
酒呑童子が語る“幸せ”とは、誇りを奪われ、魔化魍の子を成すための器に成り果てるということ。そんな歪んだ幸福を強要されながら、彼女の肉体は、非情にも彼が注ぎ込む淫熱に甘く、そして熱く反応し続けてしまう。
焦らさんばかりにわざとらしく速度を落とした腰の刺突が、パチュン、パチュン――と、重く粘りつくような肉の衝突音を奏でている。
しかしてそれは、決して手加減などではない。
一突きごとに、フブキの最奥を骨ごと圧し潰さんばかりの、圧倒的重厚感に満ちた質量で蹂躙するために必要な、言わば“溜め”の段階に過ぎないのだから。
吸いつく肉壁をゆっくりと、だが確実に割り開いて限界まで引き抜き、そしてまた、すぐに潜り込んでくる剛茎のその感触は、速さで表現する刺激とはまたひと味違う陶酔を、フブキの脳髄にあまりにも色濃く焼き付けていた。
「ンほぉ♡ オッオ゛オ゛オ゛♡ ぼ、ぼくが……オ゛ッ……おまえに……バケモノにッ……からだを……ゆるすなんて……オオ……そ、そんな、こと……そんなことォ……オニとして……あっていいわけが……――オッ!? おおン♡ アッだめだめッ!! イグッ!! またイグッ!! かんたんにイッちゃう!!♡ あぁぁああイグゥウゥゥゥウウウ!!!♡ アッ……ア゛ア゛ぐるじッ♡ ぐるじぃぐるじぃ♡ あ゛あ゛だめらぁ……バカになるッ♡ もぉあだまバカになるゥ~……♡ でもォ……でもォ~……たえなくちゃァ……こらえなくちゃァ……ア、アアァ~……♡」
再び白目を剥き、だらしなく涎を垂らしながら、フブキは呼吸を求めて反り返った細い喉幹を、酒呑童子に向かって無意識にさらけ出す。
下半身の結合はそのままに、ガクガクと小刻みに震えるフブキの肩を抱き寄せた酒呑童子は、その爛々と支配欲を剥き出しにした双眸を、彼女の顔の一点へと集中させる。
「確かにオマエは大した奴だが、やっぱり人間らしく愚かだナ。そんなに苦しそうにしてまで我慢して、オマエに一体どんな得があル? 苦痛に耐えたり、やりたいことをしないことが、オマエが命を懸ける“鬼”ってヤツなのカ? だとしたら“鬼”ってーのは、とんでもなく窮屈な生き方ってことだナ」
「きゅ……くつ……? オニ……が……? そんなこと……そんな、ことォ……♡」
辛うじて意識に届く酒呑童子の言葉に、フブキは混濁した思考を必死に動かし、どうにかして反論を試みる。
しかし、正常位のまま抱き締められた肩から伝わる熱と、蜜穴の中で卑猥な掘削を続ける肉の圧迫感が、彼女の思考回路を無慈悲に焼き切っていく。
鬼とは、高潔であること。
鬼とは、己を律すること。
そんな砂の城のような信念は、酒呑童子が語る“一方的な価値観”という名の濁流によって、呆気なく押し流されてしまった。
「あ゛ッ♡ あ゛あ゛♡ ぼく、はッ……オニ……はァ……」
霞みかかった視界の中で、酒呑童子の瞳だけが太陽のようにギラギラと輝いて見える。
その光に焼かれるようにして、フブキの心の中に芽生え始めていた、あってはならない“解放への渇望”が、今にも毒々しく花開こうとしていた。
「哀れだナァ。可哀想にナァ。せっかくの極上の快楽も、そうやって自分を偽るから苦しいんだゾ? だけど安心しロ? おでがオマエを苦しみから救ってやるからナ。おでの酒に酔い痴れて、思う存分オンナの悦びを受け入れるがいイ。そうすりゃ一生、かつてないほどオマエは幸せになれるからナ」
酒呑童子はそう言うと、不意に自らの口をフブキの唇に押し付けた。
「ンぐぅッ!?!?♡」
逸らす隙すらも与えずに、それどころか、寧ろ引き寄せるように捕らえた
連結した互いの口腔内の間に、一切の障壁が無いことを舌の動きで確認したその直後、酒呑童子は、幾度となくフブキを追い詰めてきた高濃度の酒液を、口移しで直接、彼女の喉奥へと一気に流し込んでいった。
「――ッ!? がぼッ……ゴホッゴブッ……ブッ……ごッオ゛ッ!?!?♡♡」
喉元を焼くような酒精の勢いに、フブキの細い体がビクンと大きく跳ね上がる。
一瞬にして口内を埋め尽くす圧倒的質量に、当然の如く嚥下は追いつかず、行き場を失った酒液が、繋ぎ合わされた唇の端や鼻の穴から、ゴボゴボと泡を立てて吹き出していく。
フブキは文字通り、呑みきれぬ酒の流水に呼吸官を塞がれ窒息しかけていた。
しかしそんな状況の中でも、思考の檻を溶かす甘美なる猛毒が、ウイルスの如くヒタヒタと脳髄に染み渡っていく感覚と恐怖だけは、手に取るように実感することができていた。自身が崩壊していく様を、為す術もなくまざまざと傍観させられているかのように。
大きく見開いた視界はバチバチと明滅を繰り返し、頭の奥がカッと熱を帯びて激しく膨張していく。
全身を繋ぐ五感の回路はグチャグチャに絡み合い、既に正常な機能を失っている。人格を支える知性や認識能力はオーバーヒートを起こし、肉体を動かすために必要な運動神経は、ガクガクと暴れ馬のように痙攣を繰り返し、最早使い物にならないほど制御不能に陥っていた。
極限まで高められた内圧と、脳を焼き尽くす酒の抱擁。
そしてついに、フブキの精神が、耐えうる閾値を突破した――。
(あ。――……)
プッツン……!
その瞬間、脳裏に響き渡ったのは、彼女を人間として、鬼として、1人の音撃戦士として繋ぎ留めていた、最後の一線が断絶する音だった。
「あ、はァ……ッ♡」
酒呑童子が銀糸を引きながら口を離した途端、フブキの顎は力無く脱力し、溢れ返った酒液が、涎と共にダラダラと頬伝いに地面へと零れ落ちる。
かつてないほど恍惚な表情で白目を剥きながら、焦点の定まらない瞳で虚空を見つめる彼女の口からは、先刻までの凛然とした響きは完全に消え失せていた。
「あぁぁ~……いい~……♡ い゛い゛ィ~……♡ しみこんでくるのわかるぅ~♡ のうみそふやけりゅ~……♡ おさけであたまグズグズになるのぉ……♡」
救いようのない転落。
儚く千切れた、“理性”の糸。
屈服と抵抗の間を反復していたその足は、とうとう泥濘の底へと消え、音もなく沈みきったのだ。
最早踏ん張る力も、抗う意思も、彼女の中には欠片もない。
今はただ、さっきまで必死に護ろうとしていたはずの己の自我の輪郭が、ドロドロに融けて崩れ落ちていく感覚に心地良さを覚え、その蜜のような
酒呑童子は、そんな夢見のような状態のフブキの意識を自分の許へと手繰り寄せるように、結合したままの彼女の腰を、両手で力強く掴み直した。
そして、最後の仕上げと言わんばかりに、彼女のスラっと長い片脚を持ち上げ、抱え込んだその瞬間、これまでで最も深く、重く、加えて速く、自身の力の全てを見せつけ、叩き込まんとする勢いで、子宮の最奥を激しく連打した。
「ンォオッ!?!?♡♡ ほォオ゛オ゛!!♡ オッ……オ゛オ゛オ゛オ゛!!!♡♡」
人間とは異なる存在――人間以上の力を持つ怪物ならではの、凄まじきパワーとスピードを兼ね備えた突きの連続。
意図的に速度を落として責めていた先刻とは真逆の、今度は情け容赦なき怒涛の猛攻。
重機が杭を打ち込むような、無慈悲なまでの重量を伴った“性”なる波状攻撃が、彼女の最奥を容赦なく抉り、愛液が泡立つほどに掻き乱していく。
摩擦熱で発火でもするのではと、見る者に懸念を抱かせんばかりの往復を繰り返す極太の肉柱にとって、女の聖域を護る“門”の存在など、最早単なる通過点に過ぎなかった。
殴打のたびに子宮口を貫き、その最奥の内壁をゴツゴツと殴り続ける、拳大の亀頭の仮借の無さに、フブキは無遠慮に、狂気の証を示すように、歓喜なる嬌声を魂の悲鳴の如く絶叫する。
「お、おおぉ……いいッ……いいゾォ! やっぱりッ……やっぱりオマエの身体はッ! 最ッ高に上質だナァ!」
一切の羞恥を忘れた、そんなフブキの痴態に共鳴するように、酒呑童子の呻きもまた、これまでと打って変わり、余裕を失うほどの昂ぶりを募らせていた。
酒呑童子は、フブキが確実に堕ちるここぞという時まで、自らの絶頂と射精を意図的に控えていた。
それは紛れもなく邪悪で歪な動機ではあったが、同時に酒呑童子なりの愛の形でもあった。
初めての種付けを通して、自分が旦那であり、自分とフブキが夫婦であるという関係性を、逃れようのない絶対的な真実として、彼女の最も深い場所に直接刻み込んでやろうと、ずっと心に決めていたのだ。
「おでもッ! おでも……もうッ! ずっとこの時を待っていたからナッ! ホントはもう限界だったからナ! だ、出すぞッ! ずっと溜め込んでいた子種! オマエの
あまりにも激しく――激しすぎるほどに、酒呑童子は一心不乱にフブキの股座に腰を打ち付けた。
「い゛い゛ィッ♡ い゛い゛よォ♡ ぎでぇ!!♡♡ ぎでぇええ゛え゛!!!!♡♡♡」
粘液塗れの肌と肌が、湿気を含んだ爆ぜるような衝突音を、集落を取り囲む山々へと何度もうるさく響かせた。
そうしてその末に――。
その果てに――。
「アアッッ!!! で、出ルゥゥウウウウ!!!!」
ついに酒呑童子は、ダムが決壊したかのような勢いで、白濁した灼熱の溶岩をフブキの深淵へと放出した。
「あッ――……♡ ガッッ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ァァァーー~~!!!!♡♡♡」
ドビュルッ! ビュルビュリリィ――!
ブルブルと打ち震える雄の分厚い腰の動きに合わせて、一滴、また一滴と続く種の飛沫が、ことごとくフブキの内腑を叩いた。
既存の種雄では決してあり得ない、その常軌を逸した凄まじき精の質量は、打ち揚げられた魚のように悶えるフブキの胎内を、隙間なく瞬く間に満たしていき、その空腔を強引に見る見る押し拡げていった。
平坦だったフブキの腹がポッコリと、徐々に重みを帯びた、なだらかな曲線を描いて膨らんでいく。
絶頂痙攣を繰り返す膣壁は忙しなく蠢き、酒呑童子の尿道に残った熱い残滓さえも、最後のひと滴まで絞り取ろうとゴクゴクと貪欲に吸い上げる。
「あ゛……あ゛ぁ゛……♡ あ、あちゅい……おなかあちゅい……♡ ばけものザーメンにしきゅうみたされてるぅ……♡ あ゛あ゛ぁ゛……じあわぜ……じあわぜぇえ~……♡」
子宮から卵巣、それどころか肉体を形作る細胞の端々にさえも、精液の情熱が徹底的に染み渡っていく。そんな現況が克明に自認できるほど濃密な、格別なる支配の感覚。
下腹部を中心に、ジュワアッと心身に広がる至上の高揚感に、フブキは堪えようもなく顎を震わせ、ガチガチと歯を鳴らした。
緩みきった口は噤むことを忘れ、落雷の如き絶頂の快楽に押し出された赤い舌は、酒と唾液で濡れそぼった唇の上で、だらしなく垂れ下がっていた。
酒呑童子が剛茎を引き抜くと、結合が解かれた蜜壷からは、子宮に収まりきらなかった重厚な白濁液が、ドボドボと次から次へと溢れ出てくる。
「あぁんッ♡ あぁ……いやッ……♡ だめッ……ぬかないでぇ……♡ 抜いちゃやだぁ……♡」
フブキは勿体ないと言わんばかりに、蜜壷から零れた精液を無理やり“中”へと押し戻すように、指を何度も何度も膣口に突き入れながら、上半身を重たげに起こした。
その反動でプルンと揺れた乳房を、空いた方の掌ですかさず捕らえると、無造作に捏ね繰り回し、自らを慰める。
嬌声混じりに「ハァハァ♡」と荒い息を吐きつつも、ふやけた上唇をねっとりと舌でなぞるフブキの表情は、あまりにも悩ましく、壊滅的なまでに淫らな赤熱に染まりきっていた。
「あ、ああ……♡ あああ……♡」
股座の空腔を塞ぎ満たしてくれていた、肉柱の突然の消失が齎す激しい喪失感。そして、もう2度と洗い落とすことなど不可能なほどに、心身の根深いところにまで浸透した、情欲の疼きを煽りし子種の毒。
催淫の如く、それらに促されたフブキの渇愛の炎は、もう自分でもどうにもならない猛火の勢いで、さらに苛烈に燃え盛っていた。
「ああ……チンポ……♡ オチンポぉ……♡ おッオ゛オ゛ッ♡ ザーメンいっぱいもらえて、オマンコ悦んでるぅ~……♡ オンナの悦び教えてもらえて……幸せいっぱい感じてるぅ~……♡」
発作的に込み上げる衝動のままに――。
際限なく沸き起こる欲望のままに――。
邪に捻じ曲げられた本心のままに――。
前のめりに酒呑童子の股間へとにじり寄りながら、フブキの口は一切の抵抗も罪悪感もなく、平然と耳を疑うような卑俗な言葉を吐き散らす。
まるで息をするのと同じだと言わんばかりの自然さで、淫語を紡ぐその様子からは、かつての清純で凛とした品性は最早微塵も感じられず、ただひたすらに酒呑童子が齎す快楽だけを求める、浅ましいまでの飢餓感だけが剝き出しになっていた。
「こぉんなに気持ちいいこと教えてくれてぇ、とっても感謝してるわ、
淫らに波打つ紅唇が、節操無き媚びた蜜語を重ねる。
狂おしいほど涙で潤んだ瞳。
熱く上気した深い吐息。
歴戦の音撃戦士の1人として、或いは弟子を導く鬼の師匠として振る舞っていた、女性らしからぬ男勝りの気位は、今や見る影もなく瓦解していた。
代わりにフブキがこうして振りまいているのは、まるで別人のように毒気に絆された、蕩けきった甘い嬌態だけだった。
湿り気を帯びた細長き肢体が、唯一絶対と認めた“夫”に次なる汚辱を求めて、なりふり構わず無様に乞い縋る。
「あぁん♡ やっぱり素敵……♡ こんなにザーメン出したのにィ、硬さも長さも大きさも、微動だにしない逞しすぎる化け物チンポさまぁ~♡」
中出しされた大量の精液は、依然胎内に沈殿したままであり、そのせいで僅かに膨隆している下腹部を、フブキは宛ら妊婦のように愛おしげに撫で回す。そうしながら、ウットリと物欲しそうな熱い視線を、変わらぬ威容を誇り、猛々しく屹立し続ける剛茎に送り続けていた。
やがて、全身を駆け巡る、魂を掻き毟らんばかりの疼きに急かされるように、フブキの口から顔を出した赤い舌先が、無数の黒い血管がグロテスクに浮き出た剛茎の裏筋を、美味しそうにツーッとゆっくり舐め上げた。
「はッ……あぁ~……♡」
そのまま顎が外れそうになりながらも、巨大な亀頭を天辺から口内に頬張ると、少しの間、自ら首を前後に振り、深部まで喉を突き上げるような豪快な吸引を繰り返した。
「ン゛むッ、ぶちゅッ♡ んふッ、ヴッ、ンンぅ♡ あフゥ……チュヂュ……ン゛♡」
会心の射精を済ませたばかりだというのに、萎えることを知らない酒呑童子の太ましい肉柱は、フブキの口腔内での奉仕を受けて、より一層その節を怒張させた。
顎の関節を内側から強引に押し広げるほどに、一回り硬く、そして大きくなった凶悪なまでの迫力と、口一杯に伝わるその感触に対し、フブキは改めて圧倒されると同時に、心の底から打ち震えるように歓喜し、思わずその目を大きく見開いた。
一刻も早く、この巨物で膣を満たしたい。
急速に込み上げてきたその一心に突き動かされるように、しゃぶっていた肉の冠から自ら口を離すと、涎をダラダラと下顎に垂らしたまま、徐に突き出した指先で酒呑童子の肩をトンと軽い力で押し倒した。
「もう、限界……♡」
その身を委ねるように、敢えて為されるがままに仰向けに倒れた酒呑童子の上に跨ると、フブキは自らの膝を割り、大きく秘所を晒し上げた。
早く早くと言わんばかりに、堪え性無くヒクつき、待ち構えるようにだらしなく半開きになっている卑猥な肉穴の暗部からは、逆流した胎内の精液が白濁した雫となって入り口を汚し、重力に従いボタボタと滴り落ちてきていた。
だがそんなことなどお構いなしに、フブキは自らの重みに任せて、腰をゆっくりと沈め始めた。
より一層大きく膨張した亀頭が、汁洩れを起こした穴に栓をするように、緩んでいた膣口をさらに強引に押し広げて、穿ち入ったその瞬間――。
「オ゛ッッ!!!?♡♡♡」
反射的に背筋が弓なりに反り返ったフブキの黒目が、グルンと一気に上を向き、瞼の裏へと消失した。
「ンがッ……ガ、アッ……ぁぁあああ゛あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛~――……!!!!♡♡♡ は、はいっでる゛ぅぅううう!!♡♡ はいっでぐる゛ぅぅうう~!!!♡♡♡ さ、裂けるゥウウウ!!♡♡ オマンコ裂けりゅぅぅうう!!!♡♡♡」
融けるように蕩けた貌が天を仰ぎ、突き出た舌先がピンと天を刺す。
泣き叫ぶように喉から溢れるのは、文字通り肉体をメキメキと蝕む快楽に対し、どこまでも歓喜と驚愕の感情だけが剥き出しの、抗いようのない獣じみた絶叫だった。
「ゴッ……オ゛ッ……オ゛オ゛オ゛ォォオオオ~!!♡ イ゛グッォオイグぅ!!♡ オアアぁぁ……す、凄ッすごいスゴイこれぇ……♡
ゆっくりと腰を落とすたびに――以前にも増して強固となった打突部が体内の精液ごとせり上がるたびに、その摩擦だけで、その膨圧感だけで、フブキはその都度、潮を噴き、尻肉をビクビクと痙攣させながら、意識が飛ぶほどの絶頂と同等の快感に襲われた。
やがて、最初の挿入で穿貫され、既に抉じ開けられていた子宮口をあっさりと通り過ぎ、再び胎内の最奥の壁へと亀頭が辿り着くや否や、それを開戦の合図とでも言わんばかりに、フブキは自ら狂ったように――いや、手遅れなほど狂った通りに、腰を一心不乱に打ちつけ始めた。
「オ゛ッ♡ うぉッ♡ ほぉおお♡ お゛お゛ン♡ アッいいィ♡ い゛い゛ン♡ チンポッ♡ チンポい゛い゛ィ~♡ イグイグッ♡ イぎづづげでるぅうう♡ あ……ああン……もっとッ♡ も゛っどォォオオ~……♡」
バヂュンッバヂュンッ――と、凄絶且つ本能的、加えて勢いと衝動任せに腰を上下に振り乱し、思いのままに、
「オチンポすごいィ♡ だいすきッ♡ ばけものチンポだいすきィ♡ ああんすきィ~♡ すきぃいい~♡ あん♡ あ゛あ゛ッ♡ セックスさいこぉ♡ ばけものとのガチハメ交尾さいこぉおおお♡」
既に子宮の袋小路にまで先端が届き切っており、どれだけ沈めてもこれ以上入ることはない。しかしそうとわかっていながらも、それでも尚奥へと欲するように――治まることを知らぬ飢えを満たそうと必死になるように、時折腰を最深部に押し付けたまま、円を描くように淫らにくねらせる。
「ギヒヒッ……。こんなにも夢中でご執心なのに、おでのことは相変わらず『化け物』カ。好きなのはおでじゃなくて、おでのチンポだけってことカ?」
涎を垂らした野獣のように、肉棒を貪り食らいつくフブキの股の重みを心地よく感じつつも、酒呑童子は敢えて意地悪く目を細めて問いかけた。
するとフブキは腰の弾みはそのままに、拗ねるように少しだけ頬を膨らませる。
「あぁん♡ んもぉ……怒らないでぇ♡ ンッ……♡ 人間なんかよりィ……断然素敵って意味なんだからぁ~♡ 寧ろッこれ以上ないほどの褒め言葉なのよぉ♡ 人間とのエッチじゃッ……絶対味わえないほどの幸せをッ――わたしがずっとずっと欲しかった悦びをぉ……あなたはわたしにッ……妻にして与えてくれたんですものぉ……♡」
「ほほお~……そいつは何よりだナ。だが……オマエはホントにそれで良いのカ? オマエとおでは、本来は殺し合う間柄。何せオマエは、おでら魔化魍を滅ぼさんとする鬼のひとりなんだからナ~」
「え……オニ……?」
その瞬間、フブキの顔から、一瞬だけ陶酔の色がフッと遠のいた。
酒呑童子がニヤニヤと見上げる中で、刹那の間に浮かぶ困惑の表情。
しかしその直後――。
「アハァ~♡ 知らなぁ~い♡ なにそれぇェ~♡ わたしとあなたが殺し合うなんてぇ……、そんなことあるわけないでしょぉ~♡ だってェ……だってこぉんなに愛し合ってるんだからぁ~♡」
フブキの硬直した顔色は、瞬く間に頬の筋肉が緩みきるように、元の恍惚顔へと戻っていった。
「ギッヒィ……そ~だナ。オマエの言う通りダ。おでたちは相思相愛の夫婦だよナッ!」
期待通りの答えが返ってきて、酒呑童子は大層満足げに笑みを浮かべていた。
彼は最初からわかっていた。
フブキの心が、正義の鬼としての矜持を既に忘却し、完全に失っているということを。
わかっていながらも、その心を弄ぶように、或いはどれだけ自分に従順となり、夢中になっているかを確かめるように、敢えて意地の悪い質問を投げ掛けたのだ。
誇り高き戦士と清き光を纏い輝き、心に気高く咲き開いていた美しき“冬の銀の花”は、泥のように澱んだ穢れし本能に呑まれて、力及ばず枯れ果てた。
その代わりに開花した、情欲の毒花が齎す淫靡なる蜜の甘さに思想を塗り替えられ、意識を隅々まで支配されてしまったフブキは、今や快楽を苦しみとしてではなく、快楽を快楽として純粋に受け入れていた。
「ンッフッ……キス……キスしてぇ~♡ あなたの極上のお酒で……もっとわたしを酔わせてぇ……♡ もっとわたしを……天国に連れてって……♡」
腰の動きだけは決して止めようとはせず、テンポ良く肉穴で剛茎を扱きつつも、フブキは自ら飛び込みに行くように、その上半身を深く前のめりに折り曲げた。
酒呑童子の異形感溢れる口に、自身の紅唇を半ば強引に押し付けると、まるで飢えた雛鳥のように、酒呑童子の喉奥から溢れ出てきた酒液をチューチューと貪欲に啜り始めた。
「んちゅ……ッ、ンむ、じゅるぅ……ッ♡ あ、あはぁ……♡ あま、い……おいひ、いのぉ……ッ♡」
鼻腔を衝く蠱惑的な香りと、喉を焼くような熱い刺激。
目が回るほどの高揚感が、フブキの意識をこれでもかと掻き混ぜる。
先刻まで顔を背けるほど苦手だったはずが嘘のように、ゴクゴクと野卑な嚥下音を鳴らしながら、酒呑童子の一部とも言うべき魔液を胃に流し込んでいくたびに、彼女の脳髄は、再び煮え滾るようにカッと熱を帯びていった。
「はぁん、んぐぅ、ん、ンンッ♡ ……ッんはァ♡ ああんッ……すごいもえるぅ……こうふんするぅ……♡ もっとッ……もっとぉ!♡ ハッ……んちゅぅ♡ あ……れりゅ……♡」
密着した口と口の間で、まるで酒の泉に揺られながら抱き合い、求め合うように、互いの舌を情熱的にネットリと絡ませていく。
その時はまだ、フブキ自身も気づいてはいなかった。
酒呑童子の粘ついた舌の温もりを欲する余り、口内で蠢く自身の口舌が、まるでカエルやトカゲのように柔らかく撓り、異質な形へと伸長し始めていたことに。
それが、自分が“人間”を辞めていく最初の兆しであるということに。
「はぁんッ!♡ だめッ……昂ぶり抑えきれないぁい!♡ もう待ちきれなぁい!♡」
酒呑童子の口から唇を離すや否や、フブキは再び引き起こした上半身を弓なりに反り返し、改めて腰振りに没頭する。
パンパンパンパン――と、静寂を切り裂く卑猥な衝突音が、これまで以上の力強さと暴力的なテンポの速さを携え、逢魔が時の空に絶え間なく鳴り響く。
新たに摂取した酒の影響か、その狂乱の如き腰使いの激しさは、宛らガソリンを注がれ、一気に爆ぜた猛火のようだった。
「ア゛ア゛ァァァ~はやくほじいぃ!♡ 精子ほじいぃ!♡ 赤ちゃん生みたくてしょうがないのぉ!♡ だからはやくッ!♡ はやくぅぅ!♡ アッ……あ゛あ゛ンッ!♡ ぎぼぢッ……ぎぼぢいいのぉ~!!♡ あ、あ……ア゛……ア゛ア゛……へ、えへへ……へへへェェェ……♡」
期待の余り、思わず笑いが込み上げてくる。
かつての慎みや理性など微塵も感じられない、欲望に忠実な下品な笑い声。
自制心無きフブキは、それを抑えることができなかった。
今まさに全身を蹂躙している絶大な快楽。
この後に訪れるであろう更なる絶頂への予感。
そして何より、既に1度、盛大な射精を果たした後であるにも拘らず、気づけば再びはち切れんばかりに膨れ上がっている、酒呑童子の睾丸の中に蓄えられているであろう、袋一杯の新鮮なる精液が、もうすぐ自分に注ぎ込まれるのだという確信が、フブキの口元をだらしなく緩ませていた。
「ふへへェェ……♡ あんッ♡ おほぉッ♡ オ゛オ゛ォ♡ へへッ……へぁッ……♡」
笑いが止まらない。
腰の動きも止まらない。
溢れる悦びに比例するように、欲望に捧げる乱舞は一段とその狂気を研ぎ澄ませ、彼女自身を取り返しのつかない破滅へと導いていく。
跳ねた腰が沈むたびに――。
肉の突端が子宮の最奥にめり込むたびに――。
頭の中が真っ白になる。
凶悪なる刺突の連打は、確かにフブキを天にも昇る幸福へと導いていた。
これがオンナの幸せ……。精を受け、子を孕める雌の幸せ……。
しかし、そのあまりにも強すぎる快感は、脊髄を駆け上り、脳を貫き、その都度彼女の知能に著しいダメージを与え続けていた。
跳ねた腰が沈むたびに――。
肉の突端が子宮の最奥にめり込むたびに――。
脳内の大事な部分がバチッと小気味のいい音を弾けさせて、剥がれ落ちていく。
これまで己を縛り付けてきた、名前も、立場も、誇りも――そんな小難しいもの全てが、衝撃が走るたびにガラクタのように呆気なく崩れて散っていった。
その感覚が、今のフブキにはたまらなく愉快で心地よかった。
「ア゛ッ♡ ア゛ッ♡ わかるぅうう♡ たいせつなものッ、きえてくのわかるぅうう♡ ア゛ア゛ァ~……♡ だのじぃいい♡ だのじぃッイイ~♡ じぶんでじぶんをこわすのぎぼぢよすぎるぅううう~ッ!!♡♡」
はっきりと自覚できるほどに、思考が軽くなる。
空っぽになっていく脳内の隙間を埋め尽くすように、更なる快楽の泥濘がドロドロと流れ込んでくる。
自分が自分でなくなっていく感覚。
フブキがフブキでなくなっていく感覚。
自ら言葉にするほどよくわかる、自らが壊れていく感覚。
バラバラに砕け散り、そして――“新たな形”へと生まれ変わるために必要なプロセス。
けれども最後は――。
「ねえッ♡ オ゛ッ、おねがぁい♡ さいご、はァ……さいごはッ……あなたが……あなたがトドメをさしてぇ……♡ あなだじしんでッ! あなだのオヂンポざまでッッ!! わたじのじんせいにッ……はやぐッ!! はやぐトドメをざじでぇぇえええ!!♡♡」
口からはみ出た長い舌をチロチロと宙で遊ばせながら、咆哮の如く吐き出た魂の叫び。
空を仰ぎ、虚空を見つめる忘我の瞳は、いつの間にか汚染水のように濁った緑色へと染まりきっていた。
「ヒヒッ……ギヒヒッ……。いいゾいいゾッ! 望み通りにしてやル! 他の誰でもない、愛する妻の頼みだからナッ!」
いやらしい笑みと共に、フブキの願いを聞き入れた酒呑童子は、徐に自身の上半身を起こし、彼女の両腿を左右の前腕に絡めた。そして、結合はそのままに、フブキの尻をガッチリと掴み上げると、自らの膝を立てて立ち上がり、その華奢な肢体を軽々と宙に浮かせた。
地面という唯一の支えを奪われた反動で、上躯のバランスを崩しかけたフブキは、慌てて両腕を酒呑童子の首に回し、その異形に甘えるように組み付いた。
それでも互いに粘液でヌメった身体では自重を支えきれず、重みに引き摺り込まれた膣口は、彼女の意思とは関係なく、突き刺さった剛茎をさらに深く、奥の奥へと呑み込んでいった。
「ひぎぃッ!!?? ぎッ……ぐ……あッ……ア゛ア゛ッ……♡」
刹那に全身を駆け巡る、思わず瞳孔が目一杯開くほどの衝撃と、息が詰まるほどの爆震的な快感。
とっくに許容範囲を超えているというのに、尚もミチミチと膣内を押し拡げられ、めり込んだ亀頭が最奥の肉壁を深々と押し潰してくる。
「おっと、危ないゾ?」
脱力したフブキが落ちてしまわないようにと、酒呑童子は咄嗟に両手の力を込め直し、彼女の尻を掬い上げるようにして、自らの胸板へと、より密着するように抱き寄せた。
粘着性と柔軟性に満ちた、酒呑童子のブヨブヨとした筋肉と、フブキの豊満な身体が水音を立てながらぶつかり合い、その間に挟まれた巨大な乳房が、逃げ場を失いグニャリと無残に形を歪ませる。
気づけば本来より一回り大きくなったようにも見える肉厚な双丘が、酒呑童子の肌にこびりつくほど平たく拉がれると、恥も外聞もなく凝り固まった乳首が、その胸板にコリコリと擦れてしまう。
その感覚さえもが、今のフブキにとっては極上の刺激であり、ことごとく彼女を燃え上がらせ、悦ばせていた。
「あ、あ゛あ゛ッ……ちくびぃ……♡ ちくびぎもぢぃいいッ……!!♡」
あまりにも幸福に満ちた、恍惚とした表情。
あまりにも醜く蕩けた、ただの雌の貌。
そんなフブキに対し、酒呑童子は自分でも理解し切れないほどの感情を抱いていた。
それは洋館の男から授けられ、体内に摂取した“酒呑童子”化を齎す肉塊が、人間の成人男性を素材としている故だった。
感情豊富な生物である“人間”の遺伝子を取り込んだことで、従来の童子が持ち合わせていなかった、異性を純粋に慈しむ恋慕の情が、奇しくも彼の中に芽生えていた。
自分の妻となったフブキのことが――。
自分の腕の中で悶えるフブキのことが――。
心の底から愛おしくて愛おしくてたまらない。
もっともっと感じさせてよがらせてやりたい。
もっともっと彼女を幸せにしてやりたい。
もっともっと子種を注ぎ込み、孕ませてやりたい。
ただただ機械的に、我が子たる魔化魍の育成を使命とする者としては、明らかに似つかわしくない支配欲。
しかしその一心に突き動かされるように、次の瞬間、らしからぬ情熱に身を任せた酒呑童子は、フブキの胎内に潜んだままの肉柱を、一切の躊躇なく、渾身の力を込めて、一思いに突き上げた。
「ふンッ!!」
「ン゛ごォオ゛オ゛オ゛ッ!?!?♡♡♡」
その刹那、子宮の底を力任せに踏み抜くような凄まじい衝撃が、フブキの全身を海老反らせたままに硬直させた。
「がッ……ごッ……ほッ……オ゛オ゛ッ……オ゛……♡ しゅ、しゅごッ……しゅご、い……ひ、ぎッぐ……ぁあ……♡♡」
胎内の内側から、下腹部をボコォッと異様な形に大きく隆起させるほどの重い一突きが、彼女の長い舌をピンと引き詰め、緑に澱んだ瞳を呆気なく瞼の裏へと追いやった。
ビクビクッ、ビクン――。濡れた肢体は本人の意識を離れ、好き勝手に暴れるように痙攣を繰り返す。
その一撃で既に息も絶え絶えのフブキだったが、しかし当然のように、酒呑童子の猛攻は、たった一度の突き上げで到底収まるものではなかった。
膣口に深々と突き刺さったままの肉柱を、助走をつけるように、一旦抜ける寸前のギリギリのところまで引き戻すと、一瞬の間を挟んだその直後、酒呑童子は怒涛の速度で、文字通りフブキの肉体を破壊せんばかりの勢いで、子宮の底を連打し始めた。
「ぎょほぉおおおッ!?!?♡♡ オ゛ッ♡ オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛~~ッッ!!♡ イクぅ♡ イグイグイグぅ……ぐッ……ああッ♡ オ゛ッ♡ ン゛♡ ア゛ぁ♡ イ゛ッでるッ♡ ずっどイ゛ッでるぅうう♡ ア゛ァ゛……い゛い゛~♡ イイッ♡ イイッッ♡ あ゛あ゛イぎゅうゥ♡ ああッ♡ あ゛あ゛ッ♡ ンッ♡ おッ♡ ォオオ♡ オ゛オ゛ン♡」
拳大の亀頭が最奥の肉壁を力強く殴るたびに、それこそフブキの腹は、内側からボコンッ、ボコンッと、剛茎の輪郭が浮き出るような歪な形に跳ね上がる。
そのたびに言葉にならぬ獣じみた咆哮が、フブキの喉奥から弾けて溢れ出るが、それでも彼女の貌は、対照的に救いようのないほど幸福な悦びに蕩けきっていた。
酒呑童子のうなじに掴まった両手の支えだけを頼りに、背筋を弓なりに反り返し、首を背後にダラリと垂れ下げたその表情には、高潔な女性だった頃の凛々しさや勇ましさなど、最早面影すら微塵も留めてはいなかった。
「オ゛ッ♡ ほぉおおッ♡ ン゛ォオオ♡ イ゛ッでるッ!♡ イ゛ッでるぅうう!!♡ イぎま゛ぐっでりゅぅうう!!♡ あ゛ッ♡ ン゛ン゛ッ♡ おほぉおお♡ チンポぉ♡ オヂンボォオ゛オ゛♡ ほじいィ♡ はやぐほじいィイイ♡ つぎのザーメンほじいぃい♡ あッ♡ ぎッ……ア゛ア゛ァ♡ はやぐッ♡ はやぐッそそいでぇ♡ せーしィ♡ せーしィイイイ!!♡」
鬼であることを忘れ、人々の命を護る戦士であることを忘れ、そして、愛する弟子を導く師匠であることも忘れてしまい、フブキは淫欲に堕ちた1匹の雌となり果てた。
今はただ、焦点を見失った逆さまの双眸から狂喜の涙を垂れ流し、常人ならば最早廃人どころか、確実に死に至るほどの悍ましいまでの殺人級の快楽に溺れ、貪り続け、その果ての“結末”を心待ちにするばかりだった。
「ぎッぎぼぢぃいいッ♡ ぎぼぢいいのぉおお♡ ン゛ッ♡ ォオ゛オ゛♡ かんじりゅぅうう♡ かんじすぎるのォオオ♡ すきッ♡ これすきぃいいい♡ オッほぉああ♡ 交尾しゅきぃいい♡ こづくりだいしゅきぃいいぃいいいッ♡ あッ♡ はぁああ♡ こ、これがッ……わだじッ♡ おぢんぼぐるいのわだじがッ……ほんとのわだじなのォオオオオオオ!!!♡♡」
ひたすらに腰を振り、がむしゃらに股間を打ち付け、憑かれたように雌穴を突きまくる圧倒的往復運動と同期するように、酒呑童子は抱き上げたフブキの腰を、力任せに上下に揺さぶりまくり、彼女を限界のその先へと容赦なく押し上げていく。
絶え間なく続く快楽。
度重なる過剰なまでの絶頂。
フブキを襲うそれらの影響は、彼女の肉体を確実に別の存在へと作り替えていた。
より正確に言えば、その現象は即ち、フブキの鬼の力――フブキの鬼の姿になるための“変身の力”が暴走し、突然変異を引き起こした結果だった。
本来、鬼に変わる力とは、その力の持ち主の生存本能の1つ――敵を倒し、生き延びようと望む闘争本能を原動力とすることで発現する。
しかしこの瞬間、猛り狂った肉欲の化身となったフブキの変身能力は、闘争本能とは別の生存本能と強く結びついてしまっていた。
それこそが、雄の精を受け、子を孕み、繁殖だけをただひたすらに渇望する生殖本能に他ならない。
フブキの肉体は今、酒呑童子の妻としても、邪なる繁栄を齎す苗床としても、これ以上ないほど相応しく、最適化された状態へと進行し、定着しつつあった。
表皮から染み込んだ酒と粘液に蝕まれ――。
子宮内膜から染み込んだ精液に塗り潰され――。
人のものでもなければ、鬼のものでもない――邪気に汚染され、魔の性質へと変換された細胞の1つ1つが、躯体の外内を異形且つ面妖な形へと再編していく。
酒呑童子に蹂躙を許していた胎内は、より多くの精子を貯留できるよう拡張性と柔軟性が増し、たとえどれだけ乱暴に、暴力的に扱われ破損しようとも、本人の意思とは無関係に、即座に再生してしまうほどの自己回復能力を身につけた。
その上、人間だった時には下腹部の左右に1つずつ――合わせて2つしかなかった卵巣は、それぞれが爆発的な分裂と増殖を繰り返し、無数の嚢胞が寄り集まった葡萄のような房状の器官へと変化した。
「ほぉおォ♡ ア゛ア゛~しゅごいィッ♡ しゅごいわかるぅぅ♡ はっきりわかるのぉおお♡ ンぁああッ♡ ンンッ♡ オ゛オ゛ッ♡ オッ♡ オッ♡ かわるッ♡ かわるゥ♡ かわってくぅぅううッ♡ わだじがかわってくのがわかるゥウウッふぅうう♡ あ゛あ゛あ゛ぁぁじゅごい゛ィィイイ♡ うまれがわるの゛ぎもぢぃいいいいッ!!♡」
酒呑童子に種付けされるたびに、10を超える精子が一斉に、確実に受精を果たし、その都度、その全ての着床が約束されている――魔化魍側にとってはまさに完璧なる母胎となり、フブキ自身も、その役目を全うできる瞬間を今か今かと待ち望んでいた。
それを証明するように、酒呑童子の剛茎を包み込んだ膣肉の収縮は、キュンキュンと締め付けを強くするばかりだった。
「う、おッ……締まりがッ……一段と良くなったナ……ァ……! いいゾッいいゾ! おでもッもう止まらないからナッ! 止まるつもりなんてないからナッ! このままッ! このままおで色に染まりきるまでッ! 孕みきるまでッ! 絶対に止めてなんかやらないんだからナァアアッ!!」
まるで下半身が融けてフブキの肉と一体化していくような、そんな激甘な混濁感に掻き立てられた酒呑童子は、益々昂る際限のない渇求に急かされるように、不意にフブキを抱き抱えたまま、直近の廃屋の壁際へと移動した。
廃村に建ち並ぶ民家のほとんどは、既に経年劣化で使い物にならないほどに朽ち果てていたが、フブキを抱えた酒呑童子が傍に寄った廃屋は、かつては村長が住んでいたものなのだろう、その外観は他と比べてひと際大きく、幾星霜を経ても尚、その屋根や壁にはかつての権威を誇示するような頑強さが残されていた。
酒呑童子は股座の結合をそのままに、フブキの身体の向きをグルリと反転させると、掴まっていた自分の首を離れてダラリと垂れ下がった彼女の両手を、廃屋の重厚な土壁へと乱暴に突き伏せさせた。
壁に手を付いた状態で立たされ、四つん這いのような姿勢を強制させられたフブキ。そんな彼女の片足を強引に持ち上げると、酒呑童子はすぐさまがっつくように激しいピストンを再開。奥へ奥へと、既にこれ以上行き場のない内臓を無理やりにでも押し退けるように、再び何度も何度も、極太の剛茎を突き入れた。
「おほォオオオ!?!?♡♡♡ ン゛ン゛ッ♡ ごッ♡ オッ♡ しゅ、しゅごッ――……!♡ ちゅっ……ちゅぶれ、るッ……♡」
壁に押し付けられた顔が無様に歪む。
片足が浮いた為す術がないほどの不安定さが、フブキの自由を奪い束縛する。
しかしそれでも、フブキは間違いなく、かつてないほど幸せだった。
頬を密着させた壁の向こう側から微かに聞こえてくる、
既に数え切れぬほど意識が飛び、今この瞬間も辛うじてそれを繋ぎ留めている。
そんな中で、過去最大規模の絶頂の波が、もうすぐそこまで押し寄せてきていた。
酒呑童子に突かれるたびに、その時が刻一刻と近づいてくる。
疾うの昔にリミッターなど壊れている2人は、情欲の本能に駆られるままに、咆哮を吐き散らし合いながら、我を忘れて求め合う。
ひたすら熱く、熱すぎるほどに。
僅かな理性すらも全て捨てた、まさに野獣のように。ケダモノのように……。
「オ゛オ゛ッ♡ ぉあぐッ!♡ ォォくるぅ!♡ とどめぐるぅうう!♡ しゅごいのッ……いちばんしゅごいのぐりゅぅううう!♡ ヴッ♡ オッ♡ ア゛ァッ♡ ン、ごッ……ォオオオォォオオオッ!!♡」
酒呑童子の圧壊を齎せんばかりの重突連鎖は、制動を失い、加速の一途を辿り続ける。
怒涛の勢いで悦楽なる震撼が五体を貫通し、魂を蹂躙するほどに、その衝撃に呼応するようにフブキの容姿は、益々醜い怪異へと変貌を遂げていく。
まぐわいの最中で、ホルモンの異常分泌により少しずつ膨らみ、元々豊満だったサイズがさらに増していた乳房は、まるで張乳状態となったかのように、より一層巨大に――青い血管を浮き上がらせてパンパンに張り詰めていき、それに合わせて左右の乳首も、500円硬貨ほどの大きさにまで屹立して肥大化していった。
狐夏が見惚れた艶やかな黒髪も、狐夏が憧れた透き通るような白磁の肌も、最早フブキを構成する要素には存在していない。
代わりにジワジワと染色していく、腐り果てた
先に変わり果てていた瞳と同じ色へと全身が染まりきり、その肌に乱雑に浮かび上がり始めた、無数の黒い斑点模様が不気味なアクセントを添える。
宛ら人型の爬虫類のような姿と化したフブキ。
いや、“フブキ”という名前も、今となってはあまりにも不釣り合いなほど、彼女は穢れ、魔に堕ちきっていた。
鬼の誇りを奪われ、人の心を消され、存在そのものを怪物へと変えられた者に残されているのは、その異形に相応しき新たな名前を、その身に授けてもらうことだけだった。
「
「オ゛ぉンッ♡ オ゛ッ♡ ア゛ッ♡ ……な、なにィ? ――ア、ア゛ア゛ッッ♡」
「“フブキ”なんて名前ッ……オマエにはもう似合わねえからナッ! おでの妻になったオマエはッ……云わば今日から“姫”ダッ!
「オ、おしゃくッ……ひめ……?♡ ぁッ……あ゛あ゛ぁぁッ!!♡ わ、わだじのッ……なまえッ♡ う、うれじいィ♡ おしゃく、ひめぇ~♡ しょ、しょれがッ……しょれがわだじのなまえッぇぇ~♡」
酒呑童子から与えられたその名を、フブキは心底嬉しそうに、喘ぎ混じりに反芻する。
戦士の矜持も、愛する弟子の存在も、彼女にとっては、とっくに霧の彼方へと消えた過去の出来事。
今はただ、自分の下腹部を手加減なく貫く太ましい肉の柱と、自分を定義し直した新しい名前だけが、フブキを――否、汚酌姫を構成する世界の全てだった。
これ以上の言葉のやり取りは、最早2人にとっては無用の長物。
ここから先は、どちらも野生の本能を剥き出しにして、思う存分犯し犯され、狂奔に執心するばかり。誰にも邪魔されず、心のままに、欲望のままに、互いに腰を打ち付け合い、空気を裂くほどの痴声を荒げ、頂を目指して情熱を分かち合うのみだった。
そしてやがて――その時はついに訪れた。
「ぐッ……限界だ、おでッ! もう出すゾッ! 一滴残らず受け止めロッ!」
「ン゛がッ!♡ ガッ!♡ ア゛ア゛ッ!!♡ ア゛、あ゛あ゛あ゛ッ!!♡ あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!♡ ン゛、ン゛ン゛ァあああああああああッッ!!!♡♡」
その瞬間、ここに至るまでの間に蓄積され続けていた、“悦楽の凝縮体”とも言うべき目に見えぬ爆薬が、とうとう2人の中で大爆発を起こした。
「ウッッ!! おッ……おお、おォッッ――……!!」
「――ヒィギッッ!!?? イ、グ、ぅア゛ア゛ッァァアアアアッッ!!!!♡♡♡」
全身を跳ね上げるように悦びに打ち震えながら、同時に深く高らかに達する2人。
新婚夫婦の初夜を彷彿させる、比翼連理の如き共鳴が、異なる意識を
酒呑童子と汚酌姫にとって、それは宛らビッグバンにも等しい衝撃だった。
とくに、喉を掻き毟るような濁濁たる咆哮を吐き続ける汚酌姫の極致感は、あまりにも顕著に表れていた。
肢体の主導権が意識を離れ、その意識も、まるで眩い閃光で眩惑するかのように、真白き世界へと有無も言わさず消し飛んだ。
「あ゛、あ゛あ゛あ゛ッ……!♡♡ ア゛ッ、ガッ、ア……ああッ――……!♡♡♡」
完全に意識を手放す直前、汚酌姫が最後に感じ取ったのは、極上の多幸感と共に腹裏に雪崩れ込んできた、莫大な量の精液が齎す熱と圧だった。
張り裂けんばかりに膨張していた、酒呑童子の巨大な睾丸から肉の幹を駆け上り、その先端から一気に噴壊した白濁の圧倒的重量感が、忽ち子宮内膜を内側から押し拡げていく。
汚酌姫の緑色の腹部は、水風船のように見る見るうちに丸々と、破裂せんばかりの球状へと膨れ上がっていった。
酒呑童子が満足げに肉棒を引き抜いた途端、子宮に収まりきらなかった白い奔流が、堰を切ったように彼女の秘所からドバァッと溢れ出てくる。
しかしそれでも尚、妊婦のように緊満した腹が僅かでも萎むことはなかった。
そして実際、彼女の胎内では、人知を超えた驚異的な速度で着床を経た大量の受精卵の第一陣が、母体から貪欲に栄養を吸い上げ、蠢く命の塊へと変貌を遂げ始めていた。
「あ……ぅ……あ~……は、ぁあァ~……♡」
恍惚に満ちた微かな喘鳴を漏らしつつも、白目を剥いたまま失神した汚酌姫の身体は、酒呑童子の支えを失うと同時に、糸が切れた人形のようにその場に頽れた。
かつての美しいくびれを失い、丸々と異形にせり上がった腹の中では、早くも悍ましい生物としての形を獲得しつつある魔化魍の幼体たちが、着々と産声を上げる準備を進めるように、薄く引き伸ばされた腹壁をボコボコと波打たたせていた。
その様子を静かに見下ろす酒呑童子の眼差しだけは、妊娠した妻を慈しむ夫そのものだった。
情欲の嵐が過ぎ去った静寂の中、しかしその静けさを掻き消すように、腐朽した木骨がギシギシと激しく揺すれて軋む音が、間を置かずに聞こえてきた。
先刻まで汚酌姫が両手を付き、上半身を押し付けていた廃屋が、2人の行為に区切りがつくのを待っていたかのように、内側から圧壊を始めたのだ。
黒い瓦が敷き詰められていた屋根が爆ぜるように四散し、至る所に亀裂が走り出していた外壁が次々と剥落していく。
廃屋のすぐそばで横たわる汚酌姫が潰れてしまわないように、酒呑童子は崩れ落ちてきた瓦礫を片手で払い除けながら、徐に頭上を見上げる。
すると視線の先では、1匹の巨大な怪物が、沈みゆく残照の赤黒い光を背負いながら、その肥大した身躯を、瓦解した屋根の穴からヌルリと這り出してきた。
「気を付けロ、ノヅチ。オマエの新しい母親ダ、傷つけないように大事にしロ?」
酒呑童子に“ノヅチ”と呼ばれた、魁偉なナメクジを彷彿とさせる魔化魍は、粘液に塗れた節のない肉肌を、朱に染まった空の下で不気味な光沢を放ちながら、ゆっくりとその頭部を下ろし始めた。
眼球も鼻腔も見当たらない。天に向かって真っすぐと伸びた2本の触覚と、イソギンチャクの口盤のように、無数の触手に囲まれた円盤状の口だけが備わった顔を、検分宜しく汚酌姫の傍へと近づけた。
胎内で着々と成長を続ける幼体たちに、無尽蔵に栄養を吸い上げられていた汚酌姫の容態は、顔色を土色に変えるほどに徐々に衰弱しだしていた。
そんな彼女を、本能的に“護るべき存在”と認識したノヅチは、円盤状の口を縁取る無数の触手を伸ばし、ぐったりとした汚酌姫の身体を優しく、それでいて拒絶を許さぬ力強さで絡め取って持ち上げた。
花の蕾が開くように、窄まっていた肉の輪を反り返し、大きく広げた口へと汚酌姫を運ぶと、足先から胴体、頭に向かって緩慢に飲み込んでいった。
「うっかり食べちゃだめだからナ~。オマエの弟妹をいっぱい産んでくれる、大事な大事な家族なんだからナァ~」
酒呑童子が愉快そうに目を細める中、汚酌姫の姿は、あっという間にノヅチの体内へと消えた。
娩出が始まるまでの間、ノヅチはノヅチなりの労いの意味を込めて、自らの臓腑の底に保護した汚酌姫の肉体に、更なる快楽を刻むと同時に、自身の栄養を分け与えるのだった――。
〇
「くそッ……思いの外手こずったッ……! フブキさんッ……!」
苦戦の末、山林で妖姫を倒した狐夏が舞い戻ってきたのは、すっかり日が沈み、辺りが濃密な闇に塗り潰された後だった。
戦闘で体力をほとんど使いきり、首から下の変身を維持するのが精一杯の狐夏は、フブキが寄越した茜鷹の先導と、自分の手持ちの猿型ディスクアニマル――緑大猿の投光機能の灯りを頼りに、森閑とした樹間を息を切らしながら縫い進み、やっとの思いでフブキがいるはずの廃村へと帰還した。
しかし、ようやく視界が開けたかと思えば、直後に緑大猿の青白い光が映し出した光景に、狐夏は戸惑いを感じずにはいられなかった。
「誰も、いない……?」
辺りを見回せば、目に映るのは不穏なものばかり。
どれだけ視線を研ぎ澄ませようとも、フブキもいなければ、彼女が対峙していたはずの童子の姿すらも見当たらない。一見する限り、そこは完全なる無人の状況。
だが、この場で間違いなく何かが起きたことを示唆する痕跡だけは、そこら中に色濃く残されていた。
たとえば、光で照らすたびに至る所で妖しく煌めく、粘液の残滓。
或いは、最初に到着した時には確かに形を保っていたのに、今は無残に崩落してしまっている、かつての長の旧邸。
そして何より、廃村に戻ってきた直後から、どうにも鼻腔の奥を突いてくる、噎せ返りそうになるくらい甘ったるい酒精の臭気。
呼吸を繰り返すたびに、息苦しさは増していき、思考がぼんやりと鈍くなって、集中力が薄まっていくような気がする。
「一体何が……。フブキさん、どこへ行ったの……?」
不気味なほど静まり返った空間の冷たさに、背筋が凍りつくような不安を煽られ、狐夏の指先は無意識に震えていた。
するとそんな彼女の不意を突くように、突如として、四方八方から複数の威圧的な気配が、一斉に狐夏に向けて押し寄せてきた。
それを肌で感じ取り、警戒心を強めた時には既に遅く、気づいた時には、暗闇に浮かぶ数え切れぬほどの眼光に、狐夏は完全に包囲されてしまっていた。
廃村を取り囲む茂みの奥や、崩れた民家の物陰から、ズリュ、ズリュ――と、濡れた肉塊が這いずる生理的な音が、包囲網を狭めるようにゆっくりと近づいてくる。
狐夏は乱れ気味の呼吸を何とか整え、重々しい倦怠感に蝕まれ始めた身体に鞭を打ち、なけなしの力を振り絞って、正拳を突き出す構えを据える。
暗闇から這い出てきた10を超えるノヅチの幼体たちが、互いに示し合わせたように狐夏に飛び掛かっていったのも、まさに同時のことであった。
成体になれば触覚と入れ替わり自然と消滅する、玻璃のような無機質な眼球が、今は網膜に釘付けにせんばかりに狐夏の姿を捉えている。
「くッ……! こいつらどこからッ……!?」
野球ボールほどの大きさをした、軟体の輪郭を器用に撓らせ飛び跳ねながら、次々と体当たりを仕掛けてくる。
数と勢いに特化したノヅチの幼体たちの圧迫感を前に、狐夏は気圧されながらも拳を打ち、手刀を下ろし、蹴りを繰り出して、押し寄せる肉塊の波を撥ね退けようと必死に抗った。
しかし、1匹を叩き落せば、その隙を縫ってすぐに2匹3匹と新手が躍り出てくる。
どれだけ打撃を放ってもキリがなかった。
そして、そんな窮地の状況をほくそ笑むように、狐夏の背後――彼女の視界から幾分か離れた射程外の暗闇の中では、密かに身を隠していた巨影が、無数の触手に囲まれた円盤状の口を大きく開き、自身の体内で最初の出産を終えたばかりの、“母なる緑の肉梁”を吐出していた。
「遅かったじゃないカ、狐夏……」
刹那に狐夏の耳に届いたのは、何よりも待ち望んでいた声。
この世の誰よりも愛し、敬愛してやまない、紛うことなき師匠の声だった。
「……ッ! フブキさんッ!」
幼体たちの猛攻を必死に捌きつつも、その耳馴染みのある肉声に思わず相好を崩した狐夏は、歓喜の情に突き動かされるように、声のした方向へと顔を向ける。
茜鷹と共に彼女をフォローしていた、緑大猿の機械の双眸が放つ灯りが、暗闇の奥から這い出てきた“それ”を青白く照らし、その姿を確かに捉えた。
だがその瞬間、狐夏の表情は一転して凍り付く。
「え……あ……フブキ、さん……?」
そこにいたのは、かつての清廉な師匠の姿などではなかった。
今そこにいるのは、かつての師匠の成れの果て。
異様に伸びた赤い舌をダラリと垂らし、頭髪や一糸纏わぬ全身の肌を、胆汁の如き不快な緑色と無数の黒い斑点模様で染めた、悍ましく醜い異形の
「狐夏……こなつぅ……? あ~……こなつだっけぇ~オマエぇ~?」
嘘だ……。
震える喉でそう呟こうとした時、しかし、絶望に立ち尽くした狐夏の隙を見逃すまいと、一斉に群がったノヅチの幼体たちが、彼女の身体を無慈悲に地面へと引き倒してしまう。
気づけば攻撃の手が止まっていた。
頭の中が思考を拒んでいた。
悲鳴を上げる間もなく、為す術もなく、呆気なく突っ伏した狐夏の意識の片隅では、どこからともなく伸びてきた両手にグシャリと握り潰され、粉々に破壊された茜鷹と緑大猿の無惨な粉砕音が、唯一の希望を断ち切るように響き渡っていた。
緑大猿の灯が消失し、廃村一帯の漆黒が深淵を深める。
それでも構わず、かつてフブキだった怪人は嘲笑する。
「キヒッ! 乱暴なことして虐めないでヨ? その子たちは、わたしが産んだばかりの可愛い子供たちなんだからサぁ~!」
「こども、たち……? こいつらが……フブキさんの子供……!? 何言って――……冗談はやめてくださいッ! なんでこんな怪物がフブキさんの……。っていうか……フブキさんのその姿……なんですかそれ……!? 一体何があったんですかッ!?」
喉を掻き切るような狐夏の絶叫が、廃村の暗闇に虚しく響き渡る。
自由を奪われ、地面に圧しつけられたままの彼女の身体は、その上を這う幼体たちの湿った身躯に見る見る覆い尽くされていった。
「何って……ヒヒッ……そんなの簡単なことに決まってるでショぉ~。バケモノとの生ハメ交尾が気持ちよすぎてぇ~、雄のチンポが好きすぎてぇ~、わたし自身もバケモノになっちゃっただけじゃなイぃ~♡」
その言葉の一字一句を、狐夏は何1つ理解できなかった。
「は……? 今、なん、て……?」
自分の知る普段のフブキなら、絶対に口にしないような軽薄な口調。そして、卑俗極まる言辞の数々。
それらを平然と、あろうことか恍惚とした悦びに頬を染めながら吐き出すその姿に、狐夏は自身の心の支えとも言える師への憧憬が、ドロドロとした汚泥に容赦なく塗り潰され、徹底的に穢されていく感覚を実感していた。
「イ、イヒヒ……。オマエは知らないだロぉ~? 雄に媚びる心地良サ。腹に子を宿し、命を育む充実感。そして何より、心も体もぶっ壊れるほどの気持ちよサ……。ヒヒッ……ああぁ~……もう次の出産が待ちきれなぁ~イぃ♡ 全部産んでお腹空っぽになっちゃったからぁ、早く次の精子を注いでもらわなきゃァ~♡ 子宮が疼いておかしくなりソぉ~♡」
既に分娩を終え、すっかり元のサイズに萎まっている腹部を愛おしそうに、或いは次の受精を待ち侘びるように撫でながら、かつてフブキだった怪人は、ブルブルと悦震に身を委ねる。
彼女は嬉々として、自らを「汚酌姫」と名乗った。
返す言葉が見つからないほど、愕然とするばかりの狐夏の姿を愉悦の眼差しで見下ろす汚酌姫の周りには、いつの間にか、巨大なナメクジのような魔化魍と、地面に滴るほどの粘液に全身を覆われた、醜悪な怪人体の童子が佇んでいた。
その濡れた両手の中には、砕け散った茜鷹と緑大猿の残骸が、無慈悲に握り締められていた。
汚酌姫となったフブキは、奴らのことを総じて“家族”と呼んだ。
ナメクジ型の巨大魔化魍のことを、幼体たちと同じく我が子と呼び、
醜き童子のことを、情愛を向けるべき旦那様と呼び慕った。
その惨状を、狐夏は正視に堪えなかった。
「酒呑童子……。それとあの魔化魍はたしか……ノヅチ……。そうか……お前らが……フブキさんを……」
冷たい泥濘に密着した下顎をガタガタと震わせながらも、相手の情報を記憶から手繰り寄せた狐夏は、酒呑童子とノヅチに向けて憎悪の赴くままに声を絞り出す。
あなたはフブキさん。
あなたは人々の命を護る鬼の1人で、魔化魍は倒すべき敵。
あなたの傍にいる化け物たちは、間違っても家族などではない。
だから戦って。
自分を取り戻して、そいつらと戦って。
狐夏は懸命に、必死に叫び、師匠の心に訴えかけた。
しかしその祈りは、汚酌姫となった女の歪みきった慈愛を逆撫でするだけだった。
「ギヒッ! ヒ、ヒヒヒッ! 戦ウ? 戦うって誰トぉ? フヒッ! 戦いなんて無駄ァ~! 争いなんて馬鹿がする愚かな行為でショぉ~!」
汚酌姫は宙に浮いた長い舌先をチロチロと遊ばせながら、まるで聞き分けのない稚児の世迷言でも聞いたかのように鼻でせせら笑う。
「フブキさん……」
「魔化魍も鬼も人間も、みんな隔たりなく仲良くすればいいのニぃ! そ~すれば世界は平和になるのにネぇ~!」
「平和って……何いきなり……。魔化魍と仲良く……?」
「そう、平ぇ和! 憎しみ合って殺し合うなんて不毛なだケ! 鬼だろうと人間だろうと、みんな仲良くわたしたちとの交尾に没頭して溶け合えばいイぃ~! みんな1つの大きな“家族”になっちゃえば、もう誰も傷つかなイッ! ほら、オマエにじゃれている可愛い我が子たちを見なさイ? それが何よりの証拠ォ。魔化魍も鬼も人間も、
汚酌姫は自身の身体をうっとりと抱き締め、熱を帯びた視線を狐夏へと落とす。
「魔化魍でいっぱい……? そんなのが平和なんて……あり得るわけないッ……」
彼女が謳う、あまりにも大きい価値観の乖離に、狐夏は後頭部を鈍器で殴られたかのように激しい目眩を覚えた。
グニャリと歪んだ視界の中心に立つ汚酌姫の姿から、愛しき師匠の面影が加速度的に遠のいていく。
地を這う視線の先で、汚酌姫の手足と首回りの斑点模様の1つ1つが、純白の料紙に滲んだ黒染みのようにジワジワと領域が広がっていき、やがて、弥が上にも生理的嫌悪を掻き立てる拘束具の如き文様となり、彼女の四肢と細い首筋を禍々しい漆黒の色調で塗り潰していった。
より邪悪なる存在としての純度を増した汚酌姫は、口元の下卑た冷笑を色濃くし、狐夏に躊躇なく残酷な一言を突きつける。
「ハハッ! 驚く必要なんてないでショぉ? だってオマエも――今からその平和に“貢献”するんだからサぁ~!!」
その瞬間、大きく開口した汚酌姫の喉奥から込み上げてきた透明な液体が、勢いよく放出されるや否や、地面に突っ伏したままの狐夏の顔に浴びせ、まるで水責めの拷問のように余すところなく濡らし尽くしていった。
それは酒呑童子が放っていたものと同じ――相手の脳を灼き、正気を奪うほど濃密なる淫靡の熱を孕んだ、魔の酒液だった。
鼻腔から脳へとダイレクトに突き抜けるアルコールの暴力に、耐えることのできない狐夏は激しく噎せ返る。
「がはッ……! が、は、あぁああああッ!!」
堪らず悲鳴を上げようとするが、かえって口内に入り込んだ大量の酒液を呑み込んでしまい、途端に身体中が燃えるような熱さと、視界が溶解するような猛烈な浮遊感に襲われてしまう。
気力と精神力の糸はあっという間に切断され、辛うじて保っていた肢体の鬼化までもが、とうとう途絶えてしまった。
内臓から火が出るような感覚に悶え、地面を掻き毟るが、指先にもほとんど力が入らない。
それどころか、酒精が回るにつれて、女性的な柔躯に戻った素肌の上を這いまわる、ノヅチの幼体たちの粘液の冷たささえもが、陶酔を誘う“快楽”へと変質し始めていた。
狐夏の抵抗力の減退を悟ったのか、ノヅチの幼体たちは、あろうことか無防備となった狐夏の肉体の内部へと侵入を開始した。
「ンごッ!? ゴブッ、んぐ、ン゛、おぼッ、オオ、オ゛ォ、オ、オオオ!!?」
10を超える生きた肉塊が、狐夏の口、或いは膣穴や肛門にその身を捻じ込んで、間断なく体内へと入り込んでいく。
「あらあラ。この子たちったらぁ、よっぽどオマエの身体が気に入ったみたイぃ。ヒヒッ……。ねエ? わたしのこと慕ってくれるならぁ~、わたしの可愛い子供たちのじゃれ合いにだって、勿論付き合ってくれるわよネぇ~?」
喉を塞がれる息苦しさ。
脳髄へと異物がせり上がってくる不快感。
臓腑を掻き回され、蹂躙される恐怖と未知なる快楽。
それらの刺激全てに一斉に襲われ、狐夏は悲鳴と嬌声が混濁した絶叫と共に、ジタバタとのたうち回る。
寄生され、融合し、徐々にその形を変えていくかつての愛弟子の凄惨な姿。
次の行為を待ちきれぬ酒呑童子に、背後から乳房を揉みしだかれていた汚酌姫は、熱い吐息を吐きつつ、その姿を楽しげに眺めていた。
淫らに蕩けきった邪悪なる笑み。
卑俗に塗れた軽薄なる笑み。
ああ……――。
必死に保っていた意識に、別の意識が染み込んでくる。
幼体たちの幾つもの原始的な意識が、狐夏の意識と混ざり合っていく。
自我が薄れていく中、視界が掠れていく中、独り善がりな魔物となったフブキの歪んだ貌を見つめながら、狐夏は諦めるようにようやく全てを理解した。
ああ……そうか……。
フブキさんは……。
私の知っているふぶきさんは……。
もうどこにもイないんダ……。
デも……。
そレでモ……。
ソレデモずっと……。
コレカラモズット、愛して、ル……。
ア、アア、アイシテ、アイ、シ、テ、ルカ……ネ……。
ママ……♡
【完】
※その後の補完
テンポの都合で丸々カットした結末をちょっとだけ。
端的に開示すると、今話の事の発端となった洋館の男の実験は失敗で終了。
高い理性と知性、そして美しい姿を保った傀儡を求めていた彼にとって、繁殖行為にしか執着しなくなった汚酌姫は、理想とかけ離れた欠陥品に過ぎなかった。
従来の童子と姫にはなかった、目を見張る繁殖力のみを観察記録としてデータを取り、その後、後始末を猛士の鬼たちに期待して、自身は現状を放置して撤収する。
一方、フブキ――汚酌姫は、酒呑童子やノヅチ、そして幼体たちに寄生され、肉体を乗っ取られた狐夏との生殖に明け暮れ、ただひたすら妊娠と出産を繰り返す。
三日足らずで夥しい数のノヅチがその土地に溢れ返ることになるが、それから時を置かずに、知らせを受けた総本部――吉野から、響鬼以上の火炎の力を持つ“紅蓮の鬼”が現場に派遣される。
彼女に山ごと焼き払われた汚酌姫と狐夏は、酒呑童子と無数のノヅチ諸共、その生涯を終えたのだった……。