響鬼外伝の外伝!? かめんらいだぁふぶき ―僕っ娘師匠の裏の顔― 作:裕ーKI
1日目 少年と乳遊戯
「はぁああああ!!?? フブキさんが家庭教師いぃぃ!!??」
小宮香 狐夏の魂消るような叫び声が、木陰で休んでいた鳥たちを一斉に舞い上がらせた。山の木々がうるさく騒めく中、勢いよく立ち上がったことで、狐夏が腰かけていたアウトドアチェアが後ろ向きにコテンと倒れた。
「ちょっと狐夏、声が大きいよ。そんな大声出すと、この山に潜んでいる魔化魍にまで聞こえるよ?」
肩を並べて、もう1つのアウトドアチェアに座る師匠のフブキが、一笑しながら冗談混じりに宥める。しかし、感情昂る狐夏の文句は止まらない。
「構いませんよそんなの! それならそれで、向こうから来てくれれば手っ取り早いじゃないですか! 寧ろその方が早く片付いて助かりますよ! じゃなくて、今の話! そっちの方が重要なんですよ! なんですか、家庭教師って!」
頬を真っ赤に染めながら、しかめっ面で愛弟子は叫ぶ。
きっかけはフブキのさり気ない一言だった。
いつもと同じように、魔化魍退治のためにとある山奥へとやってきたフブキと狐夏は、普段通りの慣れた手つきでキャンプを張り、標的を探索するための準備に取り掛かった。
地図の情報を読み込んだディスクアニマルの群れを山に放ち、作業に一段落つけたフブキと狐夏は、ディスクの知らせが来るまで休憩を挟むことにした。
お揃いのマグカップに入れた熱いコーヒーを啜りながら、フブキは他愛のない会話のつもりでさり気なくその話を口にした。
「実は支部長に頼まれてね。今度の連休に、知り合いの息子さんに勉強を教えるようにって。まあ、1週間程度の家庭教師ってことなんだけど」
フブキが聞いた話によると、支部長の知り合いとは、猛士や鬼の存在のことも認知している昔馴染みの男性だという。彼は数年前に離婚を経験したバツイチであり、現在は小学3年生の1人息子と父子家庭で暮らしている。
仕事が忙しく、なかなか息子の勉学の面倒を見てあげられないという悩みを、ある日の酒の席で男が支部長に相談したところ、
「うちの部下には大学の講師もしている頭の良い奴がいる」
そう言ってでかい顔をした支部長が、ご丁寧に東北支部の集合写真を見せながら、うってつけの人材だとメンバーの1人を紹介した。それがフブキだった。
後日、支部長の口から事情の説明と依頼を受けたフブキは、断る理由もないと判断し、二つ返事で快諾してしまった。
しかし、相談もなく勝手に決められたことに、弟子の狐夏は当然納得できるはずもなく、こうして異論を唱えている訳だ。
「いくら支部長の頼みでも、別にフブキさんじゃなくてもいいじゃないですかぁ! その息子とやらが、大学を目指す受験生とかなら話は別ですけど、だけど相手は小学生なんでしょ! なら他の人でも十分! フブキさんの出る幕じゃないですよ! なんならトキさんとか……最悪ノブキにでも任せとけばいいんですよ!」
そう言って、仲間の鬼の名前を適当に候補に挙げるが、結局のところ、狐夏が我慢できないのは、最愛の師匠が一時でも他の誰かに取られてしまうことに対する不満と妬心。
それが例え、相手が小学生だろうと、たかが1週間という僅かな期間だろうと、彼女は修羅を燃やさずにはいられなかった。
思いの外本気で息巻く弟子の姿に、さすがに後ろめたさを感じたフブキは、深い溜息をついてから口を開いた。
「わかったよ、狐夏。確かに僕がいけなかった。どんな依頼であれ、弟子の君には真っ先に言うべきだったよね。ごめん。……ただ、既に引き受けた手前、今更断ることもできないから、この件だけは最後までやらせてほしいんだ。やっぱり、責任を放棄する訳にはいかないから」
「…………」
「その代わり、こういう頼みごとを引き受けるのは、今後はできるだけ控えるようにするよ。もし、どうしてもっていう時は、必ず狐夏の了承を得てから決めるようにするから、ね? だから……」
「…………もぉー! わかりましたっ! 今回だけですからね! その代わり今度からちゃんと守ってくださいね、今言った約束!」
「勿論。必ず守るから。……それに、この件で損失した分の時間も、きっとどこかで埋め合わせするよ」
「本当ですかぁ? 約束ですよ?」
「うん、約束!」
フブキの懸命な謝罪と懇願に、最初は唇を尖らせていた狐夏だったが、師匠の誠心誠意を込めた態度を前にしては、それ以上の反論もできず、今回の家庭教師の件に関してだけは、不本意ながら許可することにした。
しかし後日、狐夏は後悔することになる。
この時、もっと強引に、無理やりにでもフブキを引き止めればよかったと。
・・・
数日後の日曜日、フブキは支部長に教えてもらった一軒家に足を運んだ。
インターホンを鳴らすと玄関の扉が開き、中から1組の親子が姿を現した。
親の方は40代前半の背広を着た中年男性。
恐らくこの人物が支部長の知り合いであり、今回の依頼主なのだろう。
そんな男の足にしがみ付き、照れた様子で顔を隠している男の子が、この中年男性の一人息子という訳だ。
「はじめまして。僕……あ、いや……私、息子様のお勉強のお手伝いのために伺いました、フブキと申します。今日から一週間、よろしくお願いします」
事前の情報通り、相手は鬼や猛士の存在を認知している人物。それ故、フブキは本名ではなく、鬼としてのコードネームで自己紹介を告げた。
そんな彼女に、この家の主である中年男性――旦那様は紳士的な態度で笑顔を浮かべる。
「どうも。こちらこそはじめまして、フブキさん。話は君の上司から聞いていますよ。ここにいる間も変に畏まらないで、普段通り、いつも通りの態度で過ごしてください」
「あ、はい。ありがとうございます、旦那様」
「それにしても、事前に写真で拝見させてもらってたんですが、実際に見ると本当に美しいですねぇ。まるでモデルさんだ」
同性である女性でさえも虜にするフブキの凛とした外見と雰囲気に、すっかり見惚れた様子で旦那様は正直に感想を述べる。
フブキは頬を赤らめながら、咄嗟に訂正した。
「いえ、そんなことありませんから! お恥ずかしいのでやめてください!」
「そんな謙遜しなくても。……ほら、お前もそう思うだろ?」
旦那様は足元に密着したままでいる息子の頭に、ポンと手を乗せながら声をかけた。
それに合わせてフブキも視線を下げ、生徒である幼き少年の姿を改めて見据えた。
すると、どうやら父親に話を振られる前から、少年は既にフブキの容姿に釘付けになっていたようで、その可愛らしい瞳と目が合った。
フブキは長い脚を折り曲げて屈むと、少年に目線の高さを合わせてニコッと微笑んだ。
「こんにちは。今日から暫く、僕が君のお勉強を見るからね。わからないことがあったら、なんでも訊いてね?」
聴き心地の良い優しい声で話しかけられると、少年は不思議そうな顔で首を傾げた。
「“ぼく”? おねえちゃんって……おとこなの?」
その中性的な外見も相まってか、フブキの一人称に疑問を感じたのだろう。
「え? あ……ううん、違うよ。こう見えて、ちゃんと女の子だよ」
フブキは一層笑顔を深めながら温和に答えた。
すると。
「じゃあ……おっぱいあるの?」
「え゛!?」
その瞬間、少年の小さな口から飛び出したのは、限りなく無邪気でありながらも突拍子もない発言。刹那に場の空気がピシッと凍りつくのを、2人の大人だけは肌でしっかりと感じ取っていた。
「お、おいおい……、いきなり何を言いだすかな、こいつは……。ハハッ……。すいませんね、ホントにまったく……」
一瞬の沈黙を慌てて打ち消すように、旦那様は笑って誤魔化す。
が、しかし。
「え~! きいてみなさいっていったの、パパじゃん!」
少年のその一言で、消え去ったはずの沈黙はすぐにまたやって来る。
「だ、旦那様……」
冷汗まみれの依頼主の顔を見据えながら、フブキは表情を強張らせた。
「さ、さてと……、それじゃあ私は……会社に戻ろうかな……。後は……ま、任せたよ、フブキさん……。今日は夕方には戻るから……、それまで息子を……よろしくね……」
浮足立った旦那様は、お茶を濁しながら逃げるように玄関を後にする。
残されたフブキは、ひたすら苦笑いを浮かべながら、その後姿を見送ることしかできなかった。
「なんか……先行きが不安になってきた……」
まだ何もしていないのに、無性に心細くなってくる。
脳裏に浮かぶ狐夏の笑顔に恋しさを感じながらも、フブキは気持ちを切り替えるように軽く深呼吸をする。そして、傍で佇む少年に視線を戻し、気を取り直して相好を崩す。
「それじゃあ、さっそく始めようか」
・・・
一軒家の2階にある少年の部屋に籠ってから2時間ほどが経過した。
肩を並べて座った方が教えやすいと思い、少年が普段使っている学習机ではなく、部屋の中央にあるローテーブルに勉強道具を広げて、フブキは少年にマンツーマン指導を続けていた。
小学3年生に勉学を教えること自体は、やはりごく一般的な教養を身につけた大人にならそれほど難しいことではなく、大学講師の職務にも就いているフブキにとっても、当然ながら造作もないことだった。
これならば狐夏が言っていた通り、無理に自分が出張る必要もなかったかもしれないと、少年が走らせるペンの動きを目で追いながらフブキは思った。
期間中の勉強の段取りは、フブキが自分なりに計画を立てていた。
初日である今日は、言うなれば少年の学力測定。
フブキの観察の元で、少年には学校から課せられた宿題に取り組んでもらっている。
一見すると、少年の小さな手が握るシャープペンシルは真摯にプリント用紙の問題に向き合っているように思えた。しかし、勉学指導には慣れているフブキにはわかっていた。少年の集中力が明らかに勉強の方に向いていないことを。少年の意識が、別のものに傾きかけていることを。
少年のつぶらな視線は、机上のプリント用紙ともう1つ――フブキの身体のとある一点の間を、しばしば転がるように行き来していた。
問題を読むふりをしては、フブキのそこを見たり。
かと思えば、フブキに悟られる前に咄嗟に目線を戻したり。
チラチラキョロキョロと、落ち着きもなく行ったり来たり。
鬼として人並みよりも優れた五感を持ち合わせるフブキには、少年が放つ意識の向きは手に取るように捉えることができていた。いや、少年の幼さ故の大雑把な誤魔化し方では、例えフブキじゃない普通の一般人でもすぐに認識できていただろう。
さらに言えば、少年がフブキの身体のどこをチラ見しているのか。それすらもフブキ本人にはバレバレだった。
――まだ、そういうことに興味を持つのは早いんじゃないかな。
少年の集中力を欠いた視線を肌で感じながら、フブキは心の中で呟いた。
さっきから彼の幼気な目を虜にしているもの。それは、フブキの身体の中で最も際立っている胸部。すなわち、たわわに実ったはち切れんばかりの2つの乳房である。
シャツの下で窮屈そうに隠れているフブキの胸が、少年は気になって仕方がないらしい。
まだまだ未発達である小学生の男の子にも、やはり下心というものは芽生えるものなのか。
そう疑問に思いながらも、フブキは自身の対応力について考えた。
これまで彼女が教えてきた相手は、大学講師としても鬼の師匠としても成熟した大人がほとんどだった。
今回のように幼い子供を相手にした指導は寧ろ珍しいケースであり、同様に、子供に対する接し方についても、実はそれほど経験が豊富という訳ではなかった。
勉学指導だけならなんの不都合も無いが、稚拙な少年に合わせたコミュニケーション込みとなると、少しばかり心許ない。そんな不慣れさを密かに痛感しつつも、とりあえず今は、少年の意識を勉強に集中させることが先決だと思い、フブキは口を開いた。
「少年くん、何か気になることがあったら、遠慮なく言ってくれていいんだよ」
フブキとしては、できるだけ遠回しに、少年の気持ちを刺激しないように心掛けたつもりだった。『わからないところがあったら、どんどん質問してね』的なニュアンスで、プリント用紙の問題に意識を向けてもらいたくて言ったつもりだった。
しかし、その言葉をそのままの意味で真に受けた少年の返答は。
「きになること? んとね、おねえちゃん、おっぱいあるの?」
返ってきたのは、玄関で場の空気を凍てつかせたあの言葉と同じものだった。
「ふくのなかにあるおっきいの、それおっぱいでしょ?」
「えっと……、なんでそんなこと訊くのかな……?」
途端に困惑の表情を浮かべるフブキ。
彼女の思惑とは裏腹に、少年の意識は明後日の方向へ飛び去ってしまったようだ。
「だってきになるからぁ。やっぱりおねえちゃん、おとこみたいだし。だけどおんなのこにもみえるから、ほんとうはどっちなのかなって」
「そう……なんだ……。でも、最初に言ったけど、僕はこう見えて女の子だよ」
「じゃあ、やっぱりそれ、おっぱい? おっぱいあるんでしょ?」
どうやら、なにがなんでも乳房の有無を確認しないと納得しないらしい。
その胸に対する執念は何なんだと、フブキは戸惑いながらもやむを得ず答えることにした。答えない限り、場の流れが勉強に戻ることはないと思ったからだ。
「うん、まあ……あるよ。ほらね……」
そう言いながら、フブキはわざわざ両手で持ち上げて胸を強調して見せた。これだけはっきりアピールすれば、さすがに気が済んでくれるだろうと、淡い期待を込めて。
しかし案の定というべきか、やはりこれで終わりとはいかなかった。
「わぁ、ほんとだぁ! おねえちゃんのおっぱいもおっきいねぇ!」
「まあ、ね……。でも君みたいな小さな子が、こういうことに興味を持つのはまだ早いからさ。この話はこれで終わりにして、勉強を続けよ?」
「ねえ! もっとちゃんとみせてぇ!」
「は!?」
「ふくのなかもみたい!」
フブキの説得を完全に無視――いや、そもそも耳に届いているのか、いないのか。それすらも不明だが、とにかく少年はお構いなしに要求を続ける。小学生にしては、あまりにも過激で不相応な要求。その言葉の意味さえも理解しているのか、いないのか。
「ナァ!? ナ……な……何を言っているんだ、君はぁ!?」
そのあまりにもストレートな内容に戸惑いを隠せないフブキは、自分でも恥ずかしいと思うくらいに上ずった声を発した。
「おねがい、ちょっとだけ! おねえちゃんのおっぱい、みてみたいのぉ!」
「ま、待って! ちょっと落ち着いて、少年くん! 君は自分が何を言っているのかわかってるの!? 駄目だぞ、そんなことを考えては! 小学生の君には早すぎる!」
「えぇ~! なんでぇ~! ぼくがちいさいとき、ママはみせてくれたよぉ! おねえちゃんのおっぱいをみたら、ママのこともおもいだせるとおもったのにぃ~」
「ママって……少年くんのお母さん?」
「うん、そうだよぉ」
――そういえば、離婚して今は父親と2人暮らし。母親はいないんだっけ。
事前に支部長から知らされていた情報を改めて思い出しながら、フブキは言葉を続ける。
「えっと……。少年くんはママのことが好きなんだよね……」
「うん、だいすきだよ! でも……ぼくがいちねんせいのときに、いつのまにかいなくなっちゃったんだぁ。パパは、『ママはとおいところでおしごとしてるんだよ』っていってたけど」
「そっか……。そうなんだ……」
複雑な家庭によくある悲懐な話かと、フブキは少しだけしんみりした気持ちになった。
「まえはさ、よくママのことをおもいだしてたんだぁ。しゃしんをみながら、においとかやわらかさとか……。でもさいきん、あんまりおもいだせなくなっちゃって。だから……」
「だから……胸を?」
「うん。ママのおっぱいも、おねえちゃんのおっぱいみたいにすごくおおきかったから。いっしょにおふろにはいったときに、ママのおっぱいでギュッてしてもらうのが、ぼく、すきだったから……」
「そう……なんだ……」
子供を取り巻く辛い家庭環境に対する同情と、一見すると卑猥にも聞こえる要求に対する戸惑いが交差して、フブキは何とも言えない表情を浮かべる。
早い話が、この少年は母親の愛情に飢えているのだ。いなくなった母親の温もりを思い出すために、母親の胸の代替えとしてフブキの胸を欲しているのだ。それ程までに、少年にとって女性の乳房というのは、紛うことなき愛情の象徴なのだろう。
しかし、それはそれとして、だ。
だからといって、やはり今日会ったばかりの少年に、自分の胸部を大っぴらに見せるというのは、いくら鬼の活動で一糸纏わぬ姿になる機会があるフブキでも、抵抗を感じずにはいられなかった。
そもそも、子供といっても相手は男。しかも年端もいかない者にそんなことをすれば、今後の教育に悪影響が出る可能性だってきっとある。
やはり一時とはいえ、人様のご子息の指導を預かる身として、要求を呑む訳にはいかない。少年には悪いがと、フブキは拒絶の意を伝えようと口を開きかけた。
ところが。
「ねえ! おねがい、おねえちゃん! すこしだけ……」
少年の愛くるしくも儚げな瞳や仕草が、フブキの心をキュンと締め付け、その口を噤ませた。
――う……。か、可愛い……。
まさか自分にはショタコンの気質まであるんじゃないだろうか。
少年のあどけない姿に不覚にもときめいてしまい、フブキは自分の感性に疑念を抱いた。
――レズに加えてショタコンとか、さすがに普通じゃない……よね。
しかしフブキは自分でも知らない。自身の内に秘められた本性がそれだけではないことを。その無意識の奥底には、それらに加えて、狂気的な酒乱と淫乱も潜んでいることを。
「え、え~……。どうしよう、困ったな……」
少年の押しに圧倒されて思案顔を浮かべるフブキは、考えた末に持参したショルダーバッグから携帯電話を取り出した。
「少年くん、少しだけ待っていてもらっていいかな。すぐ戻るから」
そう言って足早に部屋を出ていくと、廊下の壁に凭れながら、最も信頼している愛弟子に電話を掛け始める。
――了承を得てから決めるって、約束したばかりだしね。
・・・
「あ、もしもし、狐夏? 今ちょっといいかな?」
通話が繋がった瞬間、フブキは縋る思いで電話の相手に声をかけた。
『どうしたんですか、フブキさん。確か今日は、例の家庭教師の日なんじゃ……』
携帯電話から聞こえてくる愛弟子の声に少しだけ安堵を感じながら、フブキは重い口を開いて用件を伝える。
「うん、そう。まさに真っ最中だよ。実はそのことで、狐夏に相談に乗ってもらいたくてね」
『相談? 私に? 珍しいですね。フブキさんなら、何でも即断できそうなものなのに』
「なかなか普段とは勝手が違ってね……。想定外の展開で困ってるんだよ。だから、どうすればいいのか狐夏の意見も聴きたくて」
『良いですよ、私の頭で理解できる範囲でしたら。っていうか、フブキさんに頼られるのって、いつもと逆な感じがしてなんか嬉しいですね』
「そうかい? まあ、その話は後で。……それで相談なんだけどさ。実は、生徒の息子さんが……、なんていうか……思った以上に……というより、見た目以上に大人っぽいというか……、大人びたことを言ってくる子なんだけど、どこまで要望に応えてあげればいいものか、わからなくなってね……」
さすがに少年の要求をそのまま狐夏に伝える訳にはいかないと思い、フブキは言葉を濁しながら説明する。
もし、そのままの言葉で伝えようものなら、十中八九、狐夏は怒りの形相ですぐさまこの家に乗り込んでくるだろう。最悪、鬼の力を使ってでも少年の命を奪いかねない。自分たちの恋路の障害になりかねない相手には、彼女は割と本気でそういうことをする。そういう危険性を孕んでいる。だからそうならないためにも、説明には細心の注意を払う必要があるのだが。
『ん―……。なんか、フブキさんにしては歯切れの悪い説明ですね。らしくないっていうか……。大丈夫ですか? もしかして、相当テンパってます?』
不自然な言動が却って不審を招きそうで、それはそれで神経を浪費してしまう。
しかし、確かにテンパっているのは事実だった。
「うん、わかる? 実はかなり戸惑ってる」
『はは。やっぱり珍しいですね。そういう余裕のないフブキさんの顔も、ぜひ見てみたいところですけど。……ああ、ごめんなさい。それで相談でしたね。ん――……、正直、状況はよくわかりませんけど、相手が望んでいることがあって、それがフブキさんに叶えられるなら、全然応えてあげても良いと思いますけどね』
「そう、思う? 言ってくること全部、聞いてあげた方が良いのかな」
『いや。逆にフブキさん自身に少しでも抵抗があるなら、無理に叶える必要もないんじゃないですかね』
「えっと……、それって結局どっち?」
『まあ、要はフブキさん次第ってこと』
「僕次第? 僕の判断、僕の基準か……。って、それだけ!?」
結局、具体的な助言らしい助言はもらえなかった。
狐夏の返答とは、とどのつまりは“自分の決断力を信じて正しいと思うことをすればいい”ということ。しかも――。
「大丈夫! フブキさんが決めたことに間違いなんてありませんから!」
という、絶対的信頼に満ちた言葉のおまけつきで。
フブキにしてみれば、そんなのは当然普段から心得ていることであり、言わずもがなだが、しかしそれでも、最愛の存在である狐夏の口から改めて言ってもらえると、苦悩に沈んでいた気持ちが幾分か吹っ切れて、なんだか心が軽くなってくる。目の前の問題は依然そのままだが、精神的落ち着きを取り戻せただけでも電話をした価値は十分だと思った。
「ありがとう、狐夏。アドバイスはともかく、君の声が聴けただけで気持ちが楽になったよ」
『ともかくって、なんですかそれ! 結局私、役に立てたんですか? 立てなかったんですか?』
「ん――……、6割ぐらいは役に立ったよ」
『うわぁ微妙……。まあいいですけどね。とにかく、家庭教師の仕事頑張ってください。フブキさんの家で夕食作って待ってますから。早く帰ってきてくださいね』
「うん、そうする。終わり次第すぐ帰るから。じゃあ、後でね」
通話を切り、携帯電話を閉じたフブキは、意を決して少年の待つ部屋のドアノブに手を掛ける。
その表情は、まるで魔化魍が潜む巣窟へ足を踏み入れる時のように、緊張した面持ちをしていた。
・・・
部屋の中に戻ったフブキは、壁際に設置されている少年のベッドの上に腰を下ろした。
赤らんだ顔で恥ずかし気に眉を顰めながら、身に纏っていたシャツの裾を両手で握りしめる。
「こ、これで……いいかい……?」
震える声で言いながら、ゆっくりとたくし上げ、裾を首元まで運んだ瞬間、黒色のブラジャーからはみ出さんばかりに盛り上がった巨大な双丘が姿を現した。
「見るだけ! ほんの少し、見るだけだからね! その後はちゃんと勉強の続きするんだよ?」
フブキは少しだけ語気を強めて少年に念を押す。
しかし、たっぷりと迫力のある大人の乳房を前に、年相応らしく(?)キラキラと目を輝かせている少年は聞く耳を持たない。
まるでテレビの中のヒーローに憧れる、実に子供らしい表情だが、明らかに関心を向ける対象を間違えているだろうと、フブキは心の中で訴えた。
――ヒーローではなく女性の胸に憧れるなんて、一体どんな教育を受ければこんな子供になるんだ。
フブキがここまでするのも、「母親のことを思いだしたい」と、寂し気に言った少年の言葉に純粋な気持ちを感じたからこそだ。でなければ、こんなにも恥ずかしいことに耐えられるはずがない。こんな非常識な状況はさっさと終わらせて、早急に場の空気を元の勉学の流れに戻さなくてはいけない。そう思ってこその行動だった。
しかし。
「わあ! ママよりおっきい! ねえ、これもとってよ!」
羞恥に堪えるのにいっぱいいっぱいのフブキの心境など知る由もなく、少年は更なる要望を突きつける。それは、双丘を包み込む黒いブラジャーの除去を望む言葉だった。
下着込みの外見よりも、中身にしか興味はないと言わんばかりの非望。
――噓でしょ!?
調子付いた少年の追加注文に、フブキは内心絶句した。
今し方感じたばかりの少年の純粋さに対し、早くも猜疑心が湧いてくる。
「……しょ、しょうがないな」
少し悩んだ挙句、フブキは少年の指示に従い、渋々ブラジャーのカップを胸の下へとずり下げた。肉厚な乳房の真の姿が、プルンと揺らめきながら少年の目下に晒される。
フブキの胸は、うっすらと血管が浮き出るほどに張りがあって秀麗で、ぷっくりと膨らんだ乳首が見るもの全てを誘惑しているようだった。
勿論、フブキ自身にそんな意思は全く無いのだが、少年の顔は誘われるようにゆっくりと引き寄せられていた。
胸部の下に残したブラジャーに持ち上げられて、フブキの双丘が緊縛したようにやらしく強調されている。
フブキは恥ずかしさに耐え忍ぶように、赤く染まった顔を少年から逸らしてギュッと目を閉じた。この異常な時間が1秒でも早く終わりますようにと、心の中で祈りを込めながら。
しかし次の瞬間、少年はその包容力に満ち溢れた巨大な膨らみに向かって勢いよく飛び込んだ。
「キャッ!? ちょっ!? 少年くん!?」
少年の思わぬ行動に不意を突かれたフブキが、閉じたばかりの両目を見開いて悲鳴を上げる。
止めさせようと慌てて呼びかけるが、それでも少年はお構いなしにスリスリと顔を埋めている。
「ママァ! まえみたいにギュッてしてぇ!」
フブキの胸を母親のものと錯覚しているのか、少年は柔らかな谷間の中で甘えた声を出している。
「待ってっ! 駄目……だって! ンフッ……ンン……。見るだけだって……ンッ……言った……でしょ! 僕は君のママじゃ……アァ……ないから!」
胸の上で動き回る少年の頭の感触と、同時に荒々しく吹き出る鼻息や吐息、肌に伝わるそれらがくすぐったくて仕方なく、フブキの口からも余計な喘ぎ声が漏れてしまう。
「あーもう! ねえ、お願い! 落ち着いて! こんなこと良くないって! もうお終いにしよ!」
フブキは少年の両肩を掴むと、多少強引にその短躯を引き剥がした。
すると少年は、まだ物足りないと言わんばかりに唇を尖らせて、不平な表情を浮かべた。
「ええ~! やだよ、もうちょっとぉ~!」
「駄目! もう十分でしょ! いい加減勉強しないと!」
「じゃあさわらないからさぁ、さいごにひとつだけおねがい! そしたらちゃんとべんきょうするからぁ!」
「お願い? お願いって?」
「えっとねぇ~、ちょっとまって!」
少年はそう言うと立ち上がり、学習机の引き出しからあるものを取り出した。
「これ! これつかいたい!」
それは学校の授業で使っているものであろう、画材セットに同梱されている彩色筆の1本だった。
「えっと……筆? それで何をするの?」
「これでおねえちゃんのおっぱい、なでなでしたい!」
「は!?」
少年のまたしても突拍子もない発言に、フブキの目が点になる。
どうやら、直接触れなければ許してもらえると考えての提案のようだ。
「こういうのでおっぱいをなでなですると、おんなのひとってうれしいんでしょ?」
「な、なに言ってるんだ、君は! そんな訳ないでしょ! 一体誰がそんなこと……」
「え~、だってパパがそういってたよぉ。パパがたまにみてるえいがでもそうだったし~」
「パパって……、まさか旦那様がそんなことを言うわけ……。って、パパが見てる映画ってなんのこと?」
「え? パパがよるにこっそりみてるやつだけど? はだかになったおんなのひとがでてるやつ」
「裸になった女って……まさか!」
その言葉を聴いた途端、その言葉の意味を察した瞬間、フブキは自分の顔から血の気が引いていくのを感じた。
恐らく――いや、殆ど確信的だが、少年の言う映画とは、アダルトビデオ=AVのことを言っているのだろう。
まさか、こんな年端もいかない子供の口から、これほどとんでもない証言が飛び出すとは思わなかった。しかし、そんな感想が浮かんだのも束の間、少年の発言がそれ以前の問題を呈していることに気がついた。
少年曰く、この自宅のリビングの至る所には、成人男性向けのAVが幾つも放置されているらしい。
勿論、それらは全て少年の父親――つまりは旦那様の所有物であるが、小柄な少年でも簡単に手が届く範囲に乱雑に置かれていたこともあり、否が応でも少年の視界に入ってしまうこともあったようだ。
そして、好奇心を抑制できる年頃でもない少年もまた、目に映って関心を持てば、良し悪しもわからずに手に取ってパッケージを眺め、時には父親が留守の間にこっそりと映像を再生することもあったという。
その無頓着さは男だけの父子家庭ならではの光景なのかもしれないが、父親も特に咎めるような真似はせず(そもそもの非は、AVを息子の目の届く場所に放置し、尚且つ鑑賞する姿さえも目撃されている父親にあり、咎める資格など一切無いのだが)、それどころか、好奇心に駆られた少年の質問にも素直に応じる始末だったりする。
少年のたどたどしい説明を聴いたフブキは、開いた口が塞がらなくなった。
小学生の自分の息子に、AVの存在を悟らせるなんて非常識にも程がある。あまりにも早計過ぎる。呆れてものが言えないとは、まさにこのことだ。
しかし、同時に幾つかの合点がいったのも事実だった。
玄関で初対面した際の親子の妙なやり取り。それに、少年の女性の胸に対する執着や、無自覚な猥褻発言。それら全ての大元の原因が、本来なら監督する側であるはずの父親――旦那様の配慮不足にあった訳だ。
「パパがおしえてくれたよぉ! おんなのひとは、おっぱいをさわるとうれしくてしあわせになるんだってぇ! パパがえいがをみるのも、おんなのひとをしあわせにするためのべんきょーなんだってぇ!」
「旦那様ぁ……、なんて教え方を……」
呆気にとられるあまり、フブキは頭を抱えながら、現在留守中の家の主人に向かって苦情を唱えた。
「少年くん、違う、それは違うよ」
確かに妻と別れて離婚した身の上、残された1人の成人男性として、性欲を持て余すのは当然かもしれない。欲求不満を解消するために、AVを愛用するのも理解できる。しかし、それを幼気な息子の目に晒し、その上間違った情報として教えるのは、どう考えても教育上正しくない。
「少年くん、君のパパが見てる映画はね、大人が自分で自分を幸せにするためのものなんだ。見て良いのも大人だけ。君はまだ子供だから、大きくなるまで見たらいけないんだ」
少年の将来性に危機感を覚えたフブキは、優しい口調で丁寧に諭し始める。
どうやらこの少年には、勉学より先に教えなくてはいけないことがあるようだ。
ところが。
「えー! しらないよ、そんなのぉ! どうでもいいから、おっぱいなでなでやらせてよぉ! させてくれないなら、べんきょうだってやらないよ、ぼく!」
肝心の少年はやはり聞く耳を持たない。
それどころか、彩色筆を握りしめたまま、駄々まで捏ね始める始末だ。
――しまった。このタイミングで説教は不味かった。
フブキは自分の行いを軽率だと心の中で後悔した。
この年頃の子供にとっては、一方的な説教や指図は何より気に食わないものだ。ここで少年の機嫌を損ねれば、残り6日間の指導にも差支えが出てしまう。
どうしたらいいものかと、フブキは頭を悩ませる。
――仕方がない。ここは依頼のためだ……。
「……わかったよ。一回だけ君の好きにさせてあげる……。その代わり、それが終わったら、今度は僕の言うことを最後までしっかりと聞いてもらうよ。良いね?」
このまま依頼を達成できなくなるよりはマシだと考えたフブキは、思い切って交換条件を少年に提示した。
今、この時間だけは、少年のやりたいことを全て叶えさせる。満足するまで自由にさせる。その代価として、残りの6日間は真面目に勉学に専念してもらう。
「うん! わかったわかったぁ! あしたはちゃんとべんきょーするよぉ!」
少年は握りしめた彩色筆をブンブンと振りながら元気に頷き、そして声を張って返事をした。
正直、その返事はあまりにも軽くて薄っぺらいものであり、不安は全くと言って良いほど拭いきれなかったが、しかしそれでも少年は提案を承諾してくれた。
もし相手が大人なら、ここで契約書を用意した上で、サインと捺印を求めて確約するところであろうが、ここは少年の良心を信じて口約束で済ませることにした。
だがそんな約束なんてものが、そもそも何の意味もなさないことを、フブキはこの後思い知ることになる。
・・・
約束を守るため、そして守ってもらうため、まずはフブキが少年に身を委ねた。
少年の欲求を満たすために、その身体を玩具として貸し与えたようなものだ。
ベッドの上に座って無抵抗でいるフブキの前に、あからさまに嬉しそうな表情を浮かべた少年が、その小柄な体躯をまっすぐと伸ばして佇んでいる。
黒い瞳は露になっている乳房を捉え、右手に握られた彩色筆は始まりの時を今か今かと待ち構えている。
「ねえ、いい? もうはじめてもいい?」
これ以上は待ちきれないと言わんばかりに、弾んだ声で少年が訊ねる。
「う、うん……。どうぞ、好きに楽しんで……」
フブキは沸き起こる抵抗の気持ちを理性でグッと押し殺しながら、渋々頷いて許可を与えた。
こうして、少年の逸楽の時が始まった。
彩色筆のサラサラと柔らかな毛先が、フブキの右の乳頭にゆっくりと触れた。
命毛を軽く撓らせながら、上下にそっと撫で始めると、フブキの肩がピクッと僅かに反応した。
「んっ……んふっ……ん……」
同時に結んだ唇から耐えきれぬ声が小さく漏れる。
羞恥に堪えるようにあえて視線を逸らしていた先刻とは違い、今度は少年の操る彩色筆の動きを、フブキはさり気なく目で追いかけていた。
少年がこれから何をして、そして自分はこれから何をされるのか。不安と好奇心が入り混じった不思議な気持ちに突き動かされて、フブキの意識は自然に筆先へと向いてしまう。
――……一体何をやっているんだ、僕は。こんなこと、良くないことだってわかっているのに。
子供を指導する立場でありながら、その子供に教育上間違った行為を容認してしまっている。そんな罪悪感に苛まれているせいなのか、それとも、そんな上っ面の感情とは相反する――ある種の期待のようなものが、潜在意識の中で芽生えかけているせいなのか、心臓の鼓動がドキドキと激しく高鳴り、その音が耳元にまで響いてくる。
「ふ……うぅ……ん……んん……」
そんな中、少年の彩色筆を操る手つきと力加減は絶妙だった。触れるか触れないか程度の接触で乳輪をなぞるように円を描き、それから乳首の上を行ったり来たり、往復を繰り返しながら愛撫を続ける。
「はぁ……はぁ……はぁ……はっ……あぁぁ……」
毛先が乳首の上を通過するたびに、フブキの身体はビクビクと小刻みに震えた。
同時に呼吸にも荒さが目立ちだし、熱い吐息が混じり始める。
「あふっ……うぅん……うっ……ぅふん……」
言葉にならないこそばゆい感覚が乳頭から胸の肌、そして全身へと伝わり、フブキの喉奥から艶めかしい曇り声が強引に引っ張りだされていく。
まるで蟻の群れが這い回っているかのようなムズムズとした不快感。本来ならただ鬱陶しいだけの、取るに足りない微々たる感触なのだが、しかし今、緊張で五感や神経が研ぎ澄まされているためなのか、その刺激を、フブキは自分でも驚くほど過敏に受け止めてしまっていた。
しかもそれは、ただ単に敏感なだけではない。
撫でれば撫でるほど、擦れば擦るほどに、次第に感度が高まっていく。
「ふあぁ!? あ……あっ……あぁん♡」
ただでさえ乱れ気味だった浅い呼吸が、花火のように弾けた甘い感覚に阻害され、桜唇から気の抜けた声が溢れ出てしまう。
「おねえちゃん、どしたの? さっきからへんなこえだして」
すると不意に、上目づかいでフブキの顔を覗き込みながら少年が話しかけてきた。その表情は一見、他人を気遣うような優し気な顔つきだった。しかしだからといって、フブキの胸を弄ぶ手を止める意思などは毛頭無いらしく、乳頭に重ねた彩色筆は、相も変わらず小刻みに動き続けていた。
「だ、大丈夫……。くすぐったい……だけ……ンッ……だから……」
「ふぅん、そう。ねえ、それより、なんかおっぱいのさきっぽ、さっきよりおおきくなってきたよ」
本人が大丈夫と言うならそれ以上の気遣いは不要と踏んだのだろう。案外素っ気なく、少年は早々に話題を変えてフブキに現況を報告した。
少年の言葉通り、フブキの乳首はムクムクと勃起していた。筆先で愛撫された右側だけではなく、連動するように、現時点ではノータッチの左側の乳首もツンと仲良く押っ立っている。
「嫌ぁ……。そんなこと言わないでよ……。恥ずかしいよ……」
フブキは潤んだ瞳を少年に向けて訴えた。
自分の身体の変化は自分が一番よくわかっている。
言われなくても重々理解している。
なのに他人の口から改めて強調されると、余計に恥入ってしまう。
熱を帯びた耳元や首筋の肌を赤く染めながら、フブキはビンビンに尖った自らの乳首に目を移す。
――言われるまでもなかった。見るまでもなかった。思った通り……硬くなってる。
ずり下げたブラジャーに持ち上げられて、ただでさえ乳房が目立っているのに、さらに乳首までもが、これでもかと浮き出てしまっている。
普段は鬼の冷気を纏って人並みよりも低温であるはずの身体が、己の痴態を意識すればするほどに熱く火照ってしまう。
――鬼の気、まさか上手くコントロールできてない……?
鬼の力の制御は肉体の強さは勿論、強靭な精神力があってこその賜物。しかしどんな理由であれ、何らかの形で精神に乱れが生じれば、それだけ鬼の力の扱いにも不具合が起きてしまうのだ。
まさかたった1人の小学生男子の破廉恥なイタズラ程度で、心を取り乱してしまうとは思わなかった。
恐らくこれは、同性愛――狐夏との恋愛にばかりかまけていた故に、男の性に対する耐性を培ってこなかった緩怠なのだろう。
なんて情けないと、フブキは自分の不甲斐なさに唇を嚙んだ。
しかしそんな恥辱の気持ちとは裏腹に、感度の強さは跳ね上がっていく。
今はまだ何もされていない、ただ起こり立っているだけの左側の乳首がジンジンと疼きだしている。フブキの動揺とは無関係に、もう片方の乳房が刺激を欲しがっている。
「しょ、少年くん……、胸は2つあるんだ……。同じところばかりじゃなく、反対側も……左側の胸も……弄ったらどうだ……?」
そう口が滑ったところで、フブキはすぐにハッと我に返った。
「え? ひだり?」
「いやっ! 違う! ごめん、今のは……違うんだ……」
首を傾げる少年に、フブキは慌てて訂正の言葉を告げる。
頭と心に浸食してくる、さらなる快感を求める本能的思考に押し流されて、ついうっかり、とんでもないことを口走ってしまった。
――こんなの、おねだりしてるのも同然じゃないか。なんてはしたないことを。
しかし時すでに遅く、フブキの意見に関心を持ってしまった少年は『ああ、そうだね』と、尊重の意を表し、その小さな体の向きを左側の乳房の方へと傾けた。
「待って! やめて! 今撫でたら僕――」
慌てて制止の声を上げるフブキ。
しかし次の瞬間、少年の彩色筆が容赦なく左胸の突起にふわりと触れた。
「――はうぅっ♡♡」
刹那にフブキの声音が激しく上擦り、同時に首と背筋が反動的に反り返った。
右側の乳房から伝わる性感に煽られて、左側の乳房は既に敏感になり過ぎていた。柔らかな筆先に刺突されて、溜まりに溜まっていた左胸の快感が暴発してしまったのだ。
絶頂に等しい衝撃に不意打ちされて、フブキの表情は一気に蕩けてしまった。
「あ゛っ♡ あぅ♡ あうぅ……あぁぁぅ♡」
舌を突き出し上向いたまま、上半身を何度も何度も震わせる。
「おねえちゃん? だいじょうぶ?」
女性のアクメを直接目にするのは、少年にとっては初めてのことだった。
ただし、父親のAVをこっそりと再生して、画面越しに見たことは何度かあったため、フブキの反応が意味していることは少年にも理解できていた。偏見込みではあるが、イキ果てた女性がどんな気持ちでいるのかも。
「ぼくしってるよ、これ。うれしくなったら、おんなのひとってこうなるんだよね?」
「はぅん……♡ あぁぁ……あぁん♡」
無邪気な顔で少年が訊ねるが、当のフブキはそれどころではなく、まともに返答することもできずにいた。いや、というより、少年の言葉の殆どが、余韻に沈んでいる今のフブキの耳にはほとんど届いてはいなかった。
「ねえ、きいてる? おねえちゃん、いまうれしいんでしょ?」
「ああぁ……♡ はぁぁ……あぁぁ♡……」
何度も訊いても、しつこく訊いても、やはり返事は返ってこない。
聞こえてくるのは、途切れ途切れの喘ぎ声だけ。
すると、いつまで経っても会話をしてくれないフブキに、立腹した少年が声のトーンを上げる。
「ねえってばぁ! ちゃんとおへんじしてよ!」
そして、痙攣しているフブキの胸に、唐突に筆を走らせる。
ワサワサと、今までより少し乱暴に乳頭の上を掻き回す。
「ふぁああああ!? ダメェ! 今はだめぇ! そんなに激しくしたらッ! んぁああああ! イクッ♡ またイクぅ♡ おっぱいでイっちゃうぁあああ゛あ゛あ゛♡」
すると、フブキは上半身をビクンと大きく跳ね上げながら、天井に向かって激しく咆哮を上げた。2撫で。3撫で。ほんの僅か筆を回した程度でイキ叫んでしまった。
「ああぁぁ♡ すご、い……♡ でも、なん……で……♡ 僕……これぐらいで……♡」
フブキは自分でも信じられなかった。
痙攣して一時的に感度が異常になっているとはいえ、少し刺激を与えられただけで、一瞬我を忘れてしまう程に快楽に溺れてしまった。
胸だけで、乳房だけで2度イッてしまった。
相手は男の子なのに。小学生なのに。子供なのに。
あろうことか、恋人である女性――狐夏とのセックスと同じぐらいに感じてしまった。
それともこの快楽は。
相手が男の子だからこそなのか?
異性だからこそなのか?
子供だからこそなのか?
しかもこの身体は、心は、どうやらまだ全然満足してはいない。
それどころか、さらに過激な快感を求め始めている。
意識すればするほど欲しくなってくる。
もっともっと気持ちよくなりたい。
そう動物的本能が叫んでいる。
頭の中が性的な思考で満たされていく。
もう、いやらしいことしか考えられない。
エッチなことしか考えられない。
――ごめん、狐夏。どうやら君が思ってくれているほど、僕は正しい判断のできる人間ではないようだ。
フブキは今、自分に絶対的信頼を置いてくれている狐夏の気持ちに背く選択を選ぼうとしている。
どんなに踏みとどまろうとしても、目の前の性欲に魅了されて、最早抗うことができない。
フブキは弟子に対する謝罪の意を心の中に抱きながらも、目の前で待ち受ける享楽の階段を上り始めた。
「ねえ……、今度は……直接触ってみない……? 少年くんのその小さな手で……その……触っても良いよ♡ いっぱい、揉んでみて♡」
――嗚呼、言ってしまった。ねだってしまった。
今の発言は、先刻のような譫言ではない。
自らの意思で――自分の正直な気持ちに従って、自覚的に発した言葉だ。
きっと後になって後悔するだろう。この時の言葉を後悔するだろう。
狐夏に会った時に、どうしようもない背徳感に襲われることだろう。
だけどもう、後戻りはできない。踏みとどまることはできない。
こうでもして、マグマのように煮えたぎった性欲を沈めないと、身も心もおかしくなりそうだから。
「え? でも、おねえちゃんはさっき、さわっちゃだめだって……」
「ううん。良い、良いから……。さっきの約束は……やっぱり無し……。だから触って♡ 思いっきり、触って♡」
取り付けたばかりの約束を早々に――しかも自ら無下にするなんて、教育者としてはあるまじきことだとは重々理解していた。
しかし今はもう、家庭教師の仕事だとか、勉強だとか指導だとか、そんなのは心底どうでもよかった。色欲に支配されたフブキにとって、この瞬間最も重要なのは、満足するまで快楽に浸ること。ただそれだけ。
後のことは、身も心も満たされた後で考えればいい。
だからフブキは、ねだり続ける。
「うん。おねえちゃんがいいっていうのなら、わかった……」
「両方の手で、2つのおっぱい、同時にモミモミしてみて♡」
「えっと……こう?」
フブキのレクチャーを受けた少年は、握りしめていた彩色筆をテーブルの上に置く。そして、左右のもみじのような手を広げると、フブキの双丘に恐る恐る重ねた。
「あっ……♡」
掌の生暖かい感触がピタッと胸に伝わった瞬間、フブキの口から小さな声が漏れる。
が、直後に少年が、握り潰すようにギュウゥっと指を沈めると。
「はぁうぅぅん♡ あ……はぁああああああ♡」
フブキは熱い吐息と共に歓喜の悲鳴を上げ始めた。
「うわ、すごい……。おねえちゃんのおっぱい、おもちみたい……。めちゃくちゃプルプルしてるぅ……」
母親以来、久しぶりの豊満な胸の触り心地に、少年もまた素直に驚喜していた。フブキの乳房の圧倒的軟質は、少年の想像を遥かに超えるものだった。
「ああぁ♡ いいっ♡ もっと乱暴に♡ 出鱈目にグニグニしてぇ♡」
「グニグニ? グニグニって……こうかな?」
少年は両手の全ての指を乳肉にめり込ませながら、鷲掴んだ乳房を乱暴に振り乱していく。
「そう♡ それぇ♡ そんな感じぃ♡ ああああ気持ちいいぃ~♡」
まるで粘土を捏ねるような手つきで力任せに胸を揉みしだかれ、フブキは忘我の境地で思う存分叫び続けた。
「乳首ッ♡ 今度は乳首を摘まんでみてぇ♡ 乳首もギュウゥってしてほしいのぉ♡」
欲求のボルテージは留まることを知らず、フブキの所望は見る見る過熱していく。
少年は言われるがままに、肥大化したフブキの2つの乳首を指先で摘まんだ。
コリッと潰しながら、ネジを回すように左右の突起を同時に捩じると。
「おほぉおおおおおおおおおおお♡♡」
いつも振りまいていた清楚なイメージはどこへやら。
フブキは部屋中に響き渡るほどの、獣染みた下品な雄叫びを上げた。
まさしくそれは、3度目の絶頂を迎えた証だった。
痛みは一切感じていない。
乳房や乳首に与えられた刺激は、全て性感となって伝わり、フブキを盛大に悦ばせている。
「あ゛あ゛あ゛あ゛♡ 乳首いぃぃ♡ 乳首すごいぃ~♡ おっぱいぃ♡ おっぱいぃぃ……良いぃ~……♡」
「わぁ……。おねえちゃん、へんなかお~……」
幼き少年が引き気味に驚くのも無理はない。
この短時間の間に、連続で3度も果てたフブキの顔は、黒い瞳が上向いて白目を剥きかけ、半開きの口からは一筋の涎が垂れている。だらしなく蕩けきった、見事なアへ顔だった。
「でも、すごくうれしそうだね。ねえ、おねえちゃん、いまうれしい?」
声が届いているかは半信半疑だったが、少年は先刻返答を聴きそびれた質問をもう1度投げ掛けた。すると今度は、虚ろな目つきを少年に向けながらフブキは応えた。
「はっ……♡ はっ……♡ はっ……♡ うん、嬉しい……♡」
苦しそうに肩で息をしながらも、へらぁっと淫蕩な笑みを浮かべる。
「じゃあさ、いましあわせ?」
問いに答えてくれたことが嬉しかったのか、少年は続けざまに質問を重ねた。
「凄ぉく……幸せぇ~♡」
フブキもまた、一切の躊躇いもなく従順に言葉を返す。
旦那様が発信した誤った性教育を正すつもりだったはずが、いつの間にか、逆にその身をもって肯定してしまった。しかもそんな自身の矛盾すらも、淫欲に堕ちた今のフブキでは気づくこともできない。
こうなってはもう、彼女の中に恥も外聞も存在しない。
フブキは更なる淫行を追求するために、少年に提案を持ち掛けた。
「ねえ、ギュッて……してあげようか?」
「え? なに?」
「して……欲しかったんでしょ、ママみたいに……。してあげるよ……? 僕のおっぱいで良ければ……」
「いいの? うん! やって! ギュッてしてぇ!」
恥ずかしげもなくフブキが言うと、少年は嬉しそうに頬を赤く染めて頷いた。
断る理由などない。少年からしてみれば、ずっと待ち望んでいた展開。願ってもない話なのだから。
「じゃあ……おいで♡」
フブキは妖艶に笑いながら、両腕を少年の後頭部に回して包み込むように抱き寄せた。僅かに背筋を反って、突き出た胸をさらに強調させて少年の顔に押し付ける。少年の望み通り、彼の顔を豊満な乳肉に埋もれさせてやったのだ。
「どう? これでいいのかな?」
「ん……んん~……」
少年は胸の中で少し息苦しそうな声を漏らしつつも、実際はその乳房の素晴らしさに感銘を受けていた。
汗ばんでしっとりとした肌触りが顔一面を覆い尽くし、グレープフルーツのような甘酸っぱいフェロモンの匂いが鼻腔を突き抜ける。
フブキが醸し出す大人の色香にクラクラと誘われるように、少年は夢中で顔を摺り寄せた。
スリスリと、何度も何度も。
猫のように首を左右に振って両頬を擦りつけ、フブキの肉感を無邪気に堪能している。
「おねえちゃんのおっぱい、いいにおい! フカフカでモチモチぃ~!」
その至福に満ちた声から察するに、どうやらお気に召したらしい。
少年が嬉しそうにしてくれると、どういう訳か、フブキも無性に嬉しかった。
まるで洗い立ての布団に顔を埋めて喜んでいるかのような、そんな天真爛漫な少年の姿に、ときめきを抑えきれないフブキの心臓が早鐘を打っている。
今日会ったばかりの人様の子供なのに、堪らなく可愛く、そして愛おしいと感じてしまう。
これは恋心?
いや、少し違う。
この気持ちは、一体――。
そうやって思いを馳せていると、いきなりだった。
突然、正体不明の新たな刺激がフブキの胸を貫いたのだ。
まるで通り魔にでも刺されたような。
そんな不意を突いた、吃驚するほどの感覚だった。
「ひゃあぅ!? しょうねん……くん!?」
上半身を震わせながら、フブキは少年に改めて意識を向ける。
すると理解した。
いつの間にか、少年の唇とフブキの乳首の1つが重なり合っていた。
まるで赤ん坊のように、少年がチュッチュと音を立てて吸い付いているのだ。
「ちゅ……ん……んむっ……ちゅ……ちゅぅぅ……」
小さな口をさらに小さく窄めて、尖った乳首を口内で搾り上げていく。
決して母乳は出ない。しかし、出てしまうんじゃないかと錯覚してしまいそうなほどに凄まじい勢いだった。
「少年く……あっ、あ、あ、あぁ♡ ちく……び……♡」
少年が吸えば吸うほど、フブキの身体がビクビクと震える。
彩色筆や素手の時とはまた違う、新鮮味のある快感がフブキの全身を駆け巡っていた。
生暖かい唇に吸引されるたびに、心身共に至る所が熱を帯びる。
肉体的にも、精神的にも。
淫らな情熱に呼応して、火照った部分が輪を掛けて燃え上がっていく。
絶賛愛撫中である胸や乳首は勿論。
実は愛液が溢れて密かにグショグショに濡れている女の秘部。
そして、少年に対する胸の内さえも。
意識すればするほど、あっちこっちがキュンキュンと締め付けられてしまう。
「あむっ……ちゅっ……ん……。れりゅ……れりょれりょれりょ………むちゅ……」
そんな、ただでさえ興奮しっぱなしのフブキをさらに焚きつけるように、少年は無我夢中で乳首への愛撫を続けた。
以外にも、彼のテクニックは多彩だった。
意識してのことなのか、それとも無意識なのか。
いや、恐らくは男としての本能なのだろうが。
ワンパターンにならないように。相手が飽きないように。
少年は唇の動きや舌の動きに様々な変化をつけている。
最初はチューチューと単純な吸い方だった。
しかしかと思えば、唐突に舌先を出してチロチロと小刻みに振動させたり。
もしくは、ベロベロベチャベチャと、水音が響くほど激しく舌を走らせたり。
ベロォ―ッと、唾液を塗りたくるようにねっとりゆっくりと舐め上げたり。
そしてまた、チューチューとリズムを刻んだシンプルな吸い方に戻ったり。
今日まで経験の無かった子供とは思えないほどの、まさに多種多様な舌使い。
そしてそのたびに――少年の動作が変わるたびに、それに合わせてフブキの淫猥な声音も様々な音調で放たれる。
「あっ♡ ああぁ……♡ んっ……んんっ……んはぁ♡」
ある時は堪えるような控えめの声。
「ふぁあああ……あっはぁああああああああ……♡♡」
またある時は、欲望のままに悶え狂った絶頂の叫び。
何度も何度も繰り返し。
何度も何度もイキ果てる。
そうしているうちに、フブキは先刻から胸の内に抱き続けていた気持ちの意味をようやく導出した。
少年に対して感じていた、恋心にも似た感情の正体。
少年を可愛く思い、まるで息子のように愛しく感じる初めての感覚。
同性である狐夏との付き合いだけでは、決して体験する機会など訪れなかったかもしれない、フブキにとってはまさに未知の領域。
――そう。きっとこれが……。
「……これがぁ……母性ってやつ……ンッ……なのかな……♡」
フブキは恍惚な表情を浮かべながら、飽きもせずに乳首を吸い続ける少年の頭をそっと優しく撫でた。それこそ、息子を愛でる母親のように。
そしてどうやら、初めての扉を開いたのはフブキだけではないようで。
「おねえちゃん……、ぼく……なんかへんだよ……」
不意にフブキの乳首から口を離した少年は、苦しそうに息を乱しながらフブキの顔を見上げた。
その紅潮した顔色と、まるで尿意を我慢しているかのように、モジモジと両足を閉じている姿を目の当たりにし、フブキは少年の異変の理由をすぐに察知した。
「大丈夫……。何ともないから、落ち着いて……」
フブキは少年を安心させようと改めて抱きしめながら、右手をゆっくりと少年の股の間へと運んだ。
年相応の小さな短パンの上からでもわかるほど、少年の股間は不自然に盛り上がっていた。
「お、おねえちゃん!?」
「大丈夫だから……。僕に任せて……」
戸惑う少年に優しい言葉を繰り返しながら、フブキは窮屈そうに膨らんでいるその場所をゆっくりと丁寧に撫で回した。
「あ!? ちょ……おねえちゃ……あぁ……」
「いっぱい気持ち良くしてくれたお返しだよ……。今度は僕が……君を幸せな気分にしてあげる♡」
フブキは穏やかさと小悪魔のような仕草が併存した口調で言いながら、少年の短パンを下着ごとジワジワとずり下ろしていく。
「いやぁ! おねえちゃん、やめて! はずかしいよ!」
「ふふっ。僕には好き放題しておいて、今更何言ってるの? 大丈夫。僕もさっきまで物凄く恥ずかしかったけど、今はもう何ともない……。少年くんも、すぐに慣れるから……。そしたら、すぐに気持ち良いことしか考えられなくなるよ……♡」
慌てて短パンを掴んで抵抗しかける少年に、フブキは嬌笑を浮かべながら諭し、後は有無も言わさず、一方的に少年の下半身に纏っていた全てのものを剥ぎ取ってしまった。
刹那に露になったのは、直立した1本の肉棒。
子供らしく小振りながらも、立派にそそり立った男の象徴だった。
「ほらぁ、こんなに硬くなって……、ビンビンになってるよぉ。すごぉい……」
フブキは目の前に現れたそれを、うっとりと見惚れながら両手で撫で上げていく。
「ぼくのオチンチン……、なんかいつもとちがうよぉ~! ぼく、どうしちゃったのぉ……!?」
少年にとって、男性器の勃起は初めての経験だった。
初めての気持ち。初めての感覚。
体中の神経が下半身に集中して、頭がボーっとしてくるような。
父親の不徹底が原因で知った、本人にとっては早すぎる大人の世界。
子供ながらの好奇心に駆られて知ってしまった過剰な知識。
ただ、いくら情報としてその小さな脳内に蓄えていようとも、実際の気持ちや感情は、その場面に直面した時でしか体感できない。
女性の豊満な乳房に触れた時に感じる気持ちも。
女性の淫らな喘ぎ声を耳にしたときに感じる感情も。
実際に見て触れて、聞いて初めて実感できるもの。
そして今、生まれて初めて母親以外の大人の女性との触れ合いを経験し、ようやく自覚し始めた結果、少年の心に芽生えたのは、子供としてはある意味最も適切とも言える、至ってシンプルな感情。無意識に抱いた気持ちを整理しきれずに生じた――戸惑いだった。
それは、言うなれば情報過多。あるいは、キャパオーバー。
突然押し寄せた未知の感情に急に怖くなったのか、途端に怯えた表情を浮かべる幼き少年。
すると、フブキはさらに言葉を掛ける。
「心配しないで、なんてことない……。男の子なら当たり前のことだから……」
「あたりまえの……こと?」
「そう。僕の乳首が、硬くなって大きくなったのと同じことだよ……。少年くんが僕のおっぱいに嬉しくなってくれたから、少年くんのオチンチンも喜んでいるんだよ……」
「そう……なの……? でも、すこしいたくて、なんかいやだよぉ……。どうすればなおるの? これ……」
「ん、言ったでしょ、僕に任せてって……。僕がちゃんと……元に戻してあげるから」
今のフブキに躊躇はない。
少年のためならどんなことでもできる気がする。
いや、寧ろ積極的にやらせてほしくてたまらなかった。
そんな思考に突き動かされるように、フブキは少年の包皮を剥いて露出させた亀頭をペロッとひと舐めしてから、口を大きく開いてその肉棒を一気に頬張った。
直後に強烈なアンモニア臭が鼻を突いて噎せ返りそうになるが。
しかし、普段なら到底受け入れがたい異臭すらも、今なら性的興奮を高める糧となる。フブキは高揚しながら舌を絡ませ、直立したそれを丹念に唾液で濡らしていく。
「ひゃあっ!? おねえ……ちゃん……! う……あぁ……あっ……ああ……」
フブキの舌使いに翻弄されるように、少年が子犬みたいに可愛らしい喘ぎ声を漏らす。
少年がフブキの乳房にご執心だった先刻から一転、今度はフブキが少年の一物を一方的に苛めている。それはまさに、立場が完全に逆転した光景だった。
「んぶっ……んっ……ぶぢゅ、ぶじゅっ……んぼっ……じゅぼぢゅぼ……ぶぢゅ♡」
何度も回数を重ねて慣熟している同性とのセックスとは違い、男との経験は正直浅めのフブキだが、しかしそれでも、今この瞬間だけは何の抵抗も不都合もなく、少年へのフェラチオに没頭できていた。
口の中で亀頭を舐め転がし、尿道に溜まった汁を吸い上げる。
そして両頬を窄めると、ジュボジュボと卑猥な水音を立てながら激しく扱いていく。
「あむっ……ぶちゅゥ……んぶぅ……んっ……ぶっ……ズズッ……じゅる……♡」
――我ながら、なんて下品なんだろう。鬼の師匠としての威厳も貫禄もあったもんじゃない。こんな様をもし狐夏が見たら、彼女は軽蔑するだろうか、嫌うだろうか。
そんな考えがふと頭の中を過りながらも、今更止めることなどフブキにはできなかった。
彼女の艶やかな口も舌も、今だけは少年の虜。少年の幼気ながらも立派な、男根のしもべ。
ヌルヌルで。
ニュルニュルで。
充血して熱くて。
おしっこ臭い。
口一杯に充満する、不思議な感触。
不快で。気持ち悪くて。
だけどそれが、もの凄く魅力的で心地が良い。
許される限り、いつまでも味わっていたいとさえ思ってしまう。
「どう? 少年くん、気持ちいい?」
呼吸を整えるために、一旦口を離したフブキが少年の顔を見上げながら問いかける。
「きもち……いい……の? わかんない……。このかんじ……きもちいいってことなの……? すごくゾワゾワするぅ……」
「そっか……。初めてだから、まだよくわかんないか……。でも大丈夫、すぐに理解できるようになるよ……。そしたら、きっと癖になるから♡」
そう言って、フブキはまた少年の性器を口に含んだ。
欲する気持ち、欲望の命じるままに、より一層拍車をかけてむしゃぶりつく。
「オッ……ん……おっ……アッ……ぉあ……あぶ……ぶぢゅ……ブッ……ンぶぅ♡」
カリも、裏筋も、尿道も。根元から先端まで甘美で仕方がない。
その全てをじっくりと味わい尽くすために、艶冶な唇や舌が、踊り狂うように纏わりついて肉棒を離さない。
ずっとしゃぶっていたい。
ずっと舐めていたい。
ずっと味わっていたい。
燃えるような淫欲に塗れて、無我夢中で口を前後に揺れ動かす。
ぶじゅぶぢゅ……、ズボズボ……と、零れた唾液を撒き散らせながら、積極的に狂っていく。
「ふぁっ……やめっ……ん……とめて……おねえちゃ……ああああっ……」
フブキが派手に動けば動くほど、少年もまた、壊れたおもちゃのように悶え狂っていた。
苦しそうにベッドのシーツにしがみ付きながら、跳ねるように腰を宙に浮かばせる。押し寄せてくる衝動的な何かを、必死に堪えようとしていた。
「んぁああっ! おねえちゃん……おねが……なにかっ……なにかでちゃ……おしっこでちゃう! はなして……やめてぇえええ!」
ところが、フブキは微塵も止める素振りを見せようともしない。間もなく訪れようとしている初めての絶頂に、少年が恐怖を感じていようがお構いなしだった。
それどころか、まだまだ責めの動きを加速させていく。まるで少年に問答無用でイカされた先刻の仕返しをするように。
――だめ! 止めない! 絶対に止めない! 止めたくない! もう、イキそうなんでしょ! 良いよ、イッて良いよ! イッてっ!! イッてっ!!! 口で全部受け止めてあげるからっ!!! イッて……出してっ!!! 出しなさいっ!!!!
さっきまでは確かにそこにあった少年に対する優しい気遣いも、そして母親のような優しさも、いつの間にか、すっかり影を潜めていた。
唯一残ったのは、ひたすら快楽を求め続ける、性欲への執着心のみ。
フブキは狂気を感じさせるほど一心不乱に少年の性器を扱きつつも、同時に自らも果てるために、空いていた両手を自身の性感帯へと伸ばしていた。
左手で乳房を揉みしだき、右手でデニムの上から秘部を弄る。
ビクビクと身体を震わせながらも、口も、舌も、手も、寸時も休むことなく稼働を続ける。全ては、少年に気持ち良くなってもらうため――いや、今となってはもう、フブキ自身が自らの欲望を満たすため。自分が満足するために続けているに過ぎない。少年の意思など、今の彼女にとっては二の次だった。
「だめえぇっ! なんか……こわいぃ! こわいよぉ! でるっ! もぉ……でちゃう……でちゃ……ぁぁああ……」
少年が限界を訴えるように声を嗄らして叫んでいる。
涙と涎と鼻水で、真っ赤な顔をクシャクシャにしながら。
性感から逃れようと腰をくねらせ、暴れさせながら。
しかしそんな少年の下半身を抑えつけ、フブキはラストスパートをかける。
疲れなんて知らない。
体力には元々自信がある。
何故なら、鍛えているから。
何故なら、鬼だから。
頭の中を真っ白にして、
喉を突く勢いで、
口を前後に揺らして激しくしゃぶる。
ジュボジュボジュボジュボ。
激しく激しく。
ブチュブヂュブチュブヂュ。
しゃぶってしゃぶって、しゃぶりまくる。
片乳を掌で揉みながら、尖った乳首を爪で引っ掻き、
湿ったデニムの股間を、力強く撫で回す。
全ては最高の快楽のために。
全ては至福の瞬間のために。
そしてついに、その時が訪れる。
「あああっ!! だめっだめぇええええええ!! あっああああああ!!」
最大級の悲鳴と同時に、少年の性器がフブキの口の中でプクッと一際大きく膨張した。
――あっ♡ 凄い膨らんで……。出るんだね♡ 出してっ♡ 出してぇええ♡
それはまるで、フブキの心の叫びに同調するようだった。
次の瞬間、少年の中で溜まりに溜まっていた白濁液が、凄まじい勢いでフブキの口内に解き放たれた。
――ぼ、僕もぉ……ああああん♡♡ イッ……くっううううううう♡♡♡
少年の絶頂に合わせて、フブキも同時に限界を迎えた。
肉棒を頬張っていた口の動きも、自分の性感帯に触れていた両手の動きも、唐突にピタッと停止したかと思うと、まるで高圧電流でも流されたかのように、ビクンッビクンッと、全身を何度も大きく痙攣させた。
「んっ♡ んんっ……んんふぅううううううう♡♡♡」
身体中を駆け巡る快感と、口の中に広がる充実感が足並み揃えて押し寄せ、フブキは心身共に歓喜に打ち震えた。
それは、あまりの衝撃に意識が一瞬飛んでしまうほど。
涙に潤んだ瞳は白目を剥き、女陰からは勢いよく潮を吹いた。
まるでお漏らしでもしてしまったかのように、ジュワァアアアッと熱い染みがデニムに広がっていく。
押し流されていた意識が戻ると、フブキはようやく性器から口を離し、今度は口内に留まっていた少年の精液を堪能した。
赤い舌に伝わる熱や感触。それから口一杯に充満する味や匂い。
生温かくてドロドロで。
眉を顰めるほど苦くて青臭い。
コクンッと呑み込めば、ネバネバと喉越しに絡みつく。
とても気分の良いものとは思えないだろう、冷静な時ならば。
しかし、色情に酔い痴れている者には――蕩けきった今のフブキには、それは最上級のご馳走に他ならない。
ドロドロで。
ネバネバで。
苦くて。
青臭い。
だけどそれが良い。
不快で下品だけど、寧ろそれが良い。
まるで麻薬のようで。
脳みそに、
心に、
全身に染み渡るような凄まじい高揚感。
女同士のセックスとは一味違う、新鮮味に満ち溢れた高揚感。
「オ゛ッ……ォオオンッ♡♡ オァ……アッ……あぁん♡」
少年の精液を飲み干しただけで、
精液に魅了されただけで、
すぐにまたフブキはイッてしまった。
だけどまだ。
まだ足りない。
まだ満足できない。
この心地よさが、ふやけた意識をさらに解して、性的欲求をますます昂らせる。
満足するどころか、もっともっと欲しくなる。
もっともっと欲しい。
今度は失神するほどの快楽を。
絶頂を。
雄を。
最早歯止めが利かないほどに身体が求めている。
イケばイクほど発情してしまう。
鬼の冷気を脱ぎ捨てた身体が、溶けるように熱い。
思えば酒呑童子の一件の時もそうだった。
普段は自分のことより他人のことを第一に考えるフブキだが、1度でもタガが外れた時、彼女は底なしの獣になる。
欲望に飢えた、ただの獣。
ただの――雌に。
「ねえ~……、もういっそのこと……、最後までやっちゃおうかぁ……♡」
まだまだ体力も気力も満ちているフブキとは正反対に、初めての絶頂を迎えてぐったりとしている少年の上に、フブキは妖艶な仕草で擦り寄っていく。
「ほらぁ……、初めてイッたくせに、少年くんのオチンポ、まだまだ元気じゃなぁい♡ これなら、すぐに本番できるよね♡ もっと気持ちいいこと教えてあげるからぁ、僕と……しよ?」
びしょ濡れのデニムも下着も脱ぎ捨て、仰向けに横たわっている少年に覆い被さると、疲れ果てた本人の意思とは裏腹に、萎えずにそそり立っている一物に手を添える。軽く握りしめ、シコシコと扱きながら、露出させた自らの膣穴に狙いを定める。
「おねえちゃん……、まって……。こんどは……なにするの……? ぼく、もう……」
深い息を吐きながら、不安げな表情を浮かべる少年。
しかしフブキは、やはりそんなことはお構いなしのようで。
「いいからぁ♡ 少年くんは黙ってオチンポ立ててなさい♡ 僕に――おねえちゃんに任せておけばそれでいいのぉ♡」
少年の意見には聞く耳を持たず、フブキは腰をゆっくりと沈め始める。
妖しく舌なめずりしながら、ゆっくり、ゆっくりと。
そして、少年の先端がフブキの肉壷をヌルっと塞ぎかけた。
「あっ♡ きたっ♡」
さらなる快感の予感に、嬉々とした声を思わず漏らすフブキ。
しかしその時だった。
「ただいまぁ……!」
突如、1階の玄関から不意に聞こえてきた重い一声が、半ば強引に2人を現実に引き戻した。何の前触れもなく、享楽の時間が終わりを告げたのだ。
下から響いてきたのは、この家の主の声。
今回の仕事――家庭教師の仕事の依頼主である旦那様の声。
少年の父親が、仕事を終えて帰宅したようだった。
その声をきっかけに、急速にハッと我に返ったフブキは、自分たちのあられもない姿を自覚し絶句した。
勉強をそっちのけにしたばかりか、年端もいかない人様の息子と禁断の性行為に没頭していたなんて。
しかも傍から見れば、どう考えても自分が少年を襲っているようにしか見えないだろう。実際、後半は殆ど一方的な痴女と化していたし、間違ってはいない。
そんなことが知られれば、当然大問題になってしまう。
脳裏を駆け巡るネガティブな思考にフブキは血相を変えながら、慌てて少年を抱き起した。
「ごめん、少年くん! お父さんが帰ってきた! 今日はこれで終わり! 早くズボンを穿いて! 怒られちゃうよ!」
少年に短パンとパンツを渡し、フブキ自身もはだけたシャツを直して乳房を隠し、脱ぎ捨てたばかりのデニムを再び身につける。愛液でビショビショに濡れていようが、今は気にしてなどいられない。
しかし一方で、少年は相反するように冷静だった。
幼さ故に事態の深刻さを理解できていないのか。とにかく淡々とした態度で、少年は口を開いた。
「おちついて、おねえちゃん! だいじょうぶ! いそがなくてもだいじょうぶだから!」
「なに言ってるの!? そんな訳ないでしょ! こんな状況、お父さんが見たら絶対に怒るよ? だから……」
「だいじょうぶ! ほんとにだいじょうぶなの! とにかく、きょうはもうかえって! またあした、いっぱいおべんきょうしよ! こんどはぼく、もっとたくさんがんばるから!」
「え……? 大丈夫って言われても……」
「いいからぁ! おねがい! いうとおりにして!」
少年の態度と言葉には、何か妙に引っかかるものを感じたフブキだったが、しかし今は、ゆっくりと考えている余裕はない。
こうしている間にも、旦那様が2階のこの部屋に上がってくるかもしれないのだから。
「う、うん……。わかった……。じゃあ……また、明日ね……」
せめて、少年がズボンを穿く時間くらいは稼げるだろうと思い、フブキは少年の指示通り、すぐに部屋を出ることにした。
扉の前で改めて服装を整え、持参したショルダーバッグを手に取ると、フブキは少年に別れの挨拶を済ませて部屋を後にした。
足早に廊下を歩き、階段を降りたところで旦那様と出くわした。
「あ……、だ、旦那様……、お帰りなさいませ……。お仕事、お疲れ様でした……」
「やあ、フブキさん、ただいま。……あれ? 息子は? 勉強はどうしたの?」
濡れたデニムをショルダーバッグで隠しながら、フブキはなんとかその場を取り繕おうとした。
「えと……息子様は……今は自室の方に……。今日は……その……僕の要領が至らなかったせいで……予定通りには進みませんでした……。ごめんなさい……」
そう言って、フブキは申し訳なさそうに頭を下げた。
「その上……、み、身勝手ながら……猛士の……し、仕事で……急用ができまして……、丁度旦那様のご帰宅の声が聞こえましたので、失礼を承知で、少し早めに退出させていただこうと思った次第で……。重ね重ね、初日から不手際ばかりで本当に失礼いたしました……」
罪悪感に駆られながらも、慣れない嘘を必死に織り交ぜながら精一杯陳謝する。
謝罪しつつも偽るとは、矛盾も甚だしいと思われるかもしれないが、それでも、発言に込めた謝意だけは本物だった。
狐夏にはよく、「フブキさんに嘘は似合わない。っていうか、態度に出るから噓つきには向いていない」と、揶揄われる時がある。
確かにそうだと思った。
すぐにバレるんじゃないかと、虚言するときはいつもドキドキハラハラと恐れている。
当然、今だってそうだ。
もし、ここで嘘だと露見すれば、間違いなく取り返しがつかなくなるだろう。
そして同時に。
フブキは今、別の意味でもドキドキハラハラしている。
性行為を行ったことを証明する確実な証拠――まるで失禁の証のようなデニムの大きな染みを、小さなショルダーバッグ1つで何とか隠匿しているのだ。こんな状況、どうしたって緊張するに決まっている。
持ち前のポーカーフェイスを何とかフル活用して、この場をやり過ごしたいところだが、快楽に崩れたばかりで精度がガタ落ちの今の顔では、どうにも当てにはならないだろう。
こうなってはもう、他にできることといえば、後は運に頼るか神に頼むか。
ところが思いの外、旦那様の態度は穏やかなままだった。
「いやいや、そんな重苦しいことを仰らないで。気にしないでください。フブキさんも忙しい身の上ですし、無理を言ってお願いしているのはこちらなんですから」
声を荒らげることもしなければ、難しい顔を浮かべることもせず。
それどころか、寧ろ正反対の印象をフブキは感じていた。
ひょっとしたら気のせいなのかもしれないが、なんだか嬉しそうで、微かに微笑んでいるようにも見える。それぐらい、妙に機嫌がいい表情のように思えた。
――職場で何か良いことでもあったのだろうか。
しかし、それはそれとして、だ。
「いえ、やはり1度引き受けたからには、最後までしっかりとやり遂げるべきだと思っていますので……。今日は……これで失礼しますが、明日からはきちんと、責任を持ってやらせて頂きます……」
「……なるほど。話で聞いていた通り、真面目なんですね、フブキさんは……。わかりました。息子のために――いや、私も含めて我々のために、また明日からよろしくお願いしますね」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。……それじゃあ、今日はこれで……」
そう言って、フブキはもう1度深々と頭を下げると、旦那様の横を通り過ぎて靴を履き、早早に玄関を出ていく。
旦那様は細い目をさらに細くしながら、そんな彼女の後ろ姿を見送った。
その際、彼の視線はフブキの下半身へと向いていた。
焦るあまり、前ばかりに気を取られて、うっかり隠すことを忘れていたデニムのお尻。
そんなびしょ濡れの部分を見つめながら、旦那様はニヤリとほくそ笑んだ。
・・・
自己採点したとして、当然100点満点には程遠いであろう、今日初日の家庭教師の仕事。反省する点は山ほどある。勿論、後悔することも。恋人に謝らなくてはいけないことも。
だがその前に、
どうしてもやらなくてはいけないことがある。
どうしても処理しなくてはいけないことがある。
一刻も早くなんとかしないと、話が先には進まない。
それは今もなお、消えずにこの身体に渦巻いている厄介な性欲だ。
行為の良し悪しの議論は別にして、少年とのセックスは連結する寸前で強制終了してしまった。酷く中途半端で、強引な幕引きだった。
一番いいところでお預けを食らってしまったフブキの性的欲求は、まるで焦らされているかのようで、ずっと疼き続けていた。
バレるバレないで肝を冷やしたばかりだというのに、帰りの道中も懲りずにずっと発情が止まらなかった。
胸も乳首も秘部も、ずっとウズウズしっぱなしだった。
帰り道、何度車を停めて、自慰に耽ることを考えたことか。
早く静めないと、頭がおかしくなりそうだった。
だからフブキは、恋人が待つ自宅へと急いだ。
この性欲の昂りを静められるのは――愛する彼女しかいないから。
自宅玄関の扉を力任せに開けて帰宅したフブキは、駆け足でリビングの奥へと突き進んだ。そのまま突進するような勢いで、帰りを待ってくれていた狐夏の胸に飛び込み、そして抱きついた。
「うわっと!? フ、フブキさん!?」
夕食の支度の真っ最中で、エプロン姿だった狐夏は、訳もわからずいきなり師匠に押し倒された。踏みとどまることも叶わず、仰向けの姿勢でフローリングの上に横たわると、驚きの表情でフブキの顔を見上げた。
すると。
「ちょっと! どうしたんですか、フブキさ……ンフッ!? ……ン……ンン!?」
馬乗りになり、艶めかしい表情で見つめてくる師匠に声を掛けようとする狐夏だったが、言葉を言いきるよりも先に、フブキの唇が狐夏の唇を塞いでしまった。
有無も言わさない唐突なディープキスに、狐夏は戸惑うばかりだったが、そのネットリとした過激な舌使いに、彼女の思考はすぐに溶かされていった。
「フブキ……さん…?」
「狐夏ぅ~、ベッドに行こぉ?」
唇を離したフブキは、唾液に塗れて糸を引いているその口で懇願した。
「え……、でも、もう夕食が……」
「お願い……! セックス……したいんだ、今すぐ……。……だめ?」
そう言いながら、潤んだ瞳で小首を傾げるフブキの仕草が、まるで子猫がおねだりしているみたいで、狐夏には堪らなく可愛く見えた。
「だめじゃ……ないです……。喜んで……」
キュンとした気持ちに促されるままに、狐夏はフブキの要求を受け入れた。
こうして、2人は食卓に並べられた料理をそっちのけにして、寝室のベッドへと向かった。
熱烈で濃厚な口づけを始まりの合図とし、弄るように互いの服を脱がし合う。
不自然に湿ったデニムと下着を剥ぎ取ると、フブキの女陰は狐夏でさえも一瞬たじろぐほど大洪水になっていた。
同じように、上着のシャツを捲り上げ、ブラジャーを外すと、フブキの乳首は限界まで硬く勃起していた。
「フブキさん、エロ過ぎ……。めちゃくちゃ発情してるじゃないですか……。一体どうしちゃったんですかぁ? ……まさか、いやらしいことされたんですか、生徒の息子に……。エッチなイタズラされたとか!?」
狐夏の詮索に思わずドキッとしたフブキは、僅かに残った理性の中で苦笑を浮かべた。
――さすが狐夏……。やはり勘が鋭い……。
しかしできることなら、少年との間にあった出来事については、狐夏にはあまり知られたくはなかった。
勿論、彼女をだまして隠しきるつもりは毛頭ない。後でしっかりと謝罪するつもりでいるのだから。
ただ、今はまだ心の準備ができていない。
というより、まともに語れるコンディションではない。
火照った身体は言うことを聞かないし、絶え間なく喘ぎ続けて舌は回らない。
そもそも思考が働いていない。
狐夏の素肌に身体を重ねながらも、頭に思い浮かぶのはどれもこれも卑猥なことばかり。
とにかく今は、恋人が与えてくれる快楽に身を委ねたかった。
彼女からの愛に、身を清めてもらうことだけに専念したかった。
狐夏に慰めてもらい、フブキは何度も何度も絶頂を繰り返した。
「あ゛っあ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ!!! あっ……イッくっううううん♡」
狐夏がクンニをすれば、フブキは腰を浮かせて潮を吹いた。
「乳首ッ♡ 乳首噛んでッ♡ おっぱい疼くの♡ おっぱいでイカせ……おっほぉああああああ♡♡」
狐夏が乳首を甘噛みして、乳房をギュウッと握り潰せば、フブキは背筋を反らせて痙攣した。
「はぁああ♡ ンハァあああああ♡ 響くぅ♡ 響くよぉ♡ 狐夏の腰の動き……僕の子宮に響いてるぅン♡ もっとッ♡ もっとぉおおおッ♡」
「私……もぉ♡ 私にも伝わるゥン♡ アッ!? フブキさんの方が……はげっ……激しいよぉ♡ 待ってッ! 速いッ! フブキさ……腰……速すぎ……ホアァ♡」
2人が下の口で双頭ディルドを咥え合い、夢中で腰を振り乱せば、2人揃って野獣のように泣き叫んだ。
狐夏の振動がフブキを狂喜させ、彼女の肉欲はますます激化する。
そうして、快感を求めて加速を続けるフブキの腰の揺らめきに、今度は狐夏が歓喜する。
「アヒィ♡ ヒャッ……あぁ♡ やっぱりぃ♡ やっぱり良いンッ♡ 狐夏が一番サイコォー♡ 狐夏とのセックス、サイコォー♡」
「わらひもォ♡ エッチなフブキさんしゅきぃ~♡ だいしゅきぃぃいいああああ♡」
狐夏が突けばフブキが悦ぶ
フブキが突けば狐夏が悦ぶ。
1本のディルドを通して、互いが互いの至福を共有し合っている。
2人は時間も忘れて、気持ち良くなることだけを考えて、何度も何度も腰を振り続けた。
そしてやがて。
「オ゛オ゛オ゛オォォン♡ イクぅ♡ またイクぅ♡ 狐夏とイッちゃうぅぅ♡ 一緒にイクぅううあ゛あ゛あ゛ぁぁぁ♡♡♡」
「ひゃい♡ イキますッ♡ わらひもイキましゅぅ♡ フブキしゃんとイクッ♡ イクのぉおおお♡♡♡」
それはもう、数えるのも馬鹿馬鹿しいと思えるほど。
フブキと狐夏は、何度目かの強烈な絶頂を迎えてついに力尽きた。
・・・
恋人との愛に満ち溢れたセックスを堪能し、全身に渦巻いていた性欲が解消されたことで、ようやくフブキは普段の冷静さを取り戻した。
その後、フブキと狐夏は2人でシャワーを浴びてから食卓についた。
狐夏が作ってくれた夕食を食べながら、フブキは狐夏に昼間の件を陳謝した。
さすがに事情を事細かに説明することには抵抗があったため、狐夏の癇に障らないように、できるだけ内容を嚙み砕いて真実を説明した。
それでも、やはり当然というべきか、事情を聴かされた狐夏は最初のうちは怒っていた。
珍しくも、ストレートに態度には表さなかったが、しかしそれでも手にしていた箸の動きはピタリと止まり、さっきまで元気だったはずの顔からも笑顔は消えていた。
眉間をピクリとも動かさず、無表情で話に耳を傾け続ける弟子の姿に、フブキは思わず不安を感じてしまった。
ところが、フブキが一通り説明を終えると、途端に狐夏は強張っていた表情を緩め、握っていた箸をゆっくりとテーブルの上に置いた。
それから、やれやれと言いたげな深い溜息をつくと、大きな黒い瞳を向かいの椅子に座るフブキに向けた。
「まったく……。ほんとフブキさんって、流されやすいっていうか染まりやすいっていうか……。ある意味、その生徒の息子よりも子供っぽいんじゃないですか」
そう言って、狐夏は呆れたように失笑を浮かべた。
鬼の師匠と弟子という間柄、普段なら毅然とした態度で指摘の言葉を述べるのはフブキの役目。言われてシュンと落ち込むのが狐夏の役目。
しかし今は、まるで立場が入れ替わったように、狐夏の意見にフブキの方が肩を小さく竦めていた。
「ううぅ……。狐夏にそう言われると、なんかへこむなぁ……。でも、返す言葉も無い。狐夏の言う通りだよ……」
そこには、いつもの覇気を纏った気高い師匠としての面影はない。そこにいるのは悄然と俯いている、普通の女子のような姿だった。
「んー……まあでも……、しょうがないから今回は大目に見てあげますよ。フブキさんの話を聴く限り、相手の子供にも家庭の諸事情があったみたいですし。フブキさんの行為も、最初はその子のことを想っての行動だった訳ですしね」
少しだけ優越感を醸し出しつつも、意外にも狐夏の言葉は怒気を感じさせない冷静なものだった。あまりにも意外過ぎて、フブキは驚愕して思わず顔を上げた。
予想では、我を忘れるぐらい怒鳴り散らすと思っていた。癇癪を起されると思って、覚悟していた。
「ま! 後半は殆どフブキさんが主導権を握っていたみたいですし、そのあたりの積極さだけは、正直どうかと思いますけどね?」
師匠を言い負かせるという滅多にないシチュエーション故に、明らかに調子に乗って遊んでいるのだろう。わざとらしく浮かべた意地悪な顔で、狐夏は揶揄うように続ける。
「……わかってる。ごめん! 本当にごめん! 僕が悪かったから!」
実際、今回ばかりはフブキも反論ができず、言葉の数だけ頭を下げることしかできなかった。
やがて、何度も謝るフブキを見ているうちに、今度は狐夏の方が申し訳ない気持ちになり。
「あの……もういいですから。そんなに何度も謝らないでください。なんかこっちが悪いことしてる気分になっちゃう。……それに今更ですけど、今回の件に関しては、私にだって原因があるんです」
「私にって……。なんで? どうして狐夏が?」
「昼間、1度フブキさんが私のところに電話をくれたじゃないですか。あの時、『フブキさんの言うことに間違いなんてない』って、無責任なことを言ったのは私ですから。今思えば余計なプレッシャーですよね。フブキさんだって人間なんだから、判断を間違える時だってあるのに……」
「いや、そんなこと……。狐夏が変に気にする必要なんてないよ……」
「いいえ、必要あるんですよ! 最終的に決めるのはフブキさんとはいえ、今回の判断の後押しをしたのは、間違いなく私です。だから私も、あまり強くはフブキさんを責められないっていうか……。とにかく! この話はこれでお仕舞いにしましょ! もう十分過ぎるぐらい気持ちは伝わりましたし。これ以上こんな話を続けたって、ご飯が不味くなるだけですよ!」
「うん……。そう……だね……。わかった、そうしよう……。せっかく狐夏が作ってくれた夕食だもんね」
「そうですよ! 愛情込めていっぱい作ったんですから、全部食べてくださいね!」
温め直した手料理の品々が、テーブルの上で湯気を立てている。
今日のメニューは狐夏の得意な和食料理だ。
肉じゃがに焼き鮭。醤油とごま油のお手製ドレッシングをたっぷりかけた和風サラダ。それに熱々の白いご飯とあさりの味噌汁。
つまらない話はそこそこにして、改めて2人は遅めの夕食を楽しんだ。
それからキッチンで仲良く並んで食器を洗い、リビングのソファーに座ってテレビを見ながら互いに肩を寄せ合った。
他愛のない会話を交わしたり、ドラマを見ながら感想を言ったり。
はたまた、女性らしく新作の化粧品や可愛い下着の話をしたり。
事の合間には、とくに意味もなく、ただ見つめ合ったり。
そしてそのまま、時折キスしたり。
時の流れがゆっくりと感じるような、誰にも邪魔されない2人だけの世界。
しかしそんな穏やかな時間の中で、突然何かを思い出したかのように、不意に狐夏が声を上げた。
「あ! そうだ、1つ忘れてました」
急に何事かとフブキが見据える中、狐夏は手元に置いていた自身のポーチの中からあるものを取り出した。
「これ。一応、フブキさんに返しておきますね」
そう言って、フブキに手渡したもの。それは、鬼の活動に必要不可欠なフブキの所持品。音撃戦士・吹雪鬼に変わるための道具――変身鬼笛・音笛だった。
「ああ、僕の鬼笛か。ありがとう。でも見た感じ、どうやら修理できなかったみたいだね」
天井に掲げるように持ち上げて、ジッと眺めるフブキの鬼笛の表面には、まるで強い衝撃でも受けたかのような、一筋の大きな亀裂が入っていた。
とある事情で狐夏に預けていたフブキの変身鬼笛。
ヒビ割れて壊れてしまっているが、後日、この道具が新たな痴態を引き起こす――。
おねショタにチャレンジしたくなったので、本編中断して書いてみた家庭教師編。
「『響鬼』の世界観でやる話じゃなくね?」とか、「鬼要素、ライダー要素どこ行った?」とか、そんな声が聞こえてきそうだけど、めげずに頑張る!!
変身時の服の消滅とか変身後の全裸とか。後は、他のシリーズ以上にはっきりと描写されている生物的肉体変化とか、ついでに非人型の敵が多いとか。
『響鬼』の設定って、ライダーの中でもある意味特殊で唯一無二だからか、R-18展開に持っていきやすいので、書いてて楽しいです。
同じ肉体変化系でも、クウガやアギトではイメージしづらいけど、『響鬼』に出てくるライダーは、変身後に行為に走っても、あんまり違和感は無い感じ。
まあ、原作の本来の世界観は、そんな展開とは程遠いクリーンな印象ですけど。
でもあまりやりすぎると、「悪乗りが過ぎるぜ!」、みたいな黄色い某監察医ライダーのようなお声が聞こえてきそう……。
それでも、「ノリの良い方が勝つんだよ!」という、プリンが好きな赤鬼さんの言葉を信じて、これからもめげずに頑張る!!