※この作品はR-18です。

祖国を裏切った女騎士と気の向くままに溶けあう話   作:アライ

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さあ、急ぎましょう


5話 過去の清算と

 あれからしばらく後。

 

 あなたはイングリットと共に帝都へ行き、アドラステア皇帝に謁見した。目的は、嘆願をする為である。

 仰々しく頭を垂れるイングリットとあなたを交互に見て、どういうわけか少し曇った様な表情をした皇帝は、内容が書かれた書簡を流し読みして、二つ返事で了承した。余りにも早すぎる裁断に、あなたは思わず当惑したが、皇帝は「信頼している」とだけしか答えなかった。

 

 

◇

 

 

 あなたはイングリットと共に、彼女の故郷の地に居た。

 元ファーガス神聖王国領、ガラテア。内湾に接している領土であり、寒流の影響をもろに受ける冷涼な北のファーガスの大地と比べると、まだ温暖な地と言えるだろう。このガラテアはフラルダリウス領共々、もし外界との貿易が始まった場合に、不凍港としての利用価値がある地形をしているとして帝国領に接収されていたが、嘆願によりあなたとイングリットの二人の裁量によって新たに統治する事が認められた。

 統治するにあたって、主屋となったのは、かつてのガラテア家。つまり、イングリットの実家だった場所である。

 

「この屋敷に帰ってくるのは、本当に久しぶりですね」

 

 イングリットは自身の記憶と照らし合わせるかの様に、かつての家を闊歩した。彼女が、士官学校に入学してから今に至るまで一度も帰省していないとすると、実に六年以上もの月日が流れている事になる。この地で生まれ、この家で育った彼女が、長い時を経て原点に戻ってきた。それはとても感慨深い物な筈なのに、彼女の歩みは弾まない。

 

「父も、母も居ませんか……」

 

 イングリットの実家には、彼女の親族は居なかった。戦争に駆り出されて死亡してしまった、というわけでは無いが、ガラテア家を守るために両親は王国側に就いたのだろう。王国の貴族であった彼女の両親は、敗戦と同時に蟄居が命じられ、住処を追われた。

 

「まあ、それが当然なのは分かっているのですが」

 

 奇しくもイングリットとあなたは、それの入れ替わりの形となった。彼女の親族が、どこで謹慎しているか。それはイングリットにもあなたにも分からない。だが、彼女の両親はいずれこの地へ戻ってくる可能性が高いだろう。それはガラテアの地に限った話ではない。新体制が築かれ、貴族制度の改革が行われたとはいえ、この広大なフォドラの地を統べるには、余りにも人手が足りなすぎるのだから。

 

「いつか父と母がお帰りになるかもしれない。そうなると先生の事を紹介しないといけませんね。まあ口を利いて頂けない、可能性の方が、高い、でしょうが……」

 

 イングリットの声は震えていた。その震えは、悪戯の発覚を恐れてビクビクとしている子供の様な軽いものでは無く、捕食者を前にして命の危険を感じ取っている小動物の様な、決してかき消す事のできない本能的なものだった。

 

「ああ……覚悟していた筈なのに。こうして帰ってくると、やはり、きついものが、ありますね……」

 

 あの日から、イングリットと共に歩むと決めたあなたは、彼女と過去を清算する事を決意していた。喜びも、悲しみも、苦しみでさえも、彼女と共有して、生きていく事に決めていた。

 立ち塞がる困難は並大抵の物では無いだろう。己の信ずる道だったとはいえ、この戦乱で失われたものは余りにも多過ぎた。引き起こされた過去を、そこに内包される思惑を無視してただ偏に清算すると言うのは、戦争の勝者の理に基づいた押しつけがましい想いかもしれない。だがそれでも、あなたは確かにイングリットの手を握った。彼女に一人では無いと伝える為に。

 

「先生……」

 

 そうすると、あなたの熱が彼女の手へと伝わった。

 

「んぁ、先生……。……! や、いけませんね……。今日は、その……この家で書簡の整理を行わないといけないのに」

 

 一瞬、惚けた表情をしたイングリットだったが、すぐに気を取り直した。手を握るという行為は中々に効果的で彼女の震えを確かに取り除く事はできたものの、あのまま続いていたら二人でベッドに直行していたかもしれない。あなたは気を付ける事にした。

 

 

 

 あなたはイングリットと共に、家に届けられた書簡の選別を行っていた。

 領民から徴収される租税、行商人の通行税、土地の所有税。これらの税が、節ごとに纏められた報告書。ガラテアはあまりに貧しく、決して税率は高いものではないが、意図的に申告漏れを起こしている者がいるかもしれないので気は抜けない。

 領内で起こった犯罪行為の書き記し、罪過の所定に、真偽の分からない告発書。領内の治安を守る為には、どれも見逃してはいけないもの。

 余りにも大変だった。貴族としての責務がどれ程までに大変か、聞いた事が無いあなたでは無かったが、それにしても多すぎる。

 

 そして、ずっと前から予想していたもの。

 

「やはり、ありましたか」

 

 差し出し人の分からない手紙。表装も特に付けられておらず、簡素な手紙だった。

 中には勿論、愛を謳う言葉なんて書かれていない。

 とびきりの憎悪と、それに連なるものがたくさん。

 

 元ファーガスの領土で裏切り者とその付き人によって行われる統治に対して、領民がどんな目を向けるか想像に難くない。

 

 最初にガラテアの地に赴いたとき、表立ってあなたとイングリットを誹る者は居なかった。二人とも帝国将として、猛然たる戦果を残していたのは有名だった為、反抗すれば容易に殺されると恐れていたのかもしれない。あるいは、ただ単純に何をしに来たのか分からず不気味だったか。

 

 しかし、それも長くは続かない。表立ってが無理ならば、裏から、というのは安直だが道理でもある。

 

「気が滅入りますね……これは……」

 

 その類いの物は量が多かったが、見分けは簡単な方だった。だがそれでも中身は必ず開封して確認しなければならない。手違いで大切な書簡が混じっている可能性も考慮すると、おいそれと廃棄するのもままならない。

 あなたは憎悪が積み重なった物の捌きをイングリットに任せたくは無かった。どうにも怒りの矛先のほとんどが、あなたでは無く彼女に対するものばかりだったからだ。元から敵国に居た人物と、自国の裏切り者。そのどちらに多く誹りが向かうかと聞かれたら、答えは明白だ。その上、この中にはガラテア領以外の土地から送られた手紙もあるだろう。ゴーティエ領、フラルダリウス領、ブレーダット領ならびに王都から領主を失った領民の嘆きが無い筈がない。民の嘆きを、憎悪を、今のイングリットに一身に受けさせるわけにはいかなかった。

 

「いいのです、先生。これは報いなのですから。決して忘れてはならない、私が受けるべき報い……」

 

 静止の声も聞かず、イングリットは一枚の手紙を手に取り、丹念にその手紙を読み進めていった。激情に駆られた者達の怒りや嘆きが、過去の所業を忘れさせまいと揺さぶりかける。ぐちゃぐちゃに書き殴られたその手紙からは、戦死した王国兵の帰りをずっと待つ、親族と思われる者の怨嗟の声が書き連ねられていた。

 

「……先生? どうして怒っていらっしゃるのですか?」

 

 その手紙を見て、思わずあなたは怒っていた。戦場には記録係なんて居ないのだから、誰々が、誰によって、どの様に殺されたか、そんな物を事細かに知る事はできない。なのに、この手紙はまるで仇がイングリットであるかの様に断定していた。

 末期の帝国と王国の戦争は、歴史上に類を見ない程の総力戦だったとまでに言われている。そんな激戦のなか、殺し、殺された者の顔なんて、誰も覚えていられる筈も無いのに。

 

「……そんなものは誰もが知っている事です。誰もが気づいていて、誰もが痛いほどに理解している。だからこそ、やり場の無い怒りを向ける先が必要となる。どの様な最期だったか、それが分からなければ尚更に。……昔の私が、そうであった様に……」

 

 イングリットは認められた手紙を隅々まで読んで、箱の中にしまった。

 

「かつての私も同じ様なものをずっと抱えていました。かの悲劇にて、王族殺しの主犯格とされていたダスカー人の事を、己の罪を自覚させながら、一族郎党根絶やしにしてやりたい──そんな風に思いながら、憎んで、憎み続けて」

 

 しかし、その悲劇はダスカー人によって起こされた物では無かった。それが分かったのはとても長い時を経た後のこと。フォドラを根本から揺るがしていたかの者が強大すぎた故に、おいそれとその事実を公表できるものでは無く、未だダスカー人の汚名を雪ぐ事は果たされていない。

 

「私はその怒りを同じ人種だからという理由だけで、かつての仲間だった者に無遠慮に当たり散らしてしまった。結局、それを最期まで謝罪する事は叶いませんでしたが。……全く、何が清廉なんだか。偉そうに言いましたが、案外先の手紙に書かれていた仇という者も、私だったりするのかもしれませんね」

 

 イングリットは自嘲した。それが自らの罪であるとして、女神に告解する様に。

 

「……はは、どうしてでしょう。この家に来てから、震えが止まらないのです。あなたという一番欲しいものを手に入れた私には、もう憂いなんて無かった筈なのに」

 

 ふらついたイングリットが、糸の切れた人形の様に力無く、しなだれ掛かってくる。か細い声で助けを求めながら、何かをねだる様に、あなたをよすがにして。

 きっと、このままでは政務もままならないだろう。

 

 

 あなたは女神では無いので、罪を赦す事はできない。

 だが、同じ道に立って共に贖う事はできる。

 

 

 

 

 

 

 

 事が決まればすぐだった。今のイングリットを放って置けなかったあなたは、彼女に誘われるまま、手を惹かれながら屋敷の中を連れていかれる。あなたにとってこのガラテア家は、今日日(きょうび)初めて足を踏み入れる場所なので、地理に疎く彼女がどこを目指しているか分からない。

 荒い息を吐きながら一度も顔を合わせようとしないイングリットは、とある角部屋の前で足を止めた。

 

 

「先生、ここに入ってください」

 

 

 木製の扉が軋む音をたてながら開かれた。彼女に促されるまま一室に入ると、中には生活感の無い空間が広がっていた。年代物のワイドチェストと、急ごしらえで整えられたと思われる大修道院の物よりも質素なベッド。他には壁にずっと掛かったままにされている額縁に、収められた家族と思われる人々の写真。それぐらいしか家具が置かれていない淋しい部屋だった。ベッドの上に南向きの大きな窓が付いているので風通しは良さそうである。

 

 

「ここは、私が幼少期より使っていた自室。今日はこの部屋で……」

 

 

 掴んでいた手を絡める様に触れ合わせ、語尾を蕩けさせておねだりをするイングリット。そんな彼女に最上の愛おしさを感じたあなたは、期待に応えるべく臨戦態勢に入ろうとする。彼女がこの部屋を閨に選んだ事に何か意味があるのは認識していたが、いずれ分かる事だろうと、理由を聞く事はしなかった。

 先に動いたのはイングリットの方だった。社交界に咲く花の様に軽やかな足取りで前に回り込んだ彼女は、あなたを押してベッドに腰掛けさせると、すぐ下にぺたんと座り込む。そしてそのまま、流れる様にあなたの分身を衣服から引き出した。

 

 

「私の方から、させて頂きますね……」

 

 

 イングリットは存在を確かめる為に、それを片手でふにふにと弄んだ。絡みついた指が這っただけで、あなたのものは直ぐに反り上がって大きくなってしまう。優しくさする五本の指が示す様にそのまま手淫に移行するのかと思われたが、あなたの怒張は彼女の凛々しい顔に吸い寄せられる。

 

 

「んくっ……はむっ……」

 

 

 イングリットは亀頭の部分を咥え込んで、粘液を擦り合わせる様に舌を這わせた。渇いていた先端が、時を移さず湿り気を帯びる。少しざらざらした感触がカリを包み込み、温度差を心ゆくまでに伝えながら形をなぞってきた。その度、彼女の熱い吐息が触れる様にして降り注ぐ。やがて十分な滑りを確認すると、上唇と下唇だけで亀頭を食み、心地良い圧迫感を与えながら、そのまま吸い上げてきた。あなたに聞いてもらう為にじゅるじゅると、わざと大きく音をたてながら。

 

 

「れる、じゅるっ……んっ、はふっ……」

 

 

 鈴口を無理やり押し開かれて、滑った舌を捻じ込まれた。それは先端しか入らなかったものの、その分彼女の舌先がちろちろと蠢き回る。中を這い回ったと思えば一度抜き、啄む様なキスを繰り返される。むせ返るような熱気の中、感触を堪能したイングリットは、次は竿をいたぶろうと、亀頭を舐(ねぶ)りながら口を更に下ろした。

 

 

「……っ、むぐっ?!」

 

 

 少し勢いが有りすぎたのか、その動作と共に亀頭の先がイングリットの喉奥を小突いた。突然の異物感に耐え切れなくなった彼女の喉が、脊髄反射で外に放り出そうとする。

 

 

「げほっ……けほっ……」

 

 

 イングリットはしゃぶっていたものを解放し、えずいた。それと同時に離れた彼女の口からどろりと唾液の橋が架かる。恐らく、根本まで深く咥えようとしたが口内に入りきらなかったのだろう。

 

 

「んぅ……調子に乗りましたかね……」

 

 

 大本の原因にも関わらず、ぴくぴくと誇らしげに動く剛直を、彼女は呼吸を整えた後、少し憎らしそうに睨んだ。

 イングリットはこれといった苦手技能が無いとても優秀な子だが、経験が少ない物事に対しては当然の事ながら弱い。大修道院での邂逅から彼女とは幾度となくお互いを満たす為に交わり続けてきたが、本格的に口で処理して貰うというのは今回が初めてとなる。

 

 

「少し趣向を変えてみますか……」

 

 

 イングリットはしゃぶるのでは無く舌だけを使って裏筋を舐め上げた。咥えながら行われていた時と違い、より機能的に、より機敏な動きで、舌が熱をもって這い回る。目で対象を視認しながら行えるというのは大きいのか、確かな質量を持って動く彼女の舌はとても正確だった。舐める度に身体の火照りを感じているのか、少し暑苦しそうに身を捩る。やがて堪え切れなくなったのか、熱気を解放する為に、彼女は大きく胸元を開けた。

 

 

「じゅ、れろっ……ちゅる……」

 

 

 彼女の口は、亀頭と竿と玉袋の三つを部位ごとに分け、重点的に責めていたが、決してそれらを同時に責める事はしかなかった。こそばゆい程に亀頭の上から舌を這わせたと思えば、口の中で唾液を付けながら玉袋をぬたくり回し、曲線を描く様に竿を舐め回す。小さく甘く媚びる吐息が、吐き出される度に口内の粘膜を熱く震わせる。その度に屈んだ状態で強調された胸が密かに弾む。

 初めてなのにも関わらず、驚く程に巧みなのは手淫によって得た性感帯の知識を利用して責めているからだろうか。仕込み甲斐がある、というのは酷い言いようだが、彼女がどうにも応用が素晴らしいのは事実だ。

 

 

「んんっ……。ここに、先生の視線を感じますね……」

 

 

 イングリットは開けた胸元に手を偲ばせ、包み込んでいた下着を僅かに横にのけた。それだけで薄く滲んだ汗が、柔らかそうな双丘の上で光に照らされ白く浮かび上がる。

 ベッドに腰掛けながら行われる口淫は姿勢の都合上、顔を見上げるというのは少々難しい。にも関わらず、彼女は本能的な感覚で一所に注ぐ視線を感じとったのか、その手つきはこれ見よがしに滑らかで更なる情欲をかき立てる。

 

 

「先生は胸がお好きなのでしょうか……?」

 

 

 どういう訳か、自分の胸を少しばかり一瞥したイングリットは、上気した息を整えてから──意を決してあなたに身を寄せてくる。彼女の両手が剛直を手繰りよせて──ぷるんと弾む、白く美しい双丘にそのまま挟み込まれた。すっぽりと嵌った両側から、柔かいという概念が形を持って訴えかけてくる。

 

 

「こう、でしょうか?」

 

 

 彼女の綺麗な形をした胸が弾む吐息と共に確かな感触を持って忙しなく上下する。それに伴って、淡い桜色の乳首が示し合わせたかの様に揺れ動く。艶やかな彼女の両手にかき集められた乳房が、ぐにぐにと色んな形になって、健気に包みこもうとしてくる。

 

 

「ん、んっ、んっ……。むぅ……」

 

 

 隙間が無くなる程に剛直がもみくちゃにされる。その度に彼女の熱い拍動がとくとくと胸を通して伝わってくる。包み込んでくる柔肉は膣内と全く感触が違う物だったが、本質的な物は同じなのだろう。浮かび上がる細やかな血管の形をも正確に覚えようと、埋め尽くして形を合わせてくる。彼女の双丘によって齎される快楽は、素晴らしく愛おしい物だった。

 しかし、何故か引き起こしている当の本人は少し不機嫌な表情を顔に表して隠そうとしない。

 

 

「舐めるには、少し足りませんね……」

 

 

 イングリットは己の胸を見て、そう呟いた。彼女の美乳は手で軽く揉もうとすれば少し余るくらいには大きいが、完全な巨乳というわけではない。

 攻めの流れから彼女は胸に挟みながら剛直をしゃぶろうとしたが、角度からか顎が邪魔して思う様に事が進まなかった。同時並行で行うというならば、手前に引き出せる程の厚みが必要となるだろう。それほどの物を持っている女性は一握りしかいない。

 

 

「私の周りには、結構な物をお持ちの方が多かったので、この様な奉仕をする際はどうしても気にしてしまうのです」

 

 

 胸と口。その二つを使って同時に責めなくても、彼女が引き起こしてくれる感触だけで十分な程だった。

 究極的に言えば、イングリットが誠意を持って奉仕してくれるだけで良かったあなたは、そういうものなのだろうか、と言った。

 

 

「はい、そういうものなのです。……ですが、これは気持ちの良いものなのでしょうか」

 

 

 疑問を抱いた表情をしながら、それでいて決して甚振る事をやめようとはせず、自らの双丘を横から、握り拳を使ってこねくり回す。彼女によって操られた谷間と先走りの汁がぐちゃぐちゃに混ざり合い、淫靡な音を奏でている。

 気持ち良いかどうか、尺度で測るならば、舌でしゃぶられたり、膣肉でぎゅうぎゅうに締め付けられている時よりも快感は弱いだろう。どこまで行っても結局の所、胸は脂肪の塊に過ぎず、挟み込みながら要所を的確に責めるというのも難しい。

 だが、胸を使って一生懸命に奉仕してくれているという事実が、胸を締め付ける程の幸福感を巻き起こしてくれるのだ。

 

 肉体的に満たされる動作がかの行為ならば、胸を使って奉仕して貰うというのは精神的に満たされる行為だと言える。

 

 

「なるほど。そう言われると自信が湧くというものですね」

 

 

 調子に乗ったイングリットは、得意げな表情をしながら、挟み込む圧力を存分に強めたり、逆に触れるかどうかといったギリギリまで離したりして、どれが一番効果的か学ぼうとし始めた。

 

 

「ふふ……これが良いんですか、先生?」

 

 

 一つ一つで与えられる快感が小さくても、それらは徐々に累積していく。精神的な物でも、肉体的な物でも、それは一緒の話だ。彼女から精神と肉体両方へ与えられる多次元の快感に、あなたは限界が近い事を悟った。

 

 

「こんな風にっ、こねくり回すとっ、どうでしょう?」

 

 

 それに加えて、豹変したイングリットの様子も効いていた。普段からは考えられない彼女の側面がこうして表に出てくると、彼女と心を許すまでの仲に成っている事を再認識させられて、どうしようもない程の幸福感に打ちひしがれてしまう。

 

 

「いきそうなんですね?」

 

 

 どこか嗜虐的な笑みを浮かべながら、イングリットはそう言った。最後は顔を見ながら果てたい──そんな言葉を口に出していないのにも関わらず、表情から悟られたのか彼女は何も言わずにあなたをベッドと接する壁に押し付け、よりお互いの顔が見やすい体位に遷移した。

 

 

「先生、出して……?」

 

 

 彼女が遠巻きに発した声が、まるで耳元で囁かれた様に聴こえた。これでトドメと言わんばかりに挟んでいたものが艶かしく上下し、締め付ける。

 精巣がキュッと迫り上がる様な感覚がしたと同時に、精液が尿道を押し広げて、上へ上へと存分に這い上がってきた。

 

 そして──何の情緒も無く、吐き出される。

 

 

「っ……ふふ、こんなに出されるなんて……」

 

 

 びゅっ、びゅっ、と圧のかけられた水の様に飛び出した精液が、獣性剥き出しのイングリットの顔や胸に次々とかかっていく。勢いに驚いたのか、途中で彼女は目を閉じてしまったが、その身を動かして避ける事はしなかった。

 

 無茶苦茶に汚されてしまったのにも関わらず、精液の熱をその身で感じたイングリットは、胸の上に吐き出された成果物を愛おしそうに眺めていた。

 そして、収まりきらない熱を糧としながら──彼女はあなたに耳打ちをする。

 

 

「せんせい……これで終わりじゃ、ないでしょう?」

 

 

 くらくらと眩暈がしてくる程に、どうしようも無くなってしまう程に──その誘いは甘美だった。

 きっとこのままでは、場所は変われどいつもと同じ様に彼女と睦み合う事になってしまうのだろう。それが彼女の自己防衛の為の手段だと薄々気付いていながら──あなたはその誘いを断れなかった。




本当は五話で終わる筈だったんですが、一万字超えそうだったので分割しました

リシテアちゃんゆるして
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