※この作品はR-18です。

セックスと死人殺しのヴォドゥン   作:ドグラ葉

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弐、男娼月天

「それじゃあ、まずは背中を流すから、そこに座って」

 

 体を重ね合う事に合意した四十九(しずく)に、十々丸(ととまる)が最初に指差したのは浴室に備え付けの、二股に割れたプレイ(・・・)にも使える椅子だった。

 そういった知識が朧気な四十九(しずく)が一先ずそれに従い、ひんやりとした石造りのそれに腰を掛けると、四十九(しずく)の背中越しに手を伸ばした十々丸(ととまる)がシャンプーのボトルから乳白色の液を手に取った。

 

「見た目は真っ平らだけど、結構柔らかいでしょ?」

 

その際に、背中に触れたふにょりとした感触に、四十九(しずく)が少し身動ぎしたのが伝わったのか、耳元で十々丸(ととまる)が悪戯っぽく囁いた。そして、離れる前に一度、ねっとりと絡みつくように胸元をくねらせると、思わず振り返った四十九(しずく)の前で、けらけらと笑いながら掌でシャンプーを泡立てたのだった。

 

「おかゆいところありませんかー」

 

「大丈夫かな」

 

 ワザとっぽく、そう言いながら、四十九(しずく)のぼさぼさの髪にシャンプーを馴染ませて、長めの爪をしながら、器用に頭皮に指の腹を這わせる十々丸(ととまる)。そんな十々丸(ととまる)の手練に身を委ね、四十九(しずく)は静かに目を閉じた。

 

(温かい……)

 

 頭全体をマッサージする様なその感覚に、四十九(しずく)は思わずほぅと溜息を吐く。

 十々丸(ととまる)の誘いから想像する様な性的なそれとはまた別の、酷く安心感のある快感が頭の天辺から四十九(しずく)の全身へと降りて来る。時折、カリカリと耳の裏やうなじを擦る感触が通り過ぎ、最後に髪全体を揉み洗いする感触に移り、

 

「はい、かんりょー」

 

その感触が唐突に途切れたのと同時に、外の土砂降り以上の湯が天頂からざぱーんと浴びせかけられたのだった。

 

「わっぷ」

 

思わず声を漏らす四十九(しずく)に、悪戯を成功させた十々丸(ととまる)がけらけらと笑う。その一瞬の隙に四十九(しずく)がもう一つの桶でお湯を掛けると、反撃を受けた十々丸(ととまる)が今度は「わっぷ」と声を上げたのだった。

 

「酷いな、おにーさん。男娼虐待だよ? ちんちん付いてないけど」

 

「先にやったのは十々丸(ととまる)くんだからね。取れちゃったもんね」

 

おどける十々丸(ととまる)に、四十九(しずく)も軽口で返す。それがツボに入ったのか、また一頻り笑った十々丸(ととまる)が「じゃ、次は」と言って肌の薄い胸元から胎にかけて、全体にまぶす様にボディソープを塗っていく。

 

「んっ……」

 

そして、ぺちゃりと音を立てながら、四十九(しずく)の背中にしなだれかかる様に、自分の身体を重ね合わせたのだった。

 浴室の冷気で、少し冷たくなったボディソープと滑らかな十々丸(ととまる)の肌の感触に、四十九(しずく)も思わず目を細める。そんな四十九(しずく)の背で、十々丸(ととまる)が「うわっ」と少し驚いた様に声を上げた。

 

「? どうかしたの、十々丸(ととまる)くん」

 

「ん? ああ、おにーさんの背中、こうして触ってみると見た目以上に逞しいなって思ってさ」

 

「あー、まあ、一応四六時中剣を振ってるからね」

 

「十々丸(ととまる)くんと会う時は何時もオフだしね」と独り言ちる四十九(しずく)に、十々丸(ととまる)も「やっぱり、見てるだけと、実際に触ってみると大分違うね」と頷いた。

 

「じゃ、始めるよ」

 

「宜しく」

 

そして、四十九(しずく)の背中に十々丸(ととまる)が抱き着く。ぬちゃりとボディソープがやけに蠱惑的な音を立てる中、十々丸(ととまる)が四十九(しずく)の背中で身をくねらせた。

 十々丸(ととまる)が蠢くたびに、浴室内でにちゅにちゅという粘性の音が反響を繰り返す。

 

「んっ……」

 

耳朶を打つその音の中で、四十九(しずく)のものとも十々丸(ととまる)のものとも取れない音が漏れ出た。シャボンに濡らされた十々丸(ととまる)のきめ細かな肌の感触に晒され、四十九(しずく)が僅かに身を固くしたのに気づいたのか、十々丸(ととまる)がちろりと長い舌を伸ばして四十九(しずく)の耳たぶをチロチロと擽った。

 

「くっ」

 

 同時に前に伸びてくる十々丸(ととまる)の、体格の割に長い両腕がぬらぬらと四十九(しずく)の身体を弄(まさぐ)ってくる。そのぬらぬらとした愛撫に四十九(しずく)は思わず声を漏らした。

 

「気持ちいい? おにーさん」

 

耳元で、熱に浮かされた声が脳髄に響いた。

 

「僕の身体、気持ちいい?」

 

そう、繰り返し問い掛けてくる声の主(十々丸)に、四十九(しずく)は大丈夫と返す様に、肩越しに伸ばされた細腕をぽんぽんと優しく叩いた。

 

「良かった」

 

四十九(しずく)の答え(・・)に、十々丸(ととまる)が漏らした声は心の底から嬉しそうだった。

 二人が身体を重ね合ったまま、にちゅにちゅというそれだけが続いていく。結合音にも似たそれの中で、次第に四十九(しずく)の耳元で、微かだったはずの十々丸(ととまる)の吐息が次第に荒く、そして大きくなっていく。

 それに合わせて、次第に激しくなる十々丸(ととまる)の腰使い。二人を隔てていたボディソープが、十々丸(ととまる)の肉体によって、理性の薄皮の様に徐々に剥されていき、とうとう潤滑油を失って直接擦れ合う様になった四十九(しずく)と十々丸(ととまる)の肌が次第に熱を帯びていく。それに伴い、鋭敏になっていた四十九(しずく)の背は、きめ細かな肌の感触とは別に、背筋を線で引っ掻く、コリッとした感触を感じていた。

 

「ふあっ!?」

 

小さな悲鳴と共に、唐突に十々丸(ととまる)の蠕動が途切れた。絶息した蛙が空気を求める様に、天井を向いて、はっはっと荒く息を吐きながら、四十九(しずく)に抱き着いた十々丸(ととまる)がぶるっぶるっと痙攣を繰り返している。

 

「十々丸(ととまる)くん?」

 

思わず振り返った四十九(しずく)に、「だ、だいじょーぶ」と俯いたまま告げた十々丸(ととまる)が、手を出して制止してくる。しかし、何処か焦った様子で、「お風呂での前戯はここまでだから、先ベッドで待っててよ」と口早に言ってくる。

 

「えっと?」

 

流石に唐突な言葉に、四十九(しずく)は思わず「十々丸(ととまる)くん、本当に大丈夫?」と問い掛ける。

 

「大丈夫。ホントに大丈夫だから……」

 

「あー……」

 

「良いから。……僕も直ぐに行くからさ」

 

それでも尚逡巡する四十九(しずく)に、十々丸(ととまる)はそう言って、ザーッとシャワーで流してくる。

 

「……それじゃあ、先に出てるから」

 

「うん」

 

奇麗さっぱり体に付いた石鹸を洗い落とされた四十九(しずく)が言うと、十々丸(ととまる)は相変わらず俯いたまま、こくっと頷いたのだった。

 

 

 

 

     ◆

 

 

 

 シャワールームから出た四十九(しずく)は部屋の中心に置かれたダブルベッドの端に腰かけて、ぼんやりと光の淡い室内灯を見上げていた。

 浴室から出てきて身繕いを終えたものの、直ぐに行くと言っていた十々丸(ととまる)の方が中々出てくる気配が無かった。

 

(まあ、決心が鈍るって事はあるかな)

 

 先の一時は十々丸(ととまる)から言い出したことではあったものの、互いにアルコールも入っていた中で、十々丸(ととまる)の方が今日の事に気が参っていた可能性は少なくないと、彼(十々丸)が置き残したワインボトルと燻る紙煙草の臭いに鼻孔を擽られながら、四十九(しずく)は思案する。

 

(それならそれで、仕方ないか)

 

 勢いで身体を重ねたものの、ペッティングを一頻り終えて冷静になった可能性はあるし、それなら、友人である十々丸(ととまる)に、無理をさせる訳にもいかないよねと四十九(しずく)は内心独り言ちた。

 

「お待たせ。ごめんね、おにーさん。時間かかっちゃって」

 

 が、そんな四十九(しずく)の思案を他所に、淡いピンク色のバスローブを来た十々丸(ととまる)が身繕いを終えたらしく、ひょこりとバスルームから顔を出した。

 

「いや、僕はそんなだけど……」

 

とことこと近付いて来た十々丸(ととまる)が、ついっと触れ合いそうな距離に立ったのを見上げて、四十九(しずく)は「十々丸(ととまる)くんは大丈夫?」と首を傾げた。

 

「全然。むしろ、おにーさんとのエッチが少し楽しみになっちゃってるくらいさ」

 

そう言って、悪戯っぽく笑った十々丸(ととまる)がタオル地のバスローブの帯をゆっくりと解いた。

 頼りなさげな細紐がはらりとほどけ、桃色のバスローブの奥から、湯気で朧気だった十々丸(ととまる)の身体が、先刻以上に克明に曝け出されていく。

 微笑を浮かべた美貌の下、形の良い頤から下りた細首に、妙になまめいて見える鎖骨を通りうっすらと浮かぶ薄い胸の谷間。

 肉付きは薄いが、それでも男性では無い柔らかさを感じさせる胸元で、つんと上向いた桜色の乳首がぷっくりと膨らんでいた。

 胸元の下ではうっすらと肋が浮き、柔らかそうな水月の中心を通った筋が縦筋のへそを過ぎ、無毛の割れ目がほんのり色を帯びて、情気を帯びた粘液がてらてらと零れ出ている。

 

(うわっ……)

 

その光景に、四十九(しずく)は思わず内心で呟いた。

 元々、十々丸(ととまる)の身体の色香は知っていた。大衆浴場に行った時も、男性であるにも関わらず、多くの入浴客が振り返ってやまなかったし、四十九(しずく)も初めの頃は思わず目を惹かれる事が少なくなかった。しかし、今目の前にある十々丸(ととまる)の裸体は、そんな記憶の中のそれとは比べものにならない艶かしさを現わしていた。

 

「どう? おにーさん」

 

身をかがませて、囁くように問い掛けてくる十々丸(ととまる)。切り揃えられた横髪が、ふわりと揺れて擽って来ると、それに乗って、今四十九(しずく)が使ったばかりのシャンプーの香りが漂ってきた。

 十々丸(ととまる)のその仕草に、思わず四十九(しずく)が両目を瞬かせると、ちらりと下を見てズボン越しに隆起した四十九(しずく)の股間を捉えた十々丸(ととまる)が、片目を開いて「どうやら、おにーさんも、その気になってくれたみたいだね」と呟いた。

 

「僕も……」

 

そう呟いた十々丸(ととまる)が、四十九(しずく)の太腿を跨ぐようにしてベッドに登る。四十九(しずく)の膝の上に、ぺたんと座り込むと、少しだけ腰を上げて、四十九(しずく)の顔に身体を売っていたとは思えないほど初々しい色合いの胸元を近付けた。

 

「見て、おにーさん」

 

十々丸(ととまる)が口遊む。

 

「おちんちんが無くなっちゃっても、僕の身体は勃ってばっかりってね」

 

謳う都度にムクムクと膨らむ十々丸(ととまる)の乳首は、いっそ痛そうなくらいビンビンに勃起していた。

 そんな、コリコリに固くなった乳首を誇る様に、シュルリとバスローブを脱ぎ落した十々丸(ととまる)は、自分の手をうなじに這わせて、無防備な姿のまま薄っすらと肋の浮いた胸元を逸らす。

 

「いっぱいいじめて。おにーさん」

 

そして、とうとう我慢できなくなった様子で、情欲に満ちた吐息を吐きながら、十々丸(ととまる)は勃起した乳首ごと、薄くも柔らかな胸をプルプルと四十九(しずく)の顔に擦り付けたのだった。

 

「んぁ!?」

 

 突然の荒々しいマーキングじみた媚態に思惑声を上げた四十九(しずく)の口に、コリッとした感触が引っ掛かる。

 

「いひっ!?」

 

それは十々丸(ととまる)の方も同じだったのか、鋭い刺激を受けた十々丸(ととまる)も歯を食いしばって悲鳴を上げた。

 

「っ、も、もっと」

 

そう言って、十々丸(ととまる)が四十九(しずく)の頭を抱き寄せてくる。少し迷った四十九(しずく)だったが、自分も同じように十々丸(ととまる)の細腰を抱き寄せると、言葉通りもっともっとと強請る様に勃起する、十々丸(ととまる)の乳首に舌を這わせたのだった。

 初めは舌の平で舐め上げる様にすると、乳輪の少しザラりとした感触が柔肉を通して脳髄に直接伝わって来る。その中心で四十九(しずく)の舌にクニクニと引かれ、ぷりっと跳ねるそれを見つけ、転がす様に舌先で弄ぶと、十々丸(ととまる)が四十九(しずく)の頭を抱いたまま、「あぐっ!?」と身体を仰け反らせた。

 

「んむっ!?」

 

そのまま、薄く柔らかな胸に頭を束縛された四十九(しずく)の舌に、ふるっふるっと震える十々丸(ととまる)の乳首の感触が伝播する。

 一分、二分。暫くそうしていると、ふっと十々丸(ととまる)の腕が緩み、同時に力尽きた様に十々丸(ととまる)が四十九(しずく)の太腿の上にぺたりと座り込んだ。

 荒く息を吐く十々丸(ととまる)。その下でぐっしょりと濡れた股間が四十九(しずく)のズボンをしとどに湿らせていたのだった。

 

「大丈夫? 十々丸(ととまる)くん」

 

「ん、へーき」

 

頷いた十々丸(ととまる)がチラリと四十九(しずく)を見上げる。

 

「おにーさんさ」

 

「うん?」

 

「何か、おっぱい舐めるの凄い慣れてない?」

 

「そうかな?」

 

「うん」

 

頷いた十々丸(ととまる)がコテンと首を傾げる。

 

「もしかして、おっパブとか凄い行く?」

 

「いや、そっちのお店は経験無いけど」

 

十々丸(ととまる)の疑問に、四十九(しずく)は直ぐに首を横に振る。娼館は何度か経験もあるし、何なら十々丸(ととまる)におすすめの店を聞いたこともあるが、そっちだけの店には経験が無かった。

 

「でも、すっごい気持ち良かった」

 

「そう?」

 

「うん。射精しそうなくらい」

 

「乳首から?」

 

「母乳をね」

 

「そりゃ良かった。……良かった?」

 

ニッと笑って親指を立てる十々丸(ととまる)に、四十九(しずく)は若干首を傾げた。

 

「僕を一日貸し切りにして、延々と乳首しゃぶってたおばーさんの上を更新してるから誇って良いって」

 

「……十々丸(ととまる)くん」

 

「うん? ひぅっ!?!?」

 

「やっぱり」

 

十々丸(ととまる)の悲鳴が響く中、たった今愛液でぐちゃぐちゃになったばかりの彼の秘所に手を伸ばし、四十九(しずく)はじっとその感触を指先で味わった。

 初めて手を入れた四十九(しずく)の膣はぐねぐねとした蠕動と、ヒクヒクとした痙攣を繰り返していて、経験が浅い四十九(しずく)が触れても、明らかに恍惚の先から帰ってこれないでいた。

 

「あー、バレちゃったか」

 

ぬちゃりと指を引き抜いた四十九(しずく)が、とろりと糸を引く十々丸(ととまる)の愛液を弄んでいるのを見て、当の本人はばつが悪そうに頭を掻いた。

 

「僕もおにーさんとの身体の相性がこんなに良すぎるなんてのは予想外でさ……ちょっと、余裕が無かったんだよね」

 

「ぼくとしては光栄……なのかな?」

 

十々丸(ととまる)の言葉に、四十九(しずく)も軽く首を傾げる。

 

「けど、別に隠す必要なんて無かったのに」

 

「僕にだって、男としての意地があるんだよ」

 

十々丸(ととまる)がそう言って、黒曜の唇を尖らせた。どうやら、ルージュを引き直したらしい。

 

「まあ、気持ちは分かるよ」

 

十々丸(ととまる)の言葉に、四十九(しずく)も同意する。

 

「僕も死人狩りで、本職じゃない人に負けたら、いい気分じゃないし」

 

「だろ?」

 

四十九(しずく)の言葉に、十々丸(ととまる)がこくこくと頷きながら身を乗り出した。

 どことなく、二人の間に弛緩した空気が流れる。笑い出したのはどちらからか、十々丸(ととまる)がふっと表情を緩め、「ん、もうだいじょーぶ」と言うと、体全体を預ける様に、四十九(しずく)にしなだれかかかってきたのだった。

 

(軽っ……)

 その十々丸(ととまる)の身体を受け止めると、四十九(しずく)は思わず内心で呟いていた。

 胸だけでなく全身が華奢で、特に、細腰は風にも耐えずといった細身の身体つき。しかも、身長も小柄で四十九(しずく)よりも顔一つ分は小さな十々丸(ととまる)の体は、冒険者の四十九(しずく)にとっては羽毛よりも軽くすら感じられた。

 

「うわっ!?」

 

と、友人(十々丸)の身体を受け止めて、思わずそんな感想を抱いていた四十九(しずく)の首筋を、不意にぬめっとした感触が襲った。

 

「十々丸(ととまる)くん……」

 

「仕返しだよ、おにーさん」

 

思わず、恨めしげに振り向くと、右目を開けた十々丸(ととまる)が悪戯成功とばかりに、くっくっくっと含み笑いを漏らしていた。

 そして、四十九(しずく)の前で、もう一度長い舌を伸ばすと、見せ付けるように四十九(しずく)の首筋に甘くカプリと噛み付いたのだった。

 

「うっ……」

 

今度は不意討ちじゃなかったからか、四十九(しずく)もグッと唇と共に声を噛み殺した。そのまま、ねぶるように四十九(しずく)の首筋を愛撫する十々丸(ととまる)の舌は、突然された時のような鋭い快感ではなく、じんわりとした心地好さを四十九(しずく)へと伝えてきた。

 そんな、十々丸(ととまる)の媚態に誘われる様に、四十九(しずく)も十々丸(ととまる)の小柄な身体を抱き寄せていた。

 何処か労る様に、四十九(しずく)の飄々とした風貌に似合わず、肉付きの良い両腕が十々丸(ととまる)の少し骨張った背中を這い回ると、十々丸(ととまる)はむずがるように「んっ……」と漏らして、ふるりと身を震わせた。

 

「……」

 

「……負けないよ、おにーさん」

 

思わず顔を見下ろした四十九(しずく)に、一瞬目を見開いた十々丸(ととまる)は、直ぐにニヤッと笑って、今度は四十九(しずく)のズボンに手を伸ばしてきた。

 

「ん、おっき……」

 

 ボロンと音を立てて飛び出た四十九(しずく)のぺニスに、十々丸(ととまる)は何処か陶酔した表情で呟いた。そして、黒いマニキュアの引かれた指先で、弄ぶようにツンツンと、赤く膨らんだその先を突っついてくる。

 

「そう?」

 

首を傾げる四十九(しずく)に、「ま、流石に付いていた時の、僕程じゃないけどね」と笑いながら、十々丸(ととまる)は四十九(しずく)のぺニスを握ると、少しだけ焦らすようにやわやわとシゴキ始めたのだった。

 

「どう?」

 

十々丸(ととまる)が問いかけてくる。

 

「僕の手、気持ちいい?」

 

重ねる言葉に合わせて、次第にストロークが速くなる。

 

「男娼の手でしごかれて、おちんちん気持ちいい?」

 

そんな、なぶる様な言葉使いに翻弄されて、思わず四十九(しずく)が恨めしげに見下ろすと、それ以上に情欲に浮かされた十々丸(ととまる)が頬を上気させて四十九(しずく)を見上げてきていたのだった。

 

「……おにーさん」

 

じっと見詰め合う四十九(しずく)と十々丸(ととまる)。そんな、二人の沈黙を破るように、見上げた十々丸(ととまる)が、何処かもの寂しげな甘い声を漏らした。

 その声に誘われて、思わず唇を落とそうとしたところで、四十九(しずく)はハタと動きを止めた。そんな四十九(しずく)に、十々丸(ととまる)の両目が「何で?」と恨めしげに見開かれた。

 

「いや、キスは止めておいた方が良いかなって……」

 

その視線に、四十九(しずく)は慌てて、そう口にする。自分で口にしておきながら、言い訳染みてるなとバツが悪くなる四十九(しずく)を見上げ、「気にしなくて良いのに」と十々丸(ととまる)が苦笑した。

 

「いや、でもさ」

 

「おにーさんがもらってくれなきゃ、他の知らない誰かに渡すだけになっちゃうんだけど」

 

そう言って、四十九(しずく)の男根から手を離した十々丸(ととまる)がグッと身を乗り出してきた。

 

「おばーさんとかとは散々やったから、ヴァージンって訳じゃないけど、男の人とは本当に初めてだから……」

 

そう言って、十々丸(ととまる)は目を閉じると、黒い口紅の塗られた唇を、ツイッと何かをねだるように上向けたのだった。

 

「……分かったよ」

 

一秒、二秒、そして更に少しの逡巡を重ね、ふぅと溜め息と共に意を固めた四十九(しずく)は、努めて大切に、出来得る限り限り優しく、十々丸(ととまる)のそれに、自分の唇を重ねたのだった。

 

(柔らか……)

 

 唇の先が微かに触れた瞬間、四十九(しずく)が最初に感じたのは、此方の唇に吸い付くように馴染む、十々丸(ととまる)の唇の肌だった。次いで、ゼリーを思わす、ぷにっとした儚げな弾力。そして、それが押し潰されると、不意にぷりっとした芯のある弾力が顔を出した。

 冒険者どころか、安娼婦では絶対に有り得ない、その感触に四十九(しずく)は思わず魅了されていた。

 ふっふっと息を漏らしながらも、何度も唇を押し付けて、その感触を楽しんでいると、不意にその割れ目から塗らぬらとした粘肉が躍り出てきた。

 

「!?」

 

思わず見開いた四十九(しずく)の両目に写ったのは、悪戯っぽい十々丸(ととまる)の視線……ではなく、常には想像もつかない様な、熱を持った十々丸(ととまる)の黒白が逆の切れ長の両目だった。

 その瞳に虚を突かれて、硬直した四十九(しずく)の口内で、ぬらぬらの蛇がうねり狂った。

 僅かに開いた四十九(しずく)の上下の歯の隙間から、ぬるりと割り入ってきたそれは、たちまち自身の体液と四十九(しずく)の唾液を絡め合わせると、口腔の全てをしゃぶり尽くす様に、上顎から舌の裏の柔らかい肉までを這いずり回った。

 

「っ!?」

 

そして、咄嗟の事に四十九(しずく)の舌が律動すると、それを察知した十々丸(ととまる)の舌は一瞬で四十九(しずく)のそれを絡めとり、纏った二人分の体液を搾りあげた。

 じゅっ……じゅっ……と、十々丸(ととまる)が四十九(しずく)の舌にしゃぶりつき、唾液を貪る音だけが狭い室内に木霊した。

 永遠とも思える蹂躙と貪食が過ぎ、ふっと四十九(しずく)の視界が明るくなった。

 

「美味し……」

 

しかし、開けた視界の、その先では鼻先をチョンチョンと触れ合わせながら、十々丸(ととまる)がねつびょうに浮かされたような表情で、夜色のルージュの引かれた自身の唇を、四十九(しずく)に見せ付けるように舐めずって見せたのだった。

 

「十々丸(ととまる)くん……」

 

思わず呟いた四十九(しずく)に、十々丸(ととまる)は「おにーさんの唾、すっごい美味しい」ともう一度呟いた。

 にちゃりと音を立てて開かれた、十々丸(ととまる)の口腔の中心から、じゅるりと這い出した唾液まみれの長い蛇が、四十九(しずく)を挑発するようにチロチロと律動をしている。

 その先からトロリと零れ落ちた雫が、ぬらぬらと妖しく夜光を弾きながら、ぬるりと四十九(しずく)の唇を犯した。

 

「……くひっ♥」

 

その光景を見下ろした十々丸(ととまる)の口から、脂ぎった中年冒険者から出るような、下品で蹂躙欲にまみれた下世話な声が漏れ出た。

 何時の間にやら、十々丸(ととまる)に押し倒される体勢になった四十九(しずく)の上で、十々丸(ととまる)がくちゃくちゃと音を立てながら、白いお尻をくねらせた。既にドロドロになった愛液が、晒された四十九(しずく)の先走り液と混じりあい、触れ合った先からてらてらと淫靡な光を放っている。と、

 

「ひんっ!?」

 

 最早、縛り上げられた女性を前に舌舐めずりする暴漢の様な表情で、四十九(しずく)の雄を股座の口でねぶり回していた十々丸(ととまる)が、不意に可愛らしい悲鳴を上げた。

 

「十々丸(ととまる)くん!?」

 

慌てて身体を起こした四十九(しずく)の上で、十々丸(ととまる)がプルプルと震えていた。

 

「え、大丈っ!?」

 

問い掛けようとした四十九(しずく)の声が、不意に走った快感によって断ち切られた。

 

「ちょっ!?」

 

思わず抗議の声を上げようとしたところで、今度はその口を黒い唇で再び塞がれてしまう。

 「んむーっ!」と呻く四十九(しずく)の上にのし掛かりながら、十々丸(ととまる)が全身で四十九(しずく)の身体を嬲りあげた。

 やがて、ちゅぽんと音を立てて、十々丸(ととまる)の唇から解放された四十九(しずく)が再度抗議を口にしようとしたところで、それは十々丸(ととまる)の「おにーさんが悪いんだぜ?」という声に遮られた。

 

「は?」

 

十々丸(ととまる)の理不尽な物言いに、流石に四十九(しずく)が訝るが、そんな四十九(しずく)に見せ付けるように、十々丸(ととまる)は、より過敏にドロドロと粘液を吐き出す股間を持ち上げる。

 

「さっき、おにーさんのちんちんにビンタされちゃったんだから」

 

そう言って、にちゃりと自分の秘肉を割り開いた十々丸(ととまる)が、ピンッと勃起した淫核をヘコヘコと突き出してくる。

 

「僕のおちんぽ、おにーさんのちんちんにビンタせいで、こんなに腫れて、泣いちゃってるじゃん」

 

腰を振る都度に固くなって見える十々丸(ととまる)のクリトリスはじゅくじゅくと充血して、今にも大量の精液を吐き出しそうな色をしていた。

 

「責任とってよ、おにーさん」

 

そう言いながら、十々丸(ととまる)が四十九(しずく)の鼻先を、それ(クリトリス)でくりくりとくすぐった。後に残った淫臭が、麻薬のように四十九(しずく)の脳髄を刺激した。

 

「ねえ、おにーさん……」

 

「……」

 

何処となく甘える様な、それでいてサディスティックな色を浮かべる、十々丸(ととまる)の黒白目に見下ろされながら、四十九(しずく)は躊躇うようにしながらも、チロッと舌を出した。

 

「あはっ♥」

 

その瞬間、十々丸(ととまる)の顔を強烈な圧迫感が襲った。

 

(んむっ!? って、無駄に器用な……)

 

 唇に無理矢理捩じ込まれたコリッとした感触に、四十九(しずく)が思わず目だけで十々丸(ととまる)を見上げると、十々丸(ととまる)は「十字館(じゅうじかん)のトップ竿師は伊達じゃないってね」と右目を開いて口角をもたげた。

 

「もっと、もっともっと深くまで僕のクリちんぽ飲み込んでよ、おにーさん」

 

そして、まるで本当に勃起したペニスを喉の奥に捩じ込むかのように、ベチャッベチャッと乱暴に音を上げて、十々丸(ととまる)は四十九(しずく)の顔に自分のおまんこを打ち付けてくる。

 肉付きが薄い割に、ふっくらと柔らかく、そして絶妙にコントロールされているのだろう。確かに下になる四十九(しずく)は無用な痛みは感じない。

 

(まあ、いいけど……)

 

 どうにも、自分の男根ありきのプレイに没頭してしまったらしい十々丸(ととまる)を、四十九(しずく)はしょうがないと受け入れる。

 

(普段なら、出しても直ぐに勃って、失神したお客さんを延々と犯すのが仕事だしね)

 

 以前、酒の席で聞いた、十々丸(ととまる)の人気プレイを思い出し、四十九(しずく)は内心でやれやれと呟いた。

 

「はぁっ、はぁっ。腰が、止まらなッ、おにーさんにするのっさいこっ。僕の卵巣絶対ザーメン吐き出してるって」

 

歯を食いしばった口の端からつつっとよだれを漏らし、それでも延々と腰を振るっていた十々丸(ととまる)の身体がぶるっと微かに震えた。

 

「イ、イクよ、おにーさん。でるっ、でるッッ!! 濃いの、出っんうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「んぶっ!?!?」

 

そして、絶叫と共に、ブッシャァ!! と音を立てて噴き出る夥しい量の透明な十々丸(ととまる)の体液に四十九(しずく)は思わず声を上げた。今までの粘性のそれとは違う代わりに、壊れた蛇口の様に噴き出てくるそれに、四十九(しずく)は冗談抜きで自分が水攻めを受けているとすら錯覚した。

 

「あ……っは」

 

やがて、長い絶頂が終わったのか、十々丸(ととまる)がどさりとベッドの上に崩れ落ちる様に座り込んだ。

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

 先の話から、数時間だろうか。たったそれだけの時間でも、性豪で鳴らした十々丸(ととまる)にとっては苦痛極まりない禁欲生活だったらしく、何もない天井を仰いだ十々丸(ととまる)は「やっぱ、射精さいこー」と溜息を洩らし、

 

「辞世の句はそれで良い?」

 

その視界を、突如現れた大きな手が捕らえた。

 

「えっ? えっ?」

 

困惑の声を漏らす十々丸(ととまる)。その十々丸(ととまる)の顔面を捕らえた四十九(しずく)は、一瞬で体位を入れ替えると、ベッドに押し倒した男娼の友人(十々丸)を、豚を見る目で見降ろした。

 

「あ、あー……」

 

「漸く、その精液ばっかり詰まった脳味噌でも状況が理解出来てきたみたいだね」

 

「あ、あはははは……」

 

青筋を浮かべて、淀んだ眼球を向ける四十九(しずく)。視界は閉ざされている筈ながら、はっきりと友人の表情を察したらしい十々丸(ととまる)が、きょときょろと眼球を彷徨わせたのを掌で感じ取った。

 

「突然性器無くして、ああいう疑似プレイで興奮するのは分からないでもないけどさ」

 

「あ、そ、そうだよねおにーさん! おにーさんもそう思うだろ!? やっぱ「でもだからって、よりにもよって男のぼくの喉を肉便器にしてイラマチオをさせようとするのは論外だと思うんだよね」

 

ぐっしょりと顔面を濡らした十々丸(ととまる)の潮を掌でぬぐい取りながら、四十九(しずく)は酷く抑揚の無い声と共に首を傾げた。

 

「あ、あは」

 

「……」

 

「えっと」

 

「……」

 

「あー……」

 

「……」

 

頭を掴む、四十九(しずく)の無言のプレッシャーに、とうとう十々丸(ととまる)もぐうの音も出なくなる。

 

「その……」

 

「何? 命乞い?」

 

「そうと言えばそうなんだけどさ……」

 

目を閉じられたまま、十々丸(ととまる)がちょんちょんと器用に自分の指を突き合わせる。

 

「どうすれば許してくれる?」

 

「ふむ……」

 

恐る恐る尋ねる十々丸(ととまる)に四十九(しずく)は少し首を傾げ、そして思案が纏まったのか珍しく、フッと笑みを浮かべ、

 

「取り合えず……死刑でいいよ」

 

「は? あぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

その笑みと共に、四十九(しずく)の右手が万力の様に、十々丸(ととまる)の精液の詰まった頭蓋骨を締め上げた。

 鎌倉大迷宮でも希少なA級冒険者の握力に晒された、美貌の男娼の絶叫が夜の色町全体に響き、そして、フツッと電源が切れる様に溶けて消えたのだった。

 

 

 

 

 




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