深夜の娼館街に響いた、絹どころか帷子すら引き裂きそうな悲鳴が途切れ、その震源地だった連れ込み宿の一室で、
「で?」
という酷く底冷えする声だけが上がった。
備え付けの枕の上で胡座をかき、腕を組んで四十九が死んだ魚の様な目で睥睨すると、その先では今の今までやんちゃをしていた巨根男娼が、綺麗な土下座の姿勢のまま、「い、いやー」と器用に頭を掻いている。
「何で、あんな暴走しちゃったの?」
「あ、あー」
四十九の問い掛けに、十々丸が僅かに動揺したように、狐目をさ迷わせる。
「何? その反応」
「えっと……さ」
「うん」
「その……笑わない?」
「もう一度喰らわせることはあっても笑わないと思うよ?」
そう言って、右手をワキワキさせる四十九に、十々丸が「ひどいなー」と苦笑を溢した。
そんな十々丸に、視線で先を促す四十九。その視線に背中を押され、「あー、うーんと」と逡巡していた十々丸が、徐に黒いルージュの唇を開いた。
「その、さ」
「うん」
「何か……ちんちんより気持ち良くて」
「うん……うん?」
果たして、十々丸の口から出た言葉に、四十九は思わず、その美貌をしげしげと見詰めた。
「本格的にちんちん放棄したの?」
「おにーさんでも言っても良いことと悪いことがあるよなあっ!?」
四十九の隠し事の無い言葉に、十々丸がキレた。
「しょーがないだろ!? だって気持ち良かったんだから!! 僕だって、並の気持ちよさくらいならファックを止めるって! いいや、多少良いくらいでも、全然止められるね! 十字館のトップ男娼の一人として賭けてもいいよ! けどさ、仕方無いじゃん! クリイラマさいこーだったんだもん!! っていうか、おにーさんの口便器が名器過ぎるんだよ!! うん、間違いないね!! だから僕「取り敢えず、死体は埋葬で良いよね?」ほんっと、ごめんなさい」
そして、掛かったエンジンのままに吠え、あっさりと四十九の逆鱗という鼠取りに捕獲されたのだった。
ごきごきと鳴る四十九の拳の音に、即座に土下座で全面降伏する十々丸を見下ろしながら、「ほんと、下半身と衝動だけで生きてるよね、十々丸くん」と溜め息を吐いた。
「いや、でもさ、おにーさん」
「うん?」
「さっきの言葉、割りと本当なんだよね」
「んん?」
言いづらそうにしながらも、上目遣いで言い募るその言葉に、四十九は「んー?」と首を傾げた。
「いやさ、本当に冗談でも何でもなく、異常に気持ち良かったんだよね……身体の相性なのかな?」
「いや、あんなプレイに相性もくそも無いと思うけど」
十々丸の予想に、四十九は訝りながらも、唯々腰を打ち付けるだけの行為を思い起こしながら、そう答えた。
「……ねえ、十々丸くん」
「? 何? おにーさん」
「……一つ、嫌な事が思い浮かんだんだけどさ」
そこで、ふと、ある事を思い付いた四十九が、はたとその手を止めた。
「ん?」
四十九の言葉に、十々丸の方はコテンと首を傾げる。
そんな十々丸の様子を確かめながら、四十九は「あのさ……」と口を開いた。
「十々丸くん、もしかして、女の人の身体が馴染んできてるんじゃない?」
「!!」
果たして、四十九の言葉に十々丸の顔からサーッと血の気が引いていった。
ただでさえ白かった四十九の肌が一層白くなり、生気すら失われて無機物と見紛う程だった。
「よし! 今からやるよ、おにーさん!!」
「何でそうなるのさ」
すっくと立ちあがった十々丸に、四十九は思わず言った。
「セックスが僕のアイデンティティだからだよ!」
「ちんちんが無くても、心のちんちんで勃起するんだ!」と気合を入れる十々丸を見上げながら、四十九は思わず「あ、うん」と頷いていた。
「じゃ、早速合体しよーぜ! おにーさん!!」
「いくら男同士とはいえ、もう少しくらい風情があっても良いんじゃない?」
「僕の初めて……貰って?」
「職業男娼なのに?」
「使用済みなのはちんちんとお尻だけだってーの! ほら、見てよ! 膜膜! 初物だよ!」
「顔面で蟹股で開けっ広げられてもエロい気持ちにはならないと思うよ?」
立ち上がって、文字通り四十九の目の前で「ほれほれー」と股間を広げる十々丸に、四十九は思わず真顔になる。
「っていうか、本当に膜あるんだね」
「それね。僕もさっき確認してびっくりした」
「まあ、だからなんだって話ではあるけど……」
十々丸のその言葉に、「ふむ」と頷いた四十九だったが、いい加減さっさと終わらせようかという気になっていた。
「取り合えず、する?」
そう確認した四十九に、十々丸が「よし、勝った」とガッツポーズをした。
「は?」
一瞬、青筋を浮かべる四十九。が、続く言葉は、ぽすりと胸の中に飛び込んできた羽毛の様な重さに遮られたのだった。
「……まあ、良いけどさ」
その身体を受け止めた四十九は、ぼやくようにそう言うと、十々丸の小さな体をベッドの上へと横たえたのだった。
「男同士なんだから、変な遠慮せずに好きなだけ乱暴にしちゃって良いよ?」
ニヤリと笑って右目を開ける十々丸に、「ま、余裕があったらね」と肩を竦めて、四十九は十々丸の純白の両足を開いたのだった。
小柄な身体の割りに、すらりと長い両足の奥で、くぷりと音を立てる四十九の秘所。少し乾いた愛液が後から流れ出て来るそれと混じり、トロリとした糸を引いていた。その奥では、淫靡に彩られた柔肉が口を開き、ひくひくと蠢きながら処女の証を見せ付ける様に晒している。
「入れるよ?」
四十九が最後に確かめる様に問うと、十々丸は「カモーン」と、ふざけた様に笑った。
「んっ……」
漏れ出たのはどちらの声だっただろうか。
ちゅぷりと音を立てて口付けあった四十九の男根と十々丸の女淫。既にどちらも痛い程に充血した互いのそれは、貪り合う様に交わり、ぐちゃぐちゃと音を立てんばかりに混ざり合っていく。
「くぅ……」
余りの快楽に、四十九は思わず歯を食いしばった。娼館の娼婦とは次元が違う快楽が、四十九のペニスを攻め立て、貪欲にもそれごと精液を飲み干そうと蠕動を繰り返すのだ。
「んぃ……」
一方の、四十九のペニスを飲み込んだ十々丸の方も余裕は無かった。
過去に、客の希望でアナルを使われた事や、前立腺攻めを受けた経験も両手の指では足りない程にあるが、今押し寄せてきている快楽はそれとは全く別世界の感覚だった。
互いが互いに与え合う快楽が、更に次の快楽を生み、それにより過敏に反応した肉体が、更に相手に次の快楽を与えるという、恍惚の輪廻の中に四十九と十々丸は囚われ合っていた。
「「……」」
思わず顔を見合わせた二人は、どちらからでもなく、貪るように唇を重ね合っていた。
先のテクニックを感じさせるような舌使いは一切なく、唯々相手を犯し溶け合う事だけを目的とした乱暴なディープキス。最も脳髄に近い性感帯を侵し、犯し合ううちに、
「「!!」」
四十九のそれは、とうとう十々丸の最後の純潔の証を突き破ったのだった。
「はぐっ!?」
流石に、その衝撃にビクッと身を強張らせる十々丸。その声に、ぼうっと快楽の霞に呑まれかけていた四十九がはっと我に返る。
「大丈夫? 十々丸くん」
「ん、へーき」
四十九の声に、十々丸はにししっと白い歯を見せる。
「身体の相性のせいなのかな? 全然痛くないや……」
「元々男だからなのかな? それとも、セックスに慣れてるから?」と実に楽し気に首を傾げる十々丸の横髪を四十九が弄んでいると、「えいっ♥」という声が下から聞こえてきた。
「くはっ!?」
ぎゅぎゅっと締め上げられたのは十々丸の淫肉。男根から精液を搾り取ろうとするその動きに、四十九は思わず悲鳴を漏らした。
「十々丸くん……」
「へっへっへ」
四十九が恨めし気に見下ろすと、悪戯に成功した十々丸がしてやったりの表情で四十九を見上げて来ていた。
「ほら、見ての通り、僕は全然大丈夫だから。好きに動いてよ」
そう言って、ぬちゃぬちゃと腰を揺らす十々丸。どうやら、強がりではないらしく、表情に苦痛の色は見えない。
代わりにあるのは純度100%の情欲で、良いからさっさとザーメンをよこせと、その白い瞳が何よりも雄弁に語っていた。
「……あんまり、長くはもたないよ?」
そんな十々丸の視線に降参するように、四十九が両手を上げて、肩を竦める。
「大丈夫だって。一晩中たっぷり相手するからさ」
そんな四十九に、ニヤッと笑って、十々丸は「んー♥」と唇を突き出してくる。
先の貪る様なそれとは違う触れ合うだけのそれを繰り返し、十々丸が満足そうに、ふっと表情を緩めた。
「いっぱい、ホモホモしよーぜ♥」
「それはそれでどうかと思うよ?」
にひっと笑う十々丸の、身体の奥の奥へと、四十九は自分のペニスを突き入れたのだった。
「お、ほぉっ!?」
室内に、十々丸の下品な喘ぎ声が響き渡った。
四十九が捩じ込んだそれは、容易く十々丸の柔肉未開地を突き破り、最奥で膨らむ子宮口を容易く打ち鳴らしたのだった。
「あ……が!?」
乱暴な、その快楽に、十々丸が両目を白黒させる。
「ぐぅ……」
一方の四十九の方もただでは済まない。自分達を犯す雄の侵入に気付いた十々丸の雌肉が即座に精液を、子種を搾り取れと蠢き出したのだ。
「はぐっ!?」
そんな淫肉ごと黙らせるように、四十九がもう一度腰を振るう。その一撃に脳髄を叩かれた十々丸が「お゛っ!?」と汚い悲鳴を漏らした。
「お゛っ、おほっ!? ほぉ゛んっ!?」
既に、されるがままになってぷらぷらと足を揺らすだけの十々丸が、白い首筋を晒して仰け反る。僅かに血管の見えるそこに、四十九が本能のままに噛みつくと、十々丸は「んひぃ!?!?♥」と悲鳴を上げた。
「い、いひっ……」
それでも、最後に残った男娼としてのプライドか、ビンビンに乳首を勃起させながら、十々丸は必至に歯を食いしばっていた。その小柄ながらもセックスの為だけに生まれてきたと豪語して止まない肉体の反撃で、実際のところ、攻め立てている筈の四十九の方も、既に限界も良い所だった。
「い、くよ……」
その細く、肉付きの薄い身体をぎゅっと抱きしめて、四十九は息も絶え絶えに言う。
その瞬間、ふっと四十九の身体を細腕で抱き返した男娼の唇が、四十九の耳元に寄せられた。
「いいよ、おにーさん。僕に赤ちゃん産ませて、お嫁さんにしちゃいなよ」
囁く様な、小さな声だった。しかし、それ以上に甘い、甘い声だった。
脳髄をダイレクトに犯してくる、麻薬の様なその声は、容易く四十九に最後の引き金を引かせ、理性の限界を決壊させた。
「「っ~~~~~~~~~~!!!!!!」」
暴発する様な絶頂と共に、四十九は十々丸の子宮口を押し潰しながら、その精液を彼の肉の奥へと吐き出していた。
びくり、びくりと全身を痙攣させながら、何度も、何度も、どびゅり、どびゅりと音を立てて、白濁液が赤ん坊のベッドへと送り込まれる。
そんな、濃濁液を注ぎ込まれた十々丸の方は四十九以上に一たまりもなかった。
儚げな細足をピンッと爪先まで勃たせ、ふるふると全身を震わせながら、襲い来る快楽の波の中で、必死に酸素を求める様にパクパクと喘いでいた。既に両目はあらぬ方向を向いていて、下品にまろび出た舌の先から「へっへっ……」と野良犬の様な喘ぎ声だけが漏れていた。
が、これが全てではなかった。
「ん?」
最初に違和感に気が付いたのは、吐精を終えて、快楽の後味に身を震わせていた四十九の方だった。
女の身体を抱いた状況では、絶対に有り得ない異物感と生暖かい感触、慣れ親しんだはずの生臭い臭いが不意に鼻孔を突いてきたのだった。
仰向けに潰されたカエルの様になる十々丸の上から、もぞりと体を起こす四十九。そして、ぼんやりとした頭で訝る様に二人の身体の間に目を落とすと……
そこには、びゅるびゅると精液を吐き出す、巨大なペニスが鎮座していたのだった
「は?」
その光景に、四十九がピタリと硬直する。
この場に居るのは四十九と十々丸の二人だけ。生えているペニスは一本だけ。
一瞬、いつの間にか抜けてしまっていたかと思った四十九。しかし、今目の前で節操なく吐精を繰り返す巨根は四十九のそれでは有り得なかった。
まず、そもそもが、こちらに口を向ける亀頭の向きが違う。四十九の物であれば向いている筈のそれと、二人の身体の間から顔を出したそれは正反対の方を向いていた。
次に、四十九のそれとはサイズが違う。純人間としては恵まれた体格的な事もあり、四十九のそれは一般男性のそれよりも十分に大きな部類だが、視線の先にあるそれは、そんな四十九の男根よりも、さらに一回り大きな巨根と言っていい、それだった。
そもそも、四十九のペニスは未だに十々丸のヴァギナの中で、現在進行形で、尿道の残り液を搾り取られていて、此処では決して顔を見せ得ない。
「え? え?」
困惑する四十九は、耳元で聞こえたもう一つの声に顔を上げた。そこでは、自分と同じく身体の間を見下ろした十々丸が、状況が一切理解できない様子で唯々精液を吐き出し続けるペニスを見下ろしていた。
状況が呑み込めない四十九と、四十九の視線に気付いた十々丸が顔を上げて、視線を合わせる。
「「え?」」
―どういうこと?―
二人の感情は、声と同じくピタリと一致していた。
「……」
先に動いたのは十々丸の方だった。にちゃりと二人のの間で引く白い糸を掻き分けながら、恐る恐るといった風に、平然と大量のザーメンを吐き出し続ける男根に触れたのだった。
「……」
四十九は、何も感じなかった。先の愛撫で記憶に新しい、十々丸の細指の感触は無く、相変わらずちゅちゅっと吸い付くような十々丸の淫肉にまとわりつかれる感触だけが続いていた。が、一方の十々丸の方は四十九とは全く正反対の反応を示した。
「!?」
ぴとりと黒いマニキュアの人差し指で、真っ赤に膨らむ、えらの張った亀頭に触れた瞬間、ビクンッとその身を震わせたのだった。
次いで、若干の躊躇いと、それ以上の期待を浮かべながら、十々丸は充血するペニスを触れるくらいの強さでゆっくりとしごきあげた。
「!!」
忽ち全身を震わせる十々丸。それに応えるように、ドプリとザーメンを吐き出す亀頭。その事実が何よりも雄弁に、目の前の現象を物語っていた。
「「……」」
再び顔を見合わせる二人。四十九の目は思案を巡らせる色だが、十々丸の方は唯々溢れ出す歓喜の色に染まっていた。
「男の身体に戻ったのかな? でも、ぼくのは今も十々丸くんの中だし、この感触ってアナルじゃないよね?」
「そんな細かい事はどうでも良いって!」
「いや、自分の身体の「戻ってきたんだよ! 僕のおちんちんが戻ってきたんだよ!!!」
万感の思い出両手を上げる十々丸。その感情を表す様に、十々丸の下腹部から生えた、巨大なペニスがびゅくびゅくっと精液を吐き出す。
「おにーさんの"神懸り"が、僕を助けてくれたんじゃない?」
「いやぼくの"神懸り"はそういうのじゃないから」
にこにこと笑う十々丸に、四十九は直ぐに頭を横に振る。
「十々丸くんの"神懸り"の可能性の方が高いかもね」
「あー、そっか。そうかもね」
四十九の言葉にも、何処か心ここにあらずの様子で、十々丸は曖昧に視線を彷徨わせる。
「それよりもさ、おにーさん」
「うん?」
「僕、今、めっちゃおまんこレイプしたいんだけど」
「うん……うん?」
四十九が視線を落とした先では、相変わらず四十九のちんぽを咥えこみながらも、十々丸が自分のペニスを乱暴にしごき、何時の間にやらオナニーを始めていた。
「えっと、娼館にで「もう我慢できないって!」
四十九の言葉に、十々丸が辛抱堪らない様子で叫んだ。
「女! 女呼んで!!」
既に理性が限界に近い様子の十々丸に、四十九は「ああ、もう」と頭を抱えながら、枕元の電話に手を伸ばした。そのまま、無愛想なフロントに部屋番号を告げると、他の部屋で仕事を終えたデリヘル嬢を回してくれるようにと伝えた。
「ほら、次のデリヘル嬢頼んだから、もう少し我慢して、十々丸くん」
「あっは、おにーさんさいこー! 愛してるぅ!!」
四十九の言葉に、満面の笑みを浮かべた十々丸は、これからの事を想像したのか好色に濡れた吐息で囁き、自分に圧し掛かる四十九の唇にじゅるじゅるとむしゃぶりついた。
「おにーさんのお嫁さんになりながら、売女を犯せるとかさぁ!♥」
そして、やってきたデリヘル嬢へのプレイを妄想しながら、自分の妄想で達してしまった十々丸は、下品な笑みを浮かべて、四十九のペニスを咥えこんだままぶしゅぅと大量のザーメンを吐き出したのだった。
◆
「お゛っんお゛っお゛ぉ~~~~~~~~!!!!♥♥♥」
四十九が先のデリヘル嬢を呼んでから二時間。充満した性臭が汚い喘ぎ声と共に一段と濃くなっていた。
「あっは♥ 牛みたいじゃん♥ いや、雌牛だって、もう少し品のある喘ぎ声をするよね、おにーさん♥」
「ん、そうかもね」
そんな喘ぎ声の主であるデリヘル嬢に嗜虐的な視線を落としながら、バチュンバチュンと力任せに腰を叩き付けていた十々丸がにやにやと馬鹿にした笑みと共に四十九に視線を向けた。ベッドに寝そべりながら、暇つぶしに部屋の端末で本を読んでいた四十九は、十々丸の視線に適当に頷きながら、ごろりと寝返りをうった。
「あぁ、でるでるでるぅ!!!」
そんな十々丸の声と共に、どぷりという音が響き、部屋の中に精液の臭いが追加される。
(話には聞いていたけど、本当に凄い精力だね……)
容易に想像の付く光景に小首を傾げながら、四十九はベッドの下に目をやる。
そこには既に十々丸に犯し尽くされて失神し、無様に尻を上げて、おまんことアナルから白濁液を逆流させて痙攣する、二人の売春婦の姿があった。二人とも、既に白目を剥いて、びろりと舌をまろび出させ、「あ゛~♥」とゾンビの様な呻き声だけを上げている。
(お酒の席の自慢話くらいに思ってたんだけど……)
十々丸のザーメンによって、妊婦の様に膨らませられた、二人の娼婦の腹を見ながら、四十九は以前に十々丸が語った武勇伝の類を思い出していた。
毎日、十人を超える女性の相手をして、一人残らず失神させている。十字館で月天を指名した客はボテ腹せずには帰れない。コンドームに出した精液だけでも、パックに詰めて売れる量。それでもザーメンが出したりなくて、セックスで稼いだお金で酒と煙草と女を買う。
そう豪語した十々丸の言葉を、四十九は話半分に聞き流していたが、都合二人の娼婦を忽ちの内に壊し、そして更に三人目に手を出しても未だに勢いが衰える様子を見せない十々丸のセックスに、四十九は以前の言葉が全て真実だった可能性が高い事を思い知らされていた。
「お゛お゛っほお゛ぉ!?!?!?!?♥♥♥♥」
一際野太い喘ぎ声が室内に響き、そして、それが不意にコードの抜けた家電製品の様にブツンと途切れると、急に訪れた静寂の中で十々丸の「ふぅ……」という満足気な溜息だけが零れ落ちた。
「はーっ出した出した」
「お疲れ」
「んっ♪」
はふぅと天を仰ぐ十々丸に、四十九が紙煙草を差し出すと、十々丸はそれを嬉しそうに咥えた。
カシュッと音を立てて灯った、ライターの火で煙草を炙ると、その薄い胸一杯に煙を溜め込んだ十々丸が、ふーっと大きな紫煙を吐き出した。
「やっぱ、セックスさいこー♥」
そう言って、満足気にニコニコと笑う十々丸に、四十九は「良かったね」と返して枕元にライターを置く。
「にしし」
そんな四十九の姿を目で追っていた十々丸が、ふと何かを思いついた様子で、デリヘル嬢のおまんこからずるりと自分のペニスを引き抜いた。
「っっ!!♥♥」
べちゃりと床に投げ捨てられたデリヘル嬢が、びゅぶっと十々丸の精液を噴き出した。
「ねえ」
「んー?」
「兜合わせしよーぜ、おにーさん」
電子端末から顔を上げた四十九の前で、自身の精液で白くドロドロになった、未だに勃起する巨根を揺らして、十々丸がそう言った。
「いや、ぼくはそういうのは「もちろん、単におちんちんでキスしあうんじゃなくて、こっちに一緒に突っ込もうって話」
一応、男色ではない四十九が断ろうとするが、四十九のその答えに、首を横に振った十々丸が床で寝そべる娼婦の巨尻をベチンッと引っ叩いた。
「お゛う゛っ♥」
その衝撃に、赤い小さな紅葉を浮かべた娼婦の白い尻がびくりと跳ねて精液を吐き出す。
「んー、まあ、そういう事なら?」
「決まったね。じゃあ、入れよーぜ♥」
首を傾げた四十九の手を、パンッと手を打った十々丸が引いて、二人は娼婦の尻を前に膝立ちになる。
「えっと、お尻とおまんこに入れるの」
「兜合わせだからね。こっちに二本だよ」
確かめる四十九に、十々丸が精液濡れの娼婦のおマンコをぐいっと引っ張って開いた。
「入るかな?」
「だいじょーぶ。結構頑丈だから」
首を傾げる四十九に、十々丸がそう言って、チュッと四十九の鈴口に自分のそれで口付けをしてくる。
「二本刺しは初めて?」
「というか、乱交自体が初めてだね」
「なら、安心して。僕がリードするよ。だいじょーぶ。男の気持ち良い所は、売れっ子の娼婦よりも良く知ってるからさ」
「まあ、だろうね」
にししっと笑う十々丸の小さな手に、四十九は全てを委ねて頷いた。にこにこと眼を細めて微笑んだ十々丸の手が、四十九と十々丸のちんちんの先を捕まえて、二人のペニスを痙攣する娼婦の女性器へと誘った。が、
「え?」
「うん?」
二人のペニスが娼婦の秘肉を押し破ろうとしたその瞬間、二本の内の一本、十々丸の股間にあった筈のそれが靄の様になって掻き消えてしまったのだった。
「は? はぁ!?」
あまりの事に、愕然とした様子の十々丸。その十々丸の股間と、今の身体を見比べながら、四十九は僅かに首を傾げた。
「え、な、何でだよ!? 僕のちんちん!!」
そんな四十九を他所に、目の前で餌を取り上げられた十々丸は憤懣やるかたない様子でわたわたと頭を抱えている。
「あー、もうこうなったら!!」
「え、十々丸くっ!?」
そして、不意にがばっと四十九を振り返ると、驚く四十九にも躊躇わず、十々丸はそそり立つ四十九のペニスを再び自分の膣で吞み込んだのだった。
「っくぅ」
幾ら先のセックスによる精液と愛液で、ぐちょぐちょになっているとはいえ、突然の前戯もない力任せな挿入に、四十九は思わず呻き声を漏らす。
「くうぅ。あー、くそったれ!」
一方の十々丸はといえば、四十九の上で蟹股になり、ばちゅんばちゅんと腰を振りながら、八つ当たり気味に吐き捨てた。
「あれ?」
「ん?」
が、そのストロークが一度二度過ぎた瞬間、再び十々丸の身体に異変が起きていた。
たった今しがた掻き消えた筈の巨根が、再度股間に顔を出していたのだった。
「え? は?」
「……」
流石に困惑した様子で顔を上げる十々丸を見て、四十九も少し思案する顔になる。
「何かをキーにするタイプの"神懸り"……かな」
その現象から類推される、最も高い可能性を四十九は口にする。その言葉に「えっと……」と蟀谷を抑えた十々丸が「つまり……」と口を開く。
「僕はおにーさんとセックスするとちんちんが復活するっていうこと?」
「ぼくとなのか、男性となのか、それともおまんこに何かを入れるとなのかは分からないかな」
四十九の答えに、十々丸は「むぅ……」と唇を尖らせる。
「でも、少なくともおにーさんとエッチすれば、僕のおちんちんは復活するって事だよね?」
「まあ、そうなるね」
十々丸の言葉に頷きながら、四十九は若干嫌な予感を覚える。
「じゃあさ、おにーさん、僕のバイアグラになってくれない?」
「史上最低最悪の口説き文句だよ馬鹿野郎」
切れ長の両目をきらきらと輝かせ、身を乗り出してきた十々丸の頭を四十九はベチンと引っ叩いた。
「えー、いーじゃん。僕のおちんちんで、おにーさんの事も確り養っちゃうぜ?」
「紐に全く魅力を感じないじゃないけど、それって十々丸くんがぼくの分も稼ぐって事でしょ?」
「もちろん」
「その分客を取るって事だろうけど、流石にぼくは十々丸くんみたいなペースでのセックスは無理だよ?」
四十九が指さした三人の無様な格好の娼婦に、十々丸も「あー……」と頭を掻く。
「やっぱり、根本的な解決にはなってないか……」
そう言って、かくんと肩を落とした十々丸を見下ろしながら、四十九がふと「それならさ」と首を傾げる。
「代案じゃないけど、ぼくからも一つ提案」
「? 何?」
「十々丸くんさ、冒険者になってみない?」
「へ?」
四十九の出した言葉に、珍しく十々丸の方がキョトンとした顔になる。
「え? 冒険者って、あの?」
「うん」
困惑した様子で確かめる十々丸に、四十九はあっさりと首肯を返す。
「いやいやいや、流石に無理だって」
四十九からの提案に、いくらなんでも荒唐無稽に過ぎると、十々丸が首を横に振る。
「いや、そうでもないよ」
しかし、その十々丸に、四十九の方も首を横に振る。
「十々丸くんが想像する冒険者っていうと、剣や魔法で並みいる大型のドラゴンやらを打倒して未開のダンジョンを踏破するみたいな感じでしょ?」
「うん」
こくこくと頷く十々丸に、四十九は「ま、普通はそうだよね」と頷く。
「けど、そういう冒険者って実はほんの一握りで、その他大多数の冒険者は冒険者って名前の猟師みたいなものなんだ」
「そうなの?」
「うん」
頷いた四十九。
「ぼくもそうなんだけど、大抵の冒険者は剣や魔法や自分の他の特技を生かして、一番効率が良いモンスターを狙い続けるんだよね」
「ほーん……」
四十九の説明に、「初めて知った」と十々丸が頷く。
「で、ここからが本題なんだけど」
そんな十々丸に、四十九がピッと人差し指を立てた。
「ぼくが知ってるモンスターの中で、凄い十々丸くんにぴったりな種類のモンスターが居るんだよね」
「え、そんなの居るの?」
若干驚く十々丸に、四十九が「うん」と首肯する。
「前々から思ってたんだけど、今日で確信したかな」
「ふーん……」
四十九のその言葉に、幾分興味を引かれたらしい十々丸が、「因みに、何てモンスター?」と尋ねて来る。
「それはね……」
十々丸に口を寄せ、四十九は静かにそのモンスターの名前を耳打ちする。
「行くっ!」
その瞬間、バッと立ち上がった十々丸が、力強く宣言していた。
「そんなエッ、もとい、凶悪なモンスターが居るなんて知らなかったぜ! 鎌倉の冒険者の人達の安全の為にも、一体でも多く討伐しなきゃ!!」
白黒が真逆の狐目をきらきらと輝かせて拳を握る十々丸を見上げながら、炊き付けた張本人の四十九は「まあ、結構危険度が高いのは事実だしね」と肩を竦める。
「じゃあ、物は試しって事で良い?」
「もちろん、おーけーだよ、おにーさん」
そう言って、十々丸がニッと笑う。
「あーもう、おにーさんさいこー! 僕のおちんちんまで取り返してくれて、そんな楽しそうな仕事まで紹介してくれるんだから!」
「そりゃよかった」
小躍りせんばかりに喜ぶ十々丸を見上げて「そこまで喜んでくれるなら、僕としても提案し甲斐があったかな」と、四十九は肩を竦める。
「うー、もうっ」
「んむっ!?」
そんな四十九を見て、十々丸が感極まった様子で唇を重ねて舌を捩じ込んできた。どぅるるるるっと舌肉や頬肉全体を荒らしまわると、ちゅぽっと唇を離した十々丸は、ベッドの上に横になって、ぐいっと四十九の精液新しいおマンコを開いて見せ付けた。
「もう、僕のおまんこおにーさん専用にしちゃうからさ、一杯僕のふたホモおまんこレイプしてよ♥ 鎌倉一の女好きな男だけど、おにーさん限定で女の子になっちゃう、ラブホモお嫁さん肉便器になっちゃったからさ♥」
勃起したペニスの先から、ぬらぬらと透明な先走り液を吐き出して、媚態を示す十々丸。
「まあ、セックスフレンドからで?」
少し首を傾げて、十々丸の身体を抱き寄せる四十九に、十々丸は「穴兄弟も追加しようぜ」と親指を立てたのだった。
◆
翌日の事。
数多の血生臭い冒険者と、その冒険者に声を掛ける職員でごった返した、東京幕府所管・鎌倉大迷宮最大の冒険者ギルドの前に、二対の目あった。
「……」
その片割れ、男娼の月天こと、新米冒険者候補の十々丸が幾分緊張した様子でギルドの看板を見上げている。
ウールの燕尾服に、小さめのシルクハットと、冒険者にそぐわない美貌に加えて、あまり冒険に適している装いとは言えない十々丸を、何人かの冒険者が少し珍しいものを見る様に振り返っている。
「行くよ、十々丸くん」
そんな十々丸を促し、分厚い油羽織に二刀をぶち込んだ四十九がスタスタと歩き出す。
「あ、待ってよ、おにーさん」
その後をとてとてと十々丸が追いかけ、二人は同時にその門を潜ったのだった。