魔法少女きょうこ☆マギカダークネス 流れ者達の平凡なひととき 作:凡庸
「あああああああああああああああああああ!!!!あああああああ!!!ああああああああああああ!!!!」
青白く輝く月の下、月光を浴びつつ佐倉杏子は叫ぶ。
吐き出した胃液と血と、泥と潰れた草の汁、失禁による尿に塗れて叫び続ける。
夜風が運ぶのはそれらの液と泥濘が混じった異様な臭気。
悪臭にも等しい匂いの上には、むせ返る様な雌の香りが被さっていた。
両膝を地面に着け、上体を地面に押し付け、尻を上げた状態で杏子は叫ぶ。
叫びは地面と彼女との間に生じた隙間で木霊し、音としてはそれほど大きくなかった。
自分が上げた叫びが自分へと還り、杏子の思考は更に混沌と化していった。
大嫌いな存在をネタに自慰を行い、絶頂に至る。
それはその存在から犯されているに等しい。
杏子が至ったのは、そんな思考だった。
性器と肛門を右手で同時に掻き回しながら、杏子はそう思っていた。
尻を上に突きあげたポーズは、まるで雄を誘って突き入れられる事を待ち望んでいるかのようだった。
親指が膣の入り口を引っ掻き、人差し指から薬指迄の三本の指が肛門に爪を立てる。
膣と肛門の両方からは、爪による出血が生じていた。
粘ついてぬかるむそれを潤滑油にし、杏子は更に指の動きを激しくさせた。
快感が増え、更に爪による傷の数と深さも増す。
血と愛液を混ぜ合わせながら、佐倉杏子は自慰を続ける。
量の太腿からは、ホットパンツと下着の保水量を越えた体液が滴り幾つもの筋を作って地面へと伝って行った。
地面の一角、杏子が体内の汁を撒き散らし、這いずりながらのたうち回った場所は小規模な泥沼となっていた。
そこで、ぴちゃりと音がした。
それは、杏子の背後で鳴った。
杏子の身体がビクリと震えた。
自慰行為に励む指も一瞬止まった。
「うぐぁっ!?」
後頭部に衝撃。
振り返ろうとしていた杏子の顔が、地面へと押し付けられる。
少し前に、顔が地面に叩き付けられていた事によって生じた鼻血が再び流れた。
後頭部に感じるのは靴底の感触。
跳ね除けようとするが、まるで岩のような不動さを湛えている。
後頭部に触れる足の感触には覚えがあった。
最近拾った、兵器兼相棒から喰らった蹴りのそれ。
「ぐあ!ああ!!」
それがふっと消えたと思いきや、次いで両脚に激震が奔った。
両足首と膝関節。
それらに足が降ろされていた。
鉄製の巨大なハンマーを、思い切り振りかぶって全力で叩き落したかのような衝撃。
肉が潰され、骨が砕かれる。
皮膚が弾け、肉の中の筋と関節が飛び散る血と共に中身を露出させた。
痛みを感じる間も無く、杏子のパーカーの襟首が掴まれて引かれ、強引に立たされた。
尤も、彼女の両脚は使い物にならず、人形のように吊り下げられているとするが正しい。
重力を感じると同時に、足の痛みが杏子に押し寄せた。
そして彼女は見た。
誰が自分を吊り下げているのかを。
ジャケットを羽織り、袖の長い黒シャツを纏い、白のカーゴパンツを履いた少年がそこにいた。
複数のトゲか靡く炎のような黒髪が、彼の目元を隠していた。
眼から下の部分の造形だけでも、美少女として差し支えない形をしている事が伺えた。
しかし、浮かべた表情は悪鬼羅刹そのもの。
口は半月の形を描いて耳まで裂けたように開き、隙間から覗く歯は牙に等しい形をしている。
そんな彼が自分を右手一本で吊り上げ、獰悪な笑顔を浮かべて顔を見ている。
憎悪が煮え滾った。
「テメっ……!!」
炎のような憎悪と共に言い出し掛けた言葉。
だがそれは放たれず、杏子の身体は虚空を待っていた。
襟首を掴んだ右手が旋回し、彼女を地面へと叩き付けていた。
「----------!!」
背中からの墜落。
呼吸が途絶し、体内で爆発が生じたような苦痛が弾ける。
実際、杏子の胃袋は砕けて肺には亀裂が入り、彼女の背骨は縦に割れていた。
痙攣する杏子へと、少年は身体を覆い被らせた。
体液が漏れ出る股間へと、椅子にでも座る様な気軽さで腰を落とす。
「ひぐう!?」
杏子とさして変わらない体型にも関わらず、彼の体重は杏子の5倍近く…約200キログラムに達しかけていた。
魔法少女と真っ向からやり合える肉体は、通常人類のそれとは構造が異なっているらしい。
肉体そのものが質量兵器としての側面を持ち、体重を傾けるだけで人体が破壊される。
その重さが、杏子の腹の上に載せられていた。
部位的には、子宮の真上だった。
皮と肉の奥、命を育む器官は容赦なく潰されていた。
上がった悲鳴を、喉ごと握り締めた彼の左手が黙らせた。
きゅっと首が窄まり、気道が完全に潰される。
苦しみ喘ぐ暇も無く、杏子の顔を影が覆った。
それは、彼が振り上げた拳によって出来ていた。
視界が暗転し、遅れて音が聞こえた。
何かが潰れるような音。
自分が上げた筈の叫び声すらも杏子は認識出来なかった。
衝撃が、脳髄を駆け巡っていた。
顔面の骨と筋肉が軋み、頭蓋の中で反響している。顔の右半分が熱く痺れているのを感じた。
殴られた。理解したのはそれだけだった。
そして、更に暴虐が続いた。
「あぎゃ!!」
杏子の左頬を叩き潰した拳が、今度は彼女の左胸を抉った。
比喩ではなく、緑のパーカーごとその下の薄い肉と脂肪の層を抉り、並べられた魚卵のような黄色い脂肪の粒と赤い肉を露わにさせていた。
露出した肉と脂肪からは、折れた肋骨が突き出ていた。
折れた枝のようなそれを、彼は一気に掴んだ。そして引いた。
おぞましい音が鳴り響き、折れた肋骨が廻りの肉ごと、植物の根でも引き抜くかのように抉り抜かれた。
肉と骨には、肺と心臓までもが付いていた。
杏子の傷口からは、噴水のように血が吹き上がる。
彼も杏子も、その色に濡れた。
優しく厳かな輝きを放つ月光に照らされる二人の姿は、地獄の悪鬼のような容姿と化していた。
杏子から取り出した、一抱えもありそうな肉を彼は後ろへと放った。
使用済みのティッシュや丸めたチリ紙ですらもっとまともに扱われるであろう、気軽極まりないぞんざいさで。
大量の血と共に臓物と肉と骨を抜かれた佐倉杏子は、既に死んでいた。
否、意識を失っているだけに過ぎなかった。
魔法少女の不死性の賜物である。
気絶した少女の身体の上で、少年は再び立ち上がると、彼女の長髪を血と脂に塗れた右手で掴んで事も無さげに引き摺り始めた。
力無く垂れ下がる杏子の腕が、地面を擦って傷を付けた。
血と体液の跡が、点々と残されていた。
少年は杏子を引きずりながら、廃教会の敷地内にある小規模な林の中へと入って行った。