転生宇宙世紀 ―ジオンの女性士官にTS転生したので、ザビ家は気に入らないけど連邦と戦います― 作:読人不識
定期シャトルに乗ってあたしたち一行はサイド7『ノア』の1バンチに到着した。
と、言ってもこの頃のサイド7は未完成のコロニーが一基あるだけだ。
ラル隊の工作員を街に放ちセイラ・マスとアムロの居住地を探らせる。
残りは万一の事を考えて、宿泊施設から諜報機器の
ランバ・ラルの部隊は、元々ダイクン派として、ザビ家派閥との暗闘を演じていた時期もあったため、モビルスーツでの正規戦よりゲリラ戦や諜報に長けた者が多い。
今回はそういう隊員が役に立つ形だ。
モビルスーツは強力な兵器だが、敵を諜報、敵からの防諜がしっかりなされなければ、勝てる戦も勝てなくなる。
前世の原作中で、ドズル中将は
『戦いは数だよ兄貴!』
と、のたまったが、相手陣営を切り崩していれば、逆転は可能だったかもしれない。
数を揃えていると思っている敵を寝返らせる、日本史で言う関ヶ原の戦いのようなやり方だ。
そういう意味で、ジオンの将帥で一番勝つことに貪欲だったのはマ・クベだったのかもしれない。
エルランがもう少し上手く立ち回っていれば、オデッサは落ちず、地上での基盤を失わなかった可能性は高かったと思う。
自分が一軍を指揮する、大佐という立場に立った以上、あたしの肩にも将兵の命がより重くのしかかる。
下手を打てば兵が死ぬだけではなく、部隊が壊滅するのだ、そのことは肝に命じなくてはならない。
姫様と慕ってくれる部下をむざむざ戦死させたくはない、だが終戦までには何人もの兵や士官を死なせることになるだろう。
戦争をしているのだから死者が出るのは当たり前だ、だがその死を無駄に死なせるのか? 意味ある死につかせるのか? で、大きく意味は変わる。
同じ死なせるなら意味ある死を迎えさせたい、出来れば誰も死なせたくはないがそれは無理だ。
だから生きている間に、出来るだけのことを報いてやらねばならない。少なくとも権力を持っているのなら、それくらいの心構えで接することはせねばならないと、あたしは改めてこの乱世における覚悟を決めるのであった。
その日が暮れる頃、ホテルのスウィートを借りたあたしの元へ、ラル隊の隊員からアルテイシアとアムロに関する報告がなされる。
アムロとセイラの居住地が分かったらしい。
ランバ・ラルとハモンさんにセイラの保護を依頼し、あたしはアムロの確保に動くことを確認しあう。
父親のテム・レイはアムロを省みず、仕事場に泊まり込んでいるらしい。
幼馴染のフラウ・ボゥが日に一度面倒を見に寄っているそうだが、最近のアムロは以前に増して部屋に閉じこもっているらしい。
室内から奇声が上がることもあるらしく近所でも心配する人がいるとか。
そんな描写あったか?
新兵がかかる奴になって無気力になってたことはあったはずだが…
なんにせよ、ラル大尉の部下をボディガードに借りて、翌日アムロに接触することにする。
セイラさんは、医療ボランティアでこのコロニーに来ていて、明日は非番らしい。接触するならちょうどいい塩梅だ。
ラル大尉とセイラに関して対処の方針を話し合う。
連邦の勢力範囲内ということもあり、交代で休みを取りながら、警戒を怠らず休息する。
人数自体が少ないので、士官と言えど警戒の当番に当たる。
長期の潜伏でないのが幸いだ。
夜半に当番を代わり朝まで仮眠をとる。
ラル大尉と手筈を最後に確認し二手に分かれて行動する。
一年戦争が生んだ連邦の白い悪魔…そのパイロットと今日対面する。
あたしは期待に胸を弾ませながら人手のまばらな朝方のサイド7の市内を移動し始めるのだった。
………
……
…
朝一でフラウ・ボゥがアムロの家を訪れ、何がしかのやり取りがあった後、憤然として彼女が出てゆく。
「なにがあったと思う?」
あたしはアムロの家を見下ろせるビルのラウンジで向かい合って座るサーシャにそう尋ねる。
「青春の一コマって奴じゃあねぇっスかね?」
肩を竦めてサーシャがそう冷やかす。
「彼に会いに行くなら今がチャンスかな?」
ラル隊の隊員に確認を取る。
「仰る通りかと」
隊員が肯定する。
「では彼にご挨拶に向かいましょう」
我々は朝食の会計を済ませ、アムロの家へ向かう。
アムロの家に近づくと、どこかで聞いたような音楽が聞こえる。
あたしの中に嫌な予感が閃き、足早にアムロ宅に近づくと、ノックもせずにドアを開ける。
室内から大音量の最近聞いた覚えのあるアイドルソングが響く。
無遠慮に室内に押し入ると、モニターの前でサイリウムを振り回し、キレッキレのオタ芸で
「アイラブ! サラちゃん! 可愛い! サラちゃん!
と叫びながら踊り狂う、一年戦争の英雄になるはずの少年、アムロ・レイがそこにいた…
………
……
…
その後室内に入って来たあたしを見て
『生サラちゃんでござるぅ~!! 拙者にペロペロさせてくれるおつもりでござるな!?』
と良く分からないことを叫びながら飛び掛かってきた所をサーシャに殴り倒され、関節極められて半泣きになってようやく大人しくなったので、ラル大尉の部下とサーシャに監視されながら部屋の対角線の距離を置いてあたしはアムロと対面していた。
「それでサラたんは拙者にジオンのパイロットになれと仰るのでござるか?」
何でこんな末期重度のオタクになってしまったのかとアムロに問うと、ジオンがコロニー協調路線の広報素材として、例のあたしが協力したグラビアアイドルみたいな映像や編集した歌を流したダンスシーンをみて、
『こんな幼くて可愛い女の子が、エースパイロットとして、士官として、連邦を出し抜く活躍をした』
事に感銘を受け、サラたん推しのオタクになったばかりなのだそうだ。
そして今日も推しの為に舞っていたら、目の前に推しが現れたので、これは赤い糸で結ばれた運命だと思い、思いを遂げるべく飛び掛かったら金髪の悪魔に関節極められて酷いでござる。
と、言うのがアムロの言であった。
こんなの身近に置きたくないよ……
あたしは内心でそんなことを思いながら、しかしアムロの能力自体は高いのだからと己を懸命に説得し
「少年!
とアムロの濁った瞳を見据えてそう問いかけるのだった。
「
こんな風に変貌してもアムロは聡い。
「君が本来持っている能力は、野に放っておいていいモノじゃあない。君は君なりの思想を持ち、君の理想を実現すべく動くべき人だとあたしは思う。その行く先にあたしたちと同じ理想があるならば、共に手を取り合って未来を切り開くべく戦ってくれないか?」
あたしは今話せることをアムロに隠すことなく話す。
「サラたんの理想とは? ザビ家の独裁でござるか?」
アムロが少し険しい表情で問いかける。
「あたしの理想はスペースノイドの自治独立、ザビ家の独裁はその理想を邪魔する敵の一つ。必要であればかつての恋人でも排除するつもりよ」
アムロの瞳を見つめてそう言い切る。
「サラたんは強い人でござるな…僕なんかが役に立つのでござるか?」
アムロが自信なさげにそう問い返す。
「今のあなたでは力不足かも知れないわね…でもあなたが力を発揮できる環境をあたしが整えてあげる。後はあなたのやる気次第よ」
励ますようにそういうと。
「一人前の男として手柄を立てたら、サラたんはペロペロさせてくれるでござるか?」
とアムロがキモチ悪い手つきをしながら舌をレロレロ動かす。
ヒっと身をすくませるあたしを見かねたサーシャがアムロをはたく。
あたしはこのキモオタ化したアムロに蹂躙される状況を想像し、子宮が疼くのを感じ、
「あ、あたしが認めるほどの手柄を立てたら、好きにさせてあげるわ!」
と、頬を赤らめながら、アムロに向かってそういうのであった。
サラたんは結構歪んだ性癖持ちなので、気持ち悪いものに無理矢理とかでも悦んじゃう自分がいることを自覚してます。
そういう自分を嫌がっていない点が、彼女が楽観的になれる一因ではあるのかもしれません。