転生宇宙世紀 ―ジオンの女性士官にTS転生したので、ザビ家は気に入らないけど連邦と戦います― 作:読人不識
気持ち短めです。
ルナ・ツー近海の掃討を終えたあたしたちは部隊を再編、とはいえ言うほど被害はなかったのでそのまま補給を終え、地上降下作戦の準備に入る。
重要度で言えば北中米降下部隊より、中央アジア降下部隊の方が重要なはずだが、進んでマ・クベの支援の行きたがる部隊はない。
融和派の筆頭として名を挙げているガルマを盛り立てたい者や、勝ち馬に乗りたいがために北中米制圧作戦に参加したがる部隊の方が圧倒的に多い。
言ってしまえばマ・クベの支援は貧乏くじだ。
だが、あたしはその貧乏くじを敢えて引きに行く。
そうすることでキシリアは融和派に合流せざるを得ず、マ・クベが隠してキシリアに融通している資源もこちらに流れてくることになるからだ。
その為に今回の地上制圧作戦でマ・クベと話をつける。
その為にも彼の支援に向かわなければならない。
これはいずれダイクン派の首脳となる者達と話し合った結果だ。
上手く使えばマ・クベは使える。
その彼を調略するため支援に向かう。
ラル大尉も、アルテイシアも、キャスバルもそれに納得した。
マ・クベは謀将として味方につけて損はない、ただ人間的に嫌な面が多く癖が強い。
ただ忠誠心は高いため、寝返らせることは容易ではない。
ただキシリアが融和派と接近している今、計算高いあの男が身の振り方を考える時期に来ていることは確かなので、そこを突いてやるつもりだ、勿論あたしなりのやり方で……
接収したルナ・ツーの作戦司令部で、あたしたちはアフリカ中部に降下することが決まった。
ジオンが制圧している地域の端っこに位置していながら、資源を豊富に産出する重要拠点だから、ペガサス級とザンジバルからなるあたしの大隊はこの地域の支援に好都合だったのだ。
ガンペリーを格納庫から降ろして甲板で支援砲撃させるためのガンタンクに積み替える。
他の部隊も突入用のシャトルやコムサイに地上用に換装したモビルスーツを搭載する。
あたしたちが使っているGP-01 ゼフィランサスも地上用にマイナーチェンジされた。
地上での陸戦経験者を講師としたパイロットへのブリーフィングなど、様々な手順を経て地上降下作戦の準備が徐々に整ってゆく。
あたしの大隊はメディア露出も多い事もあって補給がかなり優先されている。
なので順調に手はずは整っている。
その分割を食っている部隊もあるようだが、後方からの補給は一定量しか運べないので、順番待ちが出るのは仕方ない。
ちなみにシャア先輩は宇宙での留守番中にキシリアに接近し、身分を明かすつもりらしい。
ララァの立場を考えると、そうするべきだろう。
キシリアは新しいもの好きでニュータイプの戦争投入にも前向きだったからな。
ララァはシャアが登用した人材とはいえ、キシリアが強硬な手段で持っていきかねない危険はまだある。
その場合ララァ”の”前に出て彼女を護衛せねばならないベテランが、彼女”を”盾にする可能性は否定できない。
実際1stではその程度の戦術的視野を持たないパイロットのせいで、ララァは危機に瀕していたのだ。
彼女をシャアの元から引き離させてはいけない。
なのでシャアがキシリアに政治的な接触を図ることに対してあたしは前向きな返答をしている。
セイラさんは危機感…と、言うか心配してるようだけどね。
キシリアがギレンに勝つには融和派に入り、そこで影響力を増すことが一番の近道だ。
それはキシリアも理解しているはずだ。
だがそこで頂点をつかみ得るかどうか? は別問題であり、彼女にとってはガルマは政敵となりうる。
ガルマにとっては愛するイセリナと結ばれるには、サイド3選民思想のギレンの元など論外だし、キシリアがジオンの首領になった所で自分は駒としか扱われない現実しか残らない。
つまり政治的に勝ち残る必要がある。
予想通りいい感じにザビ家内部がぐずぐずに煮詰まってきた。
だがそれぞれが暴発するのは、出来れば連邦と手打ちになってからにしてもらいたい。
今は政治力の均衡が保たれた状態だから、どこも積極的に手出しできないし、均衡が崩れたまま連邦との戦争に勝てる見込みもない。
名目もないしね。
その予想や常識を裏切るのがザビ家クォリティなんだけどね……
何れガルマを切り捨てるにせよ、今彼に倒れられるのはまずい。
だからこそ彼に援軍が集まるのは好ましいのだが、そこでガルマが下手を打ったら融和派の動き自体が掣肘される……
それは面白くはないが、オデッサ方面に向かうあたしたちには北中米に伸ばせる手がない。
そこであたしは、公私混同と分かった上で行動に出る。
「オペレーター、レーザー通信でソロモンにいるドズル中将に繋げ。最優先でお願いね」
………
……
…
「久しいな義妹殿」
モニターに映ったドズル義兄さんが、鷹揚に話しかけてくれる。
「お忙しい所を申し訳ございません」
あたしは殊勝にあいさつする。
「なに、貴様からの通信なら構わんよ。それで今日は何ようだ?」
早速本題に入ってくれる。
「はっ! 端的に申しますと、ガルマ様の護衛にガトー大尉を派遣して頂けませんでしょうか?」
あたしは直截的な物言いをする。
「ルナ・ツー攻撃軍の大半が、ガルマの支援に回るのだろう?」
ドズル中将は懐疑的に返してくる。
「だからこそ、です。身動きの鈍い烏合の衆では、万一の場合ガルマ様の身の守りに回る者はおらぬかと……」
あたしは言いにくい事を口にする。
「貴様は味方の…いや、貴様の言うことにも一理あるな…」
ドズル閣下が納得してくれる。
「良かろう、ガトーをガルマ直下の部下として地上に向かわせる。モビルスーツはそちらで用意してもらえるか? 奴にはソロモン宙域用のリックドムしかない」
ドズル中将と条件を話し合う。今は地上降下作戦の直前で、機体の数が不足している。
「こちらで、甲板にへばりつかせる、砲台用のモビルスーツ乗員が必要になりますので、空く機体があります、それを回しましょう」
パイロットには申し訳ないが、打てる手は打っておきたい。
「良かろう、奴には俺から話をしておく、用はそれだけか?」
条件がまとまり奥の手が用意された。
「GPシリーズを小隊規模で、あたしの大隊に追加してくだされば…」
譲った分を融通してもらわなくてはならない。
「うむ、準備が出来次第こちらから送ってやろう」
中将が受け入れてくれる。
「はっ! 感謝いたします」
あたしが話を聞いてくれた中将に謝辞を述べる。
「構わん、ガルマに何かあれば俺も困るからな。宇宙に戻ったらミネバにまた会いに来い。健闘を祈る」
そういってドズル中将とのレーザー通信が切れる。
人事は尽くした、後は天命を待つのみ。
あたしは神ではない、だが不完全な人の身であっても出来ることはあるし、出来る限りのことはしたい。
「オペレーター、ナタリア小隊に招集をかけて。あたしから話があるって。」
上の事情で愛機を降ろされる彼女達にはあたしの口から通告しておくべきだろう。
それまでは甲板にへばりつかせるガンタンクの操縦にでも専念してもらうとしても。
これで何とかなってくれるといいのだけど……
大軍とはいえジャブローを落とせるほどの兵力はない。
あくまで南米に睨みを利かせる為だけの存在だ、だが下手に烏合の衆が集った結果ガルマが暴走を抑えられない可能性はある。
「ガトー大尉、せめてガルマを生き残らせてくださいね…」
あたしはそう独り言ちると、愛機を取り上げられるナタリア小隊へ事情の説明に向かうのだった。
次回地上にて。