転生宇宙世紀 ―ジオンの女性士官にTS転生したので、ザビ家は気に入らないけど連邦と戦います― 作:読人不識
サラたんの苦闘は続く。
地球連邦軍がヨーロッパに上陸して以降、ヨーロッパの地中海沿岸部を支配していた味方に
『機密を破棄して撤退の後、オデッサに集結せよ』
と、マ・クベは命じていたらしいけど、そのおかげでほぼ無傷のまま戦力をオデッサ近郊に集めることが出来た。
獣姦ショーの反響も良く、連邦軍内部の協力者もご機嫌で情報を提供してくれる。
おかげでヨーロッパを進軍しているレビルの位置を我々は常に補足できている。
「これはオデッサに集結する前にレビルの本隊に強襲かけた方が良いのかもねぇ?」
あたしがこともなげにそう呟くと、
「戦術面においては、それが上策と言えるかと」
ラル大尉が返してくる。
「ですが、マ・クベ大佐はどう思われるのでしょう?」
ハモンさんが疑問を呈するので、ラグナロクのブリッジから通信を繋いでマ・クベを呼び出す。
「レビルの本隊を強襲? ですか?」
マ・クベが吃驚してそう訊き返す。
「そう、ラグナロクとパイドバイパー、それとあなたの所にあるザンジバルに、詰めるだけモビルスーツ詰めて、レビルの本隊を強襲するの。今のレビルは逃げ帰っても政治的に追い詰められて、主導権取り上げられるとは分かってはいるけど、でも戦場で出来れば仕留めたい……」
あたしはレビルを放置することに懸念を常に抱いている。
何かあれば終戦協定にケチをつけて反ジオンの旗頭に立つ可能性を否定しきれない、それ故盤上から完全に排除しておきたいのだ。
「あと半月、時間を下されば、オデッサを守り切った時点で和平を結ぶ話を浸透させきれそうなのですが…」
マ・クベは時間が欲しいという。
だがそこまで時間をかけていてはオデッサで
そこで仕留めそこなうことが恐ろしい。
だがマ・クベは連邦軍内部にレビルを切り捨てることも止む無し、という風潮が出始めているとのことで、もう少し待てばその後の展開を楽にできるという。
連邦軍も休戦明けから敗北続きで、厭戦気分がまた充満しているらしい。
特にこれ以上の攻勢をジオンがかけてこないのであれば、和平を結んでも良いのではないか?
という論調がルナ・ツー失陥以降強くなっているとか。
その流れには乗りたい、だがレビルを生かしたままでは禍の種にしかならない。
あたしは二つの相矛盾する道理を図りかねて、頭を悩ませる。
その悩みは翌日に一転する。
北中米方面軍司令ガルマ・ザビ准将の名で、南米橋頭保構築作戦の作戦案が提出されたと、キシリアから伝えられたのだ。
あの早漏坊ちゃん調子付いたか?
北米は連邦とジオンの戦線が複雑に絡まり合い、占領するだけで無駄な兵力を割かねばならなかった為、再編成の意味で北中米から連邦軍を放逐するまで戦線を押しこんだのだ。
北中米の占領軍はそこから南米に睨みを利かせていればいい。
ジャブローから兵力が薄くなった時期に嫌がらせの様に攻撃を加える。
それを繰り返すだけでよかったのだ。
本格的に南米に橋頭保を築いてそこを維持するだけの兵力はジオンにはない。
だがガルマは功を焦ったか無謀な策を上申してきた。
これはまずい。
これが融和派の失脚を望むギレンの後押しで実現すれば、ガルマは政治的な立場が弱くなる。
いや…この際融和派からダイクン派へと切り替えるべきか?
ルナ・ツーを拠点として構築し始めたシャア先輩と連絡を取りたいが、距離があり過ぎて連絡を取れない。
まずいことになったなぁ…
あたしがそう頭を悩ませていると、ブリッジでクッションを敷いて横になっていたセイラが
「その作戦案を連邦に流せばよくて?」
と切り出す。
ホワイトベースのブリッジは広くて1stの時もブリッジ要員以外がクッションを敷いて横になったりリクライニングに使われていたが、ラグナロクとなった現在では半裸の女性クルーたちがリクライニングに使うヤリ部屋になることもある。
今日は作戦会議に通信を使うので半裸の者はいないが、時折いる。そしてあたしはそういう者と睦合うのだ。
話しが脱線した。
「セイラ、どういう意味?」
あたしが詳細を述べるように求める。
「その作戦を融和派は通したくないのでしょう? ならば露見させればよほど強硬な手段を使わねば通すのは無理でしょう? それにジオンにそこまでの勢いがあると連邦に誤認させられれば…」
セイラがそういう。
「レビルを切り捨てる理由にもなるし、和平の話も進みやすくなる…か」
あたしが話の接ぎ穂を継ぐ。
「オペレーター、マ・クベ大佐に回線繋げ! 『至急会いたい』と伝えろ」
あたしはそう命じると、セイラを伴いマ・クベが本拠としているオデッサの基地へ向かう。
………
……
…
「連邦首脳に『南米橋頭保構築作戦』を伝えるのですか?」
マ・クベが戸惑い気味にそう問いかける。
当たり前だ、こんな作戦が露見したら成功するものも成功しない。
「この作戦は成功されても失敗されても困るのでね。ジャブローには警戒を厳にして貰いたい、と。それと『我々は早期の終戦を望んでいるが、首脳部にはそう思わないものもいる』とでも伝えなさい」
あたしがマ・クベにそう命じる。
「つまりブラフをかけるので?」
マ・クベがそう問い返す。
「作戦案が動いていることは事実だし、これを通したいものがいるのも事実。だけど通されては終戦が遠のくというのもまた事実。相手が知りたいことを隠すだけで嘘を言う訳では無いわ、
マ・クベが口にする人聞きの悪い物言いを修正させる。
「『終戦の妨げになる作戦を妨害してほしい』というお願いですな」
にやりと笑ってマ・クベがそういう。
「そういう事よ」
あたしは嫣然と微笑んでマクベに笑みを返す。
無能な味方より有能な敵の方が協力者として重要な場合がある。
今回などその際たるものだろう。
この場合、連邦軍高官の軍事的才幹ではなく政治的なバランス感覚が我々にとって有用なものとなる。
味方の軍事的才能のなさ、現状認識の甘さが同時に我々に災難を振りまくのが厄介というより他はないのだが…
マ・クベに向かってあたしは一つ疑問を呈する。
「キシリア閣下はあたしとあなたが結びついているとお察しか?」
マ・クベは淀みなく、
「ご存じないでしょうな。何故なら私は何も申し上げておりませなんだから」
迷いなくそういう。
「ならば、この作戦案はギレン総帥名義で、推し進めることを、あなたから進言して頂戴。でなければヨーロッパ中央アジアから兵は出せないとでも言って、まぁ作戦案が通ってもオデッサを防衛した後になるけど」
キシリアならば、ガルマの擁護に動いてくれるだろう。
終戦前にガルマが失脚や最悪戦死ということになれば、彼女も困るのだ。
そして最悪ガルマが失脚もしくは戦死したとしてもそれでギレンの勢力を削げる。
その為に総帥名義での作戦案に変更させるのだ。
「あのお坊ちゃまは癇癪を起こすかもしれないけど、こちらの勢力に手痛い失点を負わせるわけにはいかないのよね…」
あたしがそう零すと
「仰る通りで」
マ・クベがそう肯定する。
「セイラもそれで良くて?」
あたしが謀略の意図をセイラに確認すると。
「問題ないかと。ガルマ准将はそれでも強行するのでしょうか?」
彼女が問い返す。
「彼はメンツにこだわる小者だから、兄君に貸しを作る意味で強行するかもしれないわね……セイラ、お兄様に立ち上がるタイミングを計るよう手紙を書いておいて。マ・クベはその手紙をルナ・ツーのシャア大佐に届けて。出来るだけ秘密裏に、お願いするわね♡」
愛想よくそう指示を出す。
戦後に始まる新たな戦いの準備は既に始まっているのだ。
更には戦術面でランバ・ラルが、政治面でセイラが、謀略面でマ・クベが参謀として付いているのが強みですね。
マ・クベは部下ではないのですけどw