転生宇宙世紀 ―ジオンの女性士官にTS転生したので、ザビ家は気に入らないけど連邦と戦います― 作:読人不識
今回ちょっと短めです。
宇宙歴 0081 5月 初旬
赤道直下のマレーシアにあるリゾートビーチで、あたしはスリングショットの水着を着て、ビーチチェアに身を横たえ、周りに大隊の美少女達を侍らせくつろいでいた。
シャルとユウヅルが手分けしてあたしの身体に日焼け止めを塗り込んでくれる。
近くに置いたテレビモニターからはジオン公国代表デギン・ソド・ザビと介添えとして出席したキシリア、地球連邦例歩代表者と地球連邦軍代表ゴップ大将、介添え役のエルラン中将が映され、それぞれが書類にサインをしたのち交換し、握手をしてカメラに向かって終戦のアピールをしている。
「ようやく戦争も終りね、次は宇宙で政争かしら?」
あたしが誰にともなくそういうと、
「ギレンがすでに動いているかも?」
ローライズボトムにチューブトップの水着を着たセイラがそう返す。
「皆の気が緩んでるこの機会に一気に…あの男ならやりかねないわね…」
ため息をつきながらあたしがそう返す。
「キシリア機関が動いているようです」
ハモンさんがそう付け加える。
「ギレンの足元を崩しに?」
あたしが揶揄するようにそう訊ねると。
「さぁ? どうでしょうね…」
ハモンさんがはぐらかす。
あの後撤退していく連邦軍から目立った攻撃はなく、双方睨み合ったまま連邦政府から終戦協定の申し込みがあり、現在キャリフォルニアベースで調印式が行われている。
一頻り平和をアピールしたお偉いさん達はそのまま分かれて、自分達の取り巻きの元に戻り、キャリフォルニアベース近くにある高級ホテルで和平のセレモニーを行うため移動するらしい。
モニタの向こうでは女性キャスターがしきりに和平がなされ、戦争が終わったことをアピールしている。
「ここに我がジオン公国とコロニー群、そして地球連邦政府との間に和平が締結されました! 皆が待ち望んでいた平和がやって来たのです、我々は自治権を勝ち取り、平和をもぎ取ったのです! この日が我々宇宙移民にとって偉大で重要な日となり、後世」
が、その直後マイクが爆音を拾い、辺りに悲鳴がこだまする。
「何が起こった?」
あたしが怪訝そうにそう問うと、
「爆音が聞こえました」
ナタリアが簡潔に確実な事を報告する。
「まさかサロスと同じ手段で?」
色を成して激高しかけるあたしを制するように、
「まずは現地で何があったか、軍の回線で連絡を取るのが先決かと」
ナタリアが忠言する。
「その通りだわね。パイドバイパーにいるレーヴに連絡を! 何が起こったか報告させよ!」
そう命じると全員が敬礼し、荷物をてきぱきと片付け帰りの支度を手早く行う。
最悪を想定する。
ギレンにとっても終戦は喜ぶべきことだとあたしは認識していた…だが奴は自らの手勢による終戦を望んでいたとしたら?
いや、いくらなんでもそれには無理がある。戦力的にも兵站的にも無理だ。
それをギレンが理解できていない?
いやコロニーレーザー! あれを決戦兵器として使い、総帥の手で終戦にこぎつけたと喧伝する。
その為にこの終戦をなかったことにするのでは?
ならば下手をしたら泥沼の戦争が待っている可能性もある。
誰も救われず、ただ人が死んでいくだけの戦場…ヒトラーの尻尾ならそんな虚しいだけの戦争を行う可能性も否定できない。
あたしは胸に嫌な予感を感じながら、手早く着替えを済ませ、ラグナロクへと戻ろうとするのだった。
………
……
…
「現地にいらっしゃるガルマ准将と連絡が付きました」
ラグナロクのブリッジにあたしの大隊の幹部たちを集め、レーヴからの報告を聞く。
「公王陛下とキシリア閣下が同乗された車両が車ごと爆散した模様です」
冷然とレーヴが言い放つ。
「…………ギレンの差し金か?」
数瞬の沈黙の後あたしはそっと口にする。
「ガルマ准将はそこまでは…」
レーヴが静かにそう返す。
「マ・クベに連絡を! 暗号通信で、突撃機動軍をまとめて動くよう指示せよ、ガルマ准将の元で我々は一丸となって活動するとな。本艦はこれよりオデッサでマ・クベと会談したのちルナ・ツーのシャア大佐と合流する、いやその前に連邦と繋ぎを付けて終戦の意図は変わらないことを伝えさせろ!」
あたしは考えながら指示を出す。
一手の遅れが致命的な差になる盤面だ。
デギンとキシリアがこの局面でいなくなって一番喜ぶのはギレンしかいない。
ガルマは現状維持で十分だし、ドズルに政治的野心はない。シャア先輩ですらあたしたちと協調すると約束してくれた。
消去法で言ってもギレンが一番怪しいのだ。
ならば敵はギレンと見定めてほぼ間違いなかろう?
レビルを排除された連邦軍には既に戦う意思はないはず、これ以上の戦争継続は彼等にとっては悪手であり本意ではないはず。
それならば協定を結ぶ政治的な相手は健在でいてもらわねばならない。
彼等にデギンを暗殺する理由はない。
「ヒメさま……」
心配げなサーシャの言葉にあたしは気付いて。
「大丈夫よサーシャ、連邦とは和平を結ぶ。必要ならマ・クベを通して援助を受ける。そしてギレンと戦い奴を排除する」
覚悟を決めあたしがそう断言する。
迷っている暇はない。
状況証拠だけで断罪できないが、手をこまねいていてはすりつぶされる。
キシリア配下をまとめた後に、キシリア機関にでも何が起きたか調べさせればいいだろう。
今決められる方針などこれくらいしかない
「全艦発艦急げ! 時は一刻を争うわよ!」
部下を叱咤し立ち上がる。
最終的な決着は
ギレンが持つソーラレイがカギを握る。
あたしはふとそんな気がするのだった。
何故かはわからないが、あたしはそれを確信し疑わない。
「不意を打たれれば大打撃を受けるが、あると分かっていれば何とでもできる」
自然とその考え方があたしの中で形を持つ。
舞台は再び混迷する
「宇宙移民の自治は独裁者から勝ち取らねばならないという事か…」
あたしがポツリとそう呟く。
その言葉は重く、その場にいる全員の心に染み入るようだった。
数日休息とってから3章を書きたいと思います。
しばらくお待たせするかもしれません、申し訳ございませんがご了承ください。